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博士(歯学)鄭 明源 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)鄭   明源 学位論文題名

低酸素によって誘導される Pim‑l は 固形癌の薬剤抵抗性と生体内増殖に関与する

  (Pim‑l induced by hypoxia is involved in drug resistance of solid tumor cells)

学位論文内容の要旨

  発育 の速い 癌ほど 血流が不 足して いるとされている。これは腫瘍細胞の増殖が血管内皮細胞の それより速いからと考えられており、また、新しく形成された血管網の機能が不十分であるからとさ れて いる。癌 組織の 酸素分 圧が低 けれぱ 抗がん剤耐性の高いこと、放射線感受性の低いことがす でに 報告され ている 。これ らの報 告は、 癌組織の低酸素状態が何らかの抗アポトーシス因子を誘 導す る可能性 を示唆 してい る。本 研究で は、低酸素状態が抗癌剤耐性にするという従来の報告を 確認 するため に、固 形癌細 胞の正 常酸素 分圧下 と低酸 素分圧 下の抗が ん剤感 受性を 検討した。

実験 に使用し た膵癌 細胞株 は、低 酸素に さらさ れるとCDDPを含め て多く の抗癌 剤に耐 性となる 事を 確認した 。しかしながら、同じ膵癌細胞株が抗Fas抗体誘導アポトーシスに対しては、低酸素 下で感受性がより高くなることから、低酸素は、何らかの特異的な抗アポトーシス因子を誘導する可 能性が高いと考えられた。

  最近 の報告 によれ ば、低酸 素はい くっかの抗アポトーシス因子を誘導し、それが抗がん剤耐性 に関 与してい ると報告されている。しかしながら、細胞死や生存に直接関与するHypoxia誘導遺伝 子に関しての報告は少なく、不明な点が多い。そこで本研究では、DNAマイクロアレー法によって、

低酸素誘導抗アポトーシス因子を検索したところ、Pim−1が候補のーっとして同定された。Pim−1は MuLV発症Tリンパ 腫でProviral Insertionがおこり、活性化する遺伝子として単離された。Pim―1 はセリン.スレオニンカイネースの一種であり、造血細胞ではアポトーシスを抑制するサバイバル因 子と 報告され てきた 。最近 、Pim−1が発生過程において造血細胞以外にも働いている可能性が示 唆されたため、固形癌におけるPim―1の役割について検討することにした。まずいくっかの固形癌 細 胞株 を 用 い て、 低 酸 素 分圧 と 正 常 酸素 分 圧 下 でのPim‑l発現 を 検 索し た。次に 、Dominant negative Pim―1導入株を作製し、Pim−1の低酸素下での薬剤耐性における役割を検討した。さらに in vivoにお けるP洫 一1の役 割を検 討する ため、SCIDマウス を用い てDominantnegativePim土導 入株の造腫瘍性を調べた。

  その 結果、1)低酸 素下で は膵癌細 胞株のアドリアマイシン、Gemcitabine、CDDPに対するIC50 が2―6倍に増 加した 。2)低 酸素下で はCDDP誘 導アポ トーシ スが約半分に減少し、低酸素下では

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アポ トーシ ス抵抗 性とな ること が確認 された。3)DNA microarrayにて低酸素下で発現亢進する遺 伝子 のなか で、ア ポトーシス抵抗性に関与する遺伝子候補としてPimー1を同定した。4)低酸素下 で の 各 種固 形 癌 細 胞株に おけるPim―1発現 の亢進 をNorthern blotお よびWestern blot法にて 確認 した。5) Pim‑lの機能を抑制するdominant negative Pim−1導入株を作製して抗癌剤感受性 を 検 討 した と こ ろ 、vector導 入 株で は 低 酸素 下でCDDPに対して 抵抗性 となる のにた いして 、 dominant negative Pim−1導 入株は 低酸素 下でも 正常酸 素分圧下 でも同 様のCDDP感受性を示し た。

  以上の結果より、1)Serine/Threonine KinaseであるPim―1の発現が低酸素下で膵癌細胞株を含 めて 固形癌 細胞株 に誘導 された 。2)膵 癌細胞 株はNormoxia下よりHypoxia下のほ うが抗がん剤 耐性であった。3) DnPim―1導入によって、Hypoxia下の膵癌細胞株の抗がん剤耐性が解除された。

