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博士(農学)佐藤 創 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)佐藤    創 学位論文題名

北 海 道 南 部 の サ ワ グ ル ミ 林の 成 立 維 持機 構 に 関 する 研 究 学 位 論 文内 容 の 要 旨

  

近年,森林の成立や維持あるいは更新などに果たす自然撹乱 の役割が重要視されている。本研究では、森林構成種の個体群 の成立・維持に洪水や土砂崩れなどの撹乱の果たす役割を明ら かにするため、暖温帯から冷温帯の溪流沿いに生育し、カツラ、

トチノキ、イタヤカエデなどとともに渓畔林を構成する主要な 樹種であるサワグルミに注目した。これまで、サワグルミ林の 成立には、ギャップ形成や地表面撹乱などが不可欠で、安定状 態が続けばトチノキやプナの林に推移していく可能性が示唆さ れ て い る (広 木 ,

1987

; 堀 川 ・ 佐々 木 ,

1959

) 。しか し、

サワグルミが溪畔林の各階層に出現することから土地的極相を 構 成 す る と い う 見 解 も あ る (

Kik uchi

1968

Sait

○ ,

1971

)。 このよ うに、 サワグルミ林の成立維持に関して矛盾 した見解が存在するのは、それらの見解が階層構造からの類推 によるもので、サワグルミ林構成種のデモグラフイー特性と環 境条件との関係について定量的に明らかにされていないからで ある。

  

そこで、サワグルミ林の現在の構造・立地を明らかにし、そ れがどの様にして更新し成立してきたかをサワグルミ林構成種 の生残、成長、生育環境などの生態的特性および地表面撹乱か ら明らかにした。そして、サワグルミ個体群が、どのように地 表撹乱や他種からの影響を受けて維持されているのかを明らか にした.

(2)

  

調査方形区は渡島半島南西部の松前半島を流れる、石崎川左 股支流ネブサ沢、石崎川右股,知内川水系コモナイ川、知内川、

木古内川、桧倉川水系蝋の沢に沿って成立するサワグルミ林に

18

カ所,上部 斜面のプナ林に

4

カ所,サワグルミ林周辺の稚樹 の 生 育 地 に

16

力 所を それ ぞれ 設 けた .そ こで ,

1984

年 から

1992

年にかけて各個 体のサイズ,位置,樹齢,成 長,生残,

発 生 , 成 立 地形 ,土 壌 ,照 度な どに 関す る 調査 を行 った .

  

サワグルミ林の成立場所は、本調査地では主に沢沿いの土石 流段丘、洪水段丘、沖積錐、崖錐であった。

  

サワグルミ林はプナ林に比べて林冠木の樹齢の平均値が小さ く,ばらっきも小さかった.さらにサワグルミ林では,頻繁な 土壌の堆積のあとが見られたことから,林冠の一斉破壊を引き 起こすような洪水や土石流などの撹乱がブナ林に比べて頻繁に 発生すると言える。

  

サワグルミ林の中でも、サワグルミの優占度が高い林分では、

林冠木の樹齢の集中性が大きかった。特に土石流段丘上の林分 ではサワグルミが優占することが多かった.逆に、サワグルミ、

ハルニレ、トチノキ、イタヤカエデ、プナなどが混生する林分 では、樹齢の集中性が小さかった。したがって、方形区内全体 に及ぶような、大面積の撹乱により裸地が生じるとサワグルミ の優占する確率が高いが、方形区面積より小さいギャップが生 じると遷移後期種も含めた多様な樹種からなる林が成立すると 言える。

  

主要構成樹 種の上層,中層,下層の3階層への相対的な出現

/

ヽ夕ーン を調べると,サワグルミ、キハダおよびハルニレは 中・下層に比べて上層で多く出現したが,中層や下層にもある 程度の出現が見られた.それに対し、ケヤマハンノキはほとん どが上層で生育し、下層では個体が出現しなかった。プナやト チノキは下層や中層で多く出現したが、上層にもある程度の出 現がみられた。イタヤカエデとオヒョウは下層で多く出現した

(3)

が、上層にはあまり出現しなかった。オニグルミは上・中層に 個 体 が 集 中 し 、 下 層 で は 個 体 が 出 現 し な か っ た 。

  

サワグルミは,閉鎖林冠下のような照度の低い場所では,発 生数はケヤマハンノキよりも多く,成長速度はオヒョウやイタ ヤカエデよりも遅く,生残比はケヤマハンノキよりも高いが,

オヒョウよりも低かった.また,大ギャップ,開けた林緑部や 開放地のような明るい場所では成長速度はケヤマハンノキより も遅いが,卜チノキ,イタヤカエデあるいはオこグルミよりも 速く,ハルこレやキハダと同等であった.以上のことから,ケ ヤマハンノキは先駆樹種で、オヒョウ、イタヤカエデ、トチノ キ、プナは遷移後期種で、サワグルミならびにハルニレ、キハ ダ、オニグルミはその中間のギャップ依存種であると結論づけ られる.

