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博士(農学)工藤 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)工藤 学位論文題名

低平地 水田地 域におけ る水管理と水質・水文に関する研究

    ー 津 軽 地 域 を 事 例 と し て ―

学位論文内容の要旨

  本論 文は5章11節11項から構 成され、図112、表19¥引用文献255を含む175 頁からなる。

  近年、農村地帯は社会的動向を背景として、混住化や土地利用状況の変化が進 行している。また、水田地帯がもつ多機能の評価や自然環境保全機能等への期待 も高い。これらに対応するため、さらに水利施設の役割や排水機能、用・排水の 水質に関する調査研究等、水に関する総合的な研究が要望されている。従って、

従来水田地帯では用水管理が主流をなしていた水管理も、これからは用水、排水、

水質を包括したものでなければならない。

  本論文は基本的にこのような立場から、青森県津軽地域を事例として、低平地 水 田 地 域 に お け る 水 管 理 と 水 質 ・ 水 文 に っ い て 考 察 し た も の で あ る。

  第1章は、緒 言として水 田地帯の水 管理に関す る社会的背景を概説した。

  第2章は、調査対象地区である青森県津軽地域における水田開発と農業水利の 発展過程を概説した。さらに、低平地水田地帯の用水、排水、水質に関する研究 動向にっいて述べ、本論文の位置付けを明示した。

  第3章は、調査地区が現在行っている水管理の特徴と農村市街地を流下する古 田川 の概要、低 平地水田地帯における水利施設の利用実態にっいて述べた。

  第4章においては、水管理の特徴と水質・水文環境にっいて検討し、以下のよ うな結果を得た。

1、水利用形態の特性を表すために地区内用水充足率、循環潅漑率、反復利用率、

ポンプ依存率にっいて検討した。平滝地区はいずれの項目も比率が極めて高く、

閉鎖型循環灌漑地区であることが水管理の実態から実証された0 500haを超える 広域の水田地帯で地区内反復利用を70〜90%行っている地区は全国でも極めて稀 である。生田地区は地区外からの流入用水量が約60%あり、半開放型灌漑地区と

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定義した。五所川原北部地区は地区内用水充足率が10%未満であるため、用水の ほ と ん ど を 地 区外 に 求め て いる 。 従っ て 、開 放 型灌 漑 地区 と 定 義し た 。 2、各水利用形態による降雨の利用状況にっいて、用水側と排水側から検討した。

閉鎖型である平滝地区は降雨が重要な用水源となっており、利用率が極めて高い

(用水側104%、排水側71%)。半開放型である生田地区は用水側75%、排水側 37%、開放型である五所川原北部地区は用水側39%、排水側17%となっている。

  この原因は降雨に対する対応をポンプの稼働、停止によって行うことが多いた めであり、用水のポンプ依存率との関係が強い。排水側は降雨の地区内貯留率と 同じであるが、再利用の水源として用いられるため、排水側からみた反復利用率 との関係が強い。このように、水利用形態の違いによって降雨の利用率が異ナょる ことが実証できた。

3、降雨水質の調査は平滝地区館岡機場と比較のため弘前大学農学部の2地点で 行った。その結果、水質濃度は弘前の方が僅かに高い程度で、全国各地の調査と 比 較 す る と か な 、 り 良 好 な 降 雨 水 質 で あ る と の 結 果 を 得 た 。 4、用水の期別水質変化はほば一定で、農業用水質基準内にある。排水は代かき

・田植期にかなり悪化する傾向がある。集中調査によると、濁度は安定時の10倍 以上、T―Nは3倍近い濃度となる。従って、この時期は水田地帯より河川等の 周辺水環境に与える影響が大きいため、水管理の改善を必要とする。一方、市街 地を挟んだ古田川地区でも代かき・田植や中干しの影響は受けるが、むしろ非灌 漑期に悪化する。これは流量が滅少し、生活排水の影響を強く受けるためであり、

潅 漑 期 は 農 業 排 水 が 河 川 水 質 濃 度 を 希 釈 さ せ る 働 き を し て い る 。 5、降雨の有無が水質に与える影響にっいて、基準濃度と変化率を用いて検討し た。館岡機場は降雨の有無にかかわらず、初期濃度が高いと減少(浄化)し、低 いと増加(悪化)する゛傾向を示す。従って、還元水の再利用を行っている平滝地 区は無降雨が続いても累積的に悪化しないことが明らかになった。古田川下流地 点では降 雨によってEC濃度が低下 し、CODやTーNは悪化す る傾向を示すが、