4) DnPim一1導入 によっ て膵癌 細胞の 造腫瘍性も消失した。という新しい事実を明らかにした。

  Pim−1はMuLV発症Tリ ン パ 腫 でProviral insertionが 起 こ り 、活 性 化する 遺伝子 である。

Serine/threonine KinaseであるPim−1は造血細胞の増殖因子欠乏に伴うアポトーシスを抑制する サバイバル因子として報告されている。さらに、最近の報告によれぱ、Pim一1タンパクはミトコンドリ アの機能調節に関与すると言われている。こうした報告は、Pim−1が白血病細胞だけではなく、固 形癌細胞にも一般的な抗アポトーシス因子として機能していると推測することを支持すると思われ る。しかしながら、従来の報告では、膀胱癌、卵巣癌、子宮頚癌と自血病で発現を認めるとする報 告以 外に、 今日ま で固形 癌にお けるPim―1の役割 に関し ては報 告がなかった。本研究はHypoxia 状態 下で膵 癌細胞 が数種 類の抗 がん剤 に耐性 を示す ことを明 らかにした。また、Hypoxiaでは抗 がん 剤誘導 アポト ーシス に抵抗 性を示 した細 胞が、Pim‑lの機能 を抑制するdnPim−1導入によっ て抗 癌剤感 受性が 高くなった。この結果により、Hypoxia下における膵癌細胞のPim―1発現が低酸 素誘 導抗が ん剤耐 性に重 要な役 割を担 ってい る可能 性が示唆 される 。Pim―1が造血 細胞の抗癌 剤誘導細胞死を抑制したという報告は今回のデータと一致した。しかしながら、Anti―Fas Antibody へ の 感 受 性 はPim―1の 機 能 を 抑 制 し て も 影 響 が な い こ と か らPim−1誘 導 抗 がん 剤 耐 性 は Fas/FasLのDeath Signal Transduction Pathwayと関係がなぃと考えられる。哺乳類細胞の2つのメ ジャーなapoptosis signal伝達経路としては、Fas/FasL Death Receptor Pathwayとミトコンドリア Pathwayが知られている。Fas/FasLを介するDeath Signalはミトコンドリア経路をバイパスでき直接 キャスペースを活性化できるとされている。しかし最近、新しいbcト2ファミリータンパクのBidがミト コンドリアPathwayとFas/FasL Death Receptor Signalを連結していると報告された。Pim−1の機能 を抑 制して もAnti−Fas Antibodyの感受性が影響されない今回の結果は、Pim一1がBidを介してミ トコ ンドリ アPathwayとFas/FasL Death Receptor Signal経路が連結する前で働いている可能性が 高いと考えられる。

  Pim一lの薬剤耐性の、DnPim−lTransfectantsの腫瘍組織のほうがアポトーシス細胞が多いという 今回 の結果 は、Pim―1が少 なくとも 膵癌細胞のinvivoのサバイバルに重要な働きをしている可能 性を示唆している。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   福田   博 副査   教授   向後隆男 副査   教授   鈴木邦明

副査   助教授   小林正伸(遺制研・癌病態)

学 位 論 文 題 名

低酸素によって誘導されるPim ・1 は

固形癌の薬剤抵抗性と生体内増殖に関与する

  (Pim‑l induced by hypoxia is involved in drug resistance of solid tumor cells)

  審査 は 向 後 、鈴 木 、 小 林、 福 田 審 査員 全 員 が 一堂 に 会 し 、口 頭 で 行 われ た。 まず、 申請     1

者 か ら 提 出 論 文 の 内 容 の 説 明 を 受 け た 。 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

論攵の概要

  腫瘍 組織は癌 細胞の 増殖に 比較し て血管 内皮細 胞の増 殖が追 いっかな いなど のため、血流不 足とな りその 結果、 低酸素 や低栄 養状態に曝されている。実際、正常組織と癌組織の酸素分圧を 計 測 し た 結 果 、 正 常 組 織 は50mmHg、 す な わ ち7%の 酸 素 濃 度に 対 し て 腫瘍 組 織 はlOmmHg、 1.4%の 酸素濃 度と低か った。 酸素濃 度の低 い癌ほ ど抗が ん剤耐性や放射線感受性の低いことが 知られている。そのメカニズムとして、低酸素下ではアポトーシス抵抗性に関与する因子の発現が 亢進するのではないかと仮説を立て検討した。

