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博士(医学)関 英幸 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)関   英幸 学位論文題名

大腸癌の形態形成における増殖能とapoptosis の意義 学位論文内容の要旨

研究目的

  Shimodaら は ,大 腸 癌 を その 粘膜内 増殖様 式によ りpolypoid growth (PG)型とnonpolypoid growth (NPG) 型 に 分 類 し ,NPG型 はPG型 に 比 較 し て よ り 早 期 に 深 部 に 浸 潤す る こ と を報 告 し た .そ れ 以 降NPG型 はPG 型 に比較 してり ンパ節 転移が 高率で あるなど ,両者 は異な った生物学的特性を有していることが明らかとなっ て き ている .この ような 大腸癌 の形態 形成に は,癌細 胞浸潤 に対す る免疫 細胞反 応,線 維化な ど生体 側の要 因 ととも に,癌 細胞自 体の増 殖及び 崩壊のバ ランス が重要 な要素であると考えられる.しかし,これまでPG型 及びNPG型の形態形成に関する検討は少ない.

  本 研 究 の 目 的 は 手 術 で 切 除 され た 大 腸 癌を 対 象 に ,PG型 ,NPG型 で 分 類 され る 形 態 の違 い とPCNAか ら 見 た癌細 胞の増 殖能及 びapODtosisと の関係 を明ら かにする ととも に,apoptosisの発現 におけるp53の役割に ついて検討することである.

対象と方法

  1991年5月 か ら1994年9月 ま で に 恵 佑 会 札 幌 病 院 で 切除 さ れ た 大腸 癌82症例 ( 男 性40例 , 女 性42例 , 平均年齢6214歳)82病変を対象とした.

  摘 出標本を 固定し パラフ イン包 埋後, 連続切 片を作 成した ,腫瘍の 病理組 織学的 な評価 はへマ トキシ リン エ オ ジ ン(H‑E)染 色 で行 い , 大 腸癌 取 り 扱 い規 約 に 従っ て判定 した.Shimodaらの 分類に従 い,粘 膜内の 腫 瘍 細 胞 が 隆 起 性 増 殖 を 形 成 す る もの をPG型, 粘 膜 内 隆起 性 増 殖 の見 ら れ な いも の をNPG型に 分 類 し た.

症 例 は ,sm癌21例(PG型9例 , NPG型12例 ) ,mp癌19例(PG型8例 , NPG型11例 ) ,ss及 び そ れ 以 深の癌(ss‑a) 42例(PG型22例,NPG型20例)である.

  PCNA, p53は 免 疫 染 色 を 行 っ た . ー 次 抗 体 と し てPCNAは PC10を ,p53はPab1801を 用 い , Streptoavidin‑biotin抗 体 で反 応 後diaminobenzidine (DAB)に て 発色 さ せ た .ま たapoptosisの評 価 は ApopTag in situ apoptosis detection Kitを用い,TdT−mediated dUTP‑biotin nick end labeling method (TUNEL 法)を行った.

  標 本 は 以 下 の 基 準 で 評 価 し た .PCNAに 関 し て は , 腫 瘍 細 胞1000個 に 対 す る 陽 性 細 胞 の 割 合 をPCNA labeling index (L.I. %o)と した.apoptoslsにつ いては ,nJNEL法により染色された細胞を陽性とし,腫瘍細 胞1000個に 対する陽 性細胞 の割合 をapoptosislabelingindex(ApoL.I.960)とした.またH‐E染色との対比 でnecrosisの 部 位 を 避け た . さらにmp癌につ いては 腫瘍を 上,中, 下に三 等分し ,各部 位の腫 瘍核500個 当 た り のTIハJEL陽 性 細 胞 を 計 測 し た .p53は 癌 細 胞 の 核 が30% 以 上 陽 性 で あ る 場 合p53陽 性 と し た .   統 計 処理 に 関 し ては ,ApoL.I. とPCNALII. は, 平均 値士標 準偏差 で示し ,PG型とNPG型のApoL.I.,

PCNALII. の 比 較 はMann‐WhitneyUtestを,mp癌 の部 位 別ApoL.I. の 比較 はFriedmanとWilcoxontestを 行い危険率5%以下を有意とした.

結果

11PG型とNPG型でのPCNALII.の比較

  PG型,NPG型 のPCNALII. は全症 例におい てそれ ぞれ658.5土127.1,651.9士176.2と差を認めなかった.

ま たsm癌 か らss‐a癌 ま で の 各 深 達 度 別 で もPG型 ,NPG型 との 間 に はPCNAL.I. に 差は 認 め な かっ た .

