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博士(医学)安原満夫 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)安原満夫 学位論文題名

ラット小腸温阻血再灌流障害に対する L‑Glutamine 誘導性 Heme oxygenase‑l の効果

学位論文内容の要旨

I目的

  移植 医療にお いて小腸 は他の固 形臓器と 異なる特 徴を有して いる。それは、小腸が常に 外界 と接して おり、腸 内細菌に より移植 片自体が 複雑な免疫 反応に修飾され、かつ単層円 柱上 皮による管腔構造が阻血再灌流障害に対して高い感受性を示すことによる。そのため、

臨 床 の安 全 な 小腸 冷 却保 存 時 間は12時間以内 であり、小 動物実験 でも24時間 の保存が ぃ ま だ 確立 し て いな い 。従 来 よ り、 照射後腸 炎、薬剤誘 発性腸炎 や腸内細 菌叢の菌 交代現 象などに対して、L―Glutamine(L−Gln)の保護効果が報告され、またラット小腸から分離し た細 胞培養系 において 、酸化ス トレスや 熱処理後 に弓fき起こ された組織障害がL‑Gln投与 によって抑制されたが、そのメカニズムのーっとしてストレス蛋白質(heat shock protein: HSP)の発現による細胞保護効果が指摘されている。

  本研 究 で は、 種 々のHSPsの 中 でもとく に抗酸化 作用を有す るheme oxgenase‑l/HSP32

(HO‑1)に 着目し、L‑Glnを前投与 したラッ ト小腸内 組織におけ るHO‑1の発現 性ならび に 小腸 温阻血再 灌流傷害 に対する 耐性の獲 得のメカ ニズムにつ いて、生体内の主要な抗酸化 物質 であるreducedglutathione( GSH)量 との相互 関係の面 から検討した。さらに、小腸陰 窩のenterochromaffin細胞に存 在し再灌流障害時に小腸内腔に放出されるserotininや、組 織中マクロファージから放出されるtumor necrosis factor‑a(TNFーQ)などの放出能からみ た細胞傷害度および移植後生存率など多面的な解析を行った。

II方法

  実 験 動 物 に は6〜8週 齢 のLewis系 雄性 ラ ッ トを 用 い た。L−Gln液5mmol/kgを 尾 静脈 よ り20分 間の持続 静脈内投 与した群 をL‑Gln群とし た。同様にlactated Ringer(LR)液を 投 与 し た 群 をLR群 と し 、 無 処 置 の ラ ッ ト を 用 い た 群 を 新 鮮 対 照 群 と し た 。 1.L‑Gln投与後の小腸組織内抗酸化物質の発現

    被 験 薬投 与 後2、4、6、24時 間に 開 腹し 、 摘 出し た 小 腸片 を免疫組 織染色でHO‑1の   発現 を 検 討し た 。  さ らに 、 小 腸組 織 内HO‑1量 をELISAお よぴWestern blot法 にて、

  また組織内GSH量をcalorimetric法にて測定した。

2.小腸温阻血モデルにおけるL―Glnの効果

(2)

    Megisonら の方法 に準 じて 、上 腸間 膜動 脈(SMA)を遮断した小腸温阻血モデルを作成   し た 。 被 験 薬 投 与 後24時間 に温 阻血 負荷 し、 小腸 組織 内serotoninを 免疫 組織 染色 に   て検 討し た。 さら に小 腸腔 内に 放出 され たserotonin量も測定した。また、温阻血再灌   流後の門脈血中のTNF‑a値を測定した。

3.同所性小腸移植モデルにおけるL‑Glnの効果

    被 験薬 投与 後24時間 に全 小腸 を摘 出し て、60分の 温阻 血負 荷後 に小 腸移 植を行い、

  一週 間生 存率 を検 討した。さらに、小腸摘出時、温阻血終了直後および移植再灌流後60   分における移植片内GSH量の推移を検討した。

III結果

1.小腸組織内抗酸化物質の発現

    免 疫 組 織 染 色 に お い て 、HO‑1は 新 鮮 対 照 群 お よびLR群に 比ベ 、L‑Gln群で は6時 間   をピ ーク に24時間 まで 小腸 全体 特に 絨毛 、陰窩 およ び筋 層に 強く 発現 が認 められた。

  また、L‑Gln群で組織内GSH値の増加も確認された。

2.小腸温阻血モデル

    免 疫組 織染 色に おい て、L‑Gln群は 阻血 後小 腸陰 窩のserotoninはLR群に 比較して多   数残 存し 、小 腸内 腔へ の放 出量 もLR群に 比ベ低 値な 傾向 にあ った 。温 阻血 再灌流後の   門 脈 血 内 TNF‑a値 は 、 L‑Gln群 に て 測 定 可 能 値 以 下 に 著 明 に 抑 制 さ れ た 。 3.同所性小腸移植モデル

