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博士(歯学)浅野元広 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)浅野元広 学位論文題名

 Influence of Combination of Experimental Trauma and Periodontitis on Periodontal Tissue in Macaque Monkeys 実 験 的 咬 合 性 外 傷 と 歯 周 炎 の 合 併 に よ る サ ル 歯 周 組 織 の 変 化

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

く緒言>

  咬合性外傷は歯周疾患の重要な原因と考えられていたが、多くの 動物実験などから、咬合性外傷単独では歯周組織に炎症性病変を生 じさせないことが明らかになっており、その後は、歯周組織の炎症 と咬合性外傷が合併した場合に歯周組織にどのような影響が生じる のかが検討されるようになってきた。1960年代にG|ickmanは、動物 実験やヒ卜剖検結果をもとに歯周組織を刺激層と共同破壊層とに分 け、炎症と外傷が合併すると炎症の進行路が変化し、垂直性骨吸収 をともなう骨縁下ポケッ卜が形成されるという考えを発表したが、

しかしこの考えは科学的には十分実証されておらず多くの研究者か ら反 論がなされ ている。Lindheらは(1973年)、ビ―グル犬を用い て、外科的な骨欠損をともなう歯周炎と矯正装置を応用して強い外 傷カ を合併させ た結果、垂直性骨吸収とAttachment Lossが生じ、

さらに根尖部に及ぶ骨吸収や骨縁下ポケットも観察できたと報告し ている。これに対しPoIsonらは1975年以来リスザルを用いて、歯頸 部への絹糸結紮法による歯肉の炎症とA|astikによる外傷カを合併 させた結果、垂直性骨吸収は生じたが、Attachment: Lossや骨縁下 ポケットは生じなかったと報告しており、意見の相違がみられてい る。

  そこで本実験は、炎症と外傷カが合併した場合の歯周組織破壊と 進行の様相を明確にする目的で、サルを用いて実験を行い、臨床的 ならびに病理組織学的に検索した。

(2)

く材料およぴ方法>

  実験動物として臨床的に健康なオスのカニクイザル2頭(体重4〜 5Kg)を用いた。被験部位は上下顎の小臼歯と大臼歯とし、実験条件 により|、II、III群およぴC群に分類した。1群は歯肉辺縁部に綿 糸を結紮して歯肉に炎症を惹起し、1|群は綿糸結紮法による炎症と 隣接面に矯正用Alast ikを挿入しjiggling typeの外傷カを与え、III 群は綿糸結紮法による炎症とjiggling typeの外傷カとさらに高い クラウン装着による強い外傷カを合併させ、C群は無処置とした。

各群とも期間中はブラッシングを行わずに、餌はソフトフッドを与 え た。 歯周組 織の臨床的変化を実験開始から28通にわたり毎週診 査 す る と と も に 、X線規 格 写 真 撮 影 を 行 い 、14週 と28遇の 組織 病 理 学 標 本 を 作 製 し て 、 病 理 組 織 学 的観 察 と 計 測 を 行 っ た 。 く結果および考察>

[臨床的観察]歯肉の炎症は、ソフトフッドの影響でC群にも軽度 に生じ、G.1.は各群とも経時的に増加し、炎症と外傷カを合併させ たIl群とIII群はI群に比ペ増加が著しく、実験終了時には明らかな 差 が生 じた。X線規格写真による観察では、1群は著明な変化はみ られなかったが、II群とIII群は1〜3過から歯根膜腔拡大が生じ、

10週前 後には 垂直性の骨吸収像が観察された。切縁間距離は、実 験開始時に3mmあったが、終了時にはOmmにならず、III群には実験終 了時まで強い外傷カが作用したと思われる。歯の動揺は、I、II、 III群の順でIII群が最も大きく、III群とII群は経時的に増加したが、

| 群とC群 はほ とんど増加せず生理的動揺の範囲にあった。Pro− bing Depthは隣接面およぴ頬舌側中央部とも、II群とIII群はほぼ同 様 に、 経時的 に著しい増加傾向を示し、1群とC群よりも深くなっ た。Clinical Attachment Lossは、I、|I、III群とも14遇までほ ば同様の増加傾向を示したが、その後II群、III群の増加が著しくな り 、28遇 に はI群 との 間に 危険 率5%で 有意差 を示 した 。こ れら の理由は炎症と外傷カが合併したため、炎症がより高度になり深い

