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博士(獣医学)蔡 信雄 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)蔡   信雄 学位論文題名

Histopathological Studies on Pet Bird Diseases     Found in Japan

     (日本で認められた愛玩鳥の疾病に関する病理組織学的研究)

学位論文内容の要旨

  近 年 、 伴 侶 動 物 と し て の 愛 玩 烏 の 飼 育 が 盛 ん で あ る 。 こ のた め、 日本 国内 には 数 百 万 羽 の 愛 玩 鳥 が 輸 入 さ れ て い る 。 し か し 、 愛 玩 鳥 に 発 生 する 疾病 につ いて の系 統 だ っ た 調 査 ・ 研 究 は ほ と ん ど な され てい ない 。著 者は 、外 国か ら日 本に 輸入 され 、2 週 間 の 検 疫 期 間 中 に 死 亡 し た 愛 玩鳥241羽( 鳥種 はオ ウ ム目 とス ズメ 目) と、 日本 国 内 で 生 産 さ れ 、 育 成 中 に 発 育 不 良な どで 淘汰 され た愛 玩鳥293羽 (鳥 種は セキ セイ イ ン コMelopssitacus undulatus)に つ い て 、 病 理 組 織 学 的 な らび に電 子顕 微鏡 学的 に 検 索 し た 。 本 論 文 は 、 そ の 検 索 か ら 、 新 知 見 を 得 ら れ た 疾 病に つい ての 研究 成果 で あ る 。

1.ヘルペスウイルス感染

  ヘ ル ペ ス ウ イ ル ス 感 染 は 、 輸 入 烏241羽 中21羽に 認め ら れた 。こ の感 染は 次の2病 型に分けられる。

  一 つ は1980年 以 降 外 国 で ま れ に 発 生 し て い る 呼 吸 器 感 染 で 、14羽 の 小 型 イ ン コ

( Psittacula  krameri  manillensis)が罹患していた。特徴病変は、肺と気嚢の呼吸上皮 に お け る 核 内 封 入 体 形 成 と 同 封 入 体 を 伴っ た合 胞体 の出 現で あっ た。 封入 体を 形成 し た 細 胞 の 電 顕 検 索 で は 、 核 内 と 細 胞 質 内 にcore( 径40−55nm)を有 する 未熟 ウイ ル ス 粒 子 ( 径88−l10nm)が 、 細 胞 質 内 の み に 成 熟 ウ イ ル ス 粒 子 ( 径125ー164nm) が 認 め ら れ た 。 さ ら に 核 内 に は 、 内 径32ー46nm、 外 径48−74nmの 管 状 構 造 物 の 小 集積 が散 見さ れた 。こ の管 状構 造物 の出現 はherpes simplex virus (type2)感染細 胞 の 形 態 学 的 特 徴 と さ れ て い る が 、 本 病 に お い て も そ の 構 造 物 の 形成 は1特徴 とみ なされた。

  他 の ー つ の へ ル ペ ス ウ イ ル ス 感 染 は 、1931年 から 知ら れて いる パチ ェコ 病で 、本

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病は7羽に認められた。感染烏種は3羽のオウム(Amazona aestiva aestiva)、2羽のオ   カメインコ(Nymphicus hollandicus)、2羽の大型インコ(Platycercus emimius)であ   っ た。本病の特徴病変は種々の臓器・組織に多発性に形成される核内封入体と同封   入 体を伴う合胞体の形成であった。これらの変化を強く示す臓器・組織は、肝臓、

  上 皮小体、卵巣、骨髄、腸で、封入体ならびに合胞体は、それらの上皮系細胞ある   い は細網内皮系細胞に認められた。電顕検索では、核内と細胞質内にcore(径35 ‑   55nm)を伴っ た未熟ウ イルス粒子 (径79−106nm)が 、細胞質 内のみに 成熟ウイ ル   ス 粒子 (径128ー374nm)が 認められた 。また、 外径39―74nm、 内径31−66nmの 管   状構造物が細胞質内に散見された。

    以上のように、2病型のへルペスウイルス感染は、形態学的に識別可能であった。

2.アデノウイルスとパポパウイルスの重感染

  国内生産鳥293羽のうち、118羽がアデノウイルスに、91羽がパポパウイルスに感 染していた。これらのうち45羽が両ウイルスに重感染していた。両ウイルス感染と も核内封入体形成を特徴とするが、その出現は腎臓に圧倒的に多かった。両者の相 違は以下の通りである。

  アデノウイルス性封入体は、腎臓では多数例が集合管(87.8%)、次いで速位曲 部尿細管(33.3%)、近位曲部尿細管(8.9%)の上皮に出現していた。腎臓以外で は、1羽の 小腸上皮 に封入体 形成があった。封入体の大部分は好塩基性で、顕著に 腫大した 核(宿主 細胞核の2―10倍大)内を占拠していた。一方、好酸性封入体も 少数みられ、これを有する核の腫大の程度は軽度であった。電顕的には、好塩基性 封入体は 多数の成 熟ウイル ス粒子(径57−88nm)と微細穎粒状あるいは細線維状構 造物で構 成されて いた。好 酸性封入 体にはウイ ルス粒子 は含まれていなかった。