  移 植 後 生 存 率 でL‑Gln群 は6/6とLR群 の1/6に 比 ベ 有 意 に 延 長 が 認 め ら れ た 。   ま た 、 移 植 片 内GSH値 は各 ポイ ント にお いてLR群 と比較 して 有意 に高 値を 維持 した 。 IV考察

  従来より、¨conditionally essential amino acid¨であるL‑Glnの小腸組織に対する細胞保護 効 果 が 報 告 さ れ 、 そ の メカニ ズム のー っと してHSPの発現 によ る細 胞保 護効 果が 指摘 さ れている。

  本 研 究 で はHSPの 中 で も と く に 抗 酸 化 作 用 を 有 す るHO‑1に 着 目 し た 。HOは prooxidantであるへムを分解し、同時に産生されるbiliverdinやbiliverdin reductaseによっ て変換されたbilirubinはその強カな抗酸化作用によルストレス刺激からの細胞障害を抑制 す る。 また 、同 様に 産生されるCOはnitric oxideと同様なガス状メディエ一夕―であり、

血 管 ト ― ヌ ス を 減 少 さ せ る こ と が 知 ら れ て い る 。HOのう ち、 誘導 型のHO‑1はあ らゆ る 種 類の スト レス 、と くに酸化ストレスを受けた場合に強く誘導されるので酸化ストレスに 対するsensitive markerとして考えられている。今回免疫組織染色やWestern blot法、ELISA などの解析により、L―GlnがHO−1を誘導することが示された。

  本 研 究 で は さ ら に 生 体内の 主要 な抗 酸化 物質 であ るGSHや小 腸の 細胞 障害 のマ ーカ ー で あ るserotoninお よ びTNF‑aと の 関 連 性 や 移 植 後 生存率 など 多面 的な 解析 を試 みた 。 GSHの 前 駆 物 質 で あ るL‑Gln投 与 に よ り 小 腸 組 織GSH量 は 増 加 し 、 再 灌 流 後 もLR群と 比 較し てそ の相 対的 低下 が阻 止さ れた 。さ らに、 温阻血モデルにおいてL‑Glnの前投与に よ り温 阻血 後の 小腸 内腔 に放 出さ れるserotonin量は抑制される傾向にあり、再灌流後LR

(3)

群では経時的に門脈血中TNF‑a 活性が増加したが、L‑Gln 群では測定限界値以下に著明に 抑 制 さ れ た 。 さ ら に 、 移 植 後 生 存 率 の 著 明 な 改 善 も 認 め ら れ た 。    以上より、本研究における温阻血障害を受けた小腸組織に対するL‑Gln の効果は、

serotonin や TNF‑a の放 出 抑 制 なら びに 生存 率の改 善と して 認めら れた が、 donor preconditioning として積極的にHO‑1 や GSH などの細胞保護物質を誘導することと関連す ることが示唆された。

V 結語

  L‑Gln の経静脈的前投与により、HO‑1 は小腸全体に強く発現され、GSH 値も増加した。

温阻血再灌流後のserotonin およびTNF‑a の放出が抑制され、小腸移植における生存率の

改善も認められたことから、L‑Gln の前投与は安全な細胞保護物質の誘導法として今後小

腸移植への応用が期待される。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 教授

藤堂 浅香 石橋

学 位 論 文 題 名

    省 正博 輝雄

ラット小腸温阻血再灌流障害に対する

L ー Glutamine 誘導 性 Heme oxygenase‑l の効果

移 植医療に おいて小 腸は他 の固形臓 器と異 なり、外 来抗原 ・細菌により特有な免疫反応 に 修飾され、構造上阻血再灌流障害に感受性が高い。腸粘膜に保護効果を示すアミノ酸と し てL‑Glutamine(L‑Gln)が 知ら れてお り、その 作用機 序のーっ として ストレス 蛋白質 (HSP)の誘導 が考え られてい る。申請 者は種 々のHSPの中で もとくに抗酸化作用を有する heme oxgenase‑l/HSP32 (HO‑1)に着目し 、L‑Glnを前投与 したラット小腸内組織におけ るHO‑1の発現性 ならび に小腸温 阻血再 灌流傷害 に対する 耐性の獲得のメカニズムについ て、主要な抗酸化物質であるreduced glutathione(GSH)量との相互関係の面から検討した。

