博士(医学)中越凡道 学位論文題名
IVIagnetic Resonance Imaging of Hereditary Spontaneous Hepatitis in Long‑Evans Cinnamon Rats
(
Long―Evans Cinnamon フ ットの遺伝 性自然発症 肝炎の磁気 共鳴画像)
学位論文内容の要旨
はじめに
多くの研究者が肝病変モデル動物の磁気共鳴画像と磁気共鳴スペクトロスコ ピーを報告している。これらの肝病変モデルのほとんどは、四塩化炭素、エタ ノールなどの薬物、あるいは、移植腫瘍によって作成されている。Long‑Evans
Cinnamon (LEC)ラットは遺伝的に肝炎を自然発症するので、これらのモデルより 人間の肝疾患に類似していると考えられる。
LEC
ラットは銅代謝に異常があり、肝内に著明に銅が蓄積し、血中のセル口プ ラスミンが低い。さらに、鉄、マンガン等の他の金属の代謝にも異常があるこ とも報告されている。
ある種の金属は磁気共鳴画像の信号強度に影響を与えることが報告されてい る。ヘモクロマトーシス等で肝臓に蓄積した鉄は信号強度を低下させ、最近で は、肝細胞癌内に蓄積した銅が信号強度を増強させる可能性が報告されている。
今回我々は、LEC ラットの急性肝炎、慢性肝炎期の磁気共鳴画像について報告す る。
対象及び方法
肝炎 発症前
8頭、急性肝炎期6 頭、慢性肝炎期
5頭の計19 頭のLEC ラットから 磁気共鳴画像を撮影した。肝疾患の病気は、週齢と黄疸の有無などの所見から 判 断 し た が 、 画 像 撮 影後 、 血液 検 査 の
GPT値 と 病理 所 見か ら 確認 し た 。
磁気共鳴画像撮影装置は、SIS 社製sis300/183 (静磁場強度7.05T 、1H 共鳴周波 数
300MHz、
183mm水平ボア)である。抱水クロラール
150‑400mg瓜g で麻酔後、
89nln1
径鞍型コイ´レ内に仰臥位にて固定して撮影した。撮影シーケンスは1R500 ミリ秒、
TE13ミリ秒の、プロトン密度強調画像を撮影した。画像のスライス厚 は
2mmで、ほぼ肝臓全体を
o.5mm 間隔で12 枚撮影した。
信号強度の比較は、横隔膜から約7 .5mm の肝臓が最も大きく写るスライスで肝 臓 内と腹・背 筋の各
4点から測定 し、その平均値の比を計算して行なった。
磁気共鳴画像を撮影後、下大静脈から採血を行ない、解剖して肝臓を摘出し てホルマリン固定し、肝病変の確認のためへマトキシリン.エオジン染色、銅 染色として
Timm‐s 法、銅結合蛋白を見るためにオルセイン染色、鉄染色として
Berlin‐
blue法を施行した。
統計 分 析は 、 肝 炎発 症 前、 慢性肝炎期 と急性肝炎 期の比較に は
Srnim・
Satterthwaite法を、肝炎発症前と慢性肝炎期比較にはStudent.s t‑testを用いた。
結 果
ヘ マ ト キ シ リ ン ・ エ オ ジ ン 染 色 に お い て 、 急 性 肝 炎 と 判 定 さ れ た 肝 臓 は 細 胞 構 築 の 破 壊 、 , 巨 大 な 核 を 持 っ た 肝 細 胞 の 腫 大 、 点 状 壊 死 、Kupffer細 胞 な どの 炎 症 細 胞 の 浸 潤 が 認 め ら れ た 。 慢 性 肝 炎 と 考 え ら れ た 肝 臓 に は 壊 死 や 細 胞 浸 潤 は 軽 度 で あ る が 、 卵 形 細 胞 と 小 肝 細 胞 が 肝 小 葉 の 辺 縁 に 認 め ら れ た 。 肝 炎 発 症 前 の 肝 臓 に は 病 理 組 織 学 的 な 異 常 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 所 見 は 人 間 の 肝 炎 の 病 理 組 織 像 と ほ ぽ 対 応 し て い た 。
総 ビ リ ル ビ ン 値 は 急 性 肝 炎 期 で 有 意 に 高 く 、GPT値 は 急 性 肝 炎 期 で 上 昇 し 、 慢 性 肝 炎 期 で や や 低 下 す る も の の 高 値 を 持 続 し て い た 。
