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博 士 ( 農 学 ) 星 野 義 延

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 星 野 義 延

学 位 論 文 題 名

日 本 の ミ ズ ナ ラ 林 の 植 物 社 会 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ミズナラ(Quercus mongolica Fisher var. grosseserrata Rehd. et Wils.)は東北アジ アに分布するモンゴリナラ(Quercus mongolica Fisher)の変種とされる日本準固有の樹木 である.ミズナラ林はブナ林とならんで日本の冷温帯林の代表的な森林であり,自然林や 二次林として広く分布している,

  本研究は,日本におけるミズナラ林の植物社会学的分類体系の構築を行うとともに,群 集の種組成的な特徴,分布域やその気候条件などを明らかにすることを主な目的として行 った.さらにこれら相互の関係を気候要因や植物相と植物区系,植生史などの観点から比 較検討し,日本の森林植生を理解する上で重要な鍵となるミズナラ林の植物社会学的な全 体像の解明を試みたものである.

  まず,植物社会学命名規約に基づいて既存のミズナラ林の群集とその上級単位の整理を 行った.そして,有効に発表されているが選定基準 が選定されていない7群集の選定基準 を選び,十分な原記載とみなせるが,正基準が選定されていないため有効な発表とはみな され ない10群集 の正基準を指定した,また,上級単位についても発表の 正当性について の検討を行った,

  っ ぎに ,植 物社 会学 的方 法に よる 野外 調査 に よっ て得 られ た1238の 植生調査資料を もと に, 表操作 による比較検討を行った,その結果,以下に示す2 8群 集と18群落が同 定・識別された.そして,このうち,7群集を新たな群集として認め,植物社会学命名規 約に従った新群集の記載を行った,これらの群集・群落のうち,カシワ林あるいはカシワ を伴 うミ ズナ ラ林 は上 級単 位未 定と し,こ れらを除く26群集.16群落を新群目を含Iむ 1群 網2群 目4群団 に まと め, 日本 のミ ズナラ林群落の植物社会学的体系 を構築した.提 案された植物社会学的体系は以下の通りである.

ブナーササ群綱     ー461ー

(2)

  

ミズナラーサワシパ群目(新)

    

ミズナラーサワシバ群団

    

ミズナラ―トドマツ群集,ミズナラーツルシキミ群集,ミズナラーフッキソウ群集

    

ミ ズ ナ ラ ー サ ワ シ パ 群 集 , ミ ズ ナ ラ ー ヒ ェ ス ゲ 群 集 ( 新 )

    

ミズナラ―工ゾニワトコ群集(新)

    

.ミズナラートリアシショウマ群集(新),ミズナラーオオバショウマ群集(新)

    

ミ ズ ナ ラ ー キ タ コ ブ シ 群 集 ( 新 ) ; ミ ズ ナ ラ ー ヤ マプ キ シ ョウ マ 群落

    

ミズナラ―サワダッ群落

ミズナラーコナラ群目

  

ミズナラーマルパアオダモ群団

    

ミ ズ ナ ラ ー ホ ツ ツ ジ 群 集 , ミ ズ ナ ラ ― オ オ バ ク ロ モ ジ 群 集 ,

    

ミ ズ ナ ラ ー シ ノ ブ カ グ マ 群 落 , ミ ズ ナ ラ ― セ ン ダ イ 卜 ウ ヒ レ ン 群 落

    

ミ ズ ナ ラ ー ク ロ ヒ ナ ス ゲ 群 集 , イ ヌ ブ ナ ー ア プ ラ ツ ツ ジ 群 集

    

コ ナ ラ ー ホ ソ パ ヒ カ ゲ ス ゲ 群 集 , ミ ズ ナ ラ ― ヒ ノ キ ア ス ナ ロ 群 落

  

ミズナラーミヤマザクラ群団

    

ミズナラーミヤコザサ群集,ミズナラーシラカンパ群集

    

ミズナラーイトマキイタヤ群集,ブナーミヤコザサ群集

    

ミズナラーヤマカモジグサ群落

  

コナラーイヌシデ群団

    

ミ ズ ナ ラ ― フ ク オ ウ ソ ウ 群 集 , コ ナ ラ ー オ ク チ ョ ウ ジ ザ ク ラ 群 集

    

ミズ ナ ラーリョ ウブ群集 ,ミズナ ラークリ 群集,コナ ラーケク ロモジ群 集

    

ミ ズ ナ ラ ― ウ ラ ジ ロ モ ミ 群 落 , ミ ズ ナ ラ ー ヒ メ シ ャ ラ 群 落

    

ミ ズ ナ ラ ー ヤ ブ デ マ リ 群 落 , ミ ズ ナ ラ ― オ キ シ ャ ク ナ ゲ 群 落

    