さ らに、小腸陰窩のenterochromaffin細胞に存在し再灌流障害時に小腸内腔に放出される serotininや、組織中マクロフアージから放出されるtumor necrosis factor‑a (TNF‑a)など の 放出量からみた細胞傷害度および移植後生存率など多面的な解析を行った。実験動物に は6〜8週 齢 のLewis系 雄 性 ラッ ト を 用い て 、L‑Gln液5mmo:Ukgを 尾 静 脈よ り 投 与し た 群 をL‑Gln群と し 、 同様 にlactated Ringer液を投 与した 群をLR群、 無処置 のラット を 用 いた群を 新鮮対照 群とし た。まず 、L‑Gln投与後のHO‑1の発現の局在を免疫組織染色で 検 討 し 、そ の 発 現量 をELISAお よびWestern blot法 にて測 定した。 また組 織内GSH量を calorimetric法にて測定した。次に上腸間膜動脈(SMA)を遮断した小腸温阻血モデルにおけ るL‑Glnの効 果を、 小腸腔内 に放出さ れたserotonin量および再灌流後の門脈血中のTNF‑a 値 にて検討した。さらに同所性小腸移植モデルにおいて60分温阻血負荷後の一週間生存率 お よび移 植片内GSH量の 推移につ いて検 討した。L・Gln投与 後の小腸 組織に おけるHO‑1 の 発現量は6時間 をピ― クに24時間 まで小腸全体特に絨毛、陰窩および筋層に強く発現が 認 め ら れた 。 ま た、 組 織 内GSHは、L‑Glnの投 与後HO‑1と 共誘導性 に増加 し、再灌 流後 もLR群と比較 して高 値を維持 した。小 腸組織 傷害度の 指標と なるserotoninはL‑Gln投与 に より抑制 される傾 向にあ り、また 温阻血再灌流後の門脈血内TNF‑a値は、測定可能値以 下に著明に抑制された。温阻血後移植されたラットは、L‑Gln群では、全例一週間以上生存

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(5)

し 、LR群と 比較 して 著明 な改 善が認められた。L‑GlnによりHO‑1が誘導され、また生体 内 の主 要な 抗酸 化物 質で あるGSHも増加し、 再灌流後もLR群と比較してその相対的低下 が阻止された。 さらに、温阻血モデルにおいてL‑Glnの前投与により温阻血後の小腸内腔 に放出されるserotonin量は抑制される傾向 にあり、再灌流後LR群では経時的に門脈血中 TNF‑a活性が増加 したが、L‑Gln群では測定限 界値以下に著明に抑制された。さらに、移 植後生存率の著 明な改善も認められた。以上のことから、細胞毒性のないアミノ酸である

L‑Glnの経静脈的前投与は安全な細胞保護因子の誘導物質として、また移植後の粘膜再生促

進物質として今後小腸移植への応用が期待された。

  審査にあって、石橋教授から実験モデルの臨床的意義について、free radicalとの関係や、

HO‑1の活性・発 現部位についての質問があった。申請者は抗酸化作用についての文献、申 請者自身のデ一 夕―を用いて、臨床上生体小腸移植におけるdonorpreconditioningを想定 していること、今回の実験系ではradical scavengerとしての活性は測定してはいないが、

L‑Gln投 与に よりGSHやHO‑1が 増 加し 、文 献的 にはradical scavengerとし て働 くとの 報 告があること、またHO‑1は小腸において強 く誘導されるが、心臓や肝臓など他の臓器 に も誘 導さ れる こと など を回 答した。次いで浅香教授からL‑GlnによるHO‑1発現の機序 お よび確認方法、TNF‑aとの関係、GSHの関与 の程度にっき質問があった。申請者はHO‑1 や セロ トニ ンに 関す る文 献、 申請者自身のデ一夕一を用いてL‑GlnがHO‑1を誘導するシ グ ナル 伝達 の経 路の 仮説 、今 後 の課 題と してHO‑1発現 の検 証に はHO.1のmRNAの測定 やHO‑1のノ ヅク アウ トマ ウス で の検 討が 必要 なこ と、L‑GlnがTNF‑aを抑制する機序に つ いて 、L‑Glnの 細胞 保護 効果 にはGSH、HO‑1やHSPな どが 相 乗的 に働 いて いる と考え られることなど回答した。最後に、藤堂からL‑Gln投与よる保護効果の組織学的評価、L‑Gln の臨床応用につ いての質問があった。申請者はL‑Glnに関する文献、自身のデ一夕―を用 いて、組織学的 にL‑Glnの前投与により小腸 の絨毛上皮の再生が促進されること、臨床上

L‑Glnは水に溶解されにくく分解が速いという問題があるが、それにはダイ・ペプタイドと

いう方法が考えられることなどを回答した。

  この 論文 は独 創的 で、 小腸 阻血再灌流障害に対するL‑Glnの保護効果とHO‑1の面から 検討したことで 高く評価され、今後安全な細胞保護物質の誘導法として今後小腸移植への 応用が期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分 な資格を有するものと判定した。

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参照

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