• 検索結果がありません。

博 士 ( 農 学 ) 片 桐 浩 司

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 農 学 ) 片 桐 浩 司"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 ) 片 桐 浩 司

学 位 論 文 題 名

寒 冷 地 小 河 川 に お け る 富 栄 養 化 が 水 生 植 物 群 落 の 分 布 と      種 多 様 性 に 与 え る 影 響

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近 年、 都市や農村における土地開発や農地等からの 排水、また非特定汚染源からの汚 濁負 荷の 流出が、河川水中の栄養塩濃度の増加を引き 起こしている。こうした過剰な栄 養塩 の負 荷は、緑藻類の異常増殖など、特定の種や種 群に対して影響を及ばすことが知 られ てい る。しかし河川生態系の主要な構成要素のひ とっである水生植物を扱ったこれ まで の研 究は、流速や底質の粒径などの物理環境因子 が群落の分布や種多様性を決定す る主 要な 要因として報告しており、富栄養化によって 及ばされる影響にっいて明らかに した 研究 は少ない。とくに北海道では、農村地帯を中 心に硝酸態窒素等による地下水の 汚染 が広 範囲に拡がっており、汚染の改善・防止対策 の推進が急務となっている。以上 を踏 まえ 、本研究では、農耕地を流れる小河川におけ る富栄養化が、流路内に成立する 水生 植物 群落の分布と発達および種多様性にいかなる 影響を与えるかについて解明する こと を目 的とした。研究対象地は、近年、上流部で富 栄養化がおこった美々川、近隣の 富栄 養化 していない小河川であるママチ川と勇払川支 流とした。美々川上流部では、10 数 年 前 か ら 半 抽 水 型 ク サ ヨ シ 群 落 の 流 路 内 へ の 拡 大 が 確 認 さ れ て い る 。   ま ず、 水生植物群落にっいて、各群落と水文学的因 子との対応関係を解析し、群落と 環境 の歴 史的変遷を把握することで、各群落の分布や 発達を制御する要因を明らかにし た 。2005年 と2006年 の8月 か ら9月 に 、 美 々 川 の 流 路 内 の109箇 所に 設置 した 調査 区 で、 植物 の被度と24項目の物理・化学的環境因子を測 定し、植生と環境因子との関わり を 多重 比較 とCCAによ り解 析し た。 この うち28箇所 でク サヨ シの 匍匐 シュ ート 長を 計 測し 、各 環境 因子 との 関係 を把 握す るた め に相 関分 析を 行っ た。また1985年から2006 年のT‑N、T‑P、N/P比、EC、SS、 降水量、水位の変動 を把握し、上流部におけるクサヨ シ群 落の 拡大の過程を航空写真判読により明らかにし た。その結果、在来の沈水植物群 落の 分布 は、栄養塩類やミネラルは影響しておらず、 流速や水温などの物理環境因子に よっ て決 定づけられていた。一方、近年拡大した半抽 水型クサヨシのシュート成長をコ ント ロー ルし 、群 落の 分布 を決 定づ けていた要因は、高いT‑P、P04‑P、Org‑N、SS、泥 厚と 、低 いDO、流 速で あっ た。 また クサ ヨ シ群 落は 、1991年 から1996年にかけて短期 間の うち に流路内に繁茂し、同じ期間に、上流部で0.07mg/lを超える高濃度のりン負荷 が数 回に わたり確認された。以上のことから1991年ま では、過剰な窒素量のなかでりン が成 長の 制限要因となっていたが、高濃度のりン負荷 によって制限要因が解除され、短 期間 のう ちにクサヨシが流路内に繁茂したと考えられ た。この繁茂したクサヨシの匍匐 シュ ート とこれらの残渣によって流路が閉鎖されるこ とにより、クサヨシ繁茂区間の流 速が 低下 した。流速の低下はりンが付着した懸濁物の 堆積を引き起こし、その結果、高

1368

(2)

いSS、 泥 厚 、Org‑N、T‑P環境 をまねい た。きら に低下 した流速 によっ てクサヨ シ群落 下の 泥が還 元状態と なり、 堆積した 底泥中 からりンのさらなる溶出がおこり、これらが ク サ ヨ シ の 成 長 を 助 長 さ せ た こ と で 流 路 が ク サ ヨシ で 充 填さ れ た と考 え ら れた 。   っ ぎに、富 栄養化し た区間 に成立す る水生 植物群落の優占種であるバイカモ、スギナ モ、 クサヨ シの3種を対 象に、富 栄養化が 水生植 物に及ば す影響 について 、個体の養分 利用の側面に着目して解析した。N、Pの高い環境(美々川)と低い環境(ママチ川、勇払 川支 流)に それぞれ5箇 所の調査 区を設定 した。 夏季と秋 季にシ ュートの 乾物重とN、P 含 有 量、 秋 季 に 枯死 流 出 植物 体 のN、P含 有量 を 計 測し た 。 各種 のNUE.PUE(窒素、