  は じ め に 、低酸 素分圧(Hypoxia)下と正 常酸素 分圧(Normoxia)下での 癌細胞 の抗癌 剤感受 性 を検討 した結 果、NormoxiaよりHypoxiaのほう が抵抗 性を示し た。さ らにCDDPのほかに2種類の 抗がん 剤(Gemcitabine、ADR)につ いて検 討した 結果、 やはりNormoxiaよりHypoxia下で耐性だっ た。低酸素になると、HIF−la(Hypoxia Inducible Factor‑la)という転写活性因子が発現し、その 下流に ある嫌 気性代 謝、血 管新生 、血管 拡張、 造血機能 などの 遺伝子 を活性 化して低酸素を克 服 す る と 報 告 さ れ て い た が 、 抗 が ん 剤 耐 性 に つ い て は ま だ 報 告 さ れ て い な か っ た 。   そこ で、DNA microarray法を用 いて低酸素下で発現亢進する遺伝子を網羅的に検索し、アポト ーシス 抵抗性 に働き 得る遺 伝子のPim−1を同 定した 。低酸 素下で の各種 固形癌 細胞株における Pim―1発 現をNorthern blotおよびWestern blot法にて確認したところ、検索したすべての細胞株

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にお いてHypoxia下で発現亢進 を認めた。Pim−1が本当に抗 がん剤耐性に関与している のかを証 明するために、Pim―1の機能を抑制するdominant negative Pim−1導入株を作製して抗癌剤感受性 を検 討し た 。そ の結 果、vector導入株では低酸素下でCDDPに対して抵抗性となるのに 対して、

dominant negative Pim―1導 入株は低酸素下でも正常酸素 分圧下でも同様のCDDP感受 性を示し た。

  生 体内 で も同 様な 結果 が得 られるかをSCIDマウスモデル で検討した。Vector導入株 において は腫瘍増殖を認めたが 、DnPim―1を移植した場合に は一旦増殖した後退縮した。っまりdominant negative Pim―1導入株では、抗癌剤耐性どころか造腫瘍性を失っていた。この原因としては、生体 内では低酸素と同時に 低栄養にもなっており、低酸 素・低栄養下でのアポトーシス感受性に違い があると考え、低酸素 ・低栄養下におけるTransfectantsの生存を検討した。Dominant negative Pim−1導入株は、Vector controlに比較して低酸素・低栄養で誘導されるアポトーシスに対する感 受性を部分的に回復し ていた。これによって、造腫瘍性喪失のメカニズムの一部を説明できる可能 性があるが、他の機序 も今後検討する必要があると 思われる。

  ついで 各審査員から申請者に対し、 本論文の内容とそれに関連 する種々の質問が行なわれた。

主な質問 は以下の通りである。

    ´

造腫 瘍性 とは ど うい う意 味か 。 Pimー1は 発癌 に 必要 か。

    f

膵臓 癌はVEGFな ど血 管新 生因 子を 作 って いる のか 。     I

膵臓 癌細 胞株 以 外の 細胞 株もPim―1の発 現が ある のか 。

膵臓 癌細 胞株 のDnPim―1ではな く、血管新生が豊富な細胞株 のDnPim−1だったら腫瘍は 生 着す るの では な いか ら

酸 素 分 圧 の 低 い 腫 瘍 組 織 の 抗 が ん 剤 耐 性 、 放 射 線 感 受 性 は 報 告 さ れ て い る の か 。 抗 が ん 剤 や 放 射 線 に よ る 感 受 性 は ア ポ ト ー シ ス な の か Necrosisな の か 。 低栄 養と はど う いう こと か。

膵臓 癌の 転移 と 栄養 供給 はり ンパ 管 と関 連性 ある のか 。 アポ トー シス に 関す るほ かの 機序 調 べて いる のか 。

  これらの質問 に対して申請者は明快に回 答し、申請者は本研究を中心 に十分な知識を有すると

認められ、また 、本研究内容が高く評価さ れた。

以上より、申請 者は博士(歯学)の授与に 値すると判断された。

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   J

   

  

   

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参照

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