  

したが.って、現在、下層で個体数の多いサワグルミは林冠の 閉鎖した状態が続くと、オヒョウ、イ 夕ヤカェデ、卜チノキな ど に 比 べ て 個 体 数 が 減 少 す る こ と が 予 測 さ れ る 。

  

沢に沿った大面積の撹乱により裸地が生じた場合は,サワグ ルミ同齢林が成立することが多かった.なぜ、そのような場所 で先駆樹種であるケヤマハンノキではなく、ギャップ依存種で あるサワグルミが優占する場合が多いのかについては次の仮説 が考えられる。第一に、沢に沿った大面積の撹乱の後に裸地が 生じても、流路に近い低位堆積地に生育するケヤマハンノキは、

母樹が失われるため種子を散布することが出来ないが、サワグ ルミ母樹は撹乱を受けにくい崖錐や斜面の凹地などにも生育す ること、第二に、サワグルミ林が成立する河床堆積地が河幅の 狭い谷底であるため、撹乱により河幅部が開放地になった場合 でもその面積は狭く、太陽光が斜面の残存する林木に遮られる ため光資源が少ないこと、である。

    

    

そのようにしてサワグルミ林が成立した後の維持機構につい ては、撹乱の大きさや強度の違いにより次のようなパターンが

(4)

見られる。(1)小強度の洪水や土石流により表土の移動が生じ、

林冠木の倒壊がほとんどない場合には、各種の稚.樹が定着する が、オヒョウやイタヤ・カエデなどの遷移後期種がサワグルミに 比べ て成長、生残、加 入などが優ってい る。したがって、サワ グ ル ミの 寿命 で ある100年が経過 し、林冠のサワグ ルミが死亡 した 後は、オヒョウや イタヤカエデなど の遷移後期種が林冠を 占め る割合が高いであろう。(2)少数の林冠木の倒壊によルギ ヤッ プが形成されると 、サワグルミと遷 移後期種であるオヒョ ウ、 イタヤカエデ、ト チノキなどが機会 的に更新する可能性が 高い であろう。さらに 、ギャップの面積 が小さくなるほど遷移 後期 種が更新する可能性が高いであろう。(3)沢に沿った大面 積, 大強度の撹乱によ り開放地が生じる と再びサワグルミの同 齢林が成立する。

  

以上の ことからサワグル ミ林が成立できる要因としては、第 一に 、河床堆積地にお いて、表土の移動 をともなうギャップま た は 裸地 が約

100

年以下の間隔で 生じる必要がある 。表土の移 動が なく、ギャップが 生じない場合は遷 移後期種が優占する。

第二 に、成立する河床 堆積地が河幅が狭 い谷底にあること。そ こで は、ギャップ依存 種であるサワグル ミの定着が先駆樹種で ある ケヤマハンノキ、 ヤナギ類などに比 べて有利である。河幅 が広い場所では、先駆樹種の林が成立する。

  

本研究 は、サワグルミ林 が、外的な撹乱に依存して成立し維 持さ れる不安定な林分 であることを、主 要構成樹種のデモグラ フイ ー特性から証明し た。加えて、河幅 の狭い谷底部という地 形的 要因もサワグルミ 林の成立維持の要 因になっていることを 示唆した。

(5)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

五十嵐 辻井 矢島

学 位 論 文 題 名

恒夫 達一     ≧嬰     7

北海道南 部のサ ワグルミ林の成立維持機構に関する研究

  本 給 文 は 、7章 で 構 成 さ れ 、 図24、 表15、 引 用 文 献79、 総 頁 数116頁 の 和文 論 文 で あ る 。 貝IJに 参 考 論 文9福 が 添 え ら ; れ て い る 。

  近 年 、 森 林 の 成 立 や 維 持 あ る ぃ は 更 新 な ど に 果 す 自 然 攪 乱 の 役 割 が 重 要視 さ れ て い る 。 本 論 文 は 、 暖 温 帯 か ら 冷 温 碕Fの渓 流 沿 いに 渓 畔 林を 構 成 する 主 要 樹種 サ ワ グ ル ミ に 注 目 し 、 森 林 構 成 種 の 個 体 群 の 成 立 ; 維 持 に 洪 水 や 土 砂 崩 れ な どの 撹 乱 が 果 す 役 割 に つ い て 諭 じ た も の で あ る ,

