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博士(医学)小室一輝 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)小室一輝 学位論文題名

大腸癌の遺伝子発現プロファイルパターン識別による      りンパ節転移識別

学位論文内容の要旨

    目的

  大腸は癌 化とその 進展の分 子機構の 研究が進 んでいる臓 器の1つで あるが、 各段階で の 重要 な遺伝子 が癌の悪 性度にど の程度関 わるかは 十分に理解 されていない。予後や癌の悪 性 度 と相 関 す る遺 伝 子は 報 告 されて いるが、 より多くの 遺伝子発 現を包括 的に判断 する cDNA array研究 が注目さ れている 。本研究 では大腸 癌症例を 対象として、臨床病理学的因 子を 推測する 遺伝子発 現の同定 を試みた 。

    方法

1.対象症例と材料

  北 海 道 大学 附 属病 院 、 およ び 道内 関 連 施設 ( 計33施 設) に お いて2001年6月 から2001 年12月に施行された大腸癌手術症例89症例を対象とした。

2.臨床病理学的因子

  大腸癌 取り扱い 規約第6版 (大腸癌研 究会編) を参考にして、各種の臨床病理学的バラメ ー夕)を集計した。

3.遺伝子発現解析

  腫 瘍 組 織サ ン プル か らtotal RNAを抽 出 し 、mRNAを 精 製し た 。 その 後 、逆 転 写 反応、

Biotin標 識 、cDNAの 増 幅 し、 癌 関連 遺 伝 子1289個 と11個のhouse keeping geneを搭 載し たcDNAアレ イ フィ ル タ ーに ハ イブ リ ダ イズ さ せ た。 続いて 、シグナ ルの検出 を行い、 画 像化しシグナル強度の数値化を行った。

4.アレイデータの統計学的解析

  各パラ メータを 様々な組 み合わせで2群に群分けし、t検定で発現に有意差(pく0.05)の見 られた 初期遺伝 子を抽出 した。それ らの初期 遺伝子か ら、特徴 サブセッ ト選択ア ルゴリズ ムを用 いて最適 診断遺伝 子の抽出を 試みた。 抽出には 順次特徴を追加しk・最近隣法により leave−one‑out errorを評価して最適な遺伝子組み合わせを同定する前方特徴選択法を用いた。

癌の占拠部位については計6つのカテゴリー(C,A,T D,S,R)があるので、これらの段階を 追って 発現が順 次高くな る遺伝子と 、逆に発 現が低下 する遺伝 子を抽出 するため 一般化線 形 モ デ ル を 用 い た 回 帰 分 析 を 行 っ た 。 リ ン ク 関 数 と し て はlogitを 採 用 し た 。

(2)

    結果

  89症 例 全 体に おい て、 各臨 床病 理学 的バ ラメー タで 最も 多く の初 期遺 伝子 群を 得た 組 み 合 わ せ は 、 癌 占 拠 部 位 の 盲 腸C、 上 行A、 横 行T、 下 行 結 腸D (CAD群 ) 対S状 結 腸S、 直腸R (SR群)の191個であった。

こ れ ら 結 果 か ら 癌 占 拠 部 位 に 注 目 し 、 癌 占 拠 部 位C、A、T、D、S、Rの6っ に つ い て一 般化 線形 モデ ルを 用い た回帰 解析 を行 った とこ ろ、170個 の遺 伝子(100個が発現低下 し 、70個 が 発 現増 加 す る 遺 伝 子 ) が 抽 出 さ れ た 。 こ の170個 の う ち126個がCATD群とSR 群で分けたときの191個の遺伝子と共通であった。

ま た 、12例 のCATD群 と8例 のSR群 の 大 腸 正 常 粘 膜 に つ い て も 検 討 す る と 、70個 の 遺 伝子 で発 現プ 口フ ァイ ルの 差が見 られ た。 その 内、 癌で 差が 見ら れた191個と共通だった の は14個 で あ っ た 。6つ の 癌 占 拠 部 位 の 正 常 粘 膜 に つ い て 線 形 回 帰 解 析 で77個の 遺 伝 子(33個 が 発 現 低 下 し 、34個 が 発 現 増 加 す る遺伝 子) が抽 出さ れた 。正 常粘 膜でCATD群 とSR群 で 分 け た と き の70個 の 遺 伝 子 と31個 が 共 通で あ っ た 。 癌 で 抽 出 さ れ た170個 の 遺伝子のうち9個が共通であった。

  こ れ ら の 結 果 よ りCNFD群 とSR群 に 分 け て 臨 床/ヾ ラ ヌ ー タ を 検 討 し た 。 そ の結 果 、 静脈 侵襲 、リ ンバ管侵襲、壁深達度(m,sm,mp,ss対se,si)、リンバ節転移の有無、病期 分類(stagesI,II対III,IV)の5つの臨床バラヌータでより多くの異なる発現プロファイル が 見 ら れ た 。 この5つ の バ ラ ヌ ー タ に 対 し 最適遺 伝子 セッ トの 抽出 を試 みる と、 各々 の minimal error rateは静脈侵襲(CATD群:O%、SR群:4.2%)、リンバ管侵襲(CAD群:2.4%、

