博 士 ( 医 学 ) 山 本 学 位 論 文 題 名
聡
ドナー由 来 TNF‑a による
Thl 依存的 GVHD エフェクター細胞誘導抑制機構の解明 学位論文内容の要旨
同種造血幹細胞移植は造血器悪性腫瘍や造血不全などの患者に対し有効な根治的治療法 のーつである.近年、様々な支持療法の発達により,移植成績は徐々に改善しているが,
Graft−versus一host dis ease(以下GVHDと略す)は依然として移植後の死亡の主因のーつ と なってい る.強カ なGVH反応はMajorある いはMinor抗原の 相違を認識した活性化ドナ ー細胞により引き起こされる.しかしながらサイトカイン調節機構の破綻や,移植前処置 による宿主の臓器障害もまたGVH反応の誘導の増強に関与している.ことが示されている,
な かでもtumor necrosis factorQ(以下TNF‑aと 略す)はGVHDの病態に深く関与してい ることが理解されてきている.すなわちTNF ‑aは宿主の臓器に対する直接傷害に加えMaior histocompati ble(以下MHCと略す)抗原や接着分子の発現を増強する,さらにTNF‑aはオ ー トクリシT細胞 増殖促 進因子と しても働きうるため,T細胞ク口ーンの増殖が促進され る,,またマウスモデルにおいては,抗TNF‑a抗体はGVHDの重症度を低下させることが知ら れ ている.過去の報告では,ホストのp55 TNF‑a受容体は早期のGVHDを制御しているとさ れ ており,またドナーのp55TNF‑a受容体はア口抗原反応性T細胞活性化に重要な役割を果 た していることも報告されている.以上のことよルホスト由来のTNF‑aはア口抗原に対す るT細胞 応答及び急性GVHDの重症度を増悪させる働きを有すると考えられる.一方,ドナ ー 由来のTNF‑aがどのような役割を果たしているかは未だ明確にされていなかった,本研 究 において,私はGVHDマウスモデルを用いてin vi voでのアロ抗原に対するT細胞応答に お い て , ド ナ ー 由 来 のTNF‑aが い か な る 役 割 を 果 た し て い る か を 検 討 し た , 1.ドナー細胞の生着. B6xDBIV2 Fl(以下BDF1と略す)マウスにC57BL/6(以下B6と略す)
マ ウス脾細 胞を移入 するこ とによっ てGWDマウスを 作成し た.本GVHDマウスにおけるキ メリズムをホスト由来のH−2Kdハプ口夕イプをマーカーとしてフ口ーサイトメトリーで検 討した.したがって,H−2Kd陽性細胞はホスト由来であり,H―2Kd陰性細胞はドナー由来を 意 味する, その結果 ,急性GVHD誘導2週後に は野生型B6マウス およびTNF‑aノッ クアウ トB6マウスの 脾細胞 を移入さ れたホス トいず れにおい ても脾腫とドナーT細胞比率の増 加 が見られたが、TNF‑aノックアウトB6細胞を移入されたホストの脾細胞中のB220陽性細 胞 は,野生型B6をドナーとしたホストと比較し早期に減少していた.またCD4陽性細胞や CD8陽性細 胞はTNF‑aノック アウトB6をドナー とした際 に,よ り早期の 増殖を 認めた.