(3)

ポケット 形成やAttachment Lossが進行したのではないかと考えら れる。

[病理組織学的観察]

  C群 は 、14週 、28週 と も、 歯 肉の 表 層部 に 軽度 の 炎 症性 細 胞 浸潤があった。

  |群は14週で は炎症性細 胞が歯問水 平線維の表層部に浸潤し、

ポケット 形成やAttachment Lossが生じていたが、歯槽骨吸収は極 めて軽度 で、初期の 歯周炎の状 態であった 。28週では、その傾向 が よ り 著 し く な っ て い た が 、 垂 直 性 の 骨 吸 収 像 は なか っ た。

  II群は、14週で は歯問水平 線維の炎症 性細胞浸潤による破壊が 著明で、歯槽骨頂部の骨吸収と歯根膜拡大が著しかった。上顎は、

下顎より 歯周組織破壊が著しく、左上顎第1大臼歯の近心の隣接面 では、ポケット底部が歯槽骨頂部よりも僅かに根尖側に位置し軽度 の骨縁下 ポケットの 状態であっ た。28週では 、深いポケット形成 や大きなAttachment Lossがあり、歯根膜拡大と歯槽骨頂部の骨吸 収が著明であった。

  III群は 、14週では1群やII群に 比ペ炎症は 強く、ポケット形成 やAttachment Lossも著明であった。歯根膜拡大や骨吸収も著明で 隣接面では|I群と大きな差はなかったが、根尖部と根分岐部ではII 群と比べ破壊が著しかった。上顎は、下顎よりも歯周組織の破壊が さらに著 しくAttachment Lossは大きく、骨吸収が根尖まで進行し てい る もの 観 察 され 、28遇 では14遇 に 比 べ全 体として歯 周組織 破壊が進 んでいたが 、破壊の傾 向は14週の所 見と類似していた。

[病 理 組織 学 的計測] @CEJから 歯槽骨頂ま での距離は 、川群が 4群中最高値を示したが、1|群も大きな値を示し両者問に有意差は なく、I群との聞 に危険率1%で有 意差を示し た。これは炎症と強 い外傷カの合併によりに骨吸収が進むことを示していると考えられ る 。 @CEJか ら ポ ケ ッ ト 底 部 ま で の 距 離 す な わ ちAttachment Levelの低 下は、骨吸 収同様にIII群が最高 値を示し、14遇ではII

(4)

群と の問に有意 差がなかっ たが、I群との間に 危険率5%で有意差 があった。1|群はI群よりも大きな値を示したが、両者間に有意差 は な かっ た 。28週で は 川群はI、|I群 との問に危 険率1%で有意 差を 示した。こ れは炎症と 強い外傷カ が長期間作 用すると著明な Attachment Lossが 生じ る こと を 示す も のと 考 え られ る。◎CEJ か ら ポケ ッ ト底 部 まで の距離に 対するCEJから根尖ま での距離の 比率(%)は、やはり川群が最高値を示し、|I群、1群の順で小さ か っ た。28遇 で は川 群 とII群の増加が 著しくI群との問 に危険率 1%で有意差が生じた。

く結論>

1)ソフトフ ッドと歯顎 部への綿糸結紮法により、ポケット形成や Attachment Lossをともなう初期の歯周炎が生じたが、垂直性骨吸収 や骨縁下ポケットは生じなかった。

2)ソフトフ ッドと綿糸 結紮法によ る炎症とと 隣接面へのAlastik 挿入によるjiggling typeの外傷カを合併させると、著明なAttach― ment Lossと隣接面の 骨吸収をともなう高度の歯周炎が生じ、―部 に骨縁下ポケットが形成された。

