2.4 フラグメント B の合成
2.4.2 PMB 基の変換
このようにして得られた 2 糖 35 のベンジリデンアセタールを脱保護し、6 位に再度フ コシル化反応を行ってフラグメントB 9の合成を試みるにあたっては、フコースの水酸基 を保護している PMB 基を脱保護し、アセチル基へと変換する必要がある。これは、水酸 基を PMB 基のようなエーテル型の保護基で保護されたフコースのフコシド結合が、酸に 対してきわめて不安定であることが原因である。ベンジリデンアセタールの脱保護には酸 性条件が必須となるため、エーテル型の PMB 基をエステル型のアセチル基へと変換しな ければ、酸処理によりフコシド結合が切断される可能性がある。そこで、Figure 2-7 に示 すように、生じた2糖35からPMB基を脱保護してトリオール36へと導いた後にアセチ ル化し、その上でベンジリデンアセタールの脱保護を試みることとした。
しかしながら、PMB基を脱保護すべく行った DDQ 処理70)では望みのトリオール36 の みを得ることはできず、フコースの 4 位水酸基が p-メトキシベンゾイル化された化合物 38 も多く副生した。これは、PMB 基が脱保護される際に水ではなく隣接する水酸基と反 応して、アニシリデンアセタールを形成し、それが DDQ で再酸化されることで生じたも のと考えられる(Scheme 2-8)。
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OPMBOPMB
OPMB
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OHOH
OH
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OAcOAc
OAc
O O
NPhth OBn O
OAcOAc OAc HO
HO Deprotection of
PMB groups Acetylation
Cleavage of benzilyden acetal under acidic condition
Figure 2-7. Strategy to Change Protecting Groups
35 36 37
32
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OPMBOPMB
OPMB
O O
O O
NPhth OBn Ph
O O OH
OH
O
OMe
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OHOH
OH DDQ
CH2Cl2 - H2O 9 : 1
O O
O O
NPhth OBn Ph
O O OH
OR
OMe H O
H
O O
O O
NPhth OBn Ph
O O O
OR
38 : 57% 36 : 12%
+
DDQ H2O
DDQ H2O
OMe R = H or PMB
Scheme 2-8. Byproducts of the Oxidative Reaction by DDQ 35
そこで、トリオール 36 選択的に得るために反応の最適化を試みたが、この副反応を抑 制することは困難であったため、DDQ 処理により生じた生成物をそのまま MeONa 処理
して p-メトキシベンゾイル基を脱保護し、副生成物をもまとめてトリオール 36 へと導く
こととした。この後にトリオール36をアセチル化、さらにTFA処理することでベンジリ デンアセタールの脱保護をも行い、4 段階収率 71%で望みのジオール 32 を得ることがで きた(Scheme 2-9)。
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OAcOAc
OAc CH2Cl2 - H2O 20 : 1
71%
(4 steps) O
O O O
NPhth OBn Ph
O OPMBOPMB
OPMB
DDQ CH2Cl2 - H2O
9 : 1
MeONa MeOH - THF
5 : 1 50 °C
Ac2O DMAP
Py
O O
O O
NPhth OBn Ph
O OHOH
OH
O O
NPhth OBn O
OAcOAc OAc HO
HO TFA
35 36
37 32
Scheme 2-9. Synthesis of Diol 32
2.4.3 α-フコシル化反応によるフラグメントBの合成 〜α1-6フコシド結合の構築〜
続いて、得られたジオール32の6 位水酸基にフコースを導入してフラグメントB 9の 合成を試みた。この際、2 糖 35 を合成した反応と同様の条件で、フコシルドナー34 を用 いたα-フコシル化反応を試みることも検討したが、この場合もフコシル化反応の後に PMB 基の変換が必須になり、合成経路がより煩雑になることが予想されたため(Figure 2- 8)、保護基の変換が必要とならない新規なフコシルドナーを用いて、異なる反応条件でフ コースを導入することとした。
そこで、活性化試薬をより強力な MeOTf へと変更し、フコシルドナーに関しては保護 基の一部をエステル型のアセチル基へと変更して反応性を低下させたものを設計した。こ のフコシルドナー3171)と先に合成したジオール 32 との間で、トルエンを溶媒としてグリ コシル化反応を行ったところ、期待通りに6位水酸基に対してのみグリコシル化反応が進 行し、3糖であるフラグメントB 9が得られた(Table 2-5, entry 1)。
O O
NPhth OBn O
OAcOAc OAc HO HO
O O
NPhth OBn O
OAcOAc OAc HO
O O PMBO OPMB PMBO CuBr2
TBAB MS 4A (ClCH2)2 - DMF
5 : 1 O OPMBOPMB
OPMB SMe
O
OAc AcO
AcO
HO O
NPhth OBn O
O OAc
OAc OAc
O Removal of PMB
& Acetylation Protection
of 4-OH
Deprotection of 4-OH
Figure 2-8. Synthetic Strategy to Synthesize Trisaccharide 40 by Using Fucosyl Donor 34 32
39
40 34
O OAcOAc
OBn SMe
α : β 4.2 : 1 4.0 : 1 11 : 1 11 : 1 entry
1 2 3 4
time (h) 3.5 3.5 2 2
yield (%) 93 81a)
87 92 MS 4A solvent MeOTf (4.2 eq.) DTBMP (4.2 eq.) +
solvent toluene CH2Cl2 Et2O CPME O
O
NPhth OBn O
OAcOAc OAc HO HO
O
OAc BnO
AcO
HO O
NPhth OBn O
O OAc
OAc OAc
O
a) 10 % of tetrasaccharide was obtained
CPME : OMe 9
31 32
Table 2-5. Fucosylation of Diol 32 with 31 to Synthesize Fragment B (9)
しかしながらその立体選択性は乏しく、αβ比はα:β = 4.2:1にとどまってしまった。そこ で、立体選択性の向上を期待して溶媒を変更し、反応条件の最適化を図ることとした。そ の結果、エーテル系の溶媒でα選択性の向上が見られ(entry 3,4)、ジエチルエーテルや CPMEを用いた場合、その選択性はα:β = 11:1にまで向上した。反応収率とのかねあいも 考え、CPMEを溶媒とする条件を最適条件とし、望みの3糖すなわちフラグメントB 9の 合成を達成した。なお副生したβ体はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより容易に α体と分離が可能であった。