SR群:8.3%)、壁深達度(CA1`D群:0%、SR群:8t3%)、リンバ節転移((ニArD群:0%、SR 群 : 4. 2助 、 病 期 分 類 ( O灯 D群 : 2.4% 、 SR群 : 10. 4% ) で あ っ た 。

    考察とまとめ

本 研究 では パタ ーン 識別 に特徴 サブ セッ ト選 択ア ルゴ リズ ムを 用い て大 腸癌89症例の浸 潤性に特徴的な遺伝子発現プ口フイールの解析を行った。90%.以上の正確さで予後因子の 予 測す るた めに 、ど のようにして最適遺伝子セットを抽出するかが問題点であったが、大 腸 癌 を 癌 占 拠 部 位 に よ りCAI'D群 とRS群に 分け るこ とに より 癌の浸 潤能 を正 確に 予測 す る こと が可 能に なっ た。両群の正常大腸粘膜でも異なる遺伝子発現パターンを示したこと は 、癌 占拠 部位 によ り特徴的な遺伝子発現バターンを呈したことに多少関連があると考え ら れ191個 の 異な る 遺 伝 子発 現と 共通 なの は14個で あっ た。 この結 果か らも 癌の 遺伝 子 発 現の 差は 正常 粘膜 からの影響よりは癌化により起こる遺伝子変化が強く関係していると 考 え ら れ た 。 大 腸 癌 の 発癌 経路 は分子 遺伝 学に 、APC、K―ras、p53、DCCな どの 遺伝 子 異常の蓄積により発癌する多段階発癌説、いわゆるadenomaーcancersequenceとミスマッチ 修復酵素遺伝子(miSmatChrepairenZymegeneS:MMRgeneS)の変異によるMSI(MicrOSatellite Instability)の大きく2っに分けられている。Q虹D群の癌はほとんど後者のタイプである。

本 研 究 で はCATD群 とSR群 の 癌 の 遺 伝 子 発 現プ ロ フ イ ー ルか ら分子 病態 生理 学と 癌発 生 ヌ カ ニ ズ ム の 違 い が 影 響 し て い る こ と が 明ら か と な っ た 。ATD群 とSR群で 異 な る 遺 伝 子 発現 を呈 した191個 の遺 伝子 には 発癌 や悪 性度 との 関係が 報告 され てい る遺 伝子、p53 と の関 連が ある 遺伝 子、 ミスマ ッチ 修復 酵素 遺伝 子(mismatchrepairenzymegenes:MMR genes)、APC‐ロ‐cateninと関係がある遺伝子が見られた。

(3)

  大腸癌の浸潤能を予測する遺伝子セットの全ての遺伝子が必ずしも大腸癌の分子生物学 的機構に関与しているかは定かではない。本研究で抽出された最適遺伝子セットはヒト遺 伝子の一部分(1289個)から選ばれた遺伝子であり、浸潤の特徴を決める複雑な遺伝子ネッ トワークの全体を判断するのは困難である。大腸癌の浸潤能の分子生物学的機構を明らか にするため、さらなる研究が必要であると思われた。

  大腸癌にっきCDNA array解析を行った結果、占拠部位別にりンパ節転移および壁深達 度を予測することによって高い診断率が得られたことから、本法が臨床上の治療指針を立 てる上で極めて有用であることが明らかになった。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

大腸癌の遺伝子発現プロフんイルパターン識別による      りンパ節転移識別

  大 腸 は 癌 化 と そ の 進 展 の 分 子 機 構 の 研 究 が 進 ん で い る 臓 器 の1つ で あ る が 、 各 段 階 で の 重 要 な 遺 伝 子 が 癌 の 悪 性 度 に ど の 程 度 関 わ る か は 十 分 に 理 解 さ れ て い な い 。 予 後 や 癌 の 悪 性 度 と 相 関 す る 遺 伝 子 は 報 告 さ れ て い る が 、 よ り 多 く の 遺 伝 子 発 現 を 包 括 的 に 判 断 す る cDNA array研 究 が 注 目 さ れ て い る 。 申 請 者tまcDNA arrayと パ タ ー ン 識 別 に 特 徴 サ ブ セ ッ ト 選 択 ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い て 大 腸 癌 の 臨 床 病 理 学 的 因 子 を 予 測 す る 遺 伝 子 発 現 の 同 定 を 試 み た 。

