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フラグメント A-2 の合成

2.3 フラグメント A の合成

2.3.2 フラグメント A-2 の合成

2.3.3  6糖骨格の構築

以上のようにして、フラグメントA-1 11およびA-2 12の合成を達成できたので、引き 続いて両者の間でグリコシル化反応を行い、5 糖 24 の合成を試みた。この反応により構 築するグリコシド結合は、Manα1-3Man 結合であるが、α-マンノシド結合を構築する際に は、マンノシルドナーの2位水酸基をアシル系の保護基で保護し、隣接基関与の効果によ り立体選択性を発現させる手法が一般的である。しかしながら、本研究の系ではマンノシ ルドナーの2位水酸基にはグルコサミン誘導体が既に導入されており、隣接基関与による 立体制御を期待することはできない。とはいえ、反応点に隣接した2位水酸基にグルコサ ミン誘導体が導入されていることにより発現する立体障害で、β面からのグリコシルアク セプターの接近を抑制することができると期待された。また、経験的にマンノシル化反応 においては、溶媒にトルエンを用いることで、そのα選択性が向上することが知られてい る。以上を踏まえて、フラグメントA-2 12の活性化試薬としてMeOTfを用い、トルエン 溶媒中 50 ˚C で反応を行った結果、期待通りα選択的にグリコシル化反応が進行し、目的 の5糖24を収率94%で得ることができた(Scheme 2-3)。

続いて、得られた5 糖 24 をトシル酸一水和物で処理することで、シクロヘキシリデン アセタールを脱保護してジオール 25へと導いた後、既知のマンノシルドナー10との間で グリコシル化反応を行って 6 糖 26 の合成を試みた(Scheme 2-4)。望みの Manα1-6Man 結 合の構築にあたっては、反応の立体選択性の制御の他に、グリコシルアクセプターがジオ ールであるため、反応を位置選択性をも制御することが必要である。しかし、両者の制御 は比較的容易に達成が可能であった。位置選択性に関しては、より反応性の高い一級水酸 基である6位水酸基に対してのみ選択的にグリコシル化反応が進行することが期待でき、

立体選択性に関しても、マンノシルドナー10 の 2 位水酸基がアセチル基で保護されてい

O HO

O O

O OBn O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O O O

O

O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O MS 4A

toluene 50 °C

94%

Fragment A-2 (12) MeOTf DTBMP

11 24

るため、隣接基関与の効果でα-マンノシド結合が優先的に構築されるものと期待できた。

実際にマンノシルドナー10 とジオール 25 の間で AgOTf を活性化試薬として用いてグリ コシル化反応を試みたところ、期待通りに 6 位水酸基に対してのみα選択的にグリコシル 化反応が進行し、望みの6糖26が収率77%で得られた。

O O O

O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O

O O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O HO TsOH·H2O HO

CH3CN 91%

BnO O BnO

BnO OAc

Cl

O O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O AgOTf HO

MS 4A (ClCH2)2 - toluene

2 : 1 -30 °C → r.t.

77%

BnO O BnO

BnO OAc

10 O

Scheme 2-4. Synthesis of Hexasaccharide Unit

24 25

26

2.3.4 官能基変換とフラグメントAの合成

この 6 糖 26 をグリコシルドナーへと変換するためには、アノマー位の水酸基を保護し ているベンジル基を脱保護する必要があるため、当初はこのベンジル基のみを選択的に脱 保護する手法を検討した。Bieg らはアルミナ処理により活性を低下させたパラジウムを 触媒に用い、蟻酸アンモニウムを水素源としてハイドロジェントランスファーを行って、

アノマー位のベンジル基のみを選択的に脱保護する方法を報告している(Figure 2-5)60)

BnO O BnO

OBn OBn

OBn

BnO O BnO

OBn OBn

OH HCOOH·NH3

Pd-Al2O3 MeOH

12 h 75%

Mannose : 68%

Galactose : 80%

Lactose : 67%

Maltose : 65%

Figure 2-5. Regioselective Debenzylation by Using Pd-Al2O3

Ac2O Py

Pd-Al2O3 EtOH reflux 60%

(2 steps)

Scheme 2-5. Regioselective Debenzylation by Using Pd-Al2O3 O

O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O HO BnO O

BnO

BnO OAc

O

26

O O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OH

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O AcO BnO O

BnO

BnO OAc

O

27

これにならい、同様の反応を 6 糖 26 に対して行ったところ、わずかな反応の進行がマ ススペクトルにより認められたものの、反応の進行は極めて遅く、満足のいくものとはい えなかった。そこで水素源を、蟻酸アンモニウム61)以外にハイドロジェントランスファー で汎用される、シクロヘキセン62)や蟻酸63)、2-プロパノール64)、シクロヘキサジエン65)へ と変更して反応条件を種々検討した。その結果、水素源であるシクロヘキセンとエタノー ルを 2:1で混合した溶媒を用いて加熱還流条件下で反応を行えば反応が円滑に進行し、ア ノマー位のベンジル基のみが脱保護された6 糖27が収率 60%で得られることが明らかに なった(Scheme 2-5)。しかしながら、この反応の収率は満足のいくものではなく、過剰の ベンジル基が脱保護された副生成物の生成もマススペクトルの測定により認められた。ま た再現性にも問題があったため、優れた反応とはいえなかった。