リン利用効率)、MRT(平均滞留時間)、イ(生産性)を算出し、栄養塩レベルと種を因子と した 二元配 置分散分 析を用 いて解析 した。 クサヨシは、3種の中で最も高いNUE. PUE、 イを 示し、 栄養塩を 効率よ くバイオ マスに 転換することが可能であることを示した。近 年、 クサヨ シがきわ めて短 期間のう ちに流 路内に繁茂した理由のひとっに、本種の高い 栄養 塩利用 特性があ ったこ とが示唆 された 。またバ イカモは 、栄養 塩の高い環境でMRT が長 く、こ の理由と して、 クチクラ 層の発 達しなぃ植物体内で外液の濃度にあわせて栄 養塩 が受動 的に取り 込まれ たためと 考えら れた。これまで水生植物は、水位変動や流速 など の物理 環境の状 態にあ わせてサ イズや 形を変化させることが報告されてきた。しか し、 本研究 結果は、 栄養条 件といっ た化学 環境が、種の利用特性を通じて水生植物のサ イズ を変化 させる可 能性が あり、こ のこと が特定の種の異常繁茂にっながる可能性があ ることを示した。

  最 後に、富 栄養化が 水生植 物群落の 種多様 性に与えた影響にっいて明らかにするため に、 群落間 で種多様 性を比 較し、沈 水植物 と浮葉植物の種多様性を決定づける要因につ いて 一般化 線形モデ ルを用 いて解析 した。109箇所 の調査区 で、種 数、被度と25項目の 物理 ・化学 的環境因 子を測 定した。 流路内 に拡大したクサヨシ群落は、他の水生植物群 落と 比較し て沈水植 物の種 数が少な く、陸 生植物の種数が多い群落であった。一方、エ ゾミクリ群落では、沈水植物、浮葉植物の種数が最も多かった。沈水植物の種数は、DO、 水温 とクサ ヨシ被度 を説明 変数とし たモデ ルが最良 モデルと して選 択され、同等の4モ デル にクサ ヨシ被度 が含ま れていた 。生物 的要因であるクサヨシ被度そのものが種数に 対し て負に 影響して いたた め、沈水 植物の 種数はクサヨシによる競争排除により減少し たこ とが示 唆された 。ー方 、浮葉植 物の種 数は、水位変動幅と流速を説明変数としたモ デル が最良 モデルと して選 択され、 同等の4モデ ルに水位 変動幅 が含まれ ていた。この こと は浮葉 植物の一 部の種 が、沈水 状態や 抽水状態でも適応できるよう葉が可塑性を持 ちあわせており、水位変動などの物理的な環境の変動に適応していることを示している。

  こ れまで湖 沼におい ては、 富栄養化 によっ てラン細菌や藻類をはじめとする植物プラ ンク トンの 増殖がお こり、 水中への 光の透 過量の減少や嫌気化によって、しぱしば水生 植物 の種多 様性が低 下する ことが報 告され てきた。本研究では、小河川における富栄養 化が 、沈水 ・浮葉植 物群落 の分布・ 発達や 種多様性には直接的に影響しないことを示し た。しかしクサヨシなど栄養塩利用特性に優れる特定の種を流路内に繁茂させることで、

競争 排除に より沈水 植物の 種多様性 を低下 させ、さらに流路の閉塞により流速の低下や 嫌気 化が引 き起こさ れるた め、結果 的には 、沈水植物と浮葉植物の種多様性が低下する ことが示唆された。流路内の水生植物群落を再生させ、種多様性を向上させるためには、

流路 を閉塞 するクサ ヨシを 除去する ことが 方策のひとっとしてあげられる。しかし一方 で、 クサヨ シは高い 窒素貯 留能カを 持っこ とで栄養塩類の除去に貢献することが多くの 研究から明らかにされている。した,がって本群落を流路からすべて除去することは避け るべ きであ り、部分 的にク サヨシを 除去す ることを提案する。これにより、バイカモな どの 沈水植 物が生育 可能な 水流を確 保し、 種子や植物体が下流へと分散することが可能

になると考える。

1369

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   中村太士 副査   教授   近藤哲也 副査   講師   森本淳子

副査   教授   矢部和夫(札幌市立大学大学院      デザイン研究科)

学 位 論 文 題 名

寒 冷 地 小 河 川 に お け る 富 栄 養 化 が 水生 植 物 群 落の 分 布 と      種 多 様 性 に 与 え る 影 響

  

