• 検索結果がありません。

新規グリコシルアクセプターの設計と合成 〜その 2〜

2.5 天然型 9 糖の合成

2.5.3 新規グリコシルアクセプターの設計と合成 〜その 2〜

フラグメントB 9やフラグメントBa 45の反応点、すなわち、グルコサミン残基の4位 水酸基に対して立体障害を与える要因として、α1-3 フコースが大きく関与していること が、これまで行ってきたフラグメントA 8とのグリコシル化反応の結果から示唆されてい る。一方で、α1-6 フコースが立体障害に与える影響はこれまでの実験事実から類推する ことは困難である。そこで、Scheme 2-13 に示すような予備実験を行い、その影響を見積 もることとした。

グリコシルドナー50との間で行ったグリコシル化反応において、α1-6 フコースを導入 したグルコサミン誘導体 51 をグリコシルアクセプターとして用いた場合と、これを導入 しなかったグリコシルアクセプター14 を用いた場合とでは収率に大きな差はなかった。

この結果は、グルコサミン残基の 6 位に導入されたフコースが、4位水酸基に対して立体 障害を与える大きな要因になり得ないことを示唆しているといえる。これを踏まえ、フラ グメントA 8とグリコシル化反応を行う新規なグリコシルアクセプターとして、3位水酸 基をPMB基で保護し、6位にフコースが導入された2糖(以下、フラグメントBb 56)を設 計した。フラグメント A 8 とのグリコシル化反応で 8糖骨格を構築できれば、PMB 基の 選択的脱保護の後に生成する 8 糖 55 に対してフコシル化反応を行い、9 糖骨格を構築す ることが可能である(Figure 2-10)。

HO O BnO

NPhth OBn O

OAc BnO

AcO

O O

AcO

NPhth O AcO

OAc

CCl3 NH

+

O OAc PhthN

AcO O

BnO

NPhth OBn O

O O

AcO OAc BnO

AcO

HO O BnO

NPhth OBn OBn

O OAc PhthN

AcO O

BnO

NPhth OBn O

OBn AcO

TMSOTf MS 4A CH2Cl2 -78 °C

O AcO

NPhth O AcO

OAc

CCl3 NH

+

TMSOTf MS 4A CH2Cl2 -78 °C

Scheme 2-13. Effect of α1-6Fucose Residue 50

50

51

14

52 : 80%

53 : 88%

O O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O O

NPhth OBn O

OAcOAc

OBn O

O O

AcO OAc BnO

HO O PMBO

NPhth OBn O

OAc BnO

AcO

O O

O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O HO

NPhth OBn O

O O

AcO OAc BnO

O OAc

OBn OAc

SMe

Figure 2-10. Synthetic Strategy to Synthesize Nonasaccharide 54 by Using Fragment Bb (56) 54

31 55

Fragment Bb 56 O

O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O

Fragment A 8

CCl3 NH

フラグメントBb 56の合成は、Scheme 2-14に示すようにグルコサミン誘導体33の3位 水酸基に対して PMB イミデートを用いて PMB 基を導入することから開始し75)、引き続 く酸処理によってベンジリデンアセタールを脱保護してジオールへ 58 と導いた。このジ オール 58 とフコシルドナー31 との間でグリコシル化反応を行ったところ、期待通りにα 選択的なフコシル化が進行し、望みのフラグメントBb 56が収率66%で得られた。

HO O PMBO

NPhth OBn O

OAc BnO

AcO

O O

PMBO O O

NPhth OBn Ph

O PMBO

NPhth OBn HO

OH O

HO O O

NPhth OBn Ph

PMBO CCl3 NH La(OTf)3

CH2Cl2 79%

TsOH·H2O CH3CN - MeOH

1 : 1 78%

O OAcOAc

OBn SMe MeOTf DTBMP MS 4A CPME 66%

Scheme 2-14. Synthesis of Fragment Bb (56)

33 57

58

31

56

続いて、合成したフラグメントBb 56とフラグメントA 8との間でグリコシル化反応を 行い、8 糖 59の合成を試みた。活性化試薬としてこれまで同様 TMSOTf を用いてグリコ シル化反応を行ったところ、反応は緩やかに進行し、収率 56%で目的の8 糖59 を得るこ とができた(Scheme 2-15)。なお、このグリコシル化反応は完全には終了しないものの、未 反応のフラグメント A 8は反応の後処理後ヘミアセタール 30として回収されるため、再 度フラグメントA 8へと誘導が可能であり、未反応のフラグメントBb 56もほぼ定量的に 回収することができる。

MS 4A CH2Cl2 -78 °C → -40 °C

56%

HO O PMBO

NPhth OBn O

OAc BnO

AcO

O O

O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O PMBO

NPhth OBn O

O O

AcO OAc BnO

Scheme 2-15. Synthesis of Octasaccharide 59 59 Fragment Bb (56)

