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博 士 ( 医 学 ) 小 池 忠 康 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 小 池 忠 康

学 位 論 文 題 名

内 視 鏡 的 切 除 大 腸 ポリ ー プ 境 界病 変 に お ける      分 子 病 理 学 的 解 析

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    緒言

  大腸癌を早期に発見するために,内視鏡検査は効果的であり,内視鏡検査においてポリ ープ切除は日常的に行われ,切除された検体は病組織学的に診断され良悪が判定される,

大腸ポリープでは形態学的診断と遺伝子変異が一致して説明されているが,実際の大腸ポ リープの病理診断においては,腺腫(ad enoma: Group3 0r A3)と癌(carcinoma: Group50「 A5)との間に管状腺腫(高度異型)と記載される高度異型腺腫(aden oma withsevere atypia:

Group40r A4)と呼ばれる病変がある.しかし,この病変の診断に関しては病理医個人差,

施設間での差があり,臨床家として患者への説明や治療方針決定に戸惑うことが多い,こ の原因としてGroup4の診断基準が普遍化されていないためと考えられる.そこで,Group4 の所見に関して,組織像と遺伝子変異の相関を検討し,これらの解析が診断への補助所見 となり得るかを検索した.

    材料と方法

  小池胃腸科外科(札幌市),稚内市立病院(稚内市)および札幌徳洲会病院(札幌市)に てポリ ベクトミ ー(polyp ectomy),あるいは内視鏡的粘膜切除術(endos copic mucosal res ect ion,EMR)で切除された大腸ポリープのうち,病理診断が管状腺腫(中等度異型、高 度異型)および高分化腺癌であるもの】30例を使用した.病理診断は3名の病理専門医が「大 腸 癌 取 り 扱 い 規 約 ,1998年 [ 第6版 ] に 準 じ て 検 討 を お こな い 基 準を 設 定 した . 1.免疫染色: CD p53:抗体,◎MIB1:抗体,◎pERK:抗リン酸化ERK抗体を用いた,免疫 染色判 定基準と有意差検定:p53およびpERKの免疫染色を4段階に分けて評価した.MIB】 ind exは中等度異型の腺腫A3では表層部で高く,深層で低い標識が明瞭なので 表層と深 層とで 分けて算出し,高度異型腺腫A4と腺癌A5では平均値を示した.各郡の優位差はz自 乗検定で示した.

2. Dl¥TAの抽出と解析:厚さ10 ym薄切切片5枚を用しゝて,DNAextrac tion kitを用いて、

pro tei naseK処 理 を 15− 20時 間 行 い , ethanol沈 殿 法 に て 抽 出 し た , 4. Rest riction enzyme fragment length pol3‑mOrphism (RFLP)法により,抽出したDNAを 該当す る部位をPCRに て増幅しRasl2番 アミノ酸 をコー ドする遺 伝子の変 異解析 した.

5. Polymerase chain reaction−singleStrand  comfo rmat ionalpolymorphi sm  (PCR‑SSCP) 法を用いてRas、p53,B−Rafの変異解析をおこなった.

    結果

1.大腸ポリーブ組織基準を設定し,MIB1およびp53の免疫組織学的検討した症例の内訳は A3が61例で ,A4を 含 む ものA3+A4は29例 ,A5を 含 む ものA3+A5は13例 ,A3+A4+A5は20 例あった,MIBl indexは,A3の表層部で40S;,深層で8%,平均24%となり,A4およびA5に おいてはそれぞれ平均値が58x,,65%となった,

  p53の 免疫染色の染色性と腺腫の異型度と陽性率を中等度異型腺腫(A3),高度異型腺腫

65

(2)

(A4),腺癌(A5)で検討したところ、2+または3+であるものの比率はA3,A4,A5の各組織型 において,それぞれ25%,47%. 70X,と段階的な増加がみられ,統計的にp<0. 05で有意差が 見られた.