全 病 期 を 通 じ て 、 磁 気 共 鳴 画 像 で の 肝 の 信 号 強 度 は 均 一 で あ っ た 。 肝 臓 / 筋 肉 の 信 号 強 度 比 は 急 性 肝 炎 期 で0.208士0.067と 肝 炎 発 症 前 の0.603士0.195よ り 有 意 に 低 下 し 、 慢 性 肝 炎 期 に は 0.672士 0.160と 回 復 し て い た 。 Timm ̄s法 で は 全 病 期 の 肝 臓 に 著 名 な 銅 の 沈 着 が 認 め ら れ た が 、 オ ル セ イ ン 染 色 で は な に も 染 色 さ れ な か っ た 。Berin‐blue染 色 に よ り 、 急 性 肝 炎 期 に 肝 細胞 の 内 外 に 多 量 の 、 慢 性 肝 炎 期 に は 少 量 の 鉄 が 認 め ら れ た が 、 肝 炎 発 症 前 に は 鉄 の 沈 着 は な か っ た 。
考 察
本 研 究 に よ っ て 、LECラ ッ ト の 肝 臓 の プ ロ ト ン 密 度 強 調 磁 気 共 鳴 画 像 の 信 号 強 度 は 、 急 性 肝 炎 期 に 有 意 に 低 下 し 、 慢 性 肝 炎 期 に 回 復 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 周 知 の よ う にLECラ ッ ト は 銅 代 謝 に 異 常 が あ り 、 肝 臓 内 に 多 量 の 銅 が 蓄 積 す る 。 ま た 、 最 近 で は 鉄 の 代 謝 異 常 に よ る 肝 臓 内 へ の 鉄 の 蓄 積 も 報 告 さ れ て い る 。 銅 結 合 蛋 白 は オ ル セ イ ン 染 色 で 検 索 す る か ぎ り 認 め ら れ て い な い 。 こ の 急 性 肝 炎 期 の 信 号 強 度 の 低 下 は 何 に 由 来 す る の で あ ろ う か 。 肝 臓 内 の 銅 の 磁 気 共 鳴 画 像 の 信 号 強 度 に 及 ぽ す 影 響 に つ い て は 未 だ に 議 論 が あ る 。Ebaraら は 人 間 の 肝 細 胞 癌 に あ る2価 銅 イ オ ン の 常 磁 性 効 果 がTl緩 和 時 間 を 短 縮 し 、 Tl強 調 画 像 の 信 号 強 度 の 上 昇 を も た ら す と 報 告 し て い る 。 一 方 、lくitagawaら は 肝 臓 内 の 銅 は 蛋 白 と 結 合 し た 反 磁 性 体 で あ り 、 磁 気 共 鳴 画 像 の 信 号 強 度 に は 影 響 し な い と 考 え て い る 。 し か し 、 本 研 究 に お い て 銅 は ぃ ず れ の 病 期 に も 多 量 に 存 在 し て い た 。 し た が っ て 銅 に よ る 信 号 低 下 の 可 能 性 は 低 い 。 一 方 、 肝 炎 の 病 期 に 一 致 し て 鉄 沈 着 の 程 度 は 変 化 し て い た 。 す な わ ち 、 信 号 強 度 の 低 下 に あ わ せ て 多 量 の 鉄 が 肝 内 に 沈 着 し て い た 。
頻 回 の 輸 血 に な ど に よ る ヘ モ ク ロ マ ト ー シ ス に よ る 肝 臓 へ の 鉄 の 過 剰 蓄 積 は T2緩 和 時 間 を 短 縮 し 、 プ ロ ト ン 密 度 強 調 磁 気 共 鳴 画 像 の 信 号 強 度 を 低 下 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る 。 こ れ は 、ferritinな ど タ ンパ クに 結合 した 鉄が 局所 的に 磁 場 を 不 均 一 に す る た め に 起 こ る 。 加 え て 、 今 回 使 用 し た よ う な 超 高 磁 場 装 置 で は 信 号 強 度 の 低 下 効 果 は 一 層 大 き い 。
結 語
LECラ ッ ト の 肝 炎 期 の 磁 気 共 鳴 画 像 信 号 強 度 は 肝 内 に 蓄 積 す る 銅 よ り も む し ろ 鉄 の 影 響 を 強 く 受 け て 低 下 し た 。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Magnetic Resonance Imaging of Hereditary Spontaneous Hepatitis in Long‑Evans Cinnamon Rats
(Long−Evans Cinnamonフ ッ ト の 遺 伝 性 自 然 発 症 肝 炎 の 磁 気 共 鳴 画 像 )
【研究 目的】
本 学 動 物実 験 施 設で 樹 立さ れたLECラットは 銅代謝に 異常があり 、肝内に 著 明に銅 が蓄積し 、血中の セルロプ ラスミン が低い。 さらに、鉄 、マンガ ン等の 他の金 属の代謝 にも異常 があるこ とも報告 されてい る。
