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博士(歯学) 今待賢治 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)   今待賢治 学位論文題名

発がん活性を持つpp32rl はHuR と結合しその分解を抑制する

学位論文内容の要旨

    pp32は核 に局 在し、ataxin‑l、GranzymeA、リン酸化Rb、HuRといった 様々なタンパク質と結合することで機能を調節し、さらにpp32はアポトソーム に入ルアポトーシスを促進することにより、発がんを抑制することが明らかに なっているがん抑制遺伝子産物である。一方、pp32rlはpp32とホモロジーの高 いファミリー遺伝子だが、pp32とは異なる染色体に存在し、前立腺がんや乳が んで高い発現を示し、pp32とは対照的に細胞をがん化する能カをもつことが報 告されている。しかし、pp32rlによる細胞がん化機構の詳細は不明である。

HuRはRNA結合 タン パクELAV(the embryonic lethal abnormal vision)ファ ミ リ ー の メン バーで 、AU‑rich element(ARE)をも つmRNA(ARE‑mRNA)の 核 外輸送及び細胞質での安定化に関わっている。通常、がん細胞では正常細胞に 比べて細胞質にHuRが多く存在しており、細胞質におけるHuRの発現は大腸が ん や 口 腔 が ん な ど で そ の 悪 性 形 質 に 関 わ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。   アデノウイルス初期遺伝子産物であるE40rf6が、がん細胞でpp32やHuRと結 合 し 、 本 来CRM1依存 的に 輸送 され る宿主 のARE‑mRNAをCRM1非 依存 的に 、 強制的かつ恒常的に核外輸送・安定化することをHigashinoらは解明し、安定化 されたARE‑mRNAが細胞をがん化する能カを持ち、細胞がん化に寄与すること も見出した。さらに、口腔がん細胞でも細胞質においてHuRやARE‑mRNAが多 く発現し、HuRをノックダウンすると浸潤能などのがんの悪性形質が減弱する ことも明らかにし、ARE‑mRNAの核外輸送・安定化による細胞がん化は、新た な発がん機構として注目されている。

  本研究では、がん細胞の細胞質でHuRが多く発現している意義を解明するた めにpp32ファミリーによるHuRの分解について検索を行った。最近、スタウロ スポリン(STS)などの致死的ストレスで細胞を処理すると、HuR‑pp32複合体は 核外輸送され、細胞質でカスパーゼ‐3もしくは7がHuRを分解し、フリーとなっ たpp32がアポトソームに入ルアポトーシスを誘導することが報告された。しか し な が ら 、pp32rlとHuRの 分 解 と の 関 連 に つ い て は ま だ 報 告 がな い 。   pp32rlの発現をウェスタンブロッティングで検索したところ、正常細胞と比 較してがん細胞で発現の亢進が認められた。共焦点顕微鏡でpp32とpp32rlの発

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現を調べたところ、pp32が核に局在していたのに対し、pp32rlは核よりも細胞 質で強い 発現を示した。HeLa細胞にpp32およびpp32rlを過剰発現させ軟寒天 コロニー形成試験で足場非依存性増殖能を調べた。その結果、pp32発現系では 軟寒天培地中のコロニー形成がコントロールと比較して大きさ、数ともに減少 したのに 対し、pp32rl発現系ではそれらは著しく増加した。これらの結果は pp32とpp32rlは同じファミリー遺伝子であるにも関わらず、発現、局在などが 異 な り 、 ま た 異 な る 機 能 を 有 し て い る こ と を 示 し て い た 。   次にスタウロスポリン(STS)存在下において、pp32とpp32rlの発現とHuRの 分解との 関連を検討した。pp32およびpp32rlを過剰発現させたSAS細胞にSTS を作用させて免疫螢光染色を行ったところ、pp32発現細胞では細胞質のHuRが 減少したのに対し、pp32rl発現細胞では細胞質のHuR発現に変化がなかった。