  本 研 究 は 北 海 道 大 学 附 属 病 院 、 お よ び 道 内 関 連 施 設 ( 計33施 設 ) に お い て2001年6月 か ら2001年12月 に 施 行 さ れ た 大 腸 癌 手 術 症 例89症 例 を 対 象 と し た 。 遺 伝 子 発 現 解 析 は 癌 関 連 遺 伝 子1289個 を 搭 載 し たcDNAア レ イ フ ィ ル タ ー を 用 い てcDNA arrayを 行 っ た 。 ア レ イ デ 一 夕 の 統 計 学 的 解 析 は 各/ヾ ラ メ ー タ を 様 々 な 組 み 合 わ せ で2群 に 群 分 け し 、t検 定 で 発 現 に 有 意 差(pく0.05)の 見 ら れ た 初 期 遺 伝 子 を 抽 出 し 、 そ れ ら の 初 期 遺 伝 子 か ら 、 特 徴 サ ブ セ ッ ト 選 択 ア ル ゴ リ ズ ム を 用 い て 最 適 診 断 遺 伝 子 の 抽 出 を 試 み た 。 抽 出 に は 順 次 特 徴 を 追 加 しk− 最 近 隣 法 に よ りleave‑one‑out errorを 評 価 し て 最 適な 遺伝 子組 み合 わせ を同 定 す る 前 方 特 徴 選 択 法 を 用 い た 。 癌 の 占拠 部位 につ いて は計6つの カテ ゴリ ー(C,A,T D,S, R) が あ る の で 、 こ れ ら の 段 階 を 追 っ て 発 現 が 順 次 高 く な る 遺 伝 子 と 、 逆 に 発 現 が 低 下 す る 遺 伝 子 を 抽 出 す る た め 一 般 化 線 形 モ デ ル を 用 い た 回 帰 分 析 を 行 っ た 。   結 果 と し て89症 例 全 体 に お い て 、 各 臨 床 病 理 学 的/ヾ ラ ヌ ー タ で 最 も 多 く の 初 期 遺 伝 子 群 を 得 た 組 み 合 わ せ は 、 癌 占 拠 部 位 の 盲 腸C、 上 行A、 横 行T、 下 行 結 腸D (CATD群 ) 対 S状 結 腸S、 直 腸R (SR群 ) の191個 で あ っ た 。 こ れ ら 結 果 か ら 癌 占 拠 部 位 に 注 目 し 、 癌 占 拠 部 位C、A、T、D、S、Rの6っ に つ い て 一 般 化 線 形 モ デ ル を 用 い た 回 帰 解 析 を 行 っ た と こ ろ 、170個 の 遺 伝 子(100個 が 発 現 低 下 し 、70個 が 発 現 増 加 す る 遺 伝 子 ) が 抽 出 さ れ た 。 こ の170個 の う ち126個 がCATD群 とSR群 で 分 け た と き の191個 の 遺 伝 子 と 共 通

之 敬

紘  

  哲

藤 木

加 吉

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

で あ っ た 。 そ こ でCATD群 とSR群 に 分 け て 臨 床 バ ラ ヌ ー タ を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 静 脈侵襲、リンバ管侵襲、壁深達度(m,sm,mp,SS対se,si)、リンノヾ節転移の有無、病期分 類(stagesI,II対III,IV)の5つの 臨床バラ ヌータで より多くの異なる発現プ口ファイルが 見 ら れ た 。 こ の5つ の バ ラ ヌ 一 夕 に 対 し 最 適 遺 伝 子 セ ッ ト の抽 出 を試 み る と、 各 々の minimal error rateは静脈侵襲(CATD群:Ou/o、SR群:4.2a/o)、リンノヾ管侵襲(CATD群:2.40/0、 SR群:8.3%)、壁深達度(CATD群:0u/o、SR群:8.3 u/o)、リンバ節転移(CATD群:0%、SR 群 : 4. 2% ) 、 病 期 分 類 (CATD群 : 2.4a'/o、 SR群 : 10.40/0)で あ っ た 。   本研 究ではノヾ 夕ーーン 識別に特徴サブセット選択アルゴリズムを用いて大腸癌89症例の 浸潤 性に特徴的 な遺伝子 発現プ□ フイール の解析を 行った。90%以上の正 確さで予 後因子 の予 測するため に、どの ようにし て最適遺 伝子セッ トを抽出 するかが問 題点であ ったが、

大 腸 癌 を 癌 占 拠 部 位 に よ っ てCATD群 とRS群 に分 け る こと に よ り癌 の 浸潤 能 を 正確 に 予 測出来ることが示された。

  口頭 発表におい て、古木 教授より大腸癌の部位別発生頻度、腫瘍マーカーとりンノヾ節転 移 の 関 係 、 リ ン パ 節 転 移 の 有 無 に 関しCATD群 とSR群 に共 通 な 遺伝 子 はあ る か など に つ い て 質 問 が あ っ た 。 つ い で 守 内 教 授 よ りCATD群 とSR群 に お け るP53やAPCと の 関 係 、 臨床 応用につい て質問が あった。 最後に加 藤教授よ り予後と の関係、正 常大腸と 癌との遺 伝子 発現の相関 関係につ いて質問 があった が、いず れの質問 に対しても 、申請者 は主旨を よく理解し誠意ある回答をしていた。

  大腸 癌において 癌占拠部 位別に臨 床病理学 的因子を 識別する ことによっ て高い識 別率が 得ら れることを 明らかに し、オー ダーヌー ド治療の 可能性を 示唆した本 研究の意 義は大き く、 審査員一同 協議の結 果、本論 文は博士 (医学) の学位授 与に値する ものと判 定した。

参照

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