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博士(医学)原林 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)原林 学位論文題名

膀胱癌の上皮内進展におけるインテグリング4 の発現低下と ラミニンによる細胞運動亢進の関与

学位論文内容の要旨

    I.目的

  膀胱癌は発育形態により乳頭状癌と結節状癌の2種類に分けられ、比較的良好な経過を示す乳頭状癌に対 して、結節状癌は浸潤・転移をおこし予後が悪い事が知られている.結節状癌には高頻度に上皮内癌(以下 CIS)が合併すること、CISには結節状癌が続発することなどの臨床病理学的観察から、CISが結節状癌の 前駆病変と考えられている.CISではその成立機転のーっとして癌細胞の上皮内進展(以下IES)が関わっ ていると考えられるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、その分子機構を解明する 事を目的とし、ヒト膀胱癌細胞株のin vivoのIES能を調べ、IESを起こす細胞の生物学的特性を検討した.

H.材料と方法

1)細胞株:ヒト移行上皮癌細胞6株(EJ,UMUC−2,UMUC―6―dox,DAB―1,KUー1,KU―7)、ヒト不死化 移行上皮細胞2株(SV−HUCー1,alphaEー7)を用いた,

2)癌細胞移植: SCIDマウスの露出した腎実質内に2x10゜個の細胞を注入、または経尿道に留置した24Gカ テーテルを通して膀胱内に2x10゜個の細胞を注入することにより移植し、7週、2週後にマウスを屠殺しパラ フィン包埋標本を作製し腫瘍を組織学的に観察した.

3)接着、遊走、運動能試験:ラミニン(LN)、フィブ口ネクチン(FN)をコートしたマイク口ブレートに lx10°個の細胞を撒き37℃、30分間で接着した細胞をメタノール固定染色し吸光度を測定し接着能を評価し た.下面にLN、FNを塗布した8〃m孔径フィル夕一上に細胞浮遊液を加え、37℃、8時間で下面に移動した 細胞数を算定し遊走能を評価した.LN、FNをコートした35mm培養皿に細胞を撒き、位相差顕微鏡に接 続 し た 低 速 度 撮 影 ピ デ オ 装 置 で 細 胞 を18時 間 連 続 記 録 撮 影 し 運 動 能 を 評 価 し た , 4)ウェスタンブ口ット法、免疫沈降法イ細胞表面ラベル法:総蛋白あるいは抗インテグリンa6抗体によ る免疫沈降物をSDS―PAGEで展開し、抗インテグリンa2、a3.31、p4抗体を用いたウェスタンブ口ット 法で検出した.細胞表面ラベル法では、細胞をビオチン加炭酸ナトリウム緩衝液中で30分間反応させたの ち蛋白を抽出し、抗インテグリンa6抗体を用いた免疫沈降法の後、SDS一PAGEで展開して検出した.

5)遺伝子導入:ヒト正常角化細胞の全RNAからRT―PCR法によって得たインテグリンp4 cDNAをpCR3― CMV発現ベクターに組み込み、lipofection法により細胞へ導入し、neomycinにより選択し、安定発現株 をウェスタンブロット法で選別した.pCR3―CMV発現ベクターのみを導入した細胞をコント口ールとして 用意した.

6)免疫組織化学法:膀胱癌症例の膀胱全摘出術時に得られた組織を冷メタノールで固定、バラフィン包 埋し5 ymの切片を作成、ABC法にてインテグリンp4の発現を検討した,

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(2)

1) 腎 孟 ・ 膀 胱 に お けるIES:EJ、UMUC−2、KU―7の3株 は腎 でIESを 伴う 平坦 な 腫瘍 を形 成す るの に 対 し、UMUC−6―dox、DAB−1、KU−1の3株 で は腎 孟で の腫 瘤形 成 は低 頻度 で、形成した腫瘍は 境界明瞭で あっ た ,膀 胱に おい ても 前3株はIESを示 し たの に対 し、UMUC−6−dox腫 瘍を 形成 す るもIESを伴 わず、

DAB−1とKU―1は腫 瘍の 形成 を認 め なか った .こ れら の 結果 より 、前 者3株をIES細胞 、後 者3株を 非IES 細胞と分類し、以 下の検討を行った,

