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博士(農学)間野 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)間野 学位論文題名

ヒグマ狩猟個体群構成の分析による個体群動態解析の問題点

―北海道渡島半島域の隔離個体群の分析―

学位論文の内容の要旨

1, 本 研 究 の目 的は, 北海道 のヒグ マの個 体群 動態解 析を行 う上で 重要 な資料 である 狩猟個 体群 に っいて ,そ れに含 まれる 諸問題 を検 討し, 適正な ヒグマ の生活 史パ ラメー 夕一を 得るための手 法 を理論 的に 整理す ること である 。次 に,こ れらの 分析か ら示唆 され るヒグ マの行 動や生態につ い て生物 学的 に論議 し,さ らにヒ グマ の狩猟 管理に っいて の提言 を行 い,ヒ グマを はじめとする 野 性動物 の科 学的保 護管理 策確立 に資 するこ とであ る。

2. ヒ グ マ 隔離 個体群 の存在 する渡 島半島 を調 査地と して設 定し, 狩猟 と駆除 によっ て捕殺 され た ヒグマ の繁 殖状態 ,性, 齢構成 を調 査した 。また ,狩猟 統計の 分析 から, 第二次 世界大戦前に 比 べ戦後 の年 間平均 捕獲数 が2. 16倍に増 加していること,さらに春グマ駆除制度の導入された19 60年代後 半以降 は,そ れ以前 に比 ベ春季 の捕獲 数が増 加し ている ことを 示した 。1966―1987年に 捕 獲 さ れ た1849頭 の季 節 別 内 訳 は ,3―5月 の春 季 に58%,9―11月の秋 季に32%であ り,正 規 の 狩猟期 間で ある10―1月 に捕獲 された 割合 は24%で あった 。

3. 捕 獲 時 期に よって 捕獲地 点の分 布には 顕著 な相違 がみら れ,春 季に は半島 の内陸 山岳部 で捕 獲 される こと が多い のに対 し,夏 ・秋 季には 海岸部 や農耕 地に隣 接す る地域 で捕獲 すれることが 多 かった 。こ れらは 季節に よるヒ グマ の捕獲 形態( 動機や 方法) の違 いを反 映して いるためと考 え られた 。

4. 1983―1987年に 捕殺 された ヒグマ443頭 (オス247頭,メ ス196頭,幼 獣を含 む) にっい て,

狩 猟によ る捕 獲個体 群構成 の偏り とそ の要因 にっい て分析 した。 春季 にはヒ グマの 性,年齢,繁 殖 状 態 別 に 捕獲 さ れ る 順 序に 差 異 が 認 め られ ,O歳 仔 連れ のメス が最 も遅く 捕獲さ れる傾 向が あ った。 この ことの 大きな 要因と して ,冬眠穴から出て活動を開始する時期の相違が考えられた。

ま た , 出 グ マ狩り (冬眠 穴外で の狩 り)に 比ベ穴 狩り( 冬眠 穴内で の狩り )ではO歳 仔連れ を捕 獲 す る 頻 度 が13倍も 高か ったが ,それ は0歳仔連 れの個 体の活 動開 始時期 が遅い ことに 起因 する と 考えら れた 。夏・ 秋季に おける 捕獲 個体群 構成で は,銃 猟によ る捕 獲に比 ベワナ 猟による捕獲

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で, 性比が オスに 偏って いた が,こ の要因 は明ら かで ない。

5. 上記 の443頭 のう ち,393頭( オス212顛, メス181頭 )の個 体の年 齢を歯 の年 輪等に より査 定 し た 。春 季 に 捕 獲 され た 個 体 の うち ,O歳 と1歳 の 性 比 は ,O歳 で は 有 意に オ スが 多く, また1 歳 で もオ ス が多い 傾向が みられ た。 夏・秋 季にはO歳 では50: 50と差は なかっ たが,1歳 では顕 著に オスに 偏って いた。 これ ら幼獣 の性比 の偏り の至 近要因 と究極 要因と も不明 である。成獣メ スに 占める 全母獣 の割合 は, 春季が52%であるのに対し,夏・秋季では67%で,後者で高かった。

し か し, 連 れ て い た幼 獣 の 年 齢 では , 春 季 で は1歳 仔 連れ が最も 多く(26% ),次 いでO歳仔 連 れ(15%),2歳 仔連れ (12% )であ ったのに対し,夏・秋季ではO歳仔連れが最も多く(31%),

1歳 仔連 れは2%で ,2歳 仔連 れは確 認でき なかっ た。

6. 母獣 の 連 れ て いた 幼 獣 の 個 体数 の 平 均 値 は,O歳 の 春季(1. 62土O.51,N=13)より も0歳 の夏 ・秋季 (1. 55土O.61,N=20)で わずか に小さ くなり ,1歳(1.79土0.53,N=ニ19)でtま0 歳 の 春季 , 夏 ・ 秋 季よ り も わ ず かに 大 き く な っ たが , そ れ ぞ れに 統 計 的 有 意差は なかっ た。