  1. 調 査 地 は 渡 島 半 島 南 西 部 の 松 育 館 半 島 を 流 れ る 石 崎 川 な ど6流 域 で、 沢 に 沿 っ て 成 立 す る サ ワ グ ル ミ 林 に18F3f、 上 部 斜 面 の ブ ナ 林 に4カ 所 、 サ ワ グ ル ミ 林 周 辺 の 稚 樹 の 生 育 地 に 16カ 所 の 方 形 区 を 設 け た 。  そ こ で 、 .L984年 か ら 1992年 に か け て 各 個 体 の サ イ ズ 、 位 置 、 樹 齢 、 成 長 、 生 残 、 発 生 、 成 立 地 形 、 土 壌 、 照 度 な ど に 関 す る 調 査 を 行 っ た 。 な お 、 本 調 査 地 域 に お け る サ ワ グ ルミ 林 の 成 立 場 所 は 、 主 に 沢 治 い の 土 石 流 段 丘 、 洪 水 段 丘 、 沖 積 雛 、 厳 錐 で あ っ た ュ   2. , サ ワ グ ル ミ 林 の 中 で も 、 土 石 流 段 丘 上 など サ ワ グル ミ の 優占 度 が 商い 林 分 で は 、 林 冠 木 の 樹 齢 の 集 中 性 が 大 巻 か っ た 。 逆 に 、 サ ワ グ ル ミ 、 ハ ル ニ レ 、卜 チ ノ キ 、 イ タ ヤカ エ デ 、プ ナ な ど が混 生 す る林 分 で は、 樹 齢 の集 中 性 が小 さ か った 。 し た が っ て 、 方 形 区 内 金 体 に 及 ぶ よ う な 大 面 積 の 撹 乱 に よ り 裸 地 が 生 じ る とサ ワ グ ル ミ の 優 占す る 確 率が 高 い が 、方 形 区 面積 よ り 小さ ぃ : ギャ ッ プ か生 じ る と遷 移 後 期 種 も 含 め た 多 様 な 樹 種 か ら な る 林 ガ 成 立 す る 。

  3. 主 要 構 成 ! 樹 穏 の 上 暦 、 中 層 、 下 層 の3階 層 へ の 相 対 的 な 出 現 パ タ― ン は 、

(6)

サワグルミ、キハダおよびハルニレは上層に多く出現し、,中層や下層にもある程 度 の出 現が見 られ た。 それ に対 し、ケヤマハンノキはほとんどが上層で生育し、

下層には出現しなかった。プ.すや卜チノキは下層や中層で多く出現したが、上眉 に もあ る程度 の出 現が みら れた 。イタヤカエデとオヒョウは下層で多く出現した が 、上 眉には あま り出 現し なか った。オニグルミは上・中層に個体が集中し、下 層には出現しなかった。

  4.照 度の 低いj鋳所 およ び明 るぃ場所における稚苗の発生数、成長速度、生残 比の比較から、ケヤマハンノキは先駆樹種、オヒョウ、イタヤカエデ、卜チノキ、

ブ ナは 遷移後 期種 、サ ワグ ルミ ならぴにハルニレ、キハダ、オニグルミはその中 間 のギ ャップ 依存 種で ある と結 諭づけられる。したがって、現在、下層で個体数 の 多い サワグ ルミ は林 冠の 閉鎖 した状態が続くと、オヒョウ、イタヤカエデ、卜 チノキなどに比べて個体数が減少することが予測される。

  5.沢 に治 った 火面 積の 撹乱 によ り裸地 が生 じた 場合 は、 サワグルミ同齢林か 成 立す ること が多 かっ たが 、そ れは沢に治った大面積の攪乱の後に裸地が生じて も、流路に近い低位堆積:地に生育するケヤマハンノキは母樹が失われるに対し、

サワグルミ母樹は撹乱を受′けにくい崖錐や斜面の凹地などにも生育すること、サ ワ グル ミ林が 成立 する 河床 堆積 地が河幅の狭い谷底であるため、攪乱により河幅 部 が開 放地に なっ た場 合で もそ の面積は狭く、太陽光が斜面に残存する林水に遮 られるため光資源か少なぃことによるものである。

  6.サワグル.ミ林の維持機構については、撹乱の大き:さや強度の違いにより次 の ようなパター ンが見らオLる。(1)小強度の洪水や土石流により表土の移動が 生じ、林冠木の倒!寝がほとんどない場合には、各種の稚樹が定着するが遷移後期 種 がサ ヮグル ミに 比べ て成 長、 生残、加入などが優っている。したがって、サワ グ ルミ の寿命 であ る10() 年ガ 経過し、林冠のサワグルミか死亡した後は遊移後 期 種か林冠を占める。(2)少数の林冠木の倒壊によルギャップが形成ぎれると、

サワグルミと遷移後期種が機会的に更新する可能性が商い; さらに、ギャップの 面 積が 小さく なる ほど 遷移 後期 種が 更新 する 。(3)沢 に沿 った大面積、大強度 の 撹 乱 に よ り 開 放 地 が 生 じ る と 再 び サ ワ グ ル ミ の 同 齢 林 が 成 立 す る ,   これ らのこ とか らサ ワグ ルミ 林が成立できる要因としては、河床堆積地におぃ

(7)

て 、 表 土 の 移 動を とも なう ギャ ップ または 裸地 が約100年以 下の 間隔で 生じ る こ と 、 成 立 す る 河 床 堆 積 地 が 河 幅 が 狭 い 谷 底 に あ る こ と が あ げ ら れ る 。   以上のように本研究は、暖温帯から冷温帯の渓畔に成立するサワグルミ林が、

外 的な攪乱に依存して成立し維持される不安定な林分であることを、主要構成樹 種のデモグ丶ラフイー特性から証明したものであり、森林動態研究の進展に寄与す るところ犬きぃものがある。

  よって薯F査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提 出 者佐 藤創 は、 博士 (農 学) の学 位を 受け るに 十分な 資格 があると認定した。

参照

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