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博士(医学)小松嘉人 学位論文題名

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Academic year: 2022

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(1)

     博士(医学)小松嘉人 学位論文題名

血 清 抗 」arelicobacを ダpylori

空胞化サイトトキシン抗体の臨床的意義

―とくに胃癌との関連―

学位論文内容の要旨

【 緒 言】

  本 研究 で はH.pylri菌 側 の 病 原性 因 子 と し て 注 目 さ れ て いる 細 胞 空胞 化サ イ ト ト キ シ ン (VacA) に 着 目 し た.V acAと 疾 患 の 関 連 性 を 調 べ る た め , リ コ ン ビ ナ ン 卜 VacA蛋 白 を 用 い た Enzyme‑Iinked immunosorbent assayELISA) 法 に よ る ヒ ト 血 清 抗VacA抗 体 測 定 系 を 樹 立 し , 患 者 血 清 のlgGVacA抗 体 価 及 び サ ブ ク ラ ス 抗 体 価 を 測 定 す る こ と に より , そ の 臨 床 的 意 義 , 特 に 胃 癌 と の 関 連 を 明 ら か に し よ う と し た . ・

【 方 法 お よ び 結 果 】 当 科 を 受 診 し たH.pyori陽 性 患 者 か ら 得 ら れた98血 清 検 体 を 対 象 と し た , 疾 患 の 内 訳 は 胃 癌 症 例35例 , 胃 潰 瘍 症 例32例 ,慢 性 胃 炎 症 例31例 で , 平 均 年 令 は そ れ ぞ れ620歳 ,613歳 ,611歳 で あ り, 各 群 の 平 均 年 齢 に 統 計 学 的 な 有 意 差 は な か っ た , ま た , 男 性 は69例 , 女 性29例 で あ っ た . 血 清 は ‐80℃ で 凍 結 保 存 し た , その 後 予 備 実 験 に てELISA測 定系 を 樹 立 し 血 清 中 の 抗VacA抗 体 及 び 各 サ ブ ク ラ ス ( |gGl ‑‑4) に つ い て 吸 光 度 を 測 定 し た , カ ッ 卜 オ フ 値 はH.py′ 〇ri陰 性 血 清28検 体の 測 定 吸 光 度 値 よ り平均 値と 標 準 偏 差 (SD) を 算 出 し , 平 均 値 十2SDを 当 測 定 系 に お け る カ ッ ト オ フ 値 に 設 定 し た , 血 清VacA抗 体 陽 性 率 及 び 各 血 清VacA抗 体 サ ブ ク ラ ス 抗体 陽 性 率 の 検 討 に はFi sherの 直 接 確 率 計 算 法 を, 抗 体 価 と 萎 縮 及 び 各 疾 患 との 相 関 の 検 討 に は 直 線 回 帰 分 析 を 用 い た . い ず れ もP0.05を 推 計 学 的 に 有 意 と し た . 抗H.py′ 〇ri抗 体 陽 性98例 中39例 (39.8% ) が 抗VacA‑ IgG抗 体 が 陽 性 を 示 し , 疾 患 毎 で は 胃 癌 が457% , 慢 性 胃 炎 が41.9% , 胃 潰 瘍 が313% と 胃 癌 が 最 も 高 か っ た が , 各疾 患 の 間 に は 有 意 差 は 見 られ な か っ た , 各 サ ブクラ スの 測 定 結 果 よ りlg G4抗 体 陽 性 率 は 胃 癌症 例 に お い て 有 意 に 他 疾 患 より 高 い こ と が 示 さ れ た . ま たlgG1抗 体 陽 性 率 に お い て も 胃 癌症 例 は 有 意 に 胃 潰 瘍より 高い 陽 性 率 を 示 し た , ま た 慢 性 胃 炎 と の 間 に も 有 意 差 は 認 め ら れ な かっ た も の の 抗 体 価 の 中 央 値 で 胃 癌に 高 い 傾 向 が 見 ら れ た ‐ 胃粘 膜 萎 縮 と 関 連 の 強い血 清ペ プ シ ノ ー ゲ ンIII比 と , 抗VacA抗 体陽 性 例 に お け る 各 疾 患 と の 関連 性 を 胃 癌 例 と 非 胃 癌 例 に わ け て比 較 検 討 し た と こ ろ , 胃 癌例 に お い て は 明 ら かな相 関は

(2)

見られないものの,非胃癌例では相関係数ー0 .4 23 (p く0.05 )と負の相関 が見られた.