Fragment A (8) TMSOTf

2.5.4  9糖骨格の構築 〜その2

得られた 8 糖 59 を目的の糖鎖へと導くためには、PMB 基を脱保護し、さらにα1-3 フ コースを導入する必要がある。PMB 基を脱保護する目的で DDQ 処理を試みたが、この 結果得られた脱保護体 55 は 56%であり、同時にベンジルグリコシドまでもが脱保護され たヘミアセタール体60が18%、副生成物として生じた(Table 2-6, entry 1)。このヘミアセ

O O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O HO

NPhth OR O

O O

AcO OAc BnO

59

DDQ additive CH2Cl2

55 : R = Bn 60 : R = H

55 56 75

60 18 trace additive

H2O Mn(OAc)3·2H2O entry

1 2

yield (%) OH

OH CN CN Cl

Cl DDQH

DDQ (eq.) 6.5 1.2

Table 2-6. Deprotection of PMB Group

タール体60は、反応を完結させるために6.5当量もの過剰のDDQを用いたために副生し たと考えられたので、これを抑制するために化学量論量の DDQ で反応が完結する反応条 件を模索することとした。そこで、DDQの還元により反応系内で生ずるDDQHを酸化さ せ、DDQ を再生することが可能な試薬を系内に加えれば、DDQ の使用量を抑制すること ができるのではないかと考えた。Mn(OAc)3 はこのような能力を有する弱い酸化剤であり、

これを反応系内に加えることで DDQH は直ちにDDQ へと酸化される76)。8 糖 59 に対す

るDDQ処理を Mn(OAc)3存在下行ったところ、1.2当量の DDQで反応は完結したのみか、

期待通りに副反応も抑制することができ、収率 75%で脱保護体 55 を得ることができた (entry 2)。

得られた8 糖 55 とフコシルドナー31 との間でグリコシル化反応を行い、9 糖 54 の合 成を試みた。しかしながら、これまで用いてきた、活性化試薬として MeOTf を用いる反 応条件ではグリコシル化が進行するものの、50%程度反応が進行した時点でそれ以上の反 応の進行が見られなくなった。また、9 糖 54 の生成はマススペクトルを測定することに より明らかではあったが、原料の 8 糖 55 と生成物 54 を分離することが極めて困難であ ったため、グリコシル化反応が完全に終了する反応条件を探索する必要に迫られた。そこ で、第1章において確立した凍結反応場を利用したグリコシル化反応を試みることとした。

溶媒として p-キシレンを用い 4 ˚C で反応系を凍結させてグリコシル化を行ったところ、

55 O O O

OAc PhthN AcO

O OAc

OAc AcO

O

AcO O AcO

NPhth

O OAc

OAc O OAc AcO

O AcO

O AcO

OAc

O AcO

AcO

O O

NPhth OBn O

OAcOAc OBn

O O

AcO OAc BnO

O MS 4A

p-xylene 4 °C 83%

Frozen Condition

O OAc

OBn OAc

SMe MeOTf DTBMP

54 31

Scheme 2-16. Synthesis of Nonasaccharide 54 under Frozen Condition

て、生成物 54とグリコシルアクセプター55を混合状態で得た。得られたこの混合物に対 して、再度グリコシルドナー31 を加え同様の凍結反応をさらに 2 日間行ったところ、反 応の完結がマススペクトルの測定より判明し、目的の 9 糖54を収率 83%で得ることがで きた(Scheme 2-16)。なお、第1章でも示したとおり、凍結反応場を利用したグリコシル化 反応では反応速度が著しく加速されるものの、その立体選択性が低下する傾向にあった。

しかしながら、本反応において得られた 9糖 54は目的とするα体のみであり、β体の副生 は全く見られなかった。これは、グリコシルアクセプターである 8 糖 55 の反応性が極め て乏しいために、相対的に反応が進行しづらいβ-フコシル化反応が抑制されたためと考え られる。

以上のようにして得られた 9 糖 54 に対し、常法にしたがって適切な脱保護反応を施し たところ、最終目的物である 9 糖 7 を収率よく得ることができ、ここに標的糖鎖の合成 が達成された(Scheme 2-17)。

54 O

O O

OH NHAc HO

O OH

OH HO

O

HO O HO

NHAc

O OH

OH O OH HO

O HO

O HO

OH

O HO

HO

O O

NHAc OH O

OHOH OH

O O

HO OH HO

O H2NCH2CH2NH2

n-BuOH 85 °C

Ac2O Py

MeONa MeOH

H2 Pd(OH)2 MeOH aq.

87%

(4 steps)

Scheme 2-17. Deproteciton of Nonasaccharide 54

7