2.ホス ト細胞に 対する 細胞傷害 性T細胞の誘導,増殖した細胞のホストに対する特異的 な 細胞傷害 活性を測 定した .TNF‑aノ ックア ウトB6をド ナーとしたホストは,野生型B6 をドナーとした群に比ベH―2Kd抗原に対する細胞傷害性をより強く有していた.また全て のホストにおいてドナー型であるH―2Kbに対する細胞傷害性の増強は認めなかった.CD8陽 性T細胞 分画を分離し測定ところ,ホストに対する細胞傷害活性は濃縮され,ホストに対 す る 特 異 的 な 細 胞 傷 害 活 性 は 主 にCD8陽 性T細 胞 に よ る も の と 考 え ら れ た ,
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3. GVHDマウ スにおける血清IFN‑yレベル.これまでの報告ではIFN‑yなどのThlサイト カイ ン は,急 性GVHDの誘 導に重要 な役割 を果たし ている と考えら れてい るるため それ ぞれのホス卜における血清IFN―Yを測定した.GVHDマウスにおいてはday4にはIFN一Yの上 昇を認め,day6にヒ゜―クを示した.特にTNF‑aノックアウトをドナーにした群では,野生型 B6をドナーとした群に比し有意に高いIFN‑yの上昇を認めた.またIFNIYノックアウトをド ナーとしたホストや対照群では血清IFN‑yの上昇は認めなかった.血清中に上昇したIFN‑y がいかなる細胞から産生されているかを検討するため,ホスト脾細胞の細胞内サイトカイ ン産生能 を検討 した.野生型B6をドナーとした群に比べ,TNF‑aノックアウトをドナーと した群でIFN‑rr産生を 伴うCD4およびCD8の増 加を認 め、特にCD8で 顕著でであった.こ れらの結 果より 血清IFN‑yの上昇 は主にドナー由来CD8に由来し,それに付随して活性化 さ れ た ホ ス ト T細 胞 に も IFN‑yの 産 生 が 認 め ら れ る こ と が 示 さ れ た , 4.工 ンドト キシン投 与に対す る血清TNF‑aの上昇.GVHDマウスにおけるエンドトキシン に対する 感受性 を検討す るため ,GVHDを誘導したホストに対しLPSを投与し,TNF‑aの産 生能を検 討した ,正常コ ント口 ールマウ スに1 0VgのLPSを投与し ても,血清中のTNF‑a は測定感 度以下 であった .LPSを投与し ない場合 ,野生 型B6およびTNF ‑aノックアウト B6いずれを ドナー にしたホ ストに おいても ,移植 後6日 後,8日後の血清中のTNF‑aは測 定感度以 下であ ったが, 移植後10日後にLPSを投与することにより,著明なTNF‑aの上昇 が起こっ た.特 筆すべきことに,この現象はむしろTNF‑aノックアウトB6をドナーとした 群に顕著に見られた,これらの結果からTNFーaノックアウトB6をドナーとしたホストにお いてはエ ンドト キシンに対するの感受性の亢進がみられ,その際増強するTNF‑a産生はホ ´
ストの残存細胞に由来していると考えられた.
5. TNF‑aノックア ウトド ナーによ るGVH反 応増強 のIFN‑y依 存性,IFN7はGVHDの誘導 における ア口抗 原反応性T細胞の活性化に重要な役割を有することが報告されているが,
我々はTNF‑aノッ クアウト をドナ ーにすることにより惹起されるGVH反応の増強が,ドナ ーのIFN―Yに依存性であるかを検討した,野生型B6及びTNF‑aノックアウトB6に加えTNF‑a, IFN‑yの両者を欠損するダプルノックアウトマウスを作成し,これをドナーとして用いた.
このダブ ルノッ クアウトマウスをドナーとして用いた場合には移植後7日目に見られたホ ストの血 清中のIFN−Yの上昇 や10日目 にLPSを投与した際のTNF‑aの上昇はほとんど見ら れなかった,次に,CTL誘導におけるドナー由来のIFN‑yの役割を検討するためH―2がホス トタイプ であるP815に対する細胞障害性を検討した,移植後7日目にホストの脾細胞を採 取し,BDF1脾細胞と共培養を行ったところ培養上清中のIFN‑Yレベルは野生型B6をドナー とした群 に比ベ ,TNF‑aノックアウトB6をドナーとした群において著しい上昇を認め(結 果は 示 さず) ,共培 養4日 後のP815細 胞に対す る細胞 傷害活性 もTNF‑aノックア ウトB6 をドナーとした群で増強していた.しかしTNF‑a,IFN一Y両者を欠損したダブルノックアウ トB6をドナ ーとし て用いた 群では ,培養上清中のIFN‑yの上昇は検出されず,TNF‑aノッ クアウトB6をドナ ーとした 群に見 られたP815細胞に対する細胞傷害活性の著明な上昇も ダブルノックアウトをドナーとした群では低下していた.
以上のように、本研究において私は、親系マウス脾細胞をFlマウスに移入する急性GVHD マウスモ デルを 用いて,TNF‑aノックアウトドナー細胞は,移植後早期のThl依存性のCTL の誘導を 促進す ること, すなわ ちドナー 由来のTNF‑aは急性GVH反応に対し抑制的に働き うることをはじめて示した,これらの知見により同種造血細胞移植の際のGVHDの危険因子 を持つ症例の同定において,ドナーのサイトカイン産生に着目した異なったアプ口ーチが 考慮されうるという点で重要な新知見であると考えられた.