2. p53のPCRーSSCPによる遺伝子変異解析の結果

  p53のExon5―8の変異解析の結果,Exon5の変異のA3,A4,A5における検出率は5%,8%,

22XとA5の 腺癌 で 増 加 がみ ら れ た. ま たp53の 発現 が2+ または3+で あり,な おかつ PCR―SSCP法においても陽性バンドが検出された症例はA3,A4,A5でそれぞれ6%,7%,19%

であり,高度異型腺腫A4と腺癌A5の間には12%の差がみられた,

3.Rasの遺伝 子変異解 析の結 果,RFLP法にて陽性を示すものは,A3,A4,A5の各段階で 22%,29%,43'Xと軽度段階的な増加がみられたが,PCR−SSCPにて陽性となるもの,および 両方が陽性となるのは3群聞で差が無かった.

4.リ ン酸化ERK染色 の結果 ,腺腫A3, 異型腺 腫A4および 腺癌A5において陽性例は27%,

28%,542;とA5において高値となった.

5.B−Rafの遺伝 子変異解 析では ,陽性変異バンドは128例中2症例にしか検出されず,明 らかな結諭を得られなかった.

    考察

  本研究は,日常的に切除している大腸ポリープ患者の予後を考える際に,病理組織学的 検索に加えて比較的簡便にできる遺伝子解析結果を検討し,臨床の場へ還元することを目 的に行ったものである.特に病理診断が高度異型腺腫である場合にはその診断基準を考慮 しなければならない.検討の結果MIBl index,p53免疫染色とPCR―SSCP法を用いて変異の 有無について検討を行った所,中等度異型腺腫から腺癌まで段階的に有意差をもって増加 していることが認められた.  Rasの変異は腺腫から腺癌までほぼ一定であった.これらの結 果 から,組織形態に加えてRasおよびp53の変異の有無,MI Bl indexを検討することがさ ら に 精 確 な 高 度 異 型 腺 腫 の 診 断 に と っ て 重 要 で あ る こ と が 示 さ れ た ,     本 研 究 にお い てA3,A4,A5を簡便に 分類す るマーカ ーを検 索したが 、p53の陽性 率 に有意 差が見ら れ,MIBl indexはA3とA4の間に差がみられ,Rasの変異においてはA3, A4,A5での差はみられず,また,pERKに関してはA4とA5の間に差がみられた,従って,多 段階で発癌過程の中の病変を単一の因子で規定する事は困難であり,多数の因子を検索す ることが重要であると思われた,

    結語

1.大腸 ・直腸 のpolyp病変に関して,p53の免疫染色,変異解析,Rasの変異解析,MIBl インデックス,は組織型と相関を示し,高度異型腺腫の評価にとって有用であることが示 された.

2.バラフィンからRasの変異解析に必要な質のDl¥TAが抽出できない症例においては,pERK の免疫染色を行う事によって,Ras/ERK経路の活性化の状態がある程度推察できることが判 明した.

3. Po】yp状の高度異型腺腫は検索した範囲では多段階の発癌過程の病変であり,単一の因 子 では診断 は困難 であり, 多数の 因子を検 索する ことが重 要である こと考 えられた.

66―

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

内視鏡的切除大腸ポリープ境界病変における      分子病理学的解析

  大 腸 癌 を 早 期 に 発 見 す る た め内 視 鏡検 査に おい て ポリ ープ 切除 は日 常 的に 行わ れ, 切除 さ れ た検 体は 病組 織学 的 に診 断さ れ良 悪が 判 定さ れる .、 実 際の 大腸 ポリープの病理 診断に お い て は ,腺 腫(ad enoma:Group3 0r A3)と 癌(ca rcinoma:Group50r A5)と の聞 に管 状腺 腫 ( 高 度 異 型 ) と 記 載 さ れ る 高度 異 型腺 腫(adeno ma with severe atypia: Group40r A4) と 呼 ぱ れ る 病 変 が あ る , そ こ で,Group4の所 見に 関 して ,組 織像 と遺 伝 子変 異の 相関 を検 討し ,これらの解析が診断への 補助所見となり得るかを検索 した.

  小 池胃 腸科 外科 等の 病 院に てポ リペ クト ミ ー(poly pec tomy),あるいは内視鏡的粘 膜切除 術(end oscopic  mucosal  resection,EMR)で切除された 大腸ポリープのうち,病理診 断が管 状 腺 腫 ( 中等 度異 型、 高 度異 型) およ び高 分 化腺 癌で ある もの130例を 使 用し た, 病理 診断 は3名 の 病 理 専 門 医 が 「 大 腸 癌 取 り 扱 い 規 約 」 に 準 じ て 検討 をお こな い 基準 を設 定し た.