【考察】

  

本研究では冖,py ′〇ri 陽性患者血清を用いた抗VacA ーlgG 抗体価測定では,

各疾患毎の陽性率は胃癌で45 .7 %,慢性胃炎で41 .9 %,胃潰瘍で31 .3 %と,

胃癌患者で最も高い陽性率を示したが,各疾患の間には有意差は認められなか った,萎縮性胃炎や胃癌分離株で十ニ指腸潰瘍分離株より空胞化サイ卜卜キシ ン活性が強いことから活性と胃粘膜の萎縮が関連する可能性が報告されている が,本研究では各疾患と抗

VacA‑ IgG

抗体陽性率の間には有意な差はみられ ず,空胞化サイトトキシン活性と抗VacA 抗体価,粘膜萎縮の間の直接の関係 を証明するには至っていない.将来的には抗VacA 抗体高値の患者より分離さ れた菌株毎の空胞化サイト卜キシン活性を測定しその関係を直接的に明らかに する必要があると思われる.抗

VacA

抗体陽性例における抗体価と血清ベプシ ノーゲン(以下P G) |,lI ,I /Il 比の各値との関連を比較検討したところ,非 胃癌では負の相関を示すため萎縮との関連が強い可能性が考えられるが,胃癌 ではPGI/ll との間に明らかな相関を認めなかった.

  

ま た胃癌 と抗

VacA

− |

gG

抗 体の関 係をさ らに 詳細に 検討す るために抗

VacA

―|

gG

抗体サブクラスの測定を実施したところ抗

VacA

lgG4

抗体陽性 率において,胃癌で26 %(P く0.01 )と他疾患に比し有意に高いことが示され,

胃癌と抗

VacA

−|

gG4

抗体の強い関連が示唆された,胃癌と抗VacA‑ IgG4 抗 体の関係についての報告は本研究が初めての報告である.現在,種々の胃疾患 にお いての

Thl

Th2

の 解析が 進み,

Thl

Th2

が 互いに バラン スをとるこ とで生理機能を維持し,そのバランスの破綻により様々な粘膜障害が発生して くる可能性が報告され,Thl ,Th2 の偏位は

H.py

′〇ri 感染の病期や病態によ り変動することが推定されており,胃炎や消化性潰瘍の場合はThl 優位の免疫 状態が招来されるとされている.    lg G4 に関してはTh2 からのl1‑4 の影響を受 け産生が促進されるという報告や,長期間に渡る持続感染によりその産生がな されるという報告などが見られる.また癌との関連では肺癌における血清lgG サブクラス測定において,特に肺小細胞癌でlgG4 分画が他の組織型の肺癌に 比し高い値を示すという報告や甲状腺癌でサイログロブリンに対するlgG4 抗 体価が高値を示すという報告などが見られており,癌とlgG4 抗体の関連が示 唆される.また乳癌においてTh2 細胞より産生される|1‑4 が増加しているとの 報告もあり,担癌患者においてはThl /Th2 バランスが崩れ,Th2 にシフトし てい ると考 えら れる, 従って本研究結果より胃癌においても同様に

Thl

Th2

バランスが崩れ,

Th2

に傾いており癌の病態に関与している可能性が考 えられる,また抗

VacA‑

gG1

抗体陽性率において胃癌は胃潰瘍に比し有意

(P く0.01 )に高かったことからもTh2 へのシフトを示唆しているものと思わ

れる.l gG1 抗体陽性率は慢性胃炎でも同様に高値を示したが,IgG1 の抗体価

の 平 均 値に お い て 有 意で は な い も のの 胃 癌 の 方 が高 値 を 示 し たこ とも

胃 癌 に おけ る

Th2

優 位の 状 態 を示唆 してい る可能 性があ ると 思われ る.

(3)

【結語】

1

.リコンビナントVacA 蛋白を用いてELISA 法により,ヒト血清抗VacA 抗体

  

測定系を樹立した.

2.

非 胃癌で は抗

VacA

抗体価 と

PGl

/|

I

比 の間に負の相関を認めた.

3.

胃癌において抗VacA‑ IgG4 ,|gG1 抗体は有意に高い陽性率を示し,胃癌

  

の病態にはTh2 ヘシフ卜した免疫応答が関与する可能性が推測された.