無降雨での変化は少ない。

6、降雨時の連続観測の結果から、平滝地区における降雨時の流出負荷量にっい て検討した。直接流出量と負荷量の関係を指数関数式で表し、既往の調査結.果と 比較した。COD負荷量は都市河川に次いで大きい結果となったが、これは平滝 地区の平均濃度が高いためである。T−N負荷量は他の調査結果よりかなり低い 傾向を示した。これは水田地帯の物質貯留効果を示すものである。さらに、貯留 効果を考える場合は、流出負荷量のみではナょく流入負荷量との比率で考えるべき

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であると指摘し、降雨負荷量に対する流出負荷量の比と一雨降雨量の関係を示し た 。そ の 結 果、CODで100im以下、T一Nで50mm以下の降 雨に対して は、降雨 に よ る 降 下 物 質 を 地 区 内 に 貯 留 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 7、灌漑期間中の流入水量と流出水量を比較すると、閉鎖型く半開放型く開放型 となる。期別の流入量は水田の水管理から代かき・田植期と中干し後に多くなる。

流出量は降雨量との連動性が高く、代かき・田植期や中干し期にも多くなる。

  流入負荷量と流出負荷量はそれぞれ水量との関係がある。代かき・田植期は排 水の水質濃度が高いため、さらに大きな負荷量となる。差引負荷量は閉鎖型>半 開放型冫開放型となり、平滝地区は浄化型、生田地区は均衡型、五所川原北部地 区は汚濁型水田地帯に分類される。このように、隣接した地区においても水管理 の方法によって水質収支が異なること、その主な原因は代かき・田植期の管理に 負うところが大きいことを実証した。

8、全国各地で行われた広域の水田地帯における潅漑期の調査結果をみると、水 利用形態によって水量や負荷量で10倍以上の差がある。本研究の事例は比較的小 流入 ・小流出で ある。COD.、T一N、T―Pの 流入負荷量 と流出負荷 量の関係 を対数グラフで表した結果、開放型潅漑地区は差引負荷量で汚濁型に属する事例 が多く、閉鎖型循環潅漑地区では浄化型に属する事例が多かった。ただし、T― P収支では流出負荷量の方が大きい事例がほとんどであり、流入負荷量に対して 5倍を超える事例もある。反復利用率と差引き負荷量の関係はかなり高く、反復 利用率が増加すると、差引負荷量がプラス側(浄化型)に移行することがわかっ た 。. す な わち 、 反復 利 用率は流出 負荷量を規 制する大き な要因であ る。

  第5章は、本論文の総括を行った。

  以上、本論文は農業水利学的な観点から、低平地水田地帯における水管理の実 態と水質・水文環境を明らかにした。特に、閉鎖型で循環潅漑を積極的に行って いる平滝地区の水管理は、将来の逼迫した水資源の利用方法や水田地帯が持つ多 機能、自然環境保全機能の評価にっいて、先行事例として有効な指針になるもの と考える。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

低平地 水田地 域におけ る水管 理と水質・水文に関する研究

一 津 軽 地 域 を 事 例 と し て ―

  本 論 文 は51111項 か ら 構 成 さ れ 、 図112、 表19.引 用 文 献255を 含 む175 頁 か ら な る 。 他 に 参 考 論 文17編 が 添 え ら れ て い る 。

  近 年 、 農 村 地 帯 は 社 会 的 動 向 を 背 景 と し て 、 .混 住化 や土 地利 用状 況の 変化 が進 行 し て い る 。 ま た 、 水 田 地 帯 が も つ 多 機 能 の 評 価 や 自 然 環 境 保 全 機 能 等 へ の 期 待 も 高 い 。 こ れ ら に 対 応 す る た め 、 さ ら に 水 利 施 設 の 役 割 や 排 水 機 能 、 用 ・ 排 水 の 水 質 に 関 す る 調 査 研 究 等 、 水 に 関 す る 総 合 的 な 研 究 が 要 望 さ れ て い る 。   本 論 文 は 青 森 県 津 軽 地 域 を 事 例 と し て 、 農 業 水 利 学 的 な 観 点 か ら 低 平 地 水 田 地 域 に お け る 水 管 理 と 水 質 ・ 水 文 に 関 す る 研 究 成 果 を と り ま と . め た も の で あ る 。   1章 は 緒 言 、 第2章 は 青 森 県 津 軽 地 域 に お け る 水 田 開 発 と 農 業 水 利 の 発 展 過 程 、 さ ら に 用 水 、 排 水 、 水 質 に 関 す る 研 究 動 向 に っ い て 述 べ た 。 第3章 は 調 査 地 区 の 水 管 理 と 水 利 施 設 の 利 用 実 態 に っ い て 述 べ た 。

