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博 士 ( 獣 医 学 ) 中 尾 見 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 獣 医 学 )    中 尾    見 学 位 論 文 題 名

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(心水症に対する効果的予防戦略確立に向けた励′此カあ門zm ´ロ朋所閲の

    

分子遺伝学的研究)

学位論文内容の要旨

  

心 水症はりケ ッチアの一種Ehrlichia rum めantium によって引き起こされるマ ダ ニ媒介性感 染症で、ア フリカ諸国 で甚大な経 済的損失をもたらしている。本 菌はin vitro の継代培養で弱毒化し、生菌ワクチンとして有効であることが報告 さ れているが 、その弱毒 化機序は不 明である。 また、野外でのワクチネーショ ン 試 験 では 地 域に よ って 効 果的 なワク チン株が異 なることや ワクチンプ レー ク が報告され ており、免 疫原性の異 なる野外株 の混在が示唆され、流行地にお け る野外株の 遺伝子型別 が求められ ている。さ らに、開発途上国で実施可能な 早 期診断法の 開発が急務 とされてい る。そこで 本研究では、分子遺伝学的手法 を 活用しこれ らの問題を 克服するこ とで、アフ リカの流行地における心水症の 効 果 的 予 防 戦 略 の 確 立 に 寄 与 す る 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た 。

  

第 一章では、 ヤギに強毒 性を示す野 外分離株であるGardel 株と、それを親株 と してin vitro で

200

回以上継代培養を繰り返すことで弱毒化した弱毒Gardel 株 を 材料に、次 世代シーケ ンサーを用 いた全ゲノ ム配列の解読と比較解析を行っ た 。

2

株間のゲノ ム比較によ り、1 箇 所で869 bp の欠損 、5 箇所 で一塩基置 換、

さ らに10 箇所で 一塩基挿入 /欠損の合 計16 箇所のゲノム差異が弱毒化に関連す る ゲノム変化 として検出 された。今 後、発現遺 伝子ならびに翻訳蛋白質の解析 に より、宿主 への病原性 を担う遺伝 子の特定が 可能となり、遺伝子ノックアウ ト 技 術 を応 用 する こ とで 様 々な 野外株 に対するワ クチンの開 発にっなが るこ とが期待される。

  

第 二 章 で は 、 複 数 の遺 伝 子領 域 の塩 基 配列 に 基 づく 遺 伝子 型 別法 で ある

Multi‑locus sequence typmg

(MLST )法を用いて、アフリカ各地に由来する分離 株 とウガンダ の媒介マダ ニから検出 されたりケ ッチアの多型解析を行った。供 試 した22 株で 、それぞれ

8

領域 の塩基配列 が決定され 、様々な地 域に由来す る 分 離株の遺伝 子多型情報 が得られた 。次に、多 型情報を用いて系統学的解析を 行 っ た 結果 、 菌株 の 分離 地 と遺 伝子型 との相関は 乏しいこと が明らかと なっ

22

(2)

た。そ の要因とし て、広範囲 にわたる家 畜や野生動物あるいはべクターの移動 等に伴 う本菌の大 陸内流動が 考えられた 。また、異なる株間での遺伝子組換え が検出 され、本菌 が遺伝的多 様性を獲得 する上で重要なゲノム改編ヌカニズム のーつであることが示唆された。

  

第三章 では、遺伝 子多型を解 析する方法 としてゲノム上に点在する繰り返し 配列を指標とするMultiple‑locus variable‑number tandem‑repeat analysis (MLVA) 法を新 たに開発した。In ぷilico 解析による探索と分離株間での塩基配列の比較 により 、遺伝子型 別に有用な

12

個のマーカ ーを特定した。さらに、型別能カの 高 い

8

個 の マー カ ーを 対 象に 、マル チプレック ス

PCR

によ る増幅とキ ャピラル ー電気 泳動による フラグヌン ト解析を行 うことで、迅速かつ簡便に多型解析を 実施す ることが可 能となった 。本法をウ ガンダのりケッチア陽性マダニの解析 に応用 した結果、 既存の型別 法である

mapl PCR‑restriction fragment length

polymorphism

法より高 い多型識別 能カが確認できた。さらに、系統学的解析に

より流 行地におけ る優勢遺伝 子型群の特 定も可能であり、ワクチン株を選定す る上で有用な遺伝子型別法であることが示された。

  