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学位論文審査の要旨 主 査 教授 小池隆 夫 副査 教授 小野江和則 副 査 教授 西村孝 司
学 位 論 文 題 名
ド ナー由来 TNF‑cv に よる
Thl 依存 的GVHD エフェクター細胞誘導抑制機構の解明
急 性GVHDの 発 症 要 因 の ひ と つ に 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン が 深 く 関 与 し て いる こ と が 知 ら れ て お り 、 中 で も レ シ ピ ェ ン ト 由 来 のTNF‑aは 移 植 前 処 置 に 関 連 し て 産 生 さ れ 、 ア □ 抗 原 反 応 性T細 胞 の 誘 導 の 増 強 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 、 明 ら か に さ れ て き て い る 。 し か し 、 ド ナ ー 由 来 のTNFーaの 役 割 に 関 して は こ れ まで 明 確 にさ れ て いな い 。 本研 究 で は、TNF‑a− / −マ ウ ス をド ナーに 用いた 急 性GVHDマ ウ ス モ デ ル に お い て ド ナ ー 由 来 のTNF‑aがGVHDエ フ ェ ク タ ー 細 胞 誘 導 に お い て い か な る 役割 を 果 たし て い るか を 明 らか に す るこ と を 目的 と し た 。 対 象 と 方 法 と し て は 、 野 生 型 お よ びTNF‑a+C57BL/6マ ウ ス の 脾 細 胞5x107 個 をBDF1マ ウ ス に 尾 静 注 す る こ と に よ り 誘 導 し、 比 較 検討 し た 。そ の 結 果TNFー a v‑B6を ド ナ ー に 用 い た レ シ ピ ェ ン ト で は 移 植 後14日 後 に は 野 生 型B6を ド ナ ー と し た レ シ ピ ェ ン ト と 比 較 し 早 期 の 脾 細 胞 の 減 少 を 認 め 、 レ シ ピ ェ ン ト タ イ プ のP815に 対 す る 細 胞 障 害 性 も 増 強 し て い た 。 移 植 後 早 期 の レ シ ピ ェ ント の 血 清IFN‑ア はTNF‑ aI/IB6を ド ナ ー と し た レシ ピ ェ ント で 著 明 な上 昇 を 認め 、 そ の 産 生 細 胞 は 主 に ド ナ ー 由 来 のCD8陽 性T細 胞 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま たLPS刺 激 に 対 す る レ シ ピ ェ ン 卜 のTNF―a産 生 能 はTNF―aナB6を ド ナ ー と し た レ シ ピ ェ ン ト に お い て む し ろ 著 明 に 亢 進 し て い た。 さ ら にTNF―aとIFNー ア の ダ ブ ル ノ ッ ク ア ウ 卜B6を ド ナ ー に 用 い る とTNFーa/B6を 用 い た 際 に 認 め ら れ た 血 清IFN― ア の 上 昇 、 お よ びLPS刺 激 に 対 す る レ シ ピ エ ン ト のTNF−a産 生 能の 増 強 は い ず れ も 著 明 に 低 下 し た 。 ま た 移 植 後7日 後 の レ シ ピ ェ ン ト 脾 細 胞 を BDF1脾 細 胞 と り ン バ 球 混 合 培 養 を 行 い 再 刺 激 し た 後 、 レ シ ピ ェ ン ト タ イ プ の P815に 対 す る 細 胞 障害 性 を 検討 し た 結果 、TNF―a・/Iを ドナ ー に し たレ シ ピ ェン ト の 脾 細 胞 で は 細 胞 障 害 性 の 増 強 が 認 め ら れ た が 、 ダ ブ ル ノ ッ ク ア ウ 卜 を ド ナ ー と し た レ シ ピ ェ ン ト で は 野 生 型B6を ド ナ ー と し た 場 合 に 比 べ て も 細 胞 障 害 性 は 低 下 し て い た 。 以 上 よ り 本 論 文 に お い て 、 ド ナ ー 由 来 のTNF−aの 欠 損が ド ナ ー 由 来 のIFN― ア の 産 生 を 増 強 す る こ と に よ りGVH反 応 を 増 強 し て い るこ と か ら 、 ド ナ ー 由 来 のTNF―aは ド ナ ー のIFN― アの 産 生 を制 御 す るこ と を 介 してGVHD エ フ ェ ク タ ー 細 胞 誘 導 に 対 し む し ろ 抑 制 的 に 働 い て い る こ と が 示 さ れ た 。
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