ミズ ナ ラー オ ニ ヒョ ウ タン ポ ク 群集 ( 新) , ミ ズナ ラ ー アカ ヤ シオ群 落

    

ミズナラ ―ツクシア ケボノツ ツジ群落,ミズナラーツクシコウモリソウ群集

    

ミ ズ ナ ラ ― 夕 カ ク マ ミ ツ パ ツ ツ ジ 群 落 , ミ ズ ナ ラ ― ス ギ 群 落

    

ミ ズ ナ ラ ー パ イ カ ツ ツ ジ 群 落 , ミ ズ ナ ラ ー シ ハ イ ス ミ レ 群 落

    

ミズナラームラサキマユミ群集

上級単位未決定

    

カ シ ワ ― オ オ ク マ ザ サ 群 集 , カ シ ワ ー エ ゾ ノ ヨ ロ イ グ サ 群 集

462―

(3)

    カ シ ワ ー オ オ バ ギ ボ ウ シ 群 落 , カ シ ワ ー ア ラ ゲ ナ ツ ハ ゼ 群 落   日本 のミ ズナ ラ林 群 落の 種群 の動 向を19の種群に分けて解析すると,Oミズナラ林構 成種をその 出現傾向から分類した種群には,その種群に属する種の分布型に一定の傾向が あること, @種群ごとに所属する種の分布型には,日本における分布型と中国大陸におけ る分布型に 類似した傾向がみられること,◎北海道のミズナラ林を中心に出現し,東北ア ジア要素の 植物を多く含む種群が本州のミズナラ林群落での段階的に減少すること,@北 海道のミズ ナラ林を中心に出現する種群の,ミズナラ林での高常在度出現域と種の分布域 は大きくず れており,ミズナラ林での出現域の方が明らかに狭いこと,◎西日本のミズナ ラ林を中心 に出現する中国大陸中南部温帯要素(日華要素)とそれと関連性の深い日本I固 有種を多く 含む種群が本州から北海道南部にかけて段階的に減少していること,◎西日本 のミズナラ 林を中心に出現する種群のミズナラ林での高常在度出現域と種の分布域は比較 的近似して いることなどが明かとなった.

  ミズナラ 林群落の上級単位と気候との関係を検討し,今回認めら れた4つの群団の気候 条 件は ,暖 かさ の指 数 (WI)よ りも 寒さ の指 数(CI) の方 が, 冬季降水量よりも年降 水量の方が 各群団の違いが表されていた.また,最も寡雨・寒冷気候下にはミズナラーサ ワシバ群団 が,最も多雨・温暖気候下にはコナラーイヌシデ群団が見られ,その範囲にほ とんど重な りはみられなかった.

  ミズナラ 林群落の種群の動向から,北海道から本州中部にかけての冷温帯域は北海道一 中国東北区 の植物と日本区の植物とが,連続的にあるいは段階的に移り変わる地域である と認識でき ,その分布南限は,ルイス線(若狭一三河線)がーつの境界となりうると考え るられた. このような種の段階的な移り変わりは,晩氷期以降の温暖化にともなう西日本 のミズナラ 林群落を中心に出現している種の北進と,北海道のミズナラ林群落を中心に出 現している 種の後退の過程として捉えることができることを指摘し,最終氷期の最盛期に は現在本州 北部に分布するミズナラ―サワシパ群団の領域が,中国地方の日本海側まで広 がっていた 可能性があることを指摘した.

463

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教 授 教 授 助教 授

五 十嵐 松 田 矢 島

学 位 . 論 文 題 名

恒夫          響う     冫了く

日本 のミズナラ林の植物社会学的研究

  本論 文は6章で 構成 ぎれ 、図97、 表22、引 用文 献179、総 頁数240頁 の和 文論 文で ある 。 別 に参 考論 文12篇が 添え ら れて いる 。

  本研 究は 、日 本に おけ る ミズ ナラ 林の 植物 社会 学的 分類 体系の構築を行い、群集の 種組 成 的な 特徴 、分 布域 やそ の 気候 条件 など を明 らか にし 、ミ ズナラ林の植物社会学的な 全体 像 の解 明を 試み たも ので あ る。

1) 植物 社会 学命 名規 約に 基づ ぃて 既存 のミ ズナ ラ林 の 群集 とそ の上 級単 位の 整理 を行 っ た 。す なわ ち、 有効 に発 表 され てい るが 選定 基準 がな ぃ7群 集の 選定 基準 を選 び、 十分 な 原 記載 とみ なせ るが 正基 準 がな い10群集 の正 基準 を指 定し た。また、上級単位につい ても 発 表の 正当 性に つい ての 検 討を 行っ た。