‑ 103

(2)

2a) PG型とNPG型でのApo L.I.の比較

  PG型全症例でのApo L.I.は19.9士9.8であり,各深達度ではsm癌で29.2士9.7,mp癌で21.7士9.0,ss‑a 癌 で15.4士7.0であっ た.一方NPG型のApo L.I.は全症例で52.8土25.1とPG型に比較して有意に高く,

深達度別での検討でもsm癌で67.5士25.6,mp癌で37.2士9.4,ss‑a癌で52.6士26.3と検討したすべての深 達度でPG型より高値であった(pく0.01).

2b)mp癌でのapoptosis細胞の比較

  mp癌での上部,中部,下部の腫瘍細胞500個あたりのapoptosis細胞数はPG型ではおのおの8.0士4.8, 11.8+3.9,12.9+5.9であり,NPG型ではおのおの26.6士7.6,17.3土5.3,11.8土4.3であった.PG型では順に apoptosis細胞が増加するのに対し,NPG型では順に減少していた.両型での比較において上部,中部では NPG型の 方がapoptosisの発現 が有意に 多く(pく0.01),下部ではPG型,NPG型で差を認めなかった.

3)p53染色性とapoptoslsとの関係

  全症例でのp53陽性例は64例,陰性例18例であり,陽性率は78%であった.また両型において陽性率に 差 は な く,apoptoslsに つ いてもPG,NPG型ともに その染 色性とApoL.I. には差を 認めなか った.

考案

本 研 究 の目 的 は 大 腸癌 の 形 態と癌細 胞の増 殖能,apoptosisとの 関係を明 らかに すること である .   PCNAを用いた増殖能の検討では,PG型とNPG型との間に差はなく,またsm癌からss―a癌までの各深達 度ごとの比較でも両型に差を認めなかった.大腸癌細胞における増殖能の意義についてはKi−67など他の増 殖因子で検討がされているが,形態の違いとは相関がないとの報告が多い.本研究においてもこれまでの報 告同様,PG型とNPG型に分類した形態形成とは関係ないことが確認された,

  一方細胞崩壊のー種であるapoptosisに関しては,NPG型はPG型と比較して有意にapoptosisが多く形態 と関連していることが示された.また,各深達度別の検討においてもNPG型はPG型よりも有意にApoL.I.が 高かったことより,癌発生初期の段階でもapoptosisの量が形態形成に関係していることが示唆された.大腸癌 は,癌細胞が表層から深部に浸潤するに従って組織型が変化するなど発育進展過程で細胞生物学的性格 が変化することを経験する.癌組織の表層では癌発生初期の性質が残存している可能性があるためmp癌を 対象に腫瘍を上部,中部,下部に三等分し,各部位におけるapoptosisの発現を検討した.その結果上部,中 部 ではNPG型はPG型 に比較 し有意なapoptosisの 発現が見 られた のに対し ,深部ではNPG型,PG型共に 発現に差を認めなかった.この結果は癌発生初期でのapoptosisの量が形態と関係しているという考えをより 支持するものと考えられた.

  このようなapoptosisの発現には外的要因とともに多くの関連遺伝子の存在が知られてきている.特にp53蛋 白は,癌の増殖進展に関与するとともにapoptosis関連遺伝子の転写調節に重要である.本研究で観察され たapoptosisの誘導に関し,Pab1801抗体を用いp53との関係についても検討を行ったが,PG型,NPG型と もにp53の染色性とapoptosisとの間には関係は認めず,大腸癌細胞でのapoptosisの発現はp53非依存性 の系である考えられた.

結語

PG型,NPG型に分類した大腸癌の形態形成には,癌細胞の増殖能は関係しないがapoptosisによる細胞崩 壊 が関与 している .また ,大腸癌 におけるapoptosisの発現にはp53は関与していないと考えられた.

‑ 104

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

大腸癌の形態形成における増殖能とapoptosis の意義

大 腸 癌 を 腫 瘍 の 粘 膜 内 発 育 増 殖 様 式 に 従 いpolypoidgrowth(PG) 型 及 び nonpolypoidgrowth(NPG)型 に分類 しうるこ とがShimodaらによ り報告 されて以 来,そ の 臨床 的 意 義が 広 く研 究され てきてい る.し かしなが ら,こ れまでPG型 ,NPG型の形 態 形成 に 関 する 検 討 はほ と ん ど 行わ れ て いな い. 本研究は 手術で 切除され た大腸 癌 を 対 象 に ,PG型 ,NPG型 で 分 類 さ れ る 形 態 の 違 い とPCNAか ら 見 た 癌 細 胞 の 増 殖 能 及びapoptosisと の関係 を明らか にする とともに ,apoptosis発現にお けるp53の役 割 に っ い て 検 討 し た . 研 究 対 象 は 大 腸 癌82症 例 【sm癌21例(PG型9例 ,NPG型 12例 ) ,mp癌19例(PG型8例 ,NPG型11例 ),ss及 びそ れ 以 深の 癌(ss―a)42例(PG 型22例 ,NPG型20例 ) 】 を用 い た .腫 瘍 の 病理 組 織 学的 な 評 価は へ マ トキ シリ ンエ オジン 染色で 行い,大 腸癌取 り扱い規 約に従っ て判定した.Shimodaらの分類に従い,

