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博士(医学)田中雅則 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)田中雅則 学位論文題名

自血病性造血幹細胞の増殖におけるチロシンリン酸化の研究

ー チ 口 シ ン 脱 リ ン 酸 化酵 素阻 害剤 によ る解 析―

学位論文内容の要旨

緒言

  慢 性骨 髄性 白血 病(CML)の 造血 幹細胞は、正常造血幹細胞と同様に各種のサイトカ イン によって増殖と分化が制御されている。一方CMLではbcr‑abl蛋白が形成され、こ の蛋 白が恒常的に高いチ口シンリン酸化酵活性を保っていることが報告されている。

Caraccioloらは、c‑abl癌原遺伝子によってコードされたチロシンリン酸化酵素の機能は 穎粒 球系 細胞 に系 統特 異的 であ ると報告し、CML症例の自血球の選択的増多を説明し えることを示唆している。

  今 回著者はチロシンリン酸化酵素とチロシン脱リン酸化酵素の正常および自血病の 造血 前駆 細胞 の増 殖に 対す る作 用を明らかにするため、健常人およぴCML症例より分 離さ れた 新鮮 造血 幹細 胞を 用い て、CFU‑GMおよ びBFU―Eコロ ニー形成に対するチロ シ ン 脱 リ ン 酸 化 酵 素 阻 害 剤 で あ る バ ナ デ イ ト の 効 果 を 検 討 し た 。

材料と方法 細胞調製

  造 血前駆 細胞 は健 常人 腸骨 稜より採取した骨髄液、CML症例慢性期の末梢血から回 収した。遠心分離により回収した骨髄液および末梢血の単核細胞より付着細胞を除去 し、 さらにCD2、CD14、CD19陽性細胞を除去してLineage negative cell (Lin(−)

cells)を得た。得られたLin(‑) cellsを抗HPCA‑1(CD34)抗体とIgGコート免疫ビーズに よってCD34陽性細胞を回収して試料とした。

コロニー形成法

  コ ロニー 形成 法は 、健 常人 では2x10‑、CML症例ではlx104個の細胞を自血球遊走プ レート(Sterilin)の各well中にいれた軟寒天培養液(IMDM,30ワ。FCS,1ワ。BSA,1x10‑4M 2‑ME,0.30/0 agar)上に静置して14日問培養し、倒立顕微鏡下にコロニー数を直接算定 し た。CD34陽 性細 胞を 用い た場合 は、500個の 細胞 を静 置した 。IL‑3、GM‑CSF、G‑

CSFも しく はEPOをそ れぞ れ100単位/ml、100ng/ml、100ng/ml、10単位/ml添加し、バ ナデ イト濃 度は 、O、1、5、 および10nMを添加して検討した。一方短時間添加培養実 験では、0、O.1、O.5、1.OmMのバナデイトで2時間培養し、洗浄後コロニー形成法を

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行 っ た 。 更 に 一 部 の 実 験 で は 細 胞 を 抗CD45抗 体 で あ ら か じ め 処 理 し て か ら 洗 浄 後 、 コ ロニー形成法を行った。

無血清培養

  無血 清培 養で は、FCSの かわ りに1% deionized BSA、lxl0‑6M insulin、400LrM sodium selenate、8.0 Lrg/mlBSA‐absorbedL・a‐phosphandylcholme、7.8い如lBSA‐absorbedcho‐ lesterolを用い、上記と同様にコロニー形成法を 行った。

ウエスタンプロット法

  10pMのOVを 加 え て37℃ で3時 間 培 養 後 、EP010U/ 尚 ま た は 凡 ‐3100U/mlを 添 加 して 培養 したCMLのLin( ̄ )Cellsを 、lysisbufferに浮 遊後 ホモジ ナイザーにて破砕し、

