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巻頭言 Top Column - J-Stage

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Academic year: 2023

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化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012

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表題は札幌市内の高校で行なった講演の

タイトルです.1年生,320名は熱心に最 後まで筆者の話を聞いてくれました.小学 校でも中学校でも,同様なお話をさせてい ただいております.

2004年から,遺伝子組換え技術を正し く理解していただくために,一般市民との 対話あるいは講演を100回ほど行なってき ました.その中で,地球46億年の歴史を1 年のカレンダーとして考えたとき,2月17 日頃に原始生命が誕生したこと(40億年 前),5月7日頃から酸素が蓄積しだしたこ と(30億年前),7月25日頃に嫌気生物が ほとんど死滅したこと(20億年前),11月 29日頃に生物が陸上でも生活しだしたこ と(4億年前),2本足歩行になった400万 年前は1年が終わる8時間前(12月31日午 後4時頃)であること,農耕が始まった1 万年前は70秒前,そしてこのようなス ケールでは,人間の一生80数年は0.6秒で あることを伝え,地球上の生物はすべて同 じ遺伝の仕組みで,遺伝子という言葉で繋 がっていることを説明しています.

これによって,遺伝子は特別なものでも 怖いものでもないこと,身近なものである ことを知ってもらいたいからです.そし て,私たちも生物である以上,外界からエ ネルギーを摂らなければ生きていけないと いう,当たり前のことをもっと強く意識し てほしいのです.

さて,年齢的なものなのか,小中学生や 高校生への講話を依頼されることも多くな りました.そこで,上記の地球カレンダー を利用して,次のようなことを伝えていま す.すなわち,一人ひとりの命は40億年 の流れの中にあって,命とはそのバトンリ レーであるということです.自分の前にも 後ろにも,たくさんの命が繋がっているこ とから,命の尊さが容易に理解されます.

そしてヒトは皆,いつかは家族から自立 し,自分で 食 を得るために 職 をも たなければならないことも知ってもらいた

いのです.また,どんな職業であっても大 事なものは,知識と技術であることもで す.したがって,ほとんどの国には小中学 校の義務教育があり,国語も算数も理科も 社会もあり,音楽も技術の教科もあって,

どれも一所懸命努力して身につけなければ ならないということです.

さらに地球カレンダーから,生物多様性 の重要さも語ることができます.これまで 地球上に誕生した生物のほとんどは,変化 した環境に慣れることなく死に絶えました が,今ある生物は生きる上で必ず何か良い ところをもっているからこそ,生き延びて きたということもです.すべてが 食う食 われる という関係の中で生命を全うして います.地球上の生物はすべて,単独に孤 立してあるものはなく,相互に依存関係が あってはじめて一切は存在するのです.そ れぞれの生物の性質の違いが,全滅を避け る戦略として非常に重要であるように,学 校や社会における人々の考えや意見の違い も同じように大事であることを伝えてきま した.

進化論を説いたダーウィンは,「最も強 いものが生き残るのではなく,最も賢いも のが生き残るのでもなく,変化できるもの が生き残る」と述べていますが,これは多 くの若者を勇気づける言葉として,小中高 校生に伝えたいことです.

「人間はどこから来て,どこに行くの か」,「生きるとは,学ぶとは」は,一生か かっても答えの出ないものですが,筆者の つたない話から,何かを感じ取ってもらえ ていると思います.次代を担う若者に,生 きる力,生き抜く力,そして仲間との恊働 の力が育まれるように導くのが,私たち大 人の責任です.今ほど人間力が求められて いる時はないのですから.

本誌のキーワード,「生命・食糧・環境」

を教育し,研究している私たちは,それら を語る最短距離にある研究者と自負してい るところです.

巻頭言

Top Column

生きるとは,学ぶとは  生命,食糧,環境の教育研究から考える

松井博和

北海道大学大学院農学研究院

Top Column

参照

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