  一方、パポバウイルス性封入体も腎臓に圧倒的多数で出現し、腎臓以外では骨髄

(3羽)、表皮(2羽)、眼(2羽)、副腎(1羽)に認められた。腎臓の封入体は、

集合管(62.6%)、近位曲部尿細管(37.8%)、遠位曲部尿細管(24.4%)の順で、

それぞれ の上皮に 出現して いた。この封入体は、上皮以外では問質の細綱細胞(2 羽)、血 管内皮細 胞(2羽) に認められた。封入体は腫大した核(宿主細胞の2ー4 倍大)内に形成され、淡明あるいは弱塩基性に染色された。電顕的には、弱塩基性 の封人体は径33―55nmのウイルス粒子を含んでいたが、淡明な封入体は微細な顆粒 状構造物からなり、ウイルス粒子を含んでいなかった。

  以上の重感染は著者によって初めて見出されたが、かなり多数の例が重感染を示 した。しかレ、封入体形成細胞に対する細胞反応はなく、両者は不顕性感染と解さ

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れた。

3.フアラメント状の細菌を伴ったカタル性腺胃炎

  検索した 国内生産鳥と輸入鳥の合計534羽中79羽に、カタル性腺胃炎を認めた。

病変は、浅固有胃腺と、深固有胃腺の導管の粘液分泌亢進とそれらの上皮の増生か らなっていた。そして、浅固有胃腺の腺腔内に、大型のフアラメント状の病原体が 多数認め られた。この病原体は分岐せず、芽胞形成もなく、グラムならびにPAS染 色では陽 性を示した。電顕検索では、病原体は核を有し、3層からなる細胞膜を有 していたが、この病原体の同定はできなかった。以上の病変は病原体の存在も含め て、1984年にカナリアで報告された細菌性腺胃炎に酷似していた。病原体が米同定 ではあるが、愛玩烏にはこのような腺胃炎が広く蔓延していることが注目された。

な お 、 本 病 は 国 内 生 産 鳥 に 多 く(70羽 ) 、 輸 入 鳥 に は 少 な か っ た(9羽 ) 。

4.アスペルギルスとカンジダ感染

  輸入,13241羽中31羽に呼吸器のアスペルギルス感染が、37羽にカンジダ感染が認 められた。前者の感染は鼻腔(17羽;54.8%)、肺(14羽;45.2%)、気嚢(13羽;

41.9%)のほか、喉頭(3羽)、気管(1羽)゛に認められた。これらのうち鼻腔の病 変が著明で、病原体を伴った滲出性炎が周囲組織に浸潤性に広がっていた。一方、

肺と気嚢では、病原体を含む肉芽腫性炎が優勢であった。

  カン ジ ダ感 染 は 次の 臓 器 に認 められ た:呼吸 器24羽(64.9% )、消化 管20羽 (54.1%) 、皮膚2羽(5.4%)。これらのうち、8羽が呼吸器および消化管双方にカ ンジ ダ病変を 有してい た。呼吸器感染は鼻腔(22羽;91.7%)が圧倒的に多く、肺

(2羽)および気嚢(1羽)は少数であった。消化管感染はそ嚢(17羽;85%)が最 も多く、次いで食道(12羽;60%)、腺胃および筋胃(6羽;30%)で、小腸(2羽)

にも認められた。この病原体の感染により、鼻前庭、食道およびそ嚢の重層扁平上 皮、さらには筋胃角質眉が角化亢進を示していた。

  以上の成績から、アスペルギルスならびにカンジダともに、鼻腔からの感染が注 目される。また、両者の発病要因としては、輸入のためのストレスと、密飼いが考 えられる。

5.原虫、蠕虫ならびにダニの寄生

検索した輸入烏と国内生産鳥534羽のうち、以下のように寄生虫寄生が認められた。

原虫としてはGiardia sp.が最も多数(86羽)で、このほとんどは国内生産鳥である

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セ キ セ イ イ ン コ で あ っ た 。 本 原 虫 の 主 な寄 生 部 位は 十 ニ 指腸 で 、 トロ フ ォ ゾイ と し   て 認 め ら れ た 。 な お 、 セ キ セ イ イ ン コ は 本 原 虫 に 感 受 性 が 高 い と い わ れ て い る 。   Giarsp.以外の原虫としては、消化管寄生壘笠堂!が10羽の小腸上皮に、墨!璽Q鎧≦!塰   sp. のシス トが5羽の大 腿部と胸 筋の骨格 筋線維 に、血皿QQ亜!麺璽sp.が5羽の腸上皮   と 結 膜 上 皮に 、 さ らに 墜 型 璽盤sp. のト ロ フ ォゾ イ ト が1羽 の 回腸 と 盲 腸腔 内 に 認め   られた。

