博士(農学)溝延 学位論文題名
アスパラガスにおける雌雄性および花成特性と その栽培的利用に関する研究
学位論文内容の要旨
学
本 研究は アスパ ラガス の雌 雄性と 花成特性を明らかにし,栽培的利用にっいて検討したもので,
内容 の概 要は次 のとお りであ る。
1. 花 成と 雌雄 性:ア スパラ ガスの 花芽形 成過 程はそ の形態 的特徴 から ,@花 芽分化 開始期 ,◎
花 被 形 成期 ,◎雄 ずい形 成期, @雌 ずい形 成期, ◎花器 完成 期の5段階 に分煩 するこ とがで きる が, 雄花 ,雌花 の形態 的差は 雌ず い形成 期後に 認めら れた。 花芽 の形成 は成植 物体においてはり ん 芽 の 生 長 開 始 と と も に 姶 ま り , 若 茎 長 が20cmの 頃 に は 相 当 数 の 花 芽 が 認 め ら れ た 。 雄 花の 雌 ず い は ,花 柱 が ま っ たく 認 め ら れ な いも の (I,H型 )から 約1 mmの もの (V型 )ま で連 続的 に存在 し,花 柱の認 めら れない 雌ずい は子房 も小さ いが,花柱が0. 2mm以上になると,
花柱 の長 さと子 房の大 きさと の相 関は認 められ なかっ た。な お, 雌花に おいて は変異はほとんど 認め られ ナょい 。
ア スパ ラガ スの実 生1年生株 にお いては ,雄株 憾雌株 よりも30日以 上早く 開花が 始ま った。 ま た, 最初 の着花 は,雄 株では 第6〜13次 茎に, 雌株で は第9〜 20次茎に 認めら れ,いずれも地下 茎主 軸の 萌芽茎 に起こ ること が確 かめら れた。 また, 各次茎 の萌 芽の間 隔には 雌雄間差はみられ なか った ことか ら,雄 株の方 が雌 株より 早く開 花が始 まるの は雄 株の方 が低次 の茎に花をっける 理由 によ ること が明ら かにな った 。
成 株にお いては 雌雄株 とも 開花は 主茎中 位(下 から31‑‑‑40番目)の第一次側枝の発生している 葉 腋 部 およ び 主 茎 下 位 (下 か ら1〜5番 目 ) の 第1次 側 枝の基 部側 の葉腋 から始 まり, 順次 上位 部へ と移 行し, 一っの茎での開花期間は雄で12‑‑ 20日,雌で10〜 14日であった。さらにーっの株 で の 開 花 期 間 は お よ そ2か 月 に 及 ん だ 。 ま た , 雄 株 の 方 が 雌 株 より 開 花 期 間 が 長か っ た 。 1年生 実 生の秋 での生 長は雄 株の 方が生 体重, 茎数, 根数, 根長 におい て大き く,雄 株の 方が 生育 が旺 盛であ ること が実証 され た。ま た,成 株にお ける収 量お よび収 穫茎数 にっいては雄株の 方が 雌株 よりも 多かっ た。
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2. 化 合 物 処 理に よ る 実 生 幼苗 の 花 成 誘導 :sー トリ アジン および カーバ メイ ト系化 合物溶 液を アス パ ラ ガ ス の未 発 芽 種 子 に 処理 す る ことに より, 処理 後約1か月 で実生 第1次茎の 頂部に 着花 が認 め ら れ た 。こ の場 合の処 理条件 は両化 合物 ともに200LtM,8日間 ,30〜35℃で明 所ある いは 暗所が 好適で ,最高85%の 開花が 認めら れた 。化合 物処理 によっ て形 成され た花は2 mm以上の大 きさで あれば ,肉眼 での 雌雄判 別が可 能であ り, 特に雄 性系統 の花粉 親であ る超 雄株の 早期判別 に有効 である ことが 示さ れた。 また, 化合物 処理 実生由 来の花 粉を自 然条件 下の 雌花に 交配する ことに よって 発芽能 カを 有する 種子を 得るこ とが できる ため, アスパ ラガス にお ける交 雑育種年 限の大 幅な短 縮が期 待さ れる。
