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博 士 ( 医 学 ) 上 田 光 男 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 上 田 光 男

学 位 論 文 題 名

麻 酔 管 理 に おけ る トノ メ トリ 法 応 用に よ る非 観 血的 , 連 続 的 動 脈 血 圧 測 定 の 臨 床 的 評 価

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    I.研 究目的

  近 年, 心 血管 系合 併症を 有する患者の増加, 病態の複雑化,手 術適応の拡大など によって,術 中に 血圧 が 大き く変 動する ことが予想される症 例が増えてきてい る。したがって, 麻酔管理にお いて は, 動 脈内 にカ ニュー レを留置し,一心拍 毎の血圧値と血圧 波形をモ二夕リン グできる観血 的手法(以下inter―arterial blood pressure: IBP)が普及している。しかし,動脈内にカニュー レを 留意 す るこ とに は動脈 損傷,血栓形成,感 染などの合併症が 懸念され,非観血 的手法による 一心 拍毎 の 血圧 値と 血圧波 形のモニタリングが 望まれていた。ト ノメトリ法応用に よる血圧測定 は以 前よ り 種々 の研 究がな されてきたが,セン サの大きさ,装着 法の問題などのた めにより広い 臨床応用には至らな かった。今回,ト ノメトリ法応用に よる連続的,非観血 的血圧損IJ定装置を改 良,開発し,その臨 床的検討を行った ので報告する。

    n.対 象と 方法

  1) 正 常 血 圧 群 : 北 海 道 大 学 医 学 部 附 属 病 院 中 央 手 術 部 に お け る 麻 酔 管 理 を 行 っ たASA

(American Society of Anesthesiologists)術前 評価1〜3の 定期 手 術患 者70名 (男 性32名 , 女 性38名 ,8〜82歳 )を 対 象と した 。 オシ 口メ トリ ック法による血圧測 定を左右の上腕で 行い,

5 mmHg以 上の 差の あ る症 例は 研 究の 対象 か ら除 外し た 。右 ない し 左橈 骨動 脈 に22Gテフ 口ン 製 力 二 ユ ー レ を 挿 入 し , 校 正 さ れ たGould P23XLト ラ ン ス デ ュ ー サ を用 い て連 続的 にIBPを 測 定 した 。 反対 側の 橈 骨動 脈上 に トノ メト リ セン サを 装 着し ,連 続 的に 動脈 血 圧( 以下tonome‑

tric blood pressure: TBP)を 測定 した 。 この セン サ は,15個 の 径0.6mmの圧抵抗性ミ ニチュ ア トラ ン スデ ュー サ を0. 3mm間隔 に 一列 に配 列 した もの で ある 。自 動サーチ 方式(automatic sensor positioning system) によ っ て一 個の トラ ンスデューサが確実 に動脈壁の中心に 位置す る よう に 工夫 され て いる 。血 管 壁に 加え ら れる 圧(holdーdown pressure)は 最良 の 圧波 形( 脈

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圧 )の 得られ る値を 内蔵の コン ピュー タによ り自動 的に選 択さ れる。本装置による血圧の校正は 反 対側の 上腕に 装着し たカ フを用 いての オシ口 メト リック 法によ り行った。両手法による信号は 心 電 図 と と も に 連 続 的 にPCMテ ― プ レ コ ー ダ とNEC9801UXコ ン ピ ュ 一 夕に 記 録 し , デー 夕 解 析に供 した。 一部 の症例 では押 圧によ る末梢 血流 障害の 有無を 確認す るために,センサ装着側 の 母 指 に パル ス オ キ シ メ ー夕(Pulsox―7, ミ ノ ル タ 製) を 装 着 し, 連続 的にプ レチス モグラ ム を観察 した。 デー タのサ ンプリ ングは 血圧変 動の 大きい と予想 される 麻酔導入期,麻酔回復期 に ,それ ぞれ 10〜25分間, 連続的 に行っ た。

  2) 低 血 圧 麻 酔 群 :同 様 の 方 法 に よっ て , 人 為 的低 血 圧 麻 酔 管理 を 行 っ たASA術 前 評 価1‑

3の 定 期 手術 患 者21名( 男性13名 ,女性8名 ,10〜76歳)を 対象と して 両手法 を比較 した。 低血 圧 はエン フルレ ン/ 笑気麻 酔のも とでニ トログ リセ リンの 持続静 脈内注 入により目的の血圧を得 た 。デ一 夕のサ ンプ リング は低血 圧導入 期(10分), 持続期(30分 )お よび回 復期(10分) に連 続 的に行 った。