7.4―6歳 の 若い 母 獣 は7歳以 上 の 個 体 に 比ベ , 連 れ て いる 幼 獣 の 数 が少 な い傾 向が あり, こ れ ら の個 体 の 幼 獣 の生 存 率 は ,低 いこと が示 唆され た。ま た,7歳以 上の個 体が 出産し た1頭か らな るりタ ーの幼 獣の生 存率 が,2頭以 上から なるり ターの それと比べて低いことが考えられた。

8. 幼獣 を除い た捕獲 個体の 性比は ,春 季,夏 ,秋季 および 全季 節をこ みにし た場合ともに,50:

50と差 はなか った 。春季 の捕獲 個体群 構成は メス に比ベ オスで 老齢の 個体 が少な く,有意に若齢 に偏 ってい た。し かし, 夏・ 秋季の 構成で は,オ スメ ス間で 分布の 形に差 は認め られなかった。

春季 と夏・ 秋季と の間で ,同 性間で 齢構成 を比較 した ところ ,オス メスと もに季 節による齢構成 に統 計的有 意差は みられ なか ったが ,上の ような 状況 から, メスよ りもオ スの齢 構成により大き な季 節変化 をする 傾向が あっ た。ま た,年 間を通 じた 構成で は,分 布の形 と位置 にオスメス間で 統計 的有意 差はな かった 。

9. 春季 に おけ るメス 個体の 繁殖状 態ごと に, 狩猟に よる捕 獲され やす さの相 違を考 慮して ,捕 獲個 体群構 成の偏 りを補 正す るモデ ルを提 示した 。こ のモデ ルは, 安定齢 分布を 仮定して,個体 群の 増加率 スを乗 じた相 対的 なメス のmーおよ び1ースケ ジュー ルを推 定す ること を目的とする。

モデ ルによ れば繁 殖状態 別の メスの 相対的 な捕獲 され やすさ の相違 と,出 産後翌 年の春季までに 全て の仔を 失うメ スの割 合の ニっの 値が, 狩猟個 体群 構成の 偏りを 補正す るため に必要であるこ とが 示され た。こ のモデ ルか ら,様 々なニ っの値 に対 するメ スの平 均出産 間隔が 提示されたが,

個体 群の年 間許容 死亡率 は10% 以下で あるこ とが 示唆さ れた。 モデル から 推定さ れたパラメータ の妥 当性を 評価す るため ,多 数個体 を標識 放逐し 長期 間にわ たり電 波追跡 するな ど,可能なあら

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ゆ る 手 段 に よ り 個 体 群 増 減 の 指 標 を 得 る こ と が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。 10.一 方, 少 数例 では あ るが記号放逐 個体の死亡パター ンの分析から,モ デルから示唆された 年 間 許容 死亡 率 をは るか に 上回る捕殺圧 が個体群にかかっ ていることが明ら かになり,適正な保 護 管理策の 必要性を指摘した。

11.これ らの研究結果に基づ き,北海道のヒグ マの個体群を維持 し,継続的な狩猟を行うために,

総捕獲数 の制限,繁殖状態別 の狩猟対象規制, 狩猟期間や狩猟法 の改善等にっいて提言を行った。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    森    樊 須 副 査    教 授    高 木 貞 夫 副査    助教授    阿部    永

  本論 文 は総 頁数100頁 , 図21,表13を含 み和 文 で書 かれ ている。人為的環 境改変や捕獲の増加 等 によ り ,食 物連 鎖 上の 上位 種 であるク マ類など大形動物 の衰退が著しく, その保護管理は国内 的 な枠 を こえ 国際 的 な問 題と な っている 。わが国における クマ類の生息数管 理は,最近まで事実 上 ほと ん ど無 いに 等 しい 状態 で あった。 規制の少ない捕獲 法による捕獲個体 群には多くの生態情 報が含 まれているが,そ の収集作業の困難 性から,これまで本 格的な解析が行わ れていなかった。

本 研究 は ,多 大な 作 業に より そ れら捕獲 個体群の情報を集 め,それに含まれ る諸問題を検討し,

保 護 管 理 策 の 策 定 に そ れ ら を 生 か し た も の で あ る 。 研 究 結 果 の 内 容 は 次 の とお りで あ る。

  北海 道 渡島 半島 に 存在 して い るヒ グマ の 孤立 個体 群 を対 象と し て狩 猟個 体 から情報を収集し た 。1966−1987年に 捕獲 さ れた1849頭 の季 節別 内 訳は ,3―5月の 春季 に58% ,9―11月 の 秋季 に32% で あ り , 正 規 の 狩 猟 期 間 で あ る10―1月 に 捕 獲 さ れ た 割 合 は24% で あ っ た 。   春季 に は半 島の 内 陸山 岳部 で 捕獲され ることが多いのに 対し,夏・秋季に は海岸部や農耕地に 隣 接す る 地域 で捕 獲 され るこ と が多 く, 季 節に よっ て 捕獲 地点 の 分布 に顕 著 な相違があった。