第四章 では、リケ ッチア遺伝 子を特異的 に検出する等温遺伝子増幅系である

Loop

ーmediated isothermal amplification (LAMP) 法を開発した。分離株間で高い保 存 性を 示 す

sodB

遺 伝 子を タ ーゲッ トとしてLAMP プ ライマーを 設計した。 検出 限界は 一反応当り

5

コピ ーの遺伝子 であり、

60

分 以内に陽性 判定が可能 である ことか ら、高感度 で迅速な遺 伝子検出法 であることが示された。心水症流行地 で採集 された野外 材料(家畜 血液・媒介 マダ二)を用いた実用性の評価でも、

既存の

PCR

法に 比ベ高い検 出率を得た 。従って、 本法は設備 の乏しい開 発途上 国でも実施可能な心水症診断法として普及が期待される。

  

これら の研究成果 は、ワクチ ネーション を基軸とした心水症の効果的予防法 の確立 に活用でき ることが期 待できる。 また、病原性の異なる株間でのゲノム 比較に より、本菌 の病原性を 規定する遺 伝的背景の解明が進むことが期待され る。

‑ 23

(3)

学位論文審査の要旨 主査   教授

副査   教授 副査   教授 副査   教授

杉 本 千 尋 大 橋 和 彦 片 倉    賢 鈴 木 定 彦

学 位 論 文 題 名

lVIolecular genetic studies on Ehr

覺 カ あ

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eCtiVepreVentionStrategieS     againStheartWater

(心水症に対する効果的予防戦略確立に向けた励励劭あ凡zm ′ロ朋ぬ切の

    

分子遺伝学的研究)

  

心水症はりケッチアの一種

Ehrlichia ruminantium

によって引き起こされるマダニ媒介 性感染症で、アフリカ諸国で甚大な経済的損失をもたらしている。本菌は加vitro の継代 培養で弱毒化し、生菌ワクチンとして有効であることが報告されているが、その弱毒化機 序は不明である。また、野外でのワクチネーション試験では地域によって効果的なワクチ ン株が異なることやワクチンプレークが報告されており、免疫原性の異なる野外株の混在 が示唆され、流行地における野外株の遺伝子型別が求められている。さらに、開発途上国 で実施可能な早期診断法の開発が急務とされている。そこで本研究では、分子遺伝学的手 法を活用しこれらの問題を克服することで、アフリカの流行地における心水症の効果的予 防戦略の確立に寄与する基礎的知見を得ることを目的とした。

  

第一章 では、 ヤギに強 毒性を示す野外分離株であるGardel 株と、それを親株として加

vitro

200

回 以上継代 培養を繰り返すことで弱毒化した弱毒

Gardel

株を材料に、次世代 シーケンサーを用いた全ゲノム配列の解読と比較解析を行った。2 株間のゲノム比較によ り、1 箇所で869 bp の欠損、

5

箇所で一塩基置換、さらに10 箇所で一塩基挿入/欠損の合計

16

箇所のゲノム差異が弱毒化に関連するゲノム変化として検出された。今後、発現遺伝子 ならびに翻訳蛋白質の解析により、宿主への病原性を担う遺伝子の特定が可能となり、遺 伝子ノ ックア ウト技術 を応用することで様々な野外株に対するワクチンの開発にっなが ることが期待される。

  

第二章 では、 複数の遺 伝子領 域の塩基 配列に 基づく遺伝子型別法であるMulti‑locus

sequence typing

法を用いて、アフリカ各地に由来する分離株とウガンダの媒介マダニから 検出されたりケッチアの多型解析を行った。供試した22 株で、それぞれ8 領域の塩基配列 が決定され、様々な地域に由来する分離株の遺伝子多型情報が得られた。次に、多型情報 を用いて系統学的解析を行った結果、菌株の分離地と遺伝子型との相関は乏しいことが明 らかとなった。その要因として、広範囲にわたる家畜や野生動物あるいはベクターの移動 等に伴う本菌の大陸内流動が考えられた。また、異なる株間での遺伝子組換えが検出され、

