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博士(農学)藤野賢治 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)藤野賢治 学位論文題名

イネ低温発芽性に関する分子育種学的研究 学位論文内容の要旨

  作 物の安定 生産には 、環境ス トレス耐 性の付与が 不可欠で あり、環 境ストレ ス 耐性の向 上は重要 な育種目 標である 。寒冷地で ある北海 道におけ るイネの 安 定 生産にお いては、 耐冷性の 付与が不 可欠である 。特に、 播種期と 穂孕み期 の 低 温ストレ ス障害が 品種育成 において 大きな問題 となって いる。播 種期の耐 冷 性 について は、穂孕 み期に比して遺伝解析およぴ品種改良研究の蓄積が少ない。

こ れは、北 海道にお けるイネ の栽培方 法が直播か ら移植へ と変遷し 、さらに 栽 培 技術が改 良された ことによ って、品 種育成によ って播種 期の耐冷 性の付与 を 行 わなくと も栽培が 可能とな ったため である。し かしなが ら、農業 就労人口 の 減 少・高齢 化、生産 費の低コ スト化、 大規模栽培 の実施等 の近年の 農業情勢 の 変 化から、 今後北海 道におけ るイネの 直播栽培の 必要性が 大きくな っている 。 そ のために は、低温 下におけ る発芽・ 苗立ち性に 関する遺 伝特性の 解明を行 な い 、播種期 の低温下 において 安定した 発芽・苗立 ち性を示 す品種の 開発が必 要 である。

  以上の背 景から、 本研究で はイネの 低温発芽 性に着目し 、低温発 芽性に関す る 遺 伝 子 の 同定 とDNAマ ー カ ーの 開 発お よ び その 利 用に よ る 良食 味 系 統へ の 低温発芽 性の導入 を行った 。

  第1章 の 緒 論で は 、作 物の安 定生産と 環境スト レス耐性 の育種を 論じた後、

環 境ス ト レ ス耐 性 に関 するDNAマーカー の開発、 北海道に おける耐 冷性育種と 栽培方 法の改良 およぴ今 後のイネ 直播栽培 の必要性 を述べ、低 温発芽性の重要 性を論 じた。

  第2章では、低温発芽性に極めて優れるイタリア由来の系統「Italica Livorno」 にっい て、低温 発芽性の 遺伝解析 を行った 。北海道 の系統「は やまさり」との 交 雑後 代F2お よ ぴBClFi世代では、 低温発芽 性は連続 的な変異 を示した ことか ら、「Italica Livorno」の低温発芽性は複数の遺伝子が関与する量的形質である ことが 明らかとなった。このBClFi世代において、「Italica Livorno」と同程度 の高い 低温発芽 性を示す 系統が認 められた ため、低 温発芽性の 表現型に基づく

(2)

選抜 と連続戻 し交雑を 行い、低 温発芽性 に関する遺 伝子の同定を試みた。BCsFi 世 代 ま で の 戻 し 交 雑 に よっ て 、 極め て 作用 カ の 大き な 低 温発 芽 性遺 伝 子Low temperature germjna6. 伍 紗 緲 ( 工 智 緲 を 同 定 す る こ と に 成 功 し た 。

  第3章で は、「ItalicaI」1vorno」の低温 発芽性に 関するQTL解析 を行った 。 まず、解析集団として「はやまさり」/「Italica Livorno」//「はやまさり」の BClFi世 代 に 由来 す る組 換 え 自殖 系 統BCiFs系統 を 作 出し た 。両 親は共に 温帯 ジ ャ ポ ニ カ に 属 す る た め にDNAマ ー カ ー の 多 型 率 は 低か っ た が、 多 数のDNA マ ーカ ーを供試 すること により、 イネゲノム 全域をカ バーする 連鎖地図 を構築 し た 。こ の 連 鎖地 図 を用 い たQTL解 析 によ り 、 低温 発 芽性 に 関す る3個の遺 伝 子を同定することができた。

  第4章では、最も作用カの大きな低温発芽性QTL(qI」TG‐3・1)に関して、詳細 な 座乗 染 色 体領 域 の同 定 と高 精度なDNAマ ーカーの開 発を行っ た。組換 え自殖 系統か ら3個の低 温発芽性QTLのうち、 目的とするqI」TG‐3‐1の みを有す る系 統 (BILn6)を 選 抜し 、 「 はやまさ り」との 交雑により 解析集団 を作出し た。

QTL近 傍 にDNAマ ー カ ー を 作 出 し 、qLTG.3・1と の 連 鎖 解 析 に よ っ て 、 qLTG.3・1の 座乗 染 色体 領 域を約100kbの 領域まで に絞り込ん だ。この ときに 開 発 し たDNAマ ー カ ー は 、 い ず れ も 高 精 度 なDNAマ ー カ ーと し て 選抜 に 用い ることが可能である。

  第5章では 、作用カ の極めて 大きな低温 発芽性遺 伝子qI」TG.3・1をDNAマー カー選抜 により良 食味品種 「ほしのゆ め」への 導入を行 った。作 出された準同 質遺伝子系統は、高い低温発芽性を示したことから、(lI」TG.3‐1とそのDNAマ ーカーの有効性が実証できた。

  第6章 の総 合 考察 で は、 本研究で 見出した極 めて作用 カの大き な低温発 芽性 遺 伝子qI」TG‐3・1および 本研究で開 発したqLTG‐3‐1に関するDNAマーカーと 準 同質遺伝 子系統を 用いた、低 温発芽性 の効率的 な改良方 法にっい てのシステ ム の提案を 行った。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   喜多村啓介 副 査    教 授    三上哲夫 副 査    教 授    岩間和人