    蠕 虫なら びにダニ 寄生としては、麺!璽!!Q£Qp塑sp.が26羽に認められ、この大部分   は 国 内 生 産 烏 の セ キ セ イ イ ン コ で あ った 。 こ のダ ニ は 排泄 腔 周 囲の 表 皮 に寄 生 し 、   増 殖性 皮 膚 炎を引 き起こし ていた 。以上の ほか、△ !£塑 !d! !sp.が6羽の 小腸に、

  Ba韮!!盤in堕§p.が4羽の小腸に、ミクロフィラリアが2羽の血管内に、駐璽Qロ!!堕壘鍠蠱が   1羽の筋胃で角質層と腺組織との間に寄生していた。

    以 上 のよ う に 、愛 玩 烏 には 様 々 な 寄生 虫 が 寄生 し て いた 。 な お、Q! 璽! 堕sp. と   竝 聖!QQ! 担 麺 璽sp. は 人獣 共 通 であ っ て 、公 衆 衛 生学 上 問 題と なる原虫 である。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査   教授    板倉智敏 副査   教授    橋本   晃 副査   教授    神谷正男

副査   教授   平井克哉(岐阜大学)

学 位 論 文 題 名

Histopathological Studies on Pet Bird Diseases     Found in Japan

     (日本で認められた愛玩鳥の疾病に関する病理組織学的研究)

  申 請 者 は , 外 国 か ら 日 本 に 輸 入 さ れ ,2週 間 の 検 疫 期 間 中 に 死 亡 し た 愛 玩 鳥 241羽 ( 鳥 種 は オ ウ ム 目 と ス ズ メ 目 ) と , 日 本 国 内 で 生 産 さ れ , 育 成 中 に 発 育 不 良 な ど で 淘 汰 さ れ た 愛 玩 鳥293羽 ( 鳥 種 は セ キ セ イ イ ン コ ) を 組 織 学 的 な ら び に 電顕 的に 検索 し, 以下 のい くっ かの 新知 見を 得 た.

  先 ず ウ イ ル ス 感 染 と し て2病 型 の へ ル ペ ス ウ イ ル ス 感 染 を 認 め た . こ の1病 型 は 肺 と 気 嚢 の 呼 吸 上 皮 に お け る 核 内 封 入 体 と 合 胞 体 形 成 を 特 徴 と レ , こ れ は14 羽 に 認 め ら れ た . 他 の1病 型 は パ チ ェ コ 病 で7羽 に 認 め ら れ , 病 変 と し て は 種 々 の 臓 器 ・ 組 織 に 多 発 性 に 生 じ る 核 内 封 入 体 と 合 胞 体 形 成 を 特 徴 と し て い た . さ ら に , ア デ ノ ウ イ ル ス 感 染 が118羽 に , パ ポ バ ウ イ ル ス 感 染 が91羽 に , こ れ ら の う ち 両 ウ イ ル ス 重 感 染 が45羽 に 認 め ら れ た . 両 ウ イ ル ス 感 染 と も 腎 の 尿 細 管 上 皮 に 主 座 す る 核 内 封 入 体 形 成 を 特 徴 と し て い た が , ア デ ノ ウ イ ル ス 封 入 体 が よ り大 型で ,こ れに より 両者 の識 別が 可能 であ っ た.

  次 に , 浅 固 有 胃 腺 の 腔 内 に グ ラ ム 陽 性 の 大 型 の フ ィ ラ メ ン 卜 状 の 細 菌 を 伴 っ た カ タ ル 性 腺 胃 炎 が ,79羽 に 認 め ら れ た . こ の 病 原 体 に つ い て は , 電 顕 的 に も 検索 した が同 定は でき なか った .

  眞 菌 感 染 と し て は , 輸 入 烏 の31羽 に ア ス ペ ル ギ ル ス 感 染 を ,37羽 に カ ン ジ ダ 感 染 を 認 め た . 両 感 染 と も 呼 吸 器 , 特 に 鼻 腔 に 病 変 形 成 が 多 く , し か も そ れ は 重度 で, ここ から の感 染が 示唆 され た.

  原 虫 感 染 と レ て は,Giar舶sp.が 最も 多く (86羽) ,こ の他 消 化管 のの (℃ たぬ

(10羽 ) , 馳 伽 ワ 西岱sp. (5羽) ,Qゆ め印 鹹讎 むmsp.(5羽 ) ,駈 瑚mぬsp.(1 羽 ) が 認 め ら れ た . さ ら に 蠕 虫 な ら び に ダ ニ 寄 生 と し て , 面 伽 丘 眦 叩 艢sp. (26 羽) ,A蛾釘i〔ぬsp. (6羽 ), 血え 艦ぬsp. (4羽 ), ミク 口フ ィラ リア (2羽),

(6)

SpirDp

舳皿髭ぬ(1 羽)が認められた.

  

以上の成果は,知見の乏レい愛玩烏の疾病の病理の理解に大きく貢献する.

よって審査員一同は,申請者蔡信雄氏が博士(獣医学)の学位を受けるに十

分な資格を有するものと認めた.

参照

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