  両 手法を 比較 するた めに両 手法の 収縮 期血圧 (以下 ,systolic arterial pressure: SAP),

平 均 血 圧 (以 下 ,mean arterial pressure: MAP) ,拡張 期血 圧(以 下,diastolic arterial pressure:DAP)に っ い てbias(mean difference between two methods)お よ びlimits of agreement (mean土2SD of bias)を 求 め た 。Biasの 変 化 は 両 群 に お け るSAP,MAP, DAPの値 をそれ ぞれの4段 階の血 圧値 に分け て評価 した。

    ni.結  果

  両 手 法 に よ る 血 圧 波 形は 極 め て 類 似し て お り , 急激 な 血 圧 変 動 時に お い て もTBPはIBPに りア ルタイ ムに追 随して いた 。期外 収縮の 場合に も両波 形上 に相似 形の期 外収縮が認められた。

さ ら に,IBP波形 に オ ー バ ーシ ュ ー ト が 見 られ た 場 合 に も,TBPには 認め られ なかっ た。押 圧 によ るプレ チスモ グラム 上で の血流障害は認められず,術後に圧迫部位に局所的変化は見られず,

疼痛 などの 訴えも なかっ た。

  正 常 血 圧 群 で はbiasはSAPで ―0.4土5.9mmHg(M土SD),MAPで‑O.1土4.7mmHg,DA Pで0.O土5. 4mmHgで あ っ た 。Limits of agreementはSAPで‑O.4土11. 8mmHg,MAPで ― O.1土9. 4mmHg,DAPでO.0土10. 8mmHgであ った。 各血 圧段階 毎のbiasはSAPでー1.8〜O.2 mmHg,MAPで‑O.  8〜0. 6mmHg,DAPで ー 1.0〜0. 7mmHgの 範 囲 で あ っ た 。   低 血 圧 麻 酔 群 で はbiasはSAPで ―0.7土6.6mmHg(M土SD),MAPで0.7土5.OmmHg,DAP で2.8土5. 8mmHgで あ っ た 。Limits of agreementはSAPで ―0.7土13. 2mmHg,MAPでO.7

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土10. OmmHg,DAPで2.8土11.6mmHgで あった 。各血 圧段 階毎のbiasはSAPで・ ―2.1〜2,3mm Hg,MAPで ― 1.6〜3.5mmHg, DAPで‑O. 6〜3. 8mmHgの 範 囲 内 で あ っ た 。

    IV.考  察

  1) 原理 お よ び 方 法論 : ト ノ メ トリ 法 に よ る 動脈 血 圧 の 測 定 原理 は 押 圧(hold−down press ure) をか けて 血管壁 を平担 化す ると, 血管壁 の局率 半径 は無限 大とな り,円 周方向 応カ が消失 す る。し たがっ て, 測定圧 は血管 壁に垂 直に働 く血 管内圧 を直接 反映す る。 このためには@動脈 は 下から 骨で支 えら れてい ること ,◎押 圧は動 脈壁 を平坦 化する が閉塞 はし ないこと,◎動脈壁 と 皮膚の 距離は 動脈 径に比 べて小 さく, 無視で きる こと, @動脈 壁は理 想的 な膜様作用を示すこ と ,◎セ ンサは 動脈 平坦部 の面積 より小 さく,その中心に位置することなどの条件が必要となる。

  原 理的に はト ノメト リ法は 単一の トラ ンスデ ューサ によっ て圧測 定が 可能で ある。しかし,動 脈 壁に働 く円周 方向 応カと 周囲組 織から の影響 を完 全に除 去する には, トラ ンスデューサの径と 動 脈の径 の比がO.10〜0. 25であ ること が必要と考えられている。今回の装置では,橈骨動脈の径 を2 mmと推 定する と,こ の比は 約O.3と条件 を満た して いない 。そこ で,よ り確 実で安定した血 圧 値を得 るため に, オシ口 メトリ ック法 による 上腕 部の血 圧を校 正値と して 用いている。今後,