3. 雄 性 系 統 の育 成と 生育特 性: 超雄株 を花粉 親とし ,選 抜され た雌株 と交配 して得 た11系 統の 雄性系 統の収 量性, 形態 的特性 ならび に種子 親と の関連 性にっ いて調 査した 結果 ,雄性 系統の定 植3,4年 目 の生 育 指 数 は 普通 品 種 ( メリ ーワシ ント ン500W)に比べ ,20〜100% ほど高 かった 。 また , 収 量 性 にお いて も同じ く15〜150% ほど高 い傾向 が認め られた 。生 育指数 と翌年 の収量 性 には正 の相関 があり ,さ らに収 量性の 高い系 統は その翌 年も収 量が高 いこと から ,早期 の選抜が 可能で あるこ とが示 唆さ れた。 また, 生育指 数お よび総 収量を 構成す る成分 のう ち,茎 数が最も 重要な 要因と なって おり ,今後 栽培, 育種面 で系 統の評 価のー っの対 象とな りう ること が示され た。規 格外茎 (茎径5 mm以下 のも のや奇 形茎) の出現率は普通品種(30.5%)より雄性系統(22.1
%)の 方が低 く,収 穫さ れた若 茎が効 率よく 規格 内収量 に結び 付いて いた。 こう した雄 性系統の 若茎の 形質の 特徴は ,種 子親の 形態的 特徴, すなわち各種子親の茎径や偏平度ナょどの特徴も反映 されて いるこ とが示 され た。ま た,雄 性系統 の評 価で問 題とさ れる着 果性に っい ては, 種子親に も影響 を受け ている こと から, 雄性系 統作出 の際 は,採 種母株 の雌株 の選抜 も重 要であ ることが 示され た。
4. 栄 養 繁 殖 株お よ び 雄 性 系統 な ど のF,の 変 異 性 : 組織 培 養 株, 雄性系 統株 および 普通品 種の 株養成 期間中 の生長 量お よび株 間の形 態的特 徴の 変異に っいて 栽培地 の異な る環 境で比 較を試み た。そ の結果 ,定植 時に 旺盛な 生育を 示して いた 組織培 養株は 実性株 および 定植 時に生 育が不良 であ っ た 組 織 培養 株に 比ベ, 約2倍以上 の生長 量を示 した が,茎 径や茎 数の株 間のそ ろい にっい ては実 生株よ りも良 いと いう結 果は得 られな かっ た。ま た,土 壌条件 の良い 場所 での組 織培養株 および 普通品 種の生 育お よび株 間の形 態のそ ろい は土壌 条件の 悪い場 所より 良い 傾向が 認められ たが, 組織培 養株の 草丈 ,茎数 ,茎径 などの そろいは実生株に比ベ顕著に良いとはいい難かった。
しかし ,ぎ葉 の着生 状態 ,ぎ葉 長,ぎ 葉密度 ,ぎ 葉の硬 さにっ いては 組織培 養株 の方が そろいが 良い傾 向が認 められ ,そ の他若 茎頭部 の色, しま り,曲 がり, 茎の色 ,耐病 性な どの質 的な形質
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の そろい は栄 養繁殖 株で期 待し得 るもの と考 えられ た。
雄 性系 統のよ うに花 粉親お よび 種子親 が特定 されて いる系 統は 遺伝子 型が雑多な集団である普 通 品 種 ( メ リー ワ シ ン ト ン500W)よ り も 生 育 が旺 盛でそ ろいが 良いこ とが 明らか になっ た。ま た ,Fl品 種にっ いても 同様の 傾向 が認め られた 。