(4)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   浅 香 正 博 副 査   教 授   長 嶋 和 郎 副 査   教 授   小 林 邦 彦

学 位 論 文 題 名

血 清 抗 風 ヨZあ 〇 施c彪 〆 緲 励 カ

空胞化サイトトキシン抗体の臨床的意義

―とくに胃癌との関連―

  近 年 、Helicobacter DYloriH.pylri)の 持 続感 染 が慢 性 胃 炎、 胃 潰瘍 、 十 二 指 腸 漬 瘍 、 胃 癌 お よ び 胃MALTリ ン パ 腫 な ど 様 々 な 胃 ・ 十 二 指 腸 疾 患 の 発 症 に 関 与 し て ぃ る こ と が 明 ら かに な って き た. ま た最 近 で は、H.pyloriの全 ゲ ノ ム が 明 ら か に さ れ 病 原 関 連 遺 伝 子 や 各 種 病 原 性 因 子 が 報 告 さ れH.Dyln 感 染 と 疾 患 の 多 様 性 に っ き 研 究 が な さ れ て ぃ る.H.oyln感 染に よ る 多様 な 疾 患 は 、 菌 側 因 子 あ る い は 、 宿 主 側因 子 のみ か らは 考 えに く く 、細 菌 一宿 主 の相 互 作 用 に よ り 起 こ る と 推 測 さ れ る, そ こで 、 本研 究 では り コ ンビ ナ ント 空 胞化 サ イ ト ト キ シ ン ( 以 下 VacA) 蛋 白 を 用 い たELISA法 に よ る ヒ ト 血 清 抗 VacA抗 体 測 定 系 を 樹 立 し , 患 者 血 清 のIgGVacA抗 体 価 及 び サ ブ ク ラ ス 抗 体 価 の 測 定 結 果 か ら 細 菌 ― 宿 主 の相 互 作用 を 検討 し 、疾 患 の 多様 性 、特 に 胃癌 との 関 連を 調 ぺよ う とし た ,対 象 は 当科 を 受診 し たH.DY1〇ri陽 性患 者 から 得ら れ た98血 清 検 体 で 、 疾 患 の 内 訳 は 胃 癌 症 例35例 , 胃 潰 瘍 症 例32例 , 慢 性 胃 炎 症 例31例 で あ っ た . 平 均 年 令 は そ れ そ れ6 2.0歳 ,61.3歳 ,61.1歳 で あり , 各 群 の 平 均 年 齢 に 統 計 学 的 な 有 意 差は な かっ た .ま た ,男 性 は69例 ,女 性29例 で あ っ た , 血 清 は −80℃ で 凍 結 保 存 し た . そ の 後 予 備 実 験 に てELISA測 定系 を 樹 立 し 血 清 中 の 抗VacA抗 体 及 び 各 サ ブ ク ラ ス (IgG14) に つ い て 吸 光 度 を 測定 し た. カ ット オ フ値 はH.Dylri陰性 血 清28検体 の 測定 吸 光度 値 より 平均 値 と 標 準 偏 差 (SD) を 算 出 し , 平 均 値 十2SDを 当 測 定 系 に お け る カ ッ ト オ フ 値 に 設 定 し た . 血 清VacA抗 体 陽 性 率 及 び 各 血 清VacA抗 体 サ ブ ク ラ ス 抗 体 陽 性 率 の 検 討 に はFisherの 直 接 確 率 計 算 法 を , 抗 体 価 と 萎 縮 及 び 各 疾 患 と の 相 関 の検 討 には 直 線回 帰 分析 を 用い た . 抗H.DY1〇ri抗 体陽 性98例 中39例 (39.8%)

が 抗VacAIgG抗 体 が 陽 性 を 示 し , 疾 患 毎 で は 胃 癌 が45.7% , 慢 性 胃 炎 が 41.9% , 胃 潰 瘍 が31.3% と 胃 癌 が 最 も 高 か っ た が , 各 疾 患 の 間 に は 有 意 差 は 見 ら れ な か っ た , 各 サ ブ ク ラ ス の測 定 結果 よ りIgG4抗 体 陽性 率 は胃 癌 症例 に お

‑ 190

(5)

いて有意に他疾患より高いこヒが示された,またIgGl 抗体陽性率においても胃 癌症例は有意に胃潰瘍より高い陽性率を示した,また慢性胃炎との間にも有意 差は認められなかったものの

EU

の中央値で胃癌に高い傾向が見られた.胃粘 膜萎縮と関連の強い血清ペプシノーゲン

I/II

比ヒ,抗VacA 抗体陽性例におけ る各疾患との関連性を胃癌例と非胃癌例にわけて比較検討したところ,胃癌例 においては明らかな相関は見られなぃものの,非胃癌例では相関係数ー0.423

(p く0.05 )と負の相関が見られた.