さ らによ り精巧 で信 頼度の 高いミ ニチュ アトラ ンス デュー サが開 発され れば ,オシ口メトリック 法 による 校正は 不要 となる 。

  2) 臨 床 成 績 : 正 常 血 圧 群 , 低 血 圧 麻酔 群 のbiasお よ びlimits of agreementの 値は 臨 床 麻 酔 上 , 許 容 範 囲 内 で あ り , TBIは IBPに 匹 敵 す る も の で あ る と い え る 。   TBP波 形 はIBP波 形 と 相 似形 で あ り , 急激 な 血 圧 変 動時 に も り ア ル タイ ム に追 随して おり , そ の信頼 性,再 現性 には問 題ない 。本法 は非観 血的 であり ,動脈 にカニ ュー レを留意する必要が な いので ,合併 症も なく, 患者へ の負担 も少ない。さらに,その装置にも特殊な技術は必要なく,

長 時間使 用して も神 経や血 管の損 傷はな く,安 全性 ,易使 用性の 点にお いて も,観血的手法より 有 利 で あ る。 ま た ,TBPで はIBPに み ら れ る よう な 血 圧 波 形の オ ー バ ー シュ ー トやな まりが な く ,TBPの 血 圧 波 形 の 信 頼 性 の 高 い こ と を 示 し て い る 。TBPで はIBPと 違っ て 動 脈 血 ガス 分 析 が不可 能であ る。 しかし ,現在 ではパ ルスオ キシ メトり とカプ ノグラ フィ により,非観血的に 酸 素化と 換気の 程度 を評価 するこ とが可 能であ り, これら と組合 せるこ とに より,低血圧麻酔を 含 めた大 部分の 症例 では動 脈血ガ ス分析 なしに 麻酔 中の患 者管理 は安全 に施 行できると考えられ る 。

  以 上,ト ノメ トリ法 による 血圧測 定は 臨床麻 酔での 患者管 理にお ける 血圧の モニタリングに十

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分 使 用で きる こ とが 確認された 。今後は,集中治 療,救急医療分野で の患者管理や,循 環器内科 や 臨 床 薬 理 に お け る 薬 物 の 効 果 判 定 や 種 々 の 機 能 検 査 へ の 応 用 も 期 待 さ れ る 。

学位論文審査の要旨

  1. 研 究 目 的

  ト ノ メ ト ル 法 応 用 によ る非 観 血的 ,連 続 的動 脈血 圧 測定 (TBP)を臨 床麻 酔 にお いて , 観血 的 手 法 (IBP) と 比 較 , 検 討 し , そ の 正 確 性 , 信 頼 性 , 臨 床 的 有 用 性 を 立 証 し た 。

  2.対象と 方法

  対 象は 一般 的 な麻 酔管 理 を行 った 定 期手 術患 者702( 男性32名 , 女性38名,8〜82歳)(正常 血 圧 群) と人 為 的低 血圧 麻 酔管理を行っ た定期手術患者21名(男性13名,女性8名,10〜 76歳)

( 低血圧麻酔群)とし た。あらかじめオ シ口メトリック法により左右の上腕にて血圧沮lJ定を行い,

5 mmHg以 上の 差 のあ る症 例 は除 外し た 。左 ない し 右橈 骨動 脈 上に トノ メトリ センサを装着し,

連 続 的に 動脈 血 圧(TBP) を測 定 した 。こ の セン サは,15個の径O.6mmの圧抵 抗性ミニチュアト ラ ン スデュー サをO. 3mm間隔に配列して ある。自動サーチ 方式によって一個の トランスデューサ が 確 実 に 動 脈 壁 の 中 心 に 位置 す るよ うに 工 夫さ れて い る。 血管 壁 に加 えら れ る押 圧(hold亠 down pressure)は 最 良 の 圧波 形 (脈 圧) の 得ら れる 値 を内 蔵の コ ンピ ュ一 夕 によ り自 動 的に 選 択 され る。 本 装置 によ る 血圧の校正は 反対側の上腕に装 着したカフを用いて のオシ口メトリッ ク 法 に よ り 行 っ た 。 両 手 法 に よ る 信 号 は 心 電 図 と と も に 連 続 的 にPCMデー タリ コ ーダ とNEC 9801UCコ ンピ ュ 一夕 に記 録 し, デー 夕 解析 に供 し た。 一部 の 症例 では センサ 装着側の母指にパ ル ス オキ シメ 一 夕を 装着 し ,押圧による 末梢血流障害の有 無を確認するために ,連続的にプレチ ス モグラムを観察した 。

  両 手法 を比 較 する ため に 両手 法の 収 縮期 血圧(SAP) ,平 均 血圧 (MAP), 拡 張期 血圧 (DAP) に っ い てbiasお よ びlimits of agreement(mean土2SD of bias) を 求め た 。biasの 変 化は