5.VAM菌 に よ る 実 生 の 生 育 促 進 : 共 生 菌 の 一 種 で あ るVAM菌 が 植 物 体 の 根 に 感 染 し , 共 生 関係が 成立 すると ,植物 体の生 長は著 しく 促進さ れる。 そうし た現 象をァスパラガス栽培に利 用 し て い く ため の 接 種 条 件に っ い て 基 礎的 研 究 を 行 っ た。 そ の 結 果, 用いた2種 のGlomtLs属 のVAM菌 は と も に 胞 子 接 種 濃 度1000〜3000個/g接 種 物 でア ス パ ラ ガ ス の催 芽 種 子 に 接種 す る ことに よっ て無接 種のも のに比 ベ,草 丈, りん芽 群,貯蔵根の生長量が20〜 200%ほど増大し た 。 共 生 関 係の 成 立 し た アス パ ラ ガ ス 実生 に り ン 酸 を 新た に 施 肥 し てもVAM菌に よ る 生 育 の 促 進 効 果 の 増大 は 認 め ら れず , む し ろVAM菌 の 活 性を 抑 制 し た 。ま た , 土 壌 中の 可 給 態 ル ン 酸 含 有 量 が 高い 場 合(313. 4mgPよ0ヨ/100g乾土 ),VAM菌の 活性は 抑制 され, アスパ ラガス の 生 育 促 進 効 果は 認 め ら れ ず,VAM菌 を接 種 す る 際 の土 壌 中 の 可 給態 リ ン 酸 含 有量 は 低 い 方 が (47.4mgP20ヨ /100g乾 土 )VAM菌 に よ る 実 生 の 生 育 促 進 効 果 が 高 い こ と が 示 さ れ た 。 培 土 に木 炭 を 混 合 す るこ と に よ っ てVAM菌 によ る 実 生 の 生 育促 進 効 果 が 著し く 高 ま っ た。
す な わ ち ,VAM菌 接 種胞 子 濃 度1000個 /g接種 物 に 粉 炭70gを10kgの 培 土 に混 合 し て 用 いる こ と により ,最 大の効 果をあ げるこ とがで きた 。
学 位論 文審査の 要旨 主 査 教 授 八鍬利郎 副 査 教 授 筒井 澄 副 査 教 授 冨田房男 副査 助教授 原田 隆
本 論文は 表49, 図88,引 用文献155を 含む 総ペー ジ数303の和 文論文 であ り,6章に 分けて 論述 され てお り,別 に参考 論文5編が 添えら れて いる。
本 研究は アスパ ラガス の雌 雄性と花成特性を明らかにし,栽培的利用にっいて検討したもので,
内容 の概 要は次 のとお りであ る。
1.花成 と雌雄 性: アスパ ラガス の花芽 形成 過程は ,@花 芽分化 開始期 ,◎ 花被形 成期, ◎雄ず
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い形成 期, @雌ず い形成 期,◎ 花器 完成期 に分類 するこ とがで き, 雄花, 雌花の 形態的 差は雌ず い形成 期後 に認め られた 。花芽 の形 成は成 植物体 におい てはり ん芽 の生長 開始と ともに 始まり,
若茎長 が20cmの 頃に は相当 数の花 芽が認 められ た。 雄花の 雌ずい は,花 柱が まった く認め られな いもの から 約l mmの ものま で連続 的に存 在した が, 花柱の 長さと 子房の 大き さとの 間に明 確な相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。 な お , 雌 花 に お い て は 変 異 は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ た 。 実 生1年 生 株に お いては ,雄株 は雌株 より も30日以 上早く 開花 が始ま ったが ,雄株 の方が 低次 の茎か ら花 をっけ る理由 による こと が明ら かにな った。
成株 におい ては雌 雄株と も開 花は主 茎中位 の第一 次側 枝の発 生して いる葉 腋部お よび 主茎下位 の 第1次 側 枝 の 基部 側の 葉腋部 から始 まり, 順次上 位部 へと移 行した 。また ,雄 株の方 が雌株 よ り 開花 期 間 が 長 かっ た。1年生 実生の 秋まで の生長 量は 雄株の 方が大 きく, 生育 が旺盛 である こ とが実 証さ れた。 また, 成株に おけ る収量 および収穫茎数にっいては雄株の方が雌株よりも多かっ た。