2) 細胞 外基 質 に対 する 反応 :非IES細胞 お よび 不死化移行上皮細 胞に対して、IES細胞はLN上 での培養で コ口 ニ ーを 作ら ず著 明に 分 散す る培 養形 態 を示 した。IES細胞はLNに対する高い接着能、遊走 能、運動能 を示すのに 対して、非IES細胞ではいず れも低く、不死化移行上皮細 胞では、接着能、遊走能は 高いが、低 い運動能を示した ,

3) イン テグ リ ンの 発現 、遺 伝子 導 入: イン テグ リンpi、a2、a3の 発現レベルはIES細胞、非IES細胞、不 死化移行上 皮細胞間で一定の傾向を認め なかったが、IES細胞ではイ ンテグリンp4の発現レベル が著しく低 く、抗インテグリ ンa6抗体を用いた免疫沈降法 でインテグリンa6[34に対し てa6 [31が優位であった,非IES 細胞 で ある もの のイ ンテ グ リン04の 発現 が 低いKU―1においては、piを全く発現していなかっ た。インテ グリ ン(34の 遺 伝子 導入 によ り、EJ、UMUC―2か ら各2株の発現ク口 ーンを選択単離した。これ らは、コン トロ ー ルに 比し て、LN上 で の培 養で 緩い コ 口二 ーを 形成 し、 運 動能 の低 下を 示し た 。マ ウス 腎で のIES は、UMUCー2のコントロールク口ーンで100%(11/11)に認められた のに対して.、発現ク口ー ンでは62% (8/13)、55%(6/11)と有意に低下していた.

4) 臨床 材料 に おけ るイ ンテグリンl34の発現:正常膀胱上皮では、 基底層の細胞の基底面と側 面に濃縮し てい る のに 対し 、CISで は、2例 中全 例で 発 現が 著明に低下してい た.乳頭状癌では2例全例と も発現は非 癌 部 と 同 様 に 保 持 さ れ て い た が 、 浸 潤 癌 で は 6例 中 2例 で 発 現 が 低 下 し て い た .

IV.考 察

  膀 胱 癌に 見ら れるIESについては、膀胱由来 の癌細胞株のIESがLNにより 増強すること、カドヘリンの 欠 如し た 細胞 ではpagetoid型の広がりを示すこと が報告されているが、いず れも培養皿の平面上での現象 で ある 。 本研 究で は、3次 元空間であるマウス生 体内で膀胱癌細胞株のIESを 評価し、特定の癌細胞に起こ る 現象であることが観 察された。生体内では多く の因子により細胞の増殖・運 動形態が規定されているが、細 胞外基質上での培養 形態と生体内での腫瘍形態 の類似性から、癌細胞表面の インテグリンと細胞外基質との 関係が示唆された。 すなわち、正常上皮細胞に 豊富であるインテグリンl34の発現低下とその結果生ずる 相 対的インテグリンa6131の優位性、および基底膜 に豊富に存在する基質であ るLNにより誘導される運動能 の 亢進がIESに関わっ ている可能性が考えられた。 この反応を抑制すべくイン テグリン(34の導入実験を行った ところ、in vitroで はLN上での運動能の低下、in vivoではマウス腎におけ るIESの抑制が認められた。これ らの 結 果はLNと イン テグ リ ンa6piと の動 的な 接 着とa6p4との静的な接着と のバランスの破綻がIESとい う 現象の機序の一部で あることを示している。ま た、実際の臨床材料において もCISと一部の結節状癌でイ ン テグリンl34の発現 低下が認められた。

V.結 語

  ヒト 膀胱癌におけるIESとCISの成 立過程にはインテグリン(34の発現低下とラミニンによ る運動の亢進が 関わっ ている可能性が示された。こ れらの現象の検出と抑制に よルヒト膀胱癌の進展を予防することができ ると期 待される。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

膀胱癌の上皮内進展におけるインテグリング4 の発現低下と      ラミニンによる細胞運動亢進の関与

節 状 癌 の 2 種 類 に 分 け ら れ 、 比 較 的 節 状 癌 は 浸潤 ・ 転 移 を お こ し 予 後 が 頻 度 に 上 皮 内 癌 ( 以 下 CIS ) が 合 併 発 す る こ とな ど の 臨 床 病 理 学 的 観 察 ら れ て い る . CIS で は そ の 成 立 機 転 IES ) が 関 わ っ て い る と 考 え ら れ る が 多 い 。 本研 究 で は 、 そ の 分 子 機 構 胞 株 の fnVIVO の IES 能 を 調 ベ 、