このため、方針を変更して全てのベンジル基を脱保護し、アセチル基へと変換するこ ととした(Scheme 2-6)。水酸化パラジウムを触媒として用いて水素添加反応を行ったとこ ろ、全てのベンジル基を脱保護できたことが、マススペクトルを測定した結果判明した。

O O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O HO BnO O

BnO

BnO OAc

O H2

Pd(OH)2 EtOH - EtOAc - H2O

10 : 2 : 1

Ac2O Py

O O O

OAc R2N AcO

O OAc

OAc AcO

O

OAc

AcO O AcO

NR2

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO AcO O

AcO

AcO OAc

O

O

a b

2

26 28

28

しかしながら同時に、目的の脱保護体 28a よりも分子量が 6 マスユニット多い化合物 28bが副生していることも判明した。この副生成物28bは、目的とする脱保護体28aに存 在するフタロイル基までもが還元されたものであると分子量から推測されたが、両化合物 の分離がきわめて困難であるばかりか、反応条件を変更しても 28b の副生を抑制するこ とが不可能であったため、再び別経路を模索することとした。

引き続いて種々の還元条件を検討した結果、水酸化パラジウム存在下ハイドロジェン トランスファーを行えば62a)、ベンジル基の脱保護のみが選択的に進行し、フタロイル基 の還元が進行しないことが判明した(Table 2-3)。先にも述べたように、ハイドロジェント ランスファーでは水素源として蟻酸やシクロヘキセン、2-プロパノール、蟻酸アンモニウ ム、シクロヘキサジエン等が用いられるが、本法では水素源をシクロヘキセンとし、これ に加えてエタノールと酢酸を 2:1:1 の比率で混合した溶媒を用いて加熱還流条件で反応を

行った(entry 3)。全てのベンジル基の脱保護には酢酸の添加が不可欠であり、酢酸を加え

ない(entry 1)、もしくはその量が不十分な反応条件(entry 2)では、ベンジル基が一つ還元さ れずに残ってしまう。また本反応では、ベンジル基が全て脱保護された脱保護体 29 の他 に、遊離した水酸基の一部がアセチル化された化合物や逆にアセチル基が一部脱保護され た化合物も副生していることがマススペクトルの測定結果より明らかとなった。しかしな がら、当初から 6 糖 26 のベンジル基を脱保護した後にアセチル化反応を施す予定であっ たため、これらの副反応は全く問題のないものである。

Pd(OH)2 solvent

reflux

entry 1 2 3

result

complete but one Bn group was preserved complete but one Bn group was preserved

complete solvent

cyclohexene - EtOH = 2 : 1 cyclohexene - EtOH - AcOH = 4 : 2 : 1 cyclohexene - EtOH - AcOH = 2 : 1 : 1

O O O

OBn PhthN BnO

O OAc

OAc AcO

O

OBn

BnO O BnO

NPhth

O OBn

OBn O OBn BnO

O HO BnO O

BnO

BnO OAc

O

O O O

OH PhthN HO

O OAc

OAc AcO

O

OH

HO O HO

NPhth

O OH

OH O OH HO

O HO HO O

HO

HO OAc

O Table 2-3. Debenzylation by Hydrogen Transfer

26 29

以上のようにして6 糖 26 から全てのベンジル基を脱保護する条件を確立することがで きたので、ベンジル基の脱保護に引き続いてアセチル化反応を行って全ての水酸基をアセ チル化し、アセチル体 28a を合成した。続いて、ヒドラジン酢酸で処理してアノマー位 のアセチル基を選択的に脱保護し66)、ヘミアセタール 30 へと変換した。最後に、このヘ ミアセタール30をDBU存在下トリクロロアセトニトリルで処理して53)、トリクロロアセ トイミデートであるフラグメントA 8の合成を達成した(Scheme 2-7)。

Py 93%

(2 steps)

DBU Cl3CCN

75%

(2 steps)

N2H4·AcOH - EtOH - AcOH DMF

Ac2O Pd(OH)2

2 : 1 : 1 reflux

O O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO AcO O

AcO

AcO OAc

O O

O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

OAc

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO AcO O

AcO

AcO OAc

O

CCl3 NH

Scheme 2-7. Synthesis of Fragment A (8) 26

28a

8 O

O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

OH

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO AcO O

AcO

AcO OAc

O

30