  1983←1987年に 捕 獲さ れた ヒ グマ443頭にっい て,捕獲状況を精査 したところ,春季 にはO歳仔 連れの メスが最も遅く捕 獲される傾向があ った。また,出グマ 狩り(冬眠穴外で の狩り)に比べ,

穴 狩り ( 冬眠 穴内 で の狩 り) で は0歳仔連れを捕 獲する頻度が13倍も 高かったが,それ は0歳仔連 れの個 体が遅くまで冬眠 穴にとどまり,穴 外での活動開始時期が遅いことに起因すると考えられた。

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  上記 の443頭の う ち,393頭 の個体の年齢を 歯の年輪等により 査定した。春季に 捕獲された個体 の うち ,0歳 と1歳 の 性比 は, い ずれ もオ ス が多 い傾 向 を示 した 。 夏・ 秋季 に は,0歳で は50: 50と差 はな か った が,1歳で は 顕著 にオ ス に偏 って いた。成獣 メスに占める全母 獣の割合は,春 季 が52%で あ るの に対 し ,夏 ・秋季では67% で,後者で高かっ た。連れていた幼 獣では,春季で は1歳仔 連れ が 最も 多く(26% ) ,次 いでO歳仔 連 れ(15% ) ,2歳 仔連 れ(12%) で あっ たの に 対 し , 夏 ・ 秋 季 で はO歳 仔 連 れ が 最 も 多 く(31%) ,1歳 仔 連れ は2% で,2歳仔 連 れは 確認 で きなかった 。

  母 獣 の 連 れ て い た 幼 獣 の個 体数 の 平均 値は ,0歳 の 春季(1. 62土O.51,N=13)より もO歳 の 夏 ・ 秋 季(1. 55土O.61,N=20)で わ ず か に 小 さ く ,1歳(1. 79土O.53,N=19)ではO歳の 春 季 , 夏 ・ 秋 季 よ り も わ ず か に 大 き く な っ た が , そ れ ぞ れ に 統 計 的 有 意 差 は な か っ た 。   4→6歳 の若 い母 獣 は7歳 以上 の個 体 に比 ベ, 連 れて いる 幼 獣の 数が 少 ない 傾向 が あり ,そ れ ら の個 体の 幼 獣の 生存 率 は低 いこ と が示 唆さ れ た。 また ,7歳 以 上の 個体 が出産した1頭からな る り 夕 一 の 幼 獣 の 生 存 率 は ,2頭 以 上 か ら な る り タ ー の そ れ と 比 べ て 低 か っ た 。   幼獣 を除 い た捕 獲個 体 の性 比は,春季,夏 ・秋季および全季 節をこみにした場 合ともに,50: 50と差はな かった。秋季の捕 獲個体群の構成はメ スに比ベオスで老 齢の個体か少なく,有意に若齢 に偏ってい た。しかし,夏・ 秋季の構成では,オ スメス間で分布の 形に差は認められなかった。こ のような状 況から,メスより もオスの捕獲個体群の齢構成に,より大きな季節変化の傾向があった。

  春季 にお け るメ ス個 体 の繁 殖状態ごとに, 狩猟による捕獲さ れやすさの相違を 考慮して,捕獲 個 体群 構成 の 偏り を補 正 する モデルを提示し た。モデルによれ ば,繁殖状態別の メスの相対的な 捕 獲さ れや す さの 相違 と ,出 産後翌年の春季 までに全ての仔を 失うメスの割合の ニっの値が,狩 猟 個体 群構 成 の偏 りを 補 正す るために必要で あることが示され た。このモデルか ら,様々なニっ の 値に 対す る メス の平 均 出産 間隔が提示され たが,個体群の年 間許容死亡率は10%以下であるこ とが示唆さ れた。

  一方 ,少 数 例で はあ る が記 号放逐個体の死 亡パターンの分析 から,モデルから 示唆された年間 許 容死 亡率 を はる かに 上 回る 捕獲圧が個体群 にかかっているこ とが明らかになり ,適正な保護管 理策の必要 性を指摘した。

  以上 ,本 研 究は ヒグ マ の捕 獲個体群から真 の個体群構成を推 定する方法にっい て提案するとと もに,個体 群の適正管理にっ いて提言を行った。 これらは応用動物 学上貢献するところが大きい,

よ って 審査 員 ー同 は最 終 試験 の結 果 と合 わせ て ,本 論文 の 提出 者間 野 勉は博士 (農学)の学位 を受けるの に十分な資格があ るものと認定した。

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