ある種 の金属は 磁気共鳴 画像の信 号強度に 影響を与 えることが 報告され てい る。ヘ モクロマ トーシス 等で肝臓 に蓄積し た鉄は信 号強度を低 下させ、 最近で は、肝 細胞癌内 に蓄積した銅が信号強度を増強させる可能性が報告されている。
本 研究 で は 、LECラ ット の 急 性肝炎 、慢性肝 炎期の磁 気共鳴画像 から、肝 内蓄 積 金 属 と 磁 気 共 鳴 画 像 の 信 号 強 度 の 関 係 を 求 め る こ と を 目 的 と す る 。
【対象 と方法】
肝 炎 発 症 前8頭 、 急 性 肝 炎 期6頭 、 慢 性 肝 炎 期5頭の 計19頭 のLECラッ ト か ら磁気 共鳴画像 を撮影し た。肝疾 患の病気 は、週齢 と黄疸の有 無などの 所見か ら 判 断 し た が 、 画 像 撮 影 後 、 血 液 検 査 のGPT値 と 病 理 所 見 か ら 確 認 し た 。 磁気共 鳴画像撮 影装置は、SIS社製sis300/183(静磁場強度7.05T、1H共鳴周波 数300MHz、183mm水 平 ポア ) である 。抱水ク ロラール150‑400mg瓜gで麻酔 後、
メーカ ー提供の89mm径鞍型コ イル内に 仰臥位に て固定し て撮影した 。撮影シ ー ケ ンス はTR時 間500ミリ 秒 、亜 時間13ミ リ秒であ るが、こ の装置にお ける肝臓 他 時間 は 短 く、 プ ロト ン 密 度強 調画像と なった。 画像のスラ イス厚は2mmで、
ほぼ肝 臓全体をO.5mm間隔で12枚撮影し た。
信号強 度の比較 は、横隔 膜から約7.5mmの肝臓 が最も大 きく写るス ライスで 肝 臓内 と 腹 ・背 筋 の各4点 か ら測 定し、そ の平均値 の比を計算 して行な った。
磁気共 鳴画像を 撮影後、 下大静脈 から採血 を行ない 、解剖して 肝臓を摘 出し てホル マリン固 定し、肝 病変の確 認のため へマトキ シリン・エ オジン染 色、銅 染色と してTimm.s法 、銅結合 蛋白を見 るために オルセイン染色、鉄染色として BeIllin―blue法を 施行した 。
男 年
秀
和 紀
慶
坂 市
田
宮 武
安
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
【研究結果とまとめ】
ヘマ トキシ リン ・エ オジ ン染 色に おい て、 急性 肝炎 と判 定さ れた肝臓は細胞 構築の破壊、巨大な核を持った肝細胞の腫大、点状壊死、Kupffer;f 田胞などの炎 症 細胞 の浸潤 が認 めら れた 。慢 性肝 炎と 考え られ た肝 臓に は壊 死や細胞浸潤は 軽 度で あるが 、卵 形細 胞と 小肝 細胞 が肝 小葉 の辺 縁に 認め られ た。肝炎発症前 の 肝臓 には病 理組 織学 的な 異常 は認 めら れな かっ た。 これ らの 所見は人間の肝 炎の病理組織像とほぽ対応していた。
総ビ リルビ ン値 は急 性肝 炎期 で有 意に高く、GPT 値は急性肝炎期で上昇し、慢 性肝炎期でやや低下するものの高値を持続していた。
全病 期を通 じて 、磁 気共 鳴画 像で の肝 の信 号強 度は 均一 であ った。肝臓/筋 肉 の信 号強度比は急性肝炎期で0.208 土0.067 と肝炎発症前の0.603 +0.195 より有 意 に 低 下 し 、 慢 性 肝 炎 期 に は
0.672+0.160と 回 復 し て い た 。
Timm s法 では 全病 期の 肝臓 に著 名な銅の沈着が認められたが、オルセイン染 色ではなにも染色されなかった。Berlin −blue 染色により、急性肝炎期に肝細胞の 内 外に 多量の 、慢 性肝 炎期 には 少量 の鉄 が認 めら れた が、 肝炎 発症前には鉄の 沈着はなかった。
以上 の結果 から 、LEC ラ ット の急 性・慢性肝炎期の磁気共鳴画像信号強度は肝 内 に蓄 積する 銅の 影響 はほ とん ど受 けず 、鉄 の影 響を 強く 受け ることが分かっ た。
口頭 発表 時およ ぴ個 別審 査に おい て、武市教授より、量的には銅より少なぃ 鉄 が磁 気共 鳴画像 の信 号強 度に より 大きく影響を及ぼすことについて、安田教 授 から 、肝 炎期に 増加 した 血流 が信 号強度に及ぼす影響、本研究の臨床応用、
肝内の銅蓄積量、.細川教授から、他の原因による肝炎での磁気共鳴画像につい て 等に っき 質問が なさ れた が、 学位 申請者は概ね妥当な回答を行なった。副査 の 武市 ・安 田両教 授に はそ れぞ れ個 別に面談し、試問の結果、両教授の判定は 合格であった。