3)さらに高 いクラウン を装着し強い外傷カを加えると、Attach一 ment Loss、骨吸収が 著しく動揺が著明となり、極めて高度の歯周 炎が 生じ、―部 に根尖まで 骨吸収が進 行している ものも観察され た。4)以上 をまとめる と、歯肉の炎症が歯周組織深部に達し初期 の歯周炎に進行した状態と強い咬合性外傷が合併すると、炎症がさ らに 強度となり 、著しいAttachment Lossや高度の垂直性骨吸収が 生じ、歯周組織破壊が進行することが明らかとなった。これらの結 果は歯周炎の治療や予防にあたっては、歯周組織の炎症性破壊と咬 合性外傷が合併しないように注意することが極めて重要であること を示唆するものと思われる。

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

    学位論文題名

実験的咬合性外傷と歯周炎の合併によるサル歯周組織の変化

く緒言>

  咬合性外傷は歯周疾患の重要な原因と考えられていたが、多くの 動物実験などから、咬合性外傷単独では歯周組織に炎症性病変を生 じないことが明確となり、現在は、歯周組織の炎症と咬合性外傷が 合併した場合、外傷カが歯周組織にどのような影響を与えるかが重 要視されてきている。Lindheらは、ビーグル犬を用いて、骨欠損を ともなう歯周炎と強い外傷を合併させた結果、垂直性骨吸収、アタ ッチメント口スが生じ、さらに骨縁下ポケッ卜の形成も観察できた と報告している。これに対し、PoIsonらは、リスザルを用いて、炎 症と外傷を合併させた結果、垂直性骨吸収は生じたが、アタッチメ ント口スや骨縁下ポケットの形成はなかったと報告し、意見の相違 がみられている。そこで本実験は、炎症と外傷カが合併した場合の 歯周組織破壊と進行の様相を明確にする目的で、サルを用いて実験 を 行 い 、 臨 床 的 な ら び に 病 理 組 織 学 的 に 検 索 し た 。 く 材料と 方法 >実 験動 物とし てカ ニク イザ ル2頭を用い、上下顎 の臼歯を被験部位とし、実験条件により1、Il、III群およぴC群に 分類、|群は歯肉辺縁部に綿糸を結紮し歯肉に炎症を惹起し、II群 は1群 と同 様の 方法で炎症を起こし、さらに隣接面にAlastikを挿

   

   

   

   

(6)

入し 、jiggling typeの外傷カを与え、川群はII群と同様に炎症と j igg|ing typeの外傷カを与え、さらに高いクラウン装着により強 い外 傷カを合併させ、C群は無処置とした。期間中はブラッシング を行わず、餌はソフ卜フッドとした。歯屑組織の缶康的変fヒを実験 開 始か ら28週に わた り毎 週診 査し、 規格X線 写真 を撮 影し た。さ ら に14週 と28遇 の 組 織 病 理 学 標 本を 作 製し 、病 理組 織学 的観察 と組織学的計測を行った。

く結 果およ ぴ考 察> 臨床的 検索 の結 果、歯周組織の炎症は、Il、 lII群が|群に比べ著明で、ポケット深さや臨床的アタッチメント口 スも 、II、lII群で 増加 が著 しく 、28週 にはI群と有意差が認めら れた。これは外傷カの合併により歯周組織の炎症が進行しためと考 えら れる。X線規格 写真 では 、I群は 著明な変化は認められなかっ たが 、‖、 川群 は1〜3週か ら歯 根膜 腔の拡大が生じ、その後、垂 直性骨吸収が観察された。したがって、強い外傷カが作用すると垂 直性 の骨吸収が生じると考えられる。切縁問距離は、開始時の3mm から、時間経過とともに減少したが、Ommにならなかったことより、

川群には実験終了時まで強い外傷カが作用していたと思われた。歯 の動 揺は、C群と1群 は増加 が少 なく 、II群と川群は経時的に増加 し、IIl群が最も大きかった。これより、歯の動揺は咬合性外傷の程 度に 強い影響を受けると考えられる。病理組織学的観察では、C群 は、14、28遇と も、 歯肉炎 の状 態で 、上皮の根尖側移動はなく、