学 位 論 文 題 名

イネ低温発芽性に関する分子育種学的研究

本 論 文 は6章76頁か らなる和 文論文で あり、図20、表8およ び要約を含 む。

  作物の安定生産には、環境ストレス耐性の付与が不可欠であり、環境ストレス耐性の向 上は重要な育種目標である。寒冷地である北海道におけるイネの安定生産においては、耐 冷性の付与が不可欠である。特に、播種期と穂孕み期の低温ストレス障害が品種育成にお いて大きな問題となっている。播種期の耐冷性については、穂孕み期に比して遺伝解析お よび品種改良研究の蓄積が少ない。これは、北海道におけるイネの栽培方法が直播から移 植へと変遷し、さらに栽培技術が改良されたことによって、品種育成によって播種期の耐 冷性の付与を行わなくとも栽培が可能となったためである。しかしながら、農業就労人口 の減少・高齢化、生産費の低コスト化、大規模栽培の実施等の近年の農業情勢の変化から、

北海道におけるイネの直播栽培の必要性が大きくなっている。本研究では、低温下におけ る発芽・苗立ち性に関する遺伝特性の解明を行ない、播種期の低温下において安定した発 芽・苗立ち性を示す品種の開発に向けた基礎的研究を行った。

  得られた結果は以下の通りである。

1. 低温発芽 性に関する変異解析

  低温発芽性に極めて優れるイタリア由来の系統「Italica Livorno」について、低温発芽性 の遺伝解析を行った。北海道の系統「はやまさり」との交雑後代F2およびBCiFi世代では、

低温発芽性は連続的な変異を示したことから、「Italica Livorno」の低温発芽性は複数の遺 伝子が関与する量的形質であることが明らかとなった。このBCiFi世代において、「Italica Livorno」と同程度の高い低温発芽性を示す系統が認められたため、低温発芽性の表現型に、

基づく選抜と連続戻し交雑を行い、低温発芽性に関する遺伝子の同定を試みた。BCsFi世     ―221―

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代 ま で の 戻 し 交 雑 に よ っ て 、 極 め て 作 用 カ の 大 き な 低 温 発芽 性遺 伝子Low temperature germinability州(Ltg(t)) を 同 定 す る こ と に 成 功 し た 。

2.低温発芽性に関するQTL解析

  「Italica Livorno」の低温発芽性に関するQTL解析を行った。まず、解析集団とし て「は やまさり」/「Italica Livornoi//「はやまさり」のBCiFi世代に由来する組換え自殖系統BCiFs 系 統 を 作 出 し た 。 両 親 は 共 に 温 帯 ジ ャ ポ 二 カ に 属 す る た め にDNAマー カー の多 型率 は低 か っ た が 、 多 数 のDNAマ ー カ ー を 供 試 す る こ と に よ り 、 イ ネ ゲノ ム全 域を カバ ーす る連 鎖 地 図 を 構 築 し た 。 こ の 連 鎖 地 図を 用い たQTL解析 によ り、 低温 発芽 性に 関 する3個 の遺 伝子を同定することができた。

3.低 温 発 芽 性 遺 伝 子qLTG‑3‑1の 詳 細 な 座 乗 染 色 体 領 域 の 同 定 な ら び に 遺 伝 子 作 用 カ の 評 価

  最も 作用 カの 大き な低 温発 芽性QTL(qLTG‑3‑1) に関 して 、詳 細な 座乗染色体領域の同定 と 高 精 度 なDNAマ ー カ ー の 開 発 を 行 っ た 。 組 換 え 自 殖 系 統 か ら3個 の 低 温 発 芽 性QTLの う ち 、 目的 とす るqLTG‑3‑1のみ を有 する 系統 (BIL116)を選 抜し 、「 はや まさ り」 との 交 雑 に よ り 解 析 集 団 を 作 出 し た 。QTL近 傍 にDNAマ ー カ ー を 作 出 し 、qLTG‑3‑1と の 連 鎖 解 析 に よ って 、qLTG‑3‑1の座 乗染 色体 領域 を約100kbの領 域ま でに 絞り 込ん だ。 この とき に 開 発 し たDNAマ ー カ ー は 、 い ず れ も 高 精 度 なDNAマ ー カ ー と し て 選 抜 に 用 い る こ と が 可 能 であ る。

4.低温 発芽 性遺 伝子qLTG‑3‑1に関 するDNAマ ーカ ー選 抜     ●

  作 用 カ の 極 め て 大 き な 低 温 発 芽 性 遺 伝 子qLTG‑3‑1をDNAマー カー 選抜 によ り良 食味 品 種 「ほ しの ゆめ 」へ の導 入を 行っ た。 作 出さ れた 準同 質遺 伝子 系統は、高い低温発芽性を 示 し た こ と か ら 、 qLTG− 3‑1と そ の DNAマ ー カ ー の 有 効 性 が 実 証 で き た 。

  本 研 究 は 、 低 温 発 芽 性 の 遺 伝 特 性 を 分 子 育 種 学 的 に 解 明 し 、 実 用 的 な 選 抜DNAマ ー カ ー を 開 発 す る と と も に 、 そ の 実 証 と し て 系 統 の 作 出 を 行 い 、 イ ネ の 直 播 用 品 種 育 成 へ の 応 用 に 重 要 な 道 筋 を 立 て る も の で あ り 、 学 術 的 に 高 く 評 価 で き る 。   よ っ て 、 審 査 員 一 同 は 、 藤 野 賢 治 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

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参照

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