105,oooG、4℃ 、60分 間 超 遠 心に て不 溶物 を除 去し て試 料と した 。試 料 を7.5‐10ワ 。 SDS‐PAGEで 泳 動 し 、clearblot‐PTM膜 に 転 写 後 、 抗 フ ォス フォ チロ シ ン抗 体、 ペル オ キ シ ダ ー ゼ 結 合 抗 マ ウ スIgG抗 体 、KonicaimmunostajnKitTMを 用 い て 染 色 発 光 さ せ た。

結 果

1) バ ナ デ イ ト はIL‑3、GM‑CSF刺 激 に よ る 正 常 人 のCFU‑GMコ ロ ニ ー 数 を 濃 度 依 存 的 に 抑 制 し た 。EPOに よ るBFU‑Eコ ロ ニ ー 形 成 は 影 響 を 全 く 受 け な か っ た 。 短 時 間 添 加 培 養 実 験 に お い て も 同 様 な 結 果 を 示 し た 。

2)IL‑3ま た はGMーCSF iJ激 に よ る 正 常CD34陽 性 細 胞 のCFU―GMコ ロ ニ ー も バ ナ デ イ ト に よ っ て 著 明 に 抑 制 さ れ た 。

3)IL‑3、GM‑CSFお よ びG‑CSF刺 激 に よ るCML患 者 よ り のCFU‑GMコ ロ ニ ー 形 成 は バ ナ デ イ ト に よ っ て 殆 ど 影 響 さ れ な か っ た 。 一 方 、EPO刺 激 に よ るBFU‑Eコ ロ ニ ー 形 成 は5 LtM以 上 の の バ ナ デ イ ト 添 加 に よ っ て 有 意 に 増 加 し た 。 短 時 間 添 加 培 養 実 験 に お い て もCFU‑GMコ ロ ニ ー 形 成 に は 影 響 を 与 え な か っ た が 、BFU−Eコ ロ ニ ― 形 成 を 増 強 し た 。

4) 無 血 清 培 養 条 件 下 で のCML症 例 よ り のCFU‑GMコ ロ ニ ー 形 成 に 対 し て は 、 バ ナ デ イ ト は5pM以 下 で は 有 意 な 影 響 を 示 さ な か っ た が 、EPO刺 激 に よ るBFU‑Eコ ロ ニ ー 形 成 を 著 明 に 増 加 さ せ た 。

5) 抗CD45抗 体 は 、CML患 者 のCFU‑GMコ ロ ニ ー 形 成 を 明 ら か に 抑 制 し た が 、BFU‑

Eコ ロ ニ ー 形 成 に は 明 ら か な 影 響 を 示 さ な か っ た 。

6)IL‑3刺 激 に よ るCML細 胞 の チ ロ シ ン リ ン 酸 化 蛋 白 質 は 、5分 か ら30分 ま で は バ ナ デ イ ト の 有 無 い か ん に か か わ ら ず 有 意 な 変 動 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方EPO刺 激 で 出 現 す るMW6 5Kdの り ン 酸 化 蛋 白 質 が 、 バ ナ デ イ ト 存 在 下 で5分 後 で 明 ら か に 増 強 し15分 後 ま で 認 め ら れ た 。

考 察

  最 近 に な っ て 、c‑abl癌 原 遺 伝 子に よっ てコ ード され たチ ロシ ンリ ン酸 化酵 素の 機能 は 顆 粒 球 系 細 胞 に 系 統 特 異 的 で あ る と 報 告 さ れ て お り 、CMLで形 成さ れるbcr‑abl遺伝