2.化 合 物 処 理 によ る 実 生 幼 苗の 花 成 誘 導:s―ト リアジ ンおよ びカー バメ イト系 化合物 溶液を ア スパ ラ ガ ス の 未発 芽 種 子 に 処 理す る こと により ,処 理後約1か 月で実 生第1次茎 の頂部 に着花 が認め られ た。こ の場合 の処理 条件 は両化 合物と もに200LtM,8日間,30〜 35℃が 好適で ,最高 85%の 着花が 認めら れた。 形成 された 花は肉 眼での 雌雄 判別が 可能で あり, 花粉は 成株 由来の花 粉と同 程度 の稔性 を示し た。さ らに ,早期 に判別 した株 の性は ,成 株の性 とまっ たく一 致してお り , 化 合 物 処 理 に よ る 早 期 開 花 は 育 種 面 で の 有 望 な 一 枝 術 と な り 得 る こ と が 示 さ れ た。
3.雄 性 系 統 の 育成 と生 育特性 :超雄 株を花 粉親と し, 選抜さ れた雌 株と交 配し て得た 雄性系 統 の 定植3,4年 目の 生育 指数は 普通 品種( メリー ワシン トン500W)に 比べ,20‑‑ 100% ほど高 く,
収量性 にお いても 同様の 傾向が 認め られた 。また 収量性 の高い 系統 はその 翌年も 収量が 高いこと から, 早期 の選抜 が可能 である こと が示唆 された 。さら に,雄 性系 統の若 茎の形 質およ び着果性 にっい ては ,種子 親の形 態的特 徴に も影響 を受け ている ことか ら, 雄性系 統作出 の際は ,採種母 株の選 抜も 重要で あるこ とが示 され た。
4.栄 養 繁 殖 株 およ び 雄 性 系 統な ど のF,の変 異 性 : 組 織培 養 に より栄 養繁 殖した 株,雄 性系統 および 普通 品種の 実生株 にっい て, 株養成 期間中 の生長 量と株 間の 形態的 特徴の 変異に っいて栽 培地の 異な る環境 で比較 を試み た結 果,組 織培養 株は茎 径や茎 数の 株間の そろい にっい ては実生 株に比 ベ顕 著に良 いとは いい難 いが ,ぎ葉 の着生 状態に っいて は組 織培養 株の方 がそろ いが良い 傾向が 認め られ, 若茎頭 部のし まり や色な どの質 的な形 質のそ ろい は栄養 繁殖株 で期待 し得るも の と考 え ら れ た 。ま た , 親 株 が 特定 さ れて いる雄 性系 統およ びF,品種 は遺 伝子型 が雑多 な集団
である普通品種(メリーワシントン500W)よりも生育が旺盛でそろいが良いことが明らかになっ た。
5.VAM菌 に よる 実生 の生 育促 進 :共 生菌 の一 種であるVAM菌が植物体の根に感染し ,共 生関係が成立すると,植物体の生長は著しく促進される。そうした現象をアスパラガス栽培に利 用していくための接種 条件にっいて検討した結果 ,用いた2種のGlomrLS属のVAM菌は胞子 接種濃度1000〜3000個/g接種物でアスパラガスの催芽種子に接種することによって無接種のも のに比ベ,生長量が20〜200%ほど増大した。また培土に木炭を混合することによってVAM菌 による実生の生育促進効果が著しく高まった。すなわち,VAM菌接種胞子濃度1000個/g接種 物に粉炭70gを10kgの培土に混合して用いることにより,最大の効果をあげることができた。
以上のように本研究は,学術上重要な知見を加えたばかりでなく,栽培および育種技術の向上 に貢献するところが大きく,応用面においても高く評価される。
よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本論文の提出者溝延学は博士(農学)
の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。
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