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博 士( 医 学 ) 田 沢 悌 二 郎 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士( 医 学 ) 田 沢 悌 二 郎

学 位 論 文 題 名

胃 癌 患 者 の 血 液 及 び 胃 癌 組 織に お け る マ グ ネ シ ウ ム

I研 究 目 的

    一

及 び カ ル シ ウ ム レ ベ ル の 変 動

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  マグ ネ シ ウ ム (Mg)と カ ルシ ウ ム (Ca)は 生 体 内 に比 較 的 多 量 に存 在し ,広汎 な生 理機能 に 関与 し,互 いに 拮抗ま たは協 調する 元素で ある 。これ らの元 素は腫 瘍の 発生や成長と密接な関係 に あ る こと が 示 さ れ てい る。し かし ,癌患 者にお けるMgの動態 に関す る研究 は比 較的少 ない。

血 清 ま たは 血 漿Mg濃 度 に っいて は,卵 巣癌, 頸部腫 留, 乳癌等 で高い 値を示 すこ と,喉 頭癌,

胃 癌 , 結腸 癌 , 乳 癌 等で は 低 い 値 を示 す こ と が 報告 さ れ て い る 。ま た, 癌組織 中のMg含量に っい ては喉 頭癌 ,胃癌 ,結腸 癌,直 腸癌, 乳癌 ,肺癌 等で高 い値を 示す こと,生殖器系の癌,喉 頭 癌 等 では 低 い 値 を 示す ことが 報告 されて いる。 一方,Ca代謝 異常は 癌患者 で比 較的よ く認め ら れ る 合併 症 で あ る 。た とえば ,肺 癌,乳 癌,食 道癌等 では 高Ca血症 を伴う こと が知ら れてい る 。 癌 組織 中 のCa含 量 に っいて は乳癌 等で高 い値が ,胃 癌,結 腸癌等 で低い 値が 報告さ れてい るが ,その 研究 は少な い。し かも, 上記の 報告 のうち ,進行 程度や 転移 との関連を研究している も の は 極め て 少 な く ,担 癌 生 体 に おけ るMgとCaの 動 態 は まだ 十 分 明ら かに されて いない 。本 研 究 は 胃癌 患 者 の 進 行程 度 と 転 移 に関 連 し て , 血液 及 び 胃 癌 組 織に おけ るMg及 びCaレベ ルの 変動 を明ら かに するこ とを目 的にし た。

H研究 方法

  対象は 外科手 術を施 行さ れ,術前に化学療法および放射線療法を受けていない胃癌患者である。

胃 癌の 診断は 術後摘 出した 標本 の組織 学的検 査によ り確認 され た。こ れらの患者の血中尿素窒素 値 は 正 常 範 囲 に あ っ た 。 患者 は 胃 癌 取 扱い 規 約 ( 胃 癌 研究 会 ) の 肉 眼的 進 行 程 度 によ り StageI ‑1Vに 分類 し た 。ま た,転 移の有 無に より, 非転移 群,リ ンパ 節のみ の転移 群,他 臓器 転 移群 の3群 に 分類 し た 。 血 液中Mg及 びCa濃 度 の 測 定は85名 の 胃癌 患 者 ( 平 均年 齢 土 標 準 偏 差,60.3土11.4才 )と36名の健 康成人(平均年齢土標準偏差,61.9土12.7才)にっいて行った。

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患者の性別は男性63名,女性22名で,健康成人は男性21名,女性15名である。胃癌組織中Mg 及びCa含量の測定は66名の患者(平均年齢土標準偏差,59.3土11.6才)にっいて行った。これ らの患者の性別は男性46名,女性20名である。

  全血は,手術当日の朝,患者の正中肘静脈からへパリン添加真空採血管を用いて採取し,その 一部を直ちに遠心し,血漿を分離した。また,手術により摘出された胃から癌組織と病理学的に 正常と判断された組織とを分取した。

  全血0. smE,血漿O.2smEを灰化用試験管に分注し,それぞれ4倍量の硝酸と等量の過塩素酸を 加え,アルミブロック中で加熱灰化した。灰化後,全血,血漿いずれも1 0mEに定容し,測定試料 とした。胃癌組織と正常部位の胃組織は約lgをケルダールフラスコに入れ,硝酸8耐と過塩素 酸O. 2mEを加え,ガスバーナーで加熱灰化した。灰化後,2smEに定容し,測定試料とした。さら に,これらの測定試料を適宜希釈し,MgとCaを原子吸光分光光度計を用いて測定した。この 際,ス卜口ンチウムが1,OOOppmの終濃度になるよう添加した。

m結果及び考察

1.血液中Mg及びCa濃度

  胃癌患者の血漿Mg濃度は健康成人と比較して,StageIと非転移群において有意に高い値を 示した。また,StageIの血漿Mg濃度はStage皿と比 較して有意に高い値を示し た。患者の 全血Mg濃 度 は健 康成 人と 比較 し て,StageI,Hに おいて有意に高い値を示し た。また,

StageI,Hの全血Mg濃 度はStage IVと比較して有意 に高い値を示した。すなわ ち,血液中 Mg濃度は前期のStageで高い値を示すこと,従って ,胃癌患者における血液中Mgの評価は Stageを考慮する必要があることが示唆された。

  胃癌患者の血漿Ca濃 度は健康成人と比較して,StageI,m,IV,非転移群,リンパ群のみ の転移群,他臓器転移群において有意に低い値を示した。このように,有意に低い血漿Ca濃度 はほとんどのStageと 全ての転移群で見いだされた ことから,.胃癌患者の血 漿Ca濃度は