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子産物であり、高い活性を持ったチロシンリン酸化酵素がCML における選択的自血球 増多に関係すると示唆されている。この報告と今回の成績を勘案すると、1 )正常人 のCFU‑GM コロニーと BFU‑E コロニーを刺激するサイトカインのシグナル伝達系にお けるチロシン脱リン酸化酵素の役割に相違があること、 2 )CML のCFU‑GM コロニー を刺激するサイトカインのシグナル伝達系において、bcr‑abl 遺伝子産物である高い活 性を持ったチロシンリン酸化酵素の存在のためにサイトカイン刺激後の一過性のチロ シンリン酸化と脱リン酸化が不必要であること、3 )bcr ・‑abl 遺伝子産物はCML のEPO レセプターを介するシグナル伝達への関与の可能性は低く、バナデイトはチロシン脱 リン酸化酵素阻害作用を通してCML におけるEPO のシグナル伝達を修飾し得ることな どを示唆している。抗リン酸化チロシン抗体を用いたCML 細胞のウエスタンブロット 法の結果はこの可能性を支持した。抗CD45 抗体はCML のBFU‑E コ口ニー形成に有意 に影 響しないこ とより、CD45 が CML 細胞のBFU‑E コロニー形成増加に関与してい るチ口シン脱リン酸化酵素である可能性は少ないと考えられる。今回の検討ではCML 細胞の赤芽球コロニーの増強に関与しているチロシン脱リン酸化酵素は特定しえな かったが、細胞内には多種類のチロシン脱リン酸化酵素の存在が報告されており、 Yi らが最近報告した、新しい脱リン酸化酵素等も考慮しなければならなぃと考えられ る。

結語

  CML 症例における顆粒球系およぴ赤芽球系前駆細胞のシグナル伝達システムには、

健常人とは大きな相違のあることを報告した。今後これらの点をより明らかにするた

めにはさらに詳細な検討が必要であろう。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

白血病性造血幹細胞の増殖におけるチ口シンリン酸化の研究      ― チ ロ シ ン 脱 リ ン 酸 化 酵 素 阻 害 剤 に よ る 解 析 ―

    研 究 目 的

  本 研 究 で は 、 チ ロ シ ン リ ン 酸 化 酵 素 と チ ロ シ ン 脱 リ ン 酸 化 酵 素 の 正 常 お よ ぴ 自 血 病の 造 血 前 駆 細 胞 の 増 殖 に 対 す る 作 用 を 明 ら か に す る た め 、 健 常 人 お よ ぴCML症 例 よ り 分 離 さ れ た 新 鮮 造 血 幹 細 胞 を 用 い て 、CFU‑GMお よ びBFU‑Eコ ロ ニ ー 形 成 に 対 す る チ ロ シ ン 脱 リ ン 酸 化 酵 素 阻 害 剤 で あ る オ ル ソ バ ナ ジ ン 酸 ( バ ナ ジ ン 酸 ) の 効 果 を 検 討 し た 。

    材 料と 方法 細胞 調 製

  造 血 前 駆 細 胞 は 健 常 人 腸 骨 稜 よ り 採 取 し た 骨 髄 液 、CML症 例 慢 性 期 の 末 梢 血 か ら 回 収 し た 。 遠 心 分 離 に よ り 回 収 し た 骨 髄 液 お よ ぴ 末 梢 血 の 単 核 細 胞 よ り 付 着 細 胞 を 除 去 し 、 さら にCD2、(:D14、CD19陽性 細胞 を除 去し てLineage negative cell (Lin(.)cells)を得 た。 コ ロニ ー形 成法

  コ ロ ニ ー 形 成 法 は 、 健 常 人 で は2xl04、CML症 例 で は1xl0個 の 細 胞 を 自 血 球 遊 走 プ レ ート の各weu中 にい れた 軟寒 天培 養液 (IMDM,30ワ 。FCS,1ワDBSA,1x10.4M2‐ME,O●3ワD agめ 上 に 静 置 し て14日 間 培 養 し 、 倒 立 顕 微 鏡 下 に コ ロ ニ ー 数 を 直 接 算 定 し た 。CD34陽 性 細 胞 を 用 い た 場 合 は 、500個 の 細 胞 を 静 置 し た 。 凡 ―3、GM−CSF、G‐CSFも し く はEPOを 添 加 し 、 バ ナ ジ ン 酸 は 、0か ら1叫Mを 添 加 し て 検 討 し た 。 短 時 間 添 加 培 養 実 験 で は 、O、 O.1、O.5、1.0mMの バ ナ ジ ン 酸 で2時 間 培 養 し 、 洗 浄 後 コ ロ ニ ー 形 成 法 を 行 っ た 。 無血 清培 養