炎 症性 細 胞浸潤 も軽 度で あっ た。1群 の14遇 では 、炎 症性 細胞が 歯問水平線維の表層部に浸潤し、ポケット形成やアタッチメント口 スが生じていたが、歯槽骨吸収は極めて軽度で、初期の歯周炎の状 態で あった 。28週で は、そ の傾 向が より著しくなっていたが、垂 直性 の骨吸 収像 は認 められ なか った 。II群の14遇では、炎症性細 胞浸潤による歯間水平線維の破壊や歯槽骨頂部の骨吸収、歯根膜腔

(7)

の拡 大が著明で、左上顎第1大臼歯の近心の隣接面には、軽度の骨 縁下 ボケッ トが 観察 できた 。28週で は、深いポケット形成や大き なアタッチメン卜口スがあり、歯根膜腔の拡大と歯槽骨頂部の骨吸 収 が著 明 で あ っ た 。 川 群 の14週 では 、 歯肉 の炎 症はIl群の14週 とほぼ同程度であったが、|群に比較すると炎症は極めて強く、ポ ケット形成やアタッチメント口スも著明であった。歯根膜拡大と骨 吸収は隣接面ではII群とほぽ同程度であったが、根分岐部と根尖付 近でII群より破壊が著しく、上顎には、骨吸収が根尖まで進行して いる ものが 観察 され た。28週で は、 さらに骨吸収が進行していた が、組織破壊傾向は14週と類似していた。

  病理 組織 学的 計測 では、 @CEJか ら歯 槽骨 頂ま での距 離は 、川 群が 最高値 を示 し、I群 と危 険率1% で有意差を示した。これは炎 症と強い外傷カの合併によりに骨吸収が進行することを示している と 考え られ る。 @CEJか らポ ケット 底部 まで の距 離は、 @の 結果 と 同様 に 川 群 が 最 高 値 を 示 し 、14週 で はI群と 危険 率5%で 有意 差があった。||群は1群よりも大きな値を示したが、両者間に有意 差 はな かっ た。28週 では、III群はI、II群と危 険率1% で有 意差 を示した。したがって炎症と強い外傷カが長期間作用すると著しい ア タッ チメ ント 口ス が生じ ると 考え られ る。◎CEJから ポケ ッ卜 底部 までの距離に対するCEJから根尖までの距離の比率(%)は、

や はり 川群 が最 高値 を示し 、次 にlI群、I群 の順 であっ た。28週 で はII群 と 川 群 は | 群 と 危 険 率1% で 有 意 差 が 生 じ た 。   以上の結果より、歯周組織に炎症が生じ、炎症性細胞が歯肉表層 部から歯間水平線維の中に浸潤し、線維の消失が著しくなった状態 に、強い咬合性外傷が合併すると、炎症性細胞がさらに深部に浸潤 し、歯間水平線維や歯槽骨の消失を急速に進行させ、極めて強い炎 症状態を呈し、いわゆる高度に進行した歯周炎の状態となることが 明らかとなった。したがって、歯周炎の予防や治療の際し、歯周組

(8)

織の炎症性破壊と咬合性外傷が合併しないように注意することが極 めて重要であると思われる。

  本論文の審査にあたり、主査および副査全員が出席し、まず申請 者が本研究の概要を説明し、引き続き論文の内容や関連項目につき 質問を行った。すなわち、歯周組織の炎症と咬合性外傷が合併した 場合の歯周組織破壊の様相や進行の程度、さらに実験を行う際の注 意点にっき具体的な質問を行ったところ、申請者からは明確な回答 が得られ、本実験が歯周炎の病態を知る上で、極めて重要な問題点 に焦点を当てており、歯周炎の予防や治療など臨床的な面からも極 めて有意義な研究であることが示唆された。

  以上の結果、審査委員は本研究が学位論文に十分値し、学位申請 者 が 博 士 ( 歯 掌 ) の 授 与 の 資 格 が あ る と 認 定 し た 。

参照

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