152 ‑

男 郎 彦 澄 真 和 知 川 嶋 柳 細 長 小 授 授 授 教 教 教 査 査 査 主 副 副

結 結 高 続 え 下 点 細 と 、 は が 考 以 な 癌 癌 て に 癌 と

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(4)

は高いが、低い運動能を示した.細胞抽出総蛋白あるいは抗インテグリン口 6 抗体 によ る 免疫 沈降 物 を SDS‑PAGE で 展開し、抗インテ グリン a2 、a3 、 p1 、 p4 抗体を用いたウェスタンブロット法で検出した.細胞表面ラベル法 では、細胞をピオチン加炭酸ナトリウム緩衝液中で30 分間反応させたのち蛋 白 を 抽 出 し 、 抗 イ ン テ グ リ ン a6 抗 体 を 用 い た 免 疫 沈 降 法 の 後 、 SDS‑

PAGE で展 開 して 検出 し た, その 結 果、インテグリンp1 、a2 、ぱ 3 の発現 レベルは IES 細胞、非 IES 細胞、不死化移行上皮細胞間で一定の傾向を認め なかったが 、 IES 細胞では インテグリン84 の発現レベルが著しく低く、抗 インテグリ ンロ 6 抗体 を用いた免疫沈降法 でインテグリン a684 に対し てa 6 ロ 1 が優位であ った.    非 IES 細胞 であるもののインテグリンp4 の発現が 低 い KU‑1 に お い て は 、 p1 を 全 く 発 現 し て い な か っ た 。 そ こ で 、 EJ 、 UMUC ・ 2 にイ ンテグリン p4 遺伝子を 導入し、各 2 株の発現クローン を選択 単離し生物学的性状を検索した。これら遺伝子導入細胞は、コントロールに 比して、LN 上での培養で緩いコロニーを形成し、運動能の低下を示し、マウ ス腎での IES は、 UMUC −2 のコ ントロールクローンで100 %(11 / 11 )に認 められたのに対して、発現クローンは62 %(8/ 13 )`ジ%(6 /11 )と有意 に低下していた.臨床材料におけるインテグリン p4 の発現を観ると、正常 膀胱上皮では、基底層の細胞の基底面と側面に濃縮しているのに対し、CIS 全 2 例で発現が著明に低下し、乳頭状癌全 2 例でその発現は非癌部と同様に 保 持 さ れ て い た が 、 浸 潤 癌 で は 6 例 中 2 例 で 発 現 が 低 下 し て い た .    公開発表にあたって、副査小柳知彦教授より、1 )用いた培養細胞の元の 癌の病理組織学性状、2 )長期観察した場合のマウスにおける腫瘍の病理組 織学的性状と浸潤先端部におけるインテグリンの発現、 3 )臨床応用などに ついて、副査長嶋和郎教授より、 1 )多くの遺伝子が関係する癌の研究での 遺伝子発現 の検索への DNA チップの応用の有用 性、 2 )イ ンテグリン p4 の 発現の制御機構、 3 )他のインテグリンの関与、 4 )細胞増殖能との関係な どについて、フロアの癌研細胞制御浜田淳一助教授から、1 )ラミニンのマ ウス膀胱に おける発現、 2 )インテグリン,4 遺伝子の発現調節機構につい て、主査細川真澄男教授より、 1 )インテグリンを介した接着の動物種特異 性、2 )動的接着と静的接着の違い、3 )浸潤性の弱い細胞のインテグリン ロ4 発現を抑制する実験についてなど多 数の質問があったが、いずれの質問 に対しても、申請者は自らの実験成績や文献的知識を弓1 用して妥当に回答し 得た。    本研究は、ヒト膀胱癌における上皮内進展(IES )と上皮内癌(CIS )の成立 過程にはインテグリン84 の発現低下とラミニンによる運動の亢進が関わっ ている可能性を示したものである。今後、これらの成果はヒト膀胱癌の進展 の予測と予防に応用できることが期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、研究期間中の研鑽なども併せ

申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定し

た。

参照

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