本菌が 遺伝的 多様性を 獲得する上で重要なゲノム改編メカニズムのーっであることが示

24

(4)

唆 さ れ た 。

  第 三 章 で は 、 遺 伝 子 多 型 を 解 析 す る 方 法 と し て ゲ ノ ム 上 に 点 在 す る 繰 り 返 し 配 列 を 指 標 と す るMultiple‑locus variable‑number tandem‑repeat analysis法 を 新 た に開 発 し た。 向silico 解 析 に よ る 探 索 と 分 離 株 間 で の 塩 基 配 列 の 比 較 に よ り 、 遺 伝 子 型 別 に 有 用 な12個 の マ ー カ ー を 特 定 し た 。 さ ら に 、 型 別 能 カ の 高 い8個 の マ ー カ ー を 対 象 に 、 マ ル チ プ レ ッ ク スPCRに よ る 増 幅 と キ ャ ピ ラ リ ー 電 気 泳 動 に よ る フ ラ グ メ ン ト 解 析 を 行 う こ と で 、 迅 速 か っ 簡 便 に 多 型 解 析 を 実 施 す る こ と が 可 能 と な っ た 。 本 法 を ウ ガ ン ダ のE ruminantium陽 性 マ ダ ニ の 解 析 に 応 用 し た 結 果 、 既 存 の 型 別 法 で あ るmapl PCR‑Restriction fragment length polymorphism法 よ り 高 い 多 型 識 別 能 カ が 確 認 で き た 。 さ ら に 、 系 統 学 的 解 析 に よ り 流 行 地 に お け る 優 勢 遺 伝 子 型 群 の 特 定 も 可 能 で あ り 、 ワ ク チ ン 株 を 選 定 す る 上 で 有 用 な 遺 伝 子 型 別 法 で ある こ と が 示 さ れた 。

  第 四 章 で は 、 リ ケ ッ チ ア 遺 伝 子 を 特 異 的 に 検 出 す る 等 温 遺 伝 子 増 幅 系 で あ る Loop‑mediated isothermal amplification (LAMP)法 を 開 発 し た 。 分 離 株 間 で 高 い 保 存 性 を示 すsodB遺 伝 子 を タ ー ゲ ッ ト と し てLAMPプ ラ イ マ ー を 設 計 し た 。 検 出 限 界 は 一 反 応 当 り5 コ ピ ー の 遺 伝 子 で あ り 、60分 以 内 に 陽 性 判 定 が 可 能 で あ る こ と か ら 、 高 感 度 で 迅 速 な 遺 伝 子 検 出 法 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 心 水 症 流 行 地 で 採 集 さ れ た 野 外 材 料 ( 家 畜 血 液 ・ 媒 介 マ ダ ニ ) を 用 い た 実 用 性 の 評 価 で も 、 既 存 のPCR法 に 比 ベ 高 い 検 出 率 を 得 た 。 従 っ て 、 本 法 は 設 備 の 乏 し い 開 発 途 上 国 で も 実 施 可 能 な 心 水 症 診 断 法 と し て 普 及 が 期 待 さ れ る 。   以 上 の 一 連 の 研 究 は 最 新 の ゲ ノ ム 解 析 手 法 を 駆 使 し て 、E ruminantiumの 比 較 ゲ ノ ム 解 析 、 分 子 疫 学 解 析 を 実 施 し 、 さ ら に 新 規 の 遺 伝 子 診 断 技 術 を 開 発 し た も の で あ り 、 本 リ ケ ッ チ ア 感 染 症 の 制 圧 に 寄 与 す る も の と 考 え る 。 よ っ て 、 審 査 委 員 一 同 は 、 上 記 博 士 論 文 提 出 者 中 尾 亮 君 の 博 士 論 文 は 、 北 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 程 第6条 の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う博 士 論 文 の 審 査等 に 合 格 と 認め た 。

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参照

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