  免 疫 染 色 と し て 抗p53, 抗MIB1, 抗 リ ン 酸 化ERK抗 体 を 用い た .DNAの 解析 には ,薄 切切 片よ りDNA ex tract ion ki tDNAを抽出した.RFLP法とPCRーSSCP)法を用いてRas,p53,BーRaf の変 異解析をおこなった.

  ポ リ ー プ 組 織 基 準 を 設 定 し ,MIB1お よ びp53の 免 疫 組 織学 的検 討し た 症例 の内 訳はA3が 61例 で ,A4を 含 む も のA3+A4は29例 ,A5を 含 む も のA3+A5は33例 あ っ た .MIBl indexは.

A3の 表 層 部 で40%, 深 層 で8% , 平 均24%と な り ,A4お よ びA5にお いて は それ ぞれ 平均 値が 58% ,65%となった,

  p53の 免 疫 染 色 の 染 色 性 と 腺 腫 の異 型度 と 陽性 率を 中等 度異 型 腺腫 くA3), 高度 異型 腺腫 (A4) ,腺 癌(A5)で 検討 した と ころ ,陽 性の 比率はA3,A4,A5の各組織型において, それぞ れ25%,47%,70%と 段 階 的 な 増 加 が み ら れ , 統 計 的 にpく0.05で 有 意 差 が 見 ら れ た .   p53のPCRーSSCPに よ る 遺 伝 子 変 異 解 析 の 結 果 で は ,p53のExon5―8の 変異 解析 の結 果,

Exon5の変 異のA3,A4,A5にお け る検 出率 は5%,8% ,22%とA5の 腺癌 で増加がみられ た.ま たp53の 発 現 が 陽 性 で あ り , な お かつPCRーSSCP法 に おい ても 陽性 バン ド が検 出さ れた 症例 はA3,A4,A5で そ れ ぞ れ6%,7%,19%で あ り , 高 度 異 型 腺 腫A4と 腺 癌A5の 間 に はl丶2%の 差が みられた.

  Rasの 遺 伝 子 変 異 解 析 の 結 果 ,RF LP法 とPCR―SSCPにて 陽性 と なる もの を検 討 する と,3 群 間 で 差 が 無 か っ た , ル ン 酸 化ERK染 色 の 結 果 , 腺 腫A3,異 型腺 腫A4お よび 腺癌A5に おい て陽 性例は27%,28%,54%とA5に おいて高値となった.

  高 度 異 型 腺 腫A4は ,MIB1陽 性 率 とp53陽 性 率 で 見 る と 腺 癌A5に 近 い 値 を 示 し ,Rasの変 異 で は 差 異 が 無 く ,pERKの 陽 性率 で はA3に近 い値 を 取る こと が判 明し た .従 って ,A4は多 段 階 で 発 癌 過 程 の 中 の 病 変 で あり , 中等 度異 型腺 腫 と腺 癌の 中間 に位 置 する 病変 であ るこ

とが示された 67

郎 幸

和 昌

嶋 口

長 野

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  口 頭発表に当たり,副査の野口教授から,検討を行った分子の選択理由と今後検討すべ き因子につしゝて,検索因子の他腫瘍への応用可能性に関して,同じく副査の浅香教授から.

A4はcarclnomaに入れるべきかborderline病変と考えるか,今回の検討で形態を越えて確 信に 至る分子の存在,日本と欧米の基準の不一致に関する見解についての質問があった.

次いで主査の長嶋教授から,Laser Captured Microdissectionを適用しなかった点,Polyp の大 きさと異型腺腫の出現との相関に関して,異型腺腫の臨床での取り扱いに関して質問 が あ っ た . い ず れ の 質 問 に 対 し て も , 申 請 者 は 概 ね 妥 当 な 解 答 を 行 な っ た .   こ の論文は大腸高度異型腺腫の病理所見と遺伝子発現に関してその特徴を明らかにした 点 で 高 く 評 価 さ れ , 臨 床 的 評 価 に も 応 用 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た ,   審査員一同は,これらの成果を高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した.

68 ‑

参照

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