  4章 に お い て は 、 水 管 理 の 特 徴 と 水 質 ・ 水 文 環 境 に っ い て 検 討 し 、 以 下 の よ う な 結 果 を 得 た 。

1、 水 利 用 形 態 の 特 性 を 表 す た め に 地 区 内 用 水 充 足 率 、 循 環 灌 漑 率 、 反 復 利用 率、

ポ ン プ 依 存 率 に っ い て 検 討 し 、 調 査 地 区 を 閉 鎖 型 循 環 灌 漑 地 区 、 半 開 放 型 灌 漑 地 区 、 開 放 型 灌 漑 地 区 に 分 類 し た 。 特 に 、 平 滝 地 区 は 地 区 内 反 復 利 用 を7090% 行 っ て お り 、500haを 超 え る 広 域 の 水 田 地 帯 で は 全 国 で も 極 め て 稀 で あ る 。 2、 降 雨 の 利 用 率 は 閉 鎖 型 冫 半 開 放 型 > 開 放 型 と な る 。 閉 鎖 型 で あ る 平 滝 地 区 は 降 雨 が 重 要 ナ ょ 用 水 源 と ナ ょ っ て お り 、 利 用 率 が 極 め て 高 い こ と を 実 証 し た 。 3、 降 雨 水 質 濃 度 は 平 滝 地 区 に 比 較 す る と 弘 前 の 方 が 僅 か に 高 い 程 度 で 、 全 国 各 地 の 調 査 と 比 較 す る と か な り 良 好 な 降 雨 水 質 で あ る と の 結 果 を 得 た 。 4、 用 水 の 期 別 水 質 変 化 は ほ ぼ 一 定 で 、 農 業 用 水 質 基 準 内 に あ る 。 排 水 は 代 か き

夫 豊

安 郁

   

口 田

堀 松

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

・田植期にかなり悪化する傾向がある。集中調査によると、濁度は安定時の10倍 以上、TーNは3倍近い濃度となり、水管理の改善が必要となることを指摘した。

5、降雨の有無が水質に与える影響にっいて、基準濃度と変化率を用いて検討し た。館岡機場は降雨の有無にかかわらず、初期濃度が高いと減少(浄化)し、低 いと増加(悪化)する傾向を示す。従って、還元水の再利用を行っている平滝地 区 は 無 降 雨 が 続 い て も 累 積 的 に 悪 化 し な い こ と を 実 証 し た 。 6、降雨時の連続観測の結果から、平滝地区における降雨時の流出負荷量にっい て検討した。直接流出量と負荷量の関係を指数関数式で表し、既往の調査結果と 比較した。TーN負荷量は他の調査結果よりかなり低い傾向を示した。これは水 田地帯の物質貯留効果を示すものである。さらに、貯留効果を考える場合は、流 出負荷量のみではなく流入負荷量との比率で考えるべきであると指摘し、降雨負 荷量に対する流出負荷量の比と一雨降雨量の関係を示した。その結果、CODで 100mm以下、TーNで50mm以下の降雨に対しては、降雨による降下物質を地区内 に貯留していることを実証した。

7、瀁漑期間中の流入水量と流出水量を比較すると、閉鎖型く半開放型く開放型 となる。流入負荷量と流出負荷量はそれぞれ水量との関係がある。代かき・田植 期は排水の水質濃度が高いため、さらに大きな負荷量となる。差引負荷量は閉鎖 型冫半開放型>開放型となり、平滝地区は浄化型、生田地区は均衡型、五所川原 北部地区は汚濁型水田地帯に分類される。

8.全国各地で行われた広域の水田地帯における潅漑期の調査結果をみると、水 利用形態によって水量や負荷量で10倍以上の差がある。本研究の事例は比較的小 流 入 ・ 小 流 出で あ る 。C OD.TーN.T―Pの流 入 負 荷量と 流出 負荷 量の関 係 を対数グラフで表した結果、開放型灌漑地区は差引負荷量で汚濁型に属する事例 が多く、閉鎖型循環潅漑地区では浄化型に属する事例が多かった。反復利用率と 差引き負荷量の関係はかなり高く、反復利用率が増加すると、差引負荷量がプラ ス側(浄化型)に移行することがわかった。すなわち、反復利用率は流出負荷量 を規制する大きな要因である。

  以上のように、本研究で得られた成果は低平地水田地帯における水管理の在り 方のみに止まらず、将来における水資源の利用方法や水田地帯が持つ多機能、自 然 環 境 保 全 機能 の 評 価 に っ い て も 、 先 行事 例 と して有 効な 指針 となる 。   よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提 出者工藤明1よ博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定し た。

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