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博士(医学)仲屋裕樹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)仲屋裕樹 学位論文題名

AFP プ ロ モ ータ ー 依存 的 HSVtk 遺伝 子の導入 による AFP 産 生胃癌の 自殺遺伝子治療モデル

学位論文内容の要旨

緒言

血中a ーフェトプロテイン(AFP )の上昇は,胃癌の約5 %程度に見られると報告さ れている. AFP 産生胃癌の多くが組織学的に肝様腺癌の形態を示す.肝様腺癌と は,病理組織学的に肝細胞癌に類似した形態を持ち,高分化腺癌の合併と高度の 静脈侵襲を特徴とし,臨床的に高率に肝転移を合併する予後不良な腫瘍である.

自殺遺伝子治療の基本的戦略は,哺乳類に存在しない微生物由来の薬剤代謝酵素 遺伝 子 (単 純 ヘル ペ スチ ミジ ン キナ ー ゼ(Herpes Simplex Virus Thymidine Kinase: HSVtk )遺伝子など)を癌細胞に導入し,その酵素で活性化されるプロド ラッグ(一般的には抗ウイルス剤;Ganciclovir (GCV )など)を投与することにより 遺伝子導入 細胞のみを選 択的に死滅さ せるというものである.GCV は HSVtk によ り最終的に 3 リン酸化型 GCV とな り細胞障害を 起こす,今回,肝様腺癌の新たな 治療法の開発を目指し,in vi tro においてAFP 産生胃癌に対する自殺遺伝子治療 の効果を検討した,

材料と方法

1 )細胞: AFP 産生 ヒト胃癌細胞 株 FU97 , AFP 非産生ヒト胃癌細胞株 MKN28 ,ヒト 胎児腎細胞由来の293 細胞を使用した.

2 )アデノウ イルスベクター: AFP エンハンサーノプロモーターとHSVtk を組み込 んだAdAFPtk ,   AFP エンハンサーノプロモーターと口ーgalactosidase (lacZ )遺 伝子 を組み込ん だ AdAFPlacZ を 使用した.ま た, cytomegalovirus enhancer 十 chicken ロ ーactin promoter 十 rabbit ロ− globin polyA からなる CAG プロ モー ターと,lacZ 遺伝子を組み込んだAdexlCAlacZ を使用した.

3 ) AFP 分泌の測定 :各細胞を1Xl05 個 /ml とな るように調整し,24 時間の培養後 上清中のAFP を測定した.

4 )in  vi tro におけるアデノウイルスによる lacZ 遺伝子の発現:FU97 ,MKN28 を 24 時間培養後 ,AdexlCAlacZ では 1X 10‑4 から l02MOI の濃度で, AdAFPlacZ では 1 か ら l04MOI で 1 時 間 感 染 さ せ , 24 時 間 の 培 養 後 X ― gal で 染 色 し , B

‑galactosidese 発 現 細 胞 数 の 平 均 を と ル ロ ‑gal 陽 性 率 と し た . 5 ) in  vi tro における AdAFPtk および GCV によ る自殺遺伝子治療: FU97 は1well あたり 1X l05 個に調 整し,0 . 3 , 3 , 10 , 30MOI の AdAFPtk に感染させた. MKN28

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は1 wellあ た り1X l04個 に 調 整 し ,30MOIのAdAFPtkに 感 染 さ せ た . 各 々 を24 時 間 の 培 養 後 ,O,1,10pMの GCVを 含 む 培 養 液 に 交 換 し た . 同 様 に2,4,6日 後 に そ れ ぞ れ の 濃 度 のGCVの 溶 解 し た 培 養 液 を 交 換 し た .GCVを 含 む 培 養 液 に 交 換してから計7日間の培養後生細胞数を計数した,

結果

1) 胃 癌 細 胞 株 に お け るAFPの 分 泌 :1Xl05個/mlで24時 間 培 養 し たFU97に お い て ,176.2土 8.8ng/mlのAFP分 泌 が 認 め ら れ た が ,MKN28に お い て はAFP分 泌 は 認められなかった.

2) 胃 癌 細 胞 株 に お け る ア デ ノ ウ イ ル ス ベ ク タ ー に よ るlacZ遺 伝 子 の 発 現 : AdexlCAlacZを 感 染 さ せ た 時 の ロ‑gal陽 性 率 は ,FU97とMKN28で は そ れ ぞ れ , 102MOI.では61. 33土7.88%と100土0.00%,10MOIでは41. 67土2.19%と96. 67土0.67%, 1MOIで は18. 33土2.19%と34. 33土4.49%,10ーlMOIで は1.13土0.64%と2.63土 1. 30%,10―2MOIでは0.13土0.13%と0.00土0.00%,10ー3と10―4MOIではO.00士O.00%

と0. 00土0.00%で あ っ た .AdAFPlacZを 感 染 さ せ た と き の ロ ―gal陽 性 率 は ,l04, 103,102,10,1MOIの時 ,FU97で は29. 00土1.53%,14. 67土1.45%,3.33士O.67%, 0. 33土0.33%,O.00土0.00%で あ った が,MKN28では103から1MOIの とき にお いて , いずれのウイルス濃度でも認められなかった,