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2.胃癌組織中Mg及びCa含量

  胃癌患者の 胃癌組織は正常部位の胃組織より有意に高いMg含量を示した。さらに,有意差 は認められな いものの,各Stageや各転移群においても同様の傾向が示された。癌組織中の Mg含量は一部 の報告を除き,高い値を示す ことが報告されている。MgはATPを中心にして エネルギー産生のほとんどの段階に関与し,蛋白代謝,核酸代謝,膜輸送等に関連している。動 物実験でMg欠 乏は腫瘍組織の成長を阻害す ることから,腫瘍組織はMgを要求することが示 されている。 従って,胃癌組織でのMgの増加はその代謝,成長に関与しているものかもしれ な い 。 今 後 , 細 胞 レ ベ ル で のMgの 変 動 を 明 ら か に す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。   Ca含量に関しては胃癌患者の胃癌組織はその正常部位の胃組織より有意に低い値を示した。

さらに,各Stageや各転移群においても同様の傾向が示されたが,有意差はりンパ節のみの転 移群だけに認 められた。Caは小胞体やミトコンドリアなどの細胞内Ca貯蔵器官に多く含まれ ていることか ら,癌細胞内でのCa分布を検討し,Ca低下との関係を明らかにする必要のある ことが示唆された。

IV結  語

  胃癌 の進行程度と転移に関連して血液及び胃癌組織におけるMg及びCaレベルの変動を検討 し,以下の結論を得た。

1.前 期のStageに属する患者の血 液中Mg濃度は,健康成人また は後期のStageに属する患 者と比 較して,有意に高い値を示 した。血漿Ca濃度はほとんどのStageとすべての転移群で 健康成 人と比較して有意に低い値 を示した。しかし,全血Ca濃度は,逆に,後期のStage及 びりンパ節と他臓器に転移した群で有意に高い値を示した。

2.胃 癌患者の胃癌組織は正常部位 の胃組織と比較して有意に高いMg含量と有意に低いCa含 量を示した。各Stageや各転移群においても,有意差は認められないものの,同様の傾向が認 められた。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    斎 藤 和 雄 副 査    教 授    内 野 純 一 副 査    教 授    石 橋 輝 雄

  マグネシウム(Mg)とカル シウム(Ca)は生体内に比較的多量に存在し,腫瘍の発生や成長 と密接な関係があることが知られている。しかし,癌患者におけるMgとCaの動態に関する研 究は比較的少ない。本研究では,血液及び胃癌組織中のMgおよびCaレベルを明らかにし,胃 癌の病態,進行,転移などとの関連にっいて検討した。

  対象は外科手術を施行され,術前に化学療法および放射線療法を受けていない胃癌患者85名と 健康成人36名で,全血および血漿中MgおよびCaの測定を原子吸光分光光度計を用いて行った。

同様に,胃癌組織と正常組織中のMgおよびCa濃度を同一患者で測定し,比較検討した。胃癌 患者は胃癌取扱い規約に基づき肉眼的進行程度によりStageIからWの4群に分類し,さらに転 移の 有無 によ り, 非 転移 群, リン パ節 の みの 転移 群,他臓器転移群の3群に 分類した。

  その結果,胃癌患者の血漿Mg濃度は健康成人と比較して,StageIと非転移群が有意に高い 値を示した。また,StageIの血漿Mg濃度はStage皿 と比較して有意に高かった 。患者の全 血Mg濃度は健康成人と比較し て,StageI,IIにおいて有 意に高く,また,StageI,且の全 血Mg濃度はStage IVと比較し て有意に高い値を示した。 すなわち血中Mg濃度の増加は癌の 進行と密接な関係を有することが明らかとなった。

  胃癌患者の血漿Ca濃度は健康成人と比較して,StageI,皿,IV,非転移群,リンパ節のみ の転移群,他臓器転移群において有意に低く,癌の進行との係りが少ないことが示唆された。全 血Ca濃度は健康成人との比較 では,有意に高い値がStagem,IV,リンパ節のみの転移群,

他臓器転移群で認められた。しかし,全血Ca濃度とへマトクリット値またはヘモグロビン値と

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を反映する結 果と思われる。今後,細胞レベルでのMgの変動を明らかにする必要があると考 えられる。

  Ca濃度では胃癌患者の胃癌組織はその正常胃組織より有意に低い値を示し,各Stageや各転 移群において も同様の傾向がみられた。Caは小胞体やミトコンドリアなどの細胞内Ca貯蔵器 官に多く含ま れていることから,今後癌細胞内でのCa分布を検討し,Ca低下との関係を明ら かにする必要のあることが示唆された。

  以上の成績は胃癌の原因と病態を生体内微量元素との関連において追求するのに極めて有用な 知見であると 思われる。口頭発表の際,内野教授から血中Mgレベル上昇の意味,細胞レベル での検討の有 無,癌の進行とMg代謝との 関連,血漿および癌組織中Ca濃度低下の理由,Ca の吸収に対する胃の係わりにっいて,石橋教授から組織中MgおよびCaレベルの意味にっいて,

細川教授からMg,Caレベルの変動は癌の原因かあるいは結果かにっいて,寺沢教授から動物 の癌のMg,Caレベルにっいてそれぞれ質問がなされた。また,皆川教授からホメオスタージ スや免疫系との関連を今後考えて行くことにっいてのコメン卜があった。これらに対して,申請 者からは概ね妥当な回答が得られた。さらに,副査の内野教授と石橋教授からは個別に論文の詳 細にっいて審査が行われた。

  以上,本論 文はこれまで不明であった胃癌患者の血中ならびに胃癌組織中のMgおよびCaレ ベルを明らかにし,医学上有益な知見を提供したものであり,審査員一同は博士(医学)の学位 に値するものと判断した。

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参照

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