またウェ スタンブロ ッティング でHuRの 分解産物で あるHuR‑CPlの発 現を調 べた結果、pp32発現細胞ではコントロールと比較してHuR‑CPl発現量の差はな かったが、pp32rl発現細胞ではHuR‑CPlが50%程度に低下していた。以上の結 果は、致死的ストレス下においてpp32rlが細胞質でのHuRの分解を抑制してい ることを示すものであった。

  pp32とHuRと同様に、pp32rlがHuRと結合するか免疫沈降法で検討した結果、

両タンパクは結合することがわかった。また、pp32rlがpp32を介してHuRと結 合する可能性があるため、pp32とpp32rlの結合を検討したが、両者は結合しな かった。従って、両タンパクはそれぞれ競合してHuRと結合する可能性が考え られた。 次に、pp32rl、pp32とHuRの競合実験を行ったところ、pp32rlはHuR とより強く結合することが認められた。

  pp32rlはがん細胞で発現が亢進し、優先的にHuRと結合していることから、

致死的ストレス条件下と同様にがん細胞でもpp32rlがHuRの分解を抑制する可 能 性が あ る。 こ のこ と を証 明す るために口 腔がん細胞 のSASでpp32お よび pp32rlを過剰発現させ、免疫螢光染色およびウェスタンブロッティングでHuR の分解を検討した。その結果、pp32発現細胞では細胞質のHuR発現が減少した の に対 し 、pp32rl発現 細 胞で は細胞質 のHuR発現 が増加し、 がん細胞で も pp32rlによりHuRが安定化されることが解明された。

  これまでpp32rlの細胞がん化機構とHuRの関連にっいて詳細は不明であっ たが、本 研究の結果 、pp32rlがpp32と競合してRNA結合タンパクHuRと結合 し、HuRのカスパーゼによる分解を抑制することが示され、その結果、HuRが 結合するAREを持 つmRNAが安定化さ れ細胞がん 化を導くの ではないか と思 われた。 今後、pp32rlによ るARE‑mRNAの安定化など、この新たな発がんメ カ ニズ ム の解 析 がが ん の診 断 や治療 に寄与して いくものと 考えている 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    北 川 善 政 副 査    教 授    進 藤 正 信 副 査    教 授    鄭    漢 忠

学 位 論 文 題 名

発がん活性を持つpp32rl はHuR と結合しその分解を抑制する

  審査は、上記担当者による申請者に対する提出論文と関連事項にっいての口頭試問に よ り 執 り 行 わ れ た 。 審 査 を 行 っ た 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。   ア デノウイ ルスのが ん遺伝子産 物E40rf6pp32RNA結合タンパクHuRと結合し、

AUrich element (ARE)を持つmRNAの核外輸送・安定化により細胞をがん化することがこ れまで明らかになっている。このARE‑mRNAの核外輸送・安定化は、多くのヒトのがん細胞 でも証明され、新たな細胞がん化機構として注目されている。演者はARE‑mRNAの輸送・安 定 化機構を 解明する ために、pp32によるHuRの分解に注目し、研究を行った。pp32 HuR結合タンパクで、tumor suppressor活性を持ち、がん細胞ではその発現が比較的少な い。一方、pp32ファミリーのpp32rlは、細胞がん化活性を持ち、がん細胞でそれらの発現が 高い。これまでに、pp32‑HuR複合体は細胞質に運ばれるとHuRcaspaseにより分解され、

フリーになったpp32がapoptosisを誘発することが報告されているが、pp32rlとHuRとの 関連についてはほとんど報告がない。本研究ではがん細胞を用いてpp32rlがHuRの分解 に及ばす影響を検討した。

  pp32rlの発現をウェスタンブロッティングで検索したところ、正常細胞と比較してが ん細胞で発現の亢進が認められた。免疫螢光染色でpp32とpp32rlの発現を調べたところ、

pp32が核に局在していたのに対し、pp32rlは核よりも細胞質で強い発現を示した。HeLa 細胞にpp32およびpp32rlを過剰発現させ軟寒天コロニー形成試験で足場非依存性増殖 能を調べた。その結果、pp32発現系では軟寒天培地中のコロニー形成がコントロールと 比較して大きさ、数ともに減少したのに対し、pp32rl発現系ではそれらは著しく増加し た。これらの結果はpp32pp32rlは同じファミリー遺伝子であるにも関わらず、発現、