3) 胃 癌 細 胞 株 に 対 す るAdAFPtkお よ びGCVに よ る 自 殺 遺 伝 子 治 療 : FU97及 び MKN28にAdAFPtkを 種 々 の 濃 度 で 感 染 さ せ ,GCVの 溶 解 し た 培 養 液 中 で7日 間 培 養 し た 後 の 生 細 胞 数 を 計 数 し た . 対 照 の ウ イ ル ス ベ ク タ ー と し てAdAFPlacZを 用 い た , 培 養 液 にGCVを 含 ま な い と き の 生 細 胞 数 を1と し て ,GCVを 含 む 培 養 液 を 用 い た と き の 生 細 胞 数 と の 比 を 取 っ て 評 価 し た .30MOI,10MOI,3MOIのAdAFPtk を 感 染 さ せ た と き ,1, 10HMのGCVの 濃 度 で ,GCVを 含 ま な い と き に 比 べ てGCV の 濃 度 依 存 的 に 生 細 胞 数 の 比 の 低 下 が 認 め ち れ ,AdAFPlacZを 感 染 さ せ た と き の 同 じGCV濃 度 で の 生 細 胞 数 の 比 と 比 較 し て そ れ ぞ れ 有 意 に 低 値 で あ っ た . こ の 生 細 胞 数 の 減 少 は 殺 細 胞 効 果 に よ る と 考 え ら れ た . ま た ,AdAFPtkの 濃 度 が 高 い ほ ど 殺 細 胞 効 果 が 大 き い 傾 向 が 認 め ら れ た .O. 3MOIのAdAFPtkを 感 染 さ せ た 時 は , 両 者 に 有 意 差 を 認 め な か っ た .MKN28で は ,30MOIのAdAFPtkを 感 染 さ せ た と き , GCVがO肛Mの と き に 比 べ て1, 10pMのGCVの 濃 度 で 殺 細 胞 効 果 は 認 め ら れ な か っ た.

考察

AdAFPtk感 染 に よ り ,AFP産 生 胃 癌 細 胞 株FU97で は ウ イ ル ス ベ ク タ ー 濃 度 依 存 的 に , お よ びGCV濃 度 依 存 的 に 殺 細 胞 効 果 が 認 め ら れ た , し か し 、AFP非 産 生 胃 癌 細 胞MKN28で は 殺 細 胞 効 果 は み ら れ な か っ た , ア デ ノ ウ イ ル ス に 対 す る 感 染 感 受 性 はMKN28の 方 がFU97よ り 高 い の で ,HSVtk遺 伝 子 発 現 に よ るAFP産 生 胃 癌 細 胞 のGCV感 受 性 亢 進 は ア デ ノ ウ イ ル ス の 感 染 効 率 の 差 に よ る も の で は な く , 細 胞 の AFPプロモーター活性に依存するものであると考えられた.

AdAFPlacZで のlacZ遺 伝 子 の 発 現 率 とAdAFPtkで のHSVtk遺 伝 子 の 発 現 率 が 等 し い と 仮 定 し た 場 合 ,AdAFPtkを 感 染 さ せ た と き のHSVtk遺 伝 子 の 発 現 率 は 最 高 30MOIを 感 染 さ せ た 場 合 で も1―2%で か な り 低 率 で あ る と 推 察 さ れ る .AdAFPtkが 30,10,3MOIの 時 ,10皿MのGCV濃 度 に お い て , い ず れ も50%以 上 の 殺 細 胞 効 果 が 認 め ら れ た が , そ の 理 由 に は ,X−gal染 色 に よ るAdAFPlacZに よ るlacZ遺 伝 子

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の発現率から推測されるHSVtk 遺伝子の発現率は低率であるが,個々の細胞では 微量のチミジンキナーゼが発現して殺細胞効果が得られた可能性が考えられた,

またHSVtk とGCV を用いた自殺遺伝子治療では,bystander effect が認められる ことが諸家の研究により報告されており,本研究の結果もこのbystander effect によりHSVtk 遺伝子の発現率が低率であるにもかかわらず殺細胞効果が認められ た可能性が考えられた.本研究を臨床応用するために,in vivo でのアデノウイ ルスベクターの投与経路の検討と殺細胞効果の検討を今後の課題としたい.

結語

AFP 産生胃癌に対するAdAFPtk とGCV による自殺遺伝子治療の有効性が,細胞株 を用いたin  vi tro の実験系において確認された.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