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修秀 康

   

   

慶富 物 田 山 劔安 小 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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両 群 に お け るSAP,MAP,DAPの 値 を そ れ ぞれ の4段 階 の血 圧 値 に 分 けて 評 価 し た 。

  皿 , 結  果

  両 手 法 に よ る 血圧 波 形 径 は 相似 形 で あ り ,急 激 な 血 圧 変 動時 に お い て もTBPはIBPに り ア ルタ イ ム に 追 随し た 。 期 外 収縮 の 場 合 にも 両波 形上に 相似形 の波形 が認め られ た。IBP波形 に オー バ ー シ ュ ート が 見 ら れ た場 合 に も ,TBPには 認め られな かった 。押圧 によ るプレ チスモ グ ラ ム 上 で の 血 流 障 害, 圧 迫 部 位 に 局所 的 変 化 は 認め ら れ ず , 疼痛 な ど の 訴 えも な か っ た 。   正 常 血 圧 群 で はbiasはSAPで0.4土5.9mmHg(M土SD) ,MAPで ―O.1土4.7rnmHg,DAP でO,O土5.4cmnHgで あ っ た 。Limits of agreementはSAP,MAP,DAPとも , ほ ば 平 均f直 土 llmmHg以 内 で あ っ た 。 各 血 圧 段 階 毎 のbiasは 小 さ く , 有 意 差 は な か っ た 。   低 血 圧 麻 酔群 で はbiasはSAPで −O. 了土6.6rnmHg(M土SD),MAPでO. 了土5.OmmHg,DAP で2.8土5.8mmHgで あ っ た 。Limits of agreementはSAP,MAP,DAPとも , ほ ぼ 平 均 値は 土13imnHg以 内 で あ っ た 。 各 血 圧 段 階 毎 のbiasは 小 さ く 有 意 差 は な か っ た 。

  IV.考  察

  1) 原理お よび方 法論: トノ メトリ法による動脈血圧の沮T亅定原理は押圧により血管壁を平担化 すると ,血管 壁の局 率半 径は無 限大と なり, 円周方 向応 カを無 視でき ,測定圧は血管内圧を直接 反映す る。こ のため には ,@動 脈は下 から骨 で支え られ ている こと, ◎押圧は動脈壁を平坦化す るが閉 塞はし ないこ と, ◎動脈 壁と皮 膚の距 離は動 脈径 に比べ て小さ く,無視できること,@動 脈壁は 理想的 な膜様 作用 を示す こと, ◎セン サは動 脈平 坦部の 面積よ り小さく,その中心に位置 するこ と,な どの条 件が 必要と なる。

  原理的 にはト ノメ トル法 は単一 のトラ ンス デュー サによ って圧 測定が 可能である。しかし,動 脈壁に 働く円 周方向 応カ と周囲 組織か らの影 響を完 全に除去するにtま,トランスデューサの径と 動脈の 径の比 が0. 10〜0. 25であることが必要である。今回の装置では,橈骨動脈の径を2mmと推 定する と,こ の比は 約O.3と条件 を満足 しな い。そ こで, より確 実で安 定した血圧値を得るため に,オ シ口メ トリッ ク法 による 上腕部 の血圧 を校正 値と して用 いた。

  2) 臨 床成 績 : 低 血 圧 麻酔 群 のbiasお よ びlimits of agreementの値は 臨床麻 酔上, 許容 範 囲内で あり,TBIはIBPに 匹敵 するも のであ る。

  TBP波形 はIBP波 形 と 相 似 形 であ り , 急 激 な血 圧 変 動 時 にも り ア ルタイ ムに 追随し ており , その信 頼性, 再現性 には 問題な い。本 法は非 観血的 であ り,動 脈にカ ニューレを留意する必要が

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ないので,合併症もなく,患者への負担も少ない。さらに,長時間使用しても神経や血管の損傷 はなく,安全性,易使用性の点においても,観血的手法より有利である。また,TBPではIBP にみられるような血圧波形のオーバーシュートやなまりがなく,TBPの血圧波形の信頼性の高 いことを示している。

  本研究はトノメトリ法による非観血的,連続的動脈血圧測定法が従来の観血的手法に匹敵する ものであることを示したものであり,その臨床的有用性は大きく,博士(医学)の学位に値する ものと半l亅断された。

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参照

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