  

リコンビナント

VacA

蛋白を用いた血清抗

VacA

抗体測定糸の樹立は本研究 が初めての試みである.萎縮性胃炎や胃癌分離株で十二指腸漬瘍分離株より

VacA

活性が強いことから活性と胃粘膜の萎縮が関連する可能性が報告されて いるが,本研究では各疾患と抗VacA ―IgG 抗体陽性率の間には有意な差はみ られず,VacA 抗体価と粘膜萎縮の間の直接の関係を証明するには至ってぃな い.抗

VacA

抗体陽性例におけるVacA 抗体価と血清ペプシノーゲン(以下PG )

I/II

比との関連を比較検討したところ,非胃癌では負の相関を示すため萎縮と の関連が強い可能性が考えられたが,胃癌ではPGI/II との間に明らかな相関 を認めなかった,従って胃癌状態では、H.I)Ylori に対する特異的な免疫応答の 関与が推測された,ま、た胃癌と抗VacA ―IgG 抗体の関係をさらに詳細に検討す るた めに 抗

VacA

IgG

抗 体サブ クラス の測 定を実 施した ところ 抗

VacA

IgG4

抗体陽性率におぃて,胃癌で26 %(P く0.01 )と他疾患に比し有意に高い ことが示され,胃癌と抗VacA ーIgG4 抗体の強い関連が示唆された.胃癌と抗

VacA

IgG4

抗体の関係については本研究が初めての報告である.この点か ら も 胃 癌 に お け る 特 異 的 な 免 疫 応 答 の 関 与 が 示 唆 さ れ た .

  

公開発表にあたって、副査の小林教授から、リコンビナントVacA 蛋白を用 いて血清抗体価を簡便に測定できる系を樹立した興味深い仕事であり、今後の 発展、応用を期待する旨のコメントとELISA 測定の際の手技にっき細かなア ドバイ スを頂 いた 後に、

H.DYlo

冖抗体 陽性例で

VacA

を有する割合、

VacA

抗体と菌種との関わり、IgG4 の高値と疾患の関係にっき質問があった.これに 対し申請者は、すぺての

H.pyl

〇n 菌株がレacA をもっているが、

VacA

蛋白を 発現してぃるのは50 −70 %と報告されている.従って、抗体の出現の有無は菌 側からの因子だけでは考えに〈〈、宿主側の要因も関連していると思うと回答 した,また長嶋教授からは、抗体価が高い人は抗原量が多いと考えてよいか、

また抗体価が高い人は癌に罹恵しやすいのか、またVacA の細胞障害機序、感 染の経過と

VacA

抗体の変遷について質問があった,申請者は抗原量と抗体価 は直接関係はなぃこと、抗体価の高さと癌の直接の関係は不明なこと、VacA は

vacuolar ATP ase

と相同性があり、イオン輸送に変異を来し空胞を形成 させること、萎縮が進んで

H.pylori

自体が減っても、VacA 抗体価は低下せ ず持続すると答えた.最後に主査の浅香教授より、胃癌におぃてVacA 抗体価 の平均 値が高 いこ と、

IgG4

が高 いこと は非常に興味深いが

CagA

に比し、

VacA

では明確な

data

が無いため、本研究の結果もまだ十分なものとは言え なぃため、樹立した測定系を用いて更なる研究が必要であるとぃうコメントが あった.

  

本研究は、リコンビナント

VacA

蛋白を用いて血清

VacA

抗体測定系を初め

‑ 191 ‑

(6)

て樹立し、胃疾患患者血清を用いて抗VacA 抗体を測定し、

H.Dylori

感染と

疾患の多様性、特に胃癌との関連を考える上で興味深い結果を得てぃる.審査

員一同は、これらの研究を高〈評価し、申請者が博士(医学)の学位を受ける

のに充分な資格を有するものと判定した,

参照

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