AFP プ ロモ ー タ ー依 存 的 HSVtk 遺 伝子の導 入による     AFP 産 生 胃 癌 の 自 殺 遺 伝 子 治 療 モ デ ル

  AFP産 生 胃 癌 の 多 く を 占 め る 肝 様 腺 癌iま , 臨 床 的 に 高率 に 肝 転移 を 合 併す る 予 後 不良 な 腫 瘍 で あ る . 新 た な 治 療 法 の 開 発 を 目 的 と し て ,invitroに お い てAFP産 生 胃 癌 に 対 す る 自 殺 遺 伝 子 治 療 の 効 果 を 検 討 し た .AFP産 生 ヒ ト 胃 癌 細 胞 株FU97AFP非 産 生 ヒ ト 胃 癌 細 胞 株 MKN28に ア デ ノ ウ イ ル ス ベ ク タ ー で あ るAFPエ ン ハ ン サ ー ノ プ ロ モ ー タ ー とHSVtkを 組 み 込 ん だAdAFPtkAFPエ ン ハ ン サ ー ノ プ ロ モ ー タ ー と ローgalactosidase (lacZ)遺 伝 子 を組 み 込 ん だAdAFPlacZを 種 々 の 濃 度 で 感 染 さ せ ,GCVを 含 む 培 養 液 中 で の 殺 細 胞 効 果 を 検 討 し た . AdAFPlacZを 感 染 さ せ た と きの ロ ―gal陽 性率 は , .l04103,102101MOIの 時,FU97で は 29. 00土1.53%,14. 67土1..45%,3. 33土O.67%,O.33土0.33%,0.00土O.00%であったが,MKN28 で は103か ら1MOIの と き に お い て , い ず れ の ウ イ ル ス 濃 度 で も 認 め ら れ な か っ た .AFP産 生 胃 癌 で あ るFU97AdAFPtkを 種 々 の 濃 度 で 感 染 さ せ ,GCVの 溶 解 し た 培 養 液 中 で7日 問 培 養 し た 後 の 生 細 胞 数 を 計 数 し た 結 果 ,30MOI10MOI3MOIAdAFPtkを 感 染 させ た と き,1 lOpMGCVの 濃 度 で , GCVを 含 ま な い と き に 比 べ てGCVの 濃 度 依 存 的 に 生 細 胞 数 の 比 の 低 下 が 認 め ら れ ,AdAFPlacZを 感 染 さ せ た と き の 同 じGCV濃 度 で の 生 細 胞 数 の 比 と 比 較 し て そ れ ぞ れ 有 意 に 低 値 で あ り , 殺 細 胞 効 果 が 認 め ら れ た . ま た ,AdAFPtkの 濃 度 が 高 いほ ど 殺 細 胞 効 果 が 大 き い 傾 向 が 認 め ら れ た .AFP非 産 生 胃 癌 で あ るMKN2830MOIAdAFPtk 感染させたとき,殺細胞効果は認められなかった.

  口 頭 発 表 に 際 し , 副 査 の 今 村 教 授 よ り ,bystander effectが 周 囲 の 正 常 細 胞 に 影 響 を 与 え る か も し れ な ぃ 事 を 考 え る とvirus vectorの 感染 効 率 を上 げ な い方 が よ い ので は な いか , 実 験 で のGCVの 濃 度 は 臨 床 的 に 許 容 範 囲 な の か ,adenovirus vector以 外 のvectorで の 感 染 効 率 に っ い て 質 問 が あ っ た , 申 請 者 はvirus vectorの 濃 度 は な る べ く 低 い 方 が 好 ま し い こ と , 臨 床 的 なGCVの 薬 物 動 態 に 関 し た 報 告 で は 最 高20か ら30MGCVの 濃 度 に な っ て

   

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いることから,本研究でのGCVの濃度は適当であること,adenovirus vector以外での感染 効率に関してはこの場で回答できないと述べた.次に、副査の古木教授より,ヒトでの臨 床 応用 はど うな ってい るか ,癌 性腹膜 炎な どの 閉鎖 系に関 して の有 効性にっいて,

adenovirus vectorの全身投与の可能性について,肝様腺癌の一般的な特徴に関して,他の AFP産生腫瘍に対して応用が可能かにっいての質問があった,申請者は,日本では肺癌で臨 床試験が行われていること,マウスでの悪性中皮腫の腹水モデルでの報告があること,

adenovirusに対する抗体産生の問題で全身投与は難しいこと,肝様腺癌は胃,大腸,肺,

膀胱,腎盂,卵巣に発生しいずれもAFPを産生することから本研究の応用が可能であると 考えられると回答した,最後に主査の浅香教授より、AFP産生腫瘍としてまず第一に考えら れるHCCではなくAFP産生胃癌を実験に使用した理由にっいて,AFP産生胃癌の産生するAFP とHCCのものとの質的な異同に関して,adenovirus vector以外のvectorを使用できる可 能性,HSVtk十GCVの系以外の系にはどのようなものがあるのかに関しての質問があった.

申請者は,既にHCCでは同様の報告があり,AFP産生胃癌でもHCCと同様にAFPプロモータ ー依存的な自殺遺伝子治療の効果があるのかを検討する目的と,予後の悪い肝様腺癌の新 たな治療法の開発を目指したこと,HCCと胃肝様腺癌のAFPのレクチン分画は類似している との報告があること,cytosine deaminase+5―FCの実験系が知られていること,標的細胞に 特異的に感染するvectorが望ましいことを回答した.

  本研究は,肝細胞癌以外のAFP産生腫瘍で,AFPプロモーター依存的な自殺遺伝子治療の 効果を検討したという点で高く評価され,今後は動物モデルを用いたin vivoでの治療効 果の検討が期待される.

  審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や取得単位なども 併 せ申 請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.

参照

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