  無 血 清 培 養 で は 、FCSの か わ り に1%deionized BSA、1x10‑6M insulin、400 LtM sodium selenate、8.Opg/ml BSA‑absor州L‐d‐phosphalidylcholine、7.8pg/mlBSA゛abSorbedcholesterol を用い、上記と同様にコ口ニー形成法を行った。

ウエスタンプロット法

  lOpMの バ ナ ジ ン 酸 を 加 え て37℃ で3時 間 培 養 後 、EPOま た はIL‑3を 添 加 し て 培 養 し た     I

CMLのLinく ‐)cellsを、lysis bufferに浮 遊後 破 砕し、超遠心して試料とした。試料をSDS‑

PAGEで 泳 動 し 、clearb10t‐PIM膜 に 転 写 後 、抗 フオ スフ ォチ 口シ ン抗 体、 ペル オキ シダ ー

和 暹

   

   

義  

  真

上 巻

川 葛

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ゼ結合抗 マウス IgG 抗体、Konica immunostainl くitIM を用いて染色発光させた。

     結果

  1 )バナジン酸はIL ―3 、GM ーCSF 刺激による正常人のCFU ― GM コロニー数を濃度依存 的に 抑 制し た が、 EPO に よ る BFU − E コ ロニ ー 形成 は 影響 を 全く 受 けなかった 。   2 )IL‑3 またはGM‑CSFiJ 激による正常CD34 陽性細胞のCFU‑GM コ口ニーもバナジン 酸によって著明に抑制された。

  3 ) IL‑3 、GM‑CSF お よび G‑CSF 刺 激による CML 患者よりの CFU ― GM コロニー形成は バナジン酸によって殆ど影響されなかった。一方、EPO 刺激によるBFU −E コロニー形成 は5uM 以上のバナジン酸添加によって有意に増加した。

  4 )無血清培養条件下でのCML 症例よりの CFU‑GM コロニー形成に対しては、バナジ ン酸は有意な影響を示さなかったが、EPO 刺激によるBFU‑E コロニー形成を増加させた。

  5 )抗 CD45 抗 体は、 CML 患者の CFU‑GM コロニー形成を抑制したが、 BFU‑E コロニー 形成には影響を示さなかった。

6 )IL‑3 刺激によるCML 細胞のチロシンリン酸化蛋白質は、5 分から30 分まではバナジ ン酸の有無にかかわらず有意な変動は認められなかった。一方、EPO 刺激で出現する MW65KDa のりン 酸化蛋白質 が、バナジ ン酸存在下 では5 分後に明らかに増強し 15 分 でもその増強が認められた。

     考察およぴ結語

   今回得られた結果から1 )正常人のCFU‑GM コロニーとBFU −E コロニーを刺激するサ

イトカインのシグナル伝達系におけるチロシン脱リン酸化酵素の役割に相違のあること

が示唆された。2 ) CML のCFU‑GM コロニーを刺激するサイトカインのシグナル伝達系

においては、正常細胞と異なりbcr‑abl 遺伝子産物である高い活性を持ったチロシンリン

酸化酵素の存在のためにチロシン脱リン酸化酵素による調節機構から逸脱している可能

性が示唆された。 3 )bcr →abl 遺伝子産物は CML 細胞のEPO レセプターを介するシグナル

伝達への関与の可能性は低く、バナジン酸はチロシン脱リン酸化酵素阻害作用を介して

く : ML 細 胞 に お け る EPO の シ グ ナ ル 伝 達 を 修 飾 し 得 る こ と が 示 唆 さ れ た 。

   以 上 より 本 研究 は 博士 ( 医学 )の学 位論文とし て妥当なも のと判断さ れる。

参照

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