2) 1238カ所で行った野外調査 による植生調査資料を比較検討し、28群集と18群落を同 定・

識 別し た。 この うち 、ミ ズ ナラ ―ヒ エス ゲ群 集、 ミズ ナラ ーエゾニワ卜コ群集、ミズ ナラ ー トリ アシ ショ ウマ 群集 、 ミズ ナラ ーオ オバ ショ ウマ 群集 、ミズナラーキタコプシ群 集、

ミ ズナ ラー イト マキ イタ ヤ 群集 、ミ ズナ ラ― オニ ヒョ ウタ ンボ ク群 集の7群集 を新 たな 群 集 とし て植 物社 会学 命名 規 約に 従っ た記 載を 行っ た。

3) カシ ワ林 を除 く26群集 ・16群落 を新 群目 を含 む1群 綱2群 目4群団にまとめ、日本の ミズ ナ ラ林 群落 の植 物社 会学 的 体系 を以 下の よう に構 築し た。

  プナ ーサ サ群 綱

    ミ ズナ ラー サワ シバ 群 日( 新)

    ミ ズ ナ ラ ― サ ワ シ バ 群 団 : ミ ズ ナ ラ ー ト ド マ ツ 群 集 な ど9群 集 、2群 落     ミ ズナ ラー コナ ラ群 目

    ミ ズ ナ ラ ― マ ル バ ァ オ ダ モ 群 団 : ミ ズ ナ ラ ー ホ ツ ッ ジ 群 集 な ど5群 集 、3群 落     ミ ズ ナ ラ ー ミ ヤ マ ザ ク ラ 群 団 : ミ ズ ナ ラ ― ミ ヤ コ ザ サ 群 集 な ど4群 集 、1群 落     ミ ズ ナ ラ ー イ ヌ シ デ 群 団 : ミ ズ ナ ラ ー フ ク オ ウ ソ ウ 群 集 な ど8群 集 、10群 落 4) 日本 のミ ズす ラ林 群薬 の種 群の 動向 を19の種 群に 分 けて 解析 する と、 のミ ズナ ラ林 構 成 種を その 出現 傾向 から 分 類し た種 群に は、 その 種群 に属 する種の分布型に一定の傾 向が

(5)

あること、@種群ごとに所属する種の分布型には、日本における分布型と中国大陸におけ る分布型に類似した傾向がみられること、@北海道のミズすラ林を中心に出現し、東北ア ジア要素の植物を多く含む種群が本州のミズすラ林群落で琺段階的に減少すること、の北 海道のミズナラ林を中心に出現する種群の、ミズナラ林での高常在度出現域と種の分布域 は大竃くずれており、ミズナラ林での出現域の方が明らかに狭いこと、@西日本のミズナ ラ林を中心に出現する中国大陸中南部温帯要素(日華要素)とそれと関連性の深い日本固 有種を多く含む種群が本州から北海道南部にかけて段階的に減少していること、@西日本 のミズナラ林を中心に出現する種群のミズナラ林での高常在度出現域と種の分布域は比較 的近似していることなどが明らかとなった。

5

)ミズナラ林群落の上級単位と気候との関係を検討し、今回臨められた

4

っの群団の気 候条 件は 、暖 かさ の指 数

(WI

)よ りも 寒さの指数(CI)の方が、冬季降水量よりも年 降水量の方が各群団の違いを表していた。また、最も寡雨・寒冷気候下にはミズナラーサ ワ シ パ 群 団 が 、 最 も 多 雨 ・ 温 暖 気 候 下 に は コ す ラ ー イ ヌ シ デ 群 団が 見 ら れ た .

6

)ミズナラ林群落の種群の動向から、北海道から本州中部にかけての冷温帯域は北海道 一中国東北区の植物と日本区の植物とが、連続的にあるい強段階的に移り変る地域であり 分布南限はルイス線(若狭一三河線)と考えられた。このような種の段階的な移り変りは、

晩氷期以降の温暖化にともなう西日本のミズすラ林群落を中心に出現している種の北追と、

北海道のミズナラ林群落を中心に出現している種の後退の過程として捉えることができ、

最終氷期の最盛期には現在本州北部に分布するミズナラーサワシバ群団の領域が、中国地 方の日本海側まで広がっていた可能性があることを指摘した。

  

以上のように本研究は、日本の冷温帯林の代表的な森林であるミズナラ林の植物社会学 的体系を構築するとともに、群集の種組成的な特徴、分布域、気象条件などを明らかにし たもので森林の植物社会学的研究の発展に寄与するところ大きぃものがある。よって審査 員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合せて、本鎗文の提出者星野義延は博士(農 学)の学位を受けるに十分な資格があるものと認定した.

‑ 465

参照

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