局在などが異なり、また異なる機能を有していることを示していた。次にスタウロスポ リン(STS)存在下において、pp32pp32rlの発現とHuRの分解との関連を検討した。pp32 およびpp32rlを過剰発現させたSAS細胞にSTSを作用させて免疫螢光染色を行ったとこ

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ろ、pp32発現細胞では細胞質のHuRが減少したのに対し、pp32rl発現細胞では細胞質の HuR発現に変化がなかった。またウェスタンブロッティングでHuRの分解産物である HuR‑CPlの発現を調べた結果、pp32発現細胞ではコントロールと比較してHuR‑CPl発現 量の差はなかったが、pp32rl発現細胞ではHuR‑CPlが50%程度に低下していた。以上の 結果は、致死的ストレス下においてpp32rlが細胞質でのHuRの分解を抑制していること を示すものであった。pp32とHuRと同様に、pp32r1がHuRと結合するか免疫沈降法で検 討した結果、両タンパクは結合することがわかった。また、pp32rlがpp32を介してHuR と結合する可能性があるため、pp32とpp32r1の結合を検討したが、両者は結合しなかっ た。従って、両タンパクはそれぞれ競合してHuRと結合する可能性が考えられた。次に、

pp32r1、pp32とHuRの競合実験を行ったところ、pp32rlはHuRとより強く結合すること が認められた。pp32rlはがん細胞で発現が亢進し、優先的にHuRと結合していることか ら、致死的ストレス条件下と同様にがん細胞でもpp32r1がHuRの分解を抑制する可能性 がある。このことを証明するために口腔がん細胞のSASでpp32およびpp32r1を過剰発現 させ、免疫螢光染色およびウェスタンブロッティングでHuRの分解を検討した。その結 果、pp32発現細胞では細胞質のHuR発現が減少したのに対し、pp32r1発現細胞では細胞 質のHuR発現が増加し、がん細胞でもpp32rlによりHuRが安定化されることが解明され た。

  これまでpp32r1の細胞がん化機構とHuRの関連について詳細は不明であったが、本 研 究 の 結果 、pp32r1がpp32と 競合 してRNA結 合タ ンパ クHuRと 結合し 、HuRの カス パー ゼに よる 分解 を抑 制す るこ とが 示さ れ、そ の結 果、HuRが結合するAREを持つ mRNAが安定化され細胞がん化を導くのではないかと思われた。今後、pp32rlによる ARE‐mRNAの安定化など、この新たな発がんメカニズムの解析ががんの診断や治療に 寄与していくものと考えている。

  論文審査にあたっては、申請者による学位論文要旨についての説明後、担当者により 研究内容および関連事項についての質問を行った。主な質問事項は、1)癌細胞と正常 細胞 にお けるHuR発 現の 差に ついて、2)HuRに対するpp32とpp32r1の結合カの差に ついて、3)癌細胞と正常細胞におけるpp32とpp32r1の発現差について、4)本研究今 後の展望にっいてなどであった。これらの質問に対しては申請者から適切かつ明快な回 答および説明が得られ、研究の立案と遂行ならびに結果の検討について、申請者が十分 な能カを有していることが確認された。本研究は、口腔癌細胞におけるpp32r1を介し たHuRの制御を解明したものであり、その内容が高く評価された。申請者は、優れた 学識を有し発展的研究にも意欲的である。本研究業績は歯学のみならず、広く分子生物 学 に 寄 与 す る こ と 大 であ り 、 博 士 ( 歯 学) の学 位に 値す るも のと 認め られ た。

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参照

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