粘 膜 内 の 腫 瘍 細 胞 が 隆起 性 増 殖を 形 成 する も の をPG型 ,粘 膜 内 隆 起性 増 殖 のな い も の をNPG型 に 分 類 し た . 一 次 抗 体 と し てPCNAはPC10を ,p53はPab1801を 用 い免疫染色を行った.またapoptosisはApopTag in situ apoptosis detection Kitを用い,

TdT‑mediated dUIP‑biotin nick end labeling method (TUNEL法)を行った.評価は,

PCNAに 関 し て は , 腫 瘍 細 胞1000個 に 対 す る 陽 性 細 胞 の 割 合 をPCNA labeling index (L.I. %o)とした .apoptosisに ついて は,TUNEL法により染色された細胞を陽性 と し, 腫 瘍 細胞1000個 に 対 する 陽 性 細胞 の 割 合をapoptosis labeling index (Apo L.I.%o)とし た,さら にmp癌に ついて腫 瘍を上 ,中,下に三等分し,各部位の腫瘍核 500個 当 た り のTUNEL陽 性 細 胞 を 計 測 し た .p53は 癌 細 胞 の 核 が30% 以 上 陽 性 で ある場 合p53陽性とし た.統 計処理に 関しては ,Apo L.I.,PCNAL.I.の比較はMann‑

WhitneyUtestを ,mp癌 の部 位 別ApoL.I. の 比 較はFriedmanとWilcoxon testを 行 い 危険 率5%以 下 を 有意 と し た ,結 果 は ,PCNAを 用 い た増 殖 能 の検 討 で は, 両型に 差はな く,ま た各深達 度ごと の比較で も両型に 差を認 めなかっ た.大 腸癌細胞におけ る増殖 能の意 義につい ては, 形態の違 いとは相 関がな いとの報 告が多 く,本研究にお い て もPG型 とNPG型 に 分 類 し た 形 態 形 成 と は 関 係 な い こ と が 確 認 さ れ た . ま た

和 郎

義 和

上 嶋

川 長

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

apoptosis に関しては,NPG 型はPG 型と比較して有意にapoptosis が多く発現してお り,apoptosis は形態と関連していることが示された.各深達度別の検討においても NPG 型はPG 型よりも有意にApoL .I .が高かったことより,癌発生初期の段階での apoptosis の量が形態形成に関係していることが示唆された.更にmp 癌でのapoptosis は上 部, 中部 では NPG 型 の方 が有意に多く,下部ではPG 型,NPG 型で差を認めな かった.この結果は癌発生初期でのapoptosis の量が形態と関係しているという考えを より支持するものと考えられた.PG 型,NPG 型ともにp53 の染色性とapoptosis との 問には関係は認めず,大腸癌細胞でのapoptosis の発現はp53 非依存性の系である 考えられた.結諭として,PG 型, NPG 型に分類した大腸癌の形態形成には,癌細胞 の増 殖能 は関 係し ない がapoptosis に よる 細胞 崩壊 が関 与し,大腸癌における apoptosis の 発 現 に は p53 は 関 与 し て い な い こ と を 明 ら か に し た . 審査に当たって,各教授より以下の順で質問があった.副査浅香教授からは,1 .PG 型,NPG 型分類の妥当性に関して,2.apoptosis の発現の原因に関して, 3 ,PCNA の 発現に関して,4 .リンパ節転移に関して,5 .p53 の検討に関して質問があった.

副査長嶋教授からは,l.apoptosis の発現と予後の関係,2 .apoptosis の発現を決定 する因子に関して,癌細胞の性質あるいは周囲組織との関係,3 .増殖能の検討に関し て,4 .癌の浸潤に関して質問があった.

主査 川上 教授 より ,免 疫染 色の定量的評価の再現性に関しての質問があった.

申請者はこれらに対しておおむね適切な解答を行った.

この研究は,大腸癌の形態と増殖能,apoptosis ,p53 の関係を考察し,大腸癌の形 態形成を解明する上で貴重なものと評価される.

審査員一同はこの研究が大腸癌の形態形成を解明した研究として高く評価し,博士

( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

参照

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