本 論 文 は 、 図

14

、 表9 を含 む 総頁 数

94

の 和 文 論文 で あり 、 他 に参 考 論文

4

編 が 添えられ ている。

  

近年、農 地等から の排水や 非特定汚 染源から の汚濁負 荷の流出が、小河川の栄養 塩濃度の 増加を引 き起こし ている。 こうした 栄養塩濃 度の増加は、緑藻類の異常増 殖など、 特定の種 や種群に 対して影 響を及ば すことが 知られている。しかし河川生 態系の主 要な構成 要素のひ とつであ る水生植 物を扱っ たこれまでの研究は、物理環 境が群落 の分布や 種多様性 を決定す る主要な 要因であ ると報告しており、富栄養化 によって 及ぼされ る影響に っいて明 らかにし た研究は 少ない。以上の背景から、本 研究では 、小河川 における 富栄養化 が、流路 内に成立 する水生植物群落の分布と種 多様性に いかをる 影響を与 えるかに っいて解 明するこ とを目的としている。研究対 象地は、 近年、上 流部で富 栄養化が おこった 美々川と 、近隣の富栄養化していない 小河川で ある。美 カ川上流 部では、

10

数年前か らクサヨ シ群落の流路内への拡大が 確認され ている。

1

. 富 栄 養 化 し た 小 河 川 に お け る 水 生 植 物 群 落 の 変 遷 と そ の 要 因

    

ー とくに半 抽水型ク サヨシ群 落に着目 してー

  

水 生植物群 落の分布 、成長と 水文・水 質因子と の対応関係 を解析し、群落と環境 の 歴史的変 遷を把握 した。そ の結果、 在来の沈 水植物群落 の分布は、栄養塩類やミ ネ ラルは影 響してお らず、物 理環境因 子によっ て決定づけ られていた。一方、近年 拡 大した半 抽水型ク サヨシの シュート 成長をコ ントロール し、群落の分布を決定づ け ていた要 因は、高 い

T

P

P04‑P

Org‑N

SS

、泥厚 と、低い

DO

、流速であった。

こ の ク サヨ シ 群 落は 、

1991

年か ら

1996

年にかけ て短期間 のうちに 流路内に 繁茂し

て おり、同 じ期間に 上流部で

0.07mg/l

を超える 高濃度の りン負荷が数回にわたり確

認 .された。以上の結果から、

1991

年までは、過剰な窒素量のなかでりンが成長の制

(4)

限 要因 とを って いたが、高濃度のりン負荷によって制限要因が解除され、短期間の う ちに クサ ヨシ が流路内に繁茂したと考察した。この繁茂したクサヨシの匍匐シュ ー トと これ らの 残渣によって流路が閉鎖されることにより、クサヨシ繁茂区間の流 速 が低 下し た。 流速の低下はりンが付着した懸濁物の堆積を引き起こし、高いSS 、 泥厚、Org‑N 、T −P 環境をまねいた。さらに低下した流速によってクサヨシ群落下の 泥 が還 元状 態と 詮り、底泥からりンのさらなる溶出がおこった。これらが長期間、

群 落内 で負 荷さ れることでクサヨシの成長を助長させ、流路がクサヨシで充填され たと結諭づけている。

2.

小河川における水生植物の栄養塩利用特性

  

富 栄養 化区 間に成 立す る群 落の 優占 種であるバイカモ、スギナモ、クサヨシの3 種を 対象 に、富栄養化が水生植物に及ばす影響にっいて、個体の養分利用に着目し て 明 ら かに し た 。 そ の結 果、 クサ ヨシ は3 種 の中 で最 も高 いNUE .PUE ( 窒素 、リ ン利用効率)、A (生産性)を示し、栄養塩を効率よくバイオマスに転換していた。近 年、 クサ ヨシがきわめて短期間のうちに流路内に繁茂した理由のひとっに、本種の 高い 栄養 塩利 用特性 があ るこ とを 示し た。 また バイ カモ は、 栄養 塩の高い環境で

MRT(

平均 滞留時間)が長く、この理由として、クチクラ層の発達しなぃ植物体内で 外液 の濃 度にあわせて栄養塩が受動的に取り込まれたためと考察した。これまで水 生植 物は 、水位変動や流速などの物理環境の状態にあわせてサイズや形を変化させ るこ とが 報告されてきた。しかし本研究では、栄養条件といった化学環境が、種の 利用 特性 を通じて水生植物のサイズを変化させ、このことが特定の種の異常繁茂に っながる可能性があることを示唆した。

3

.富栄養化した小河川における水生植物群落の種多様性

  

富栄 養化 が水生植物群落の種多様性に与えた影響について明らかにするために、

群 落間 で種 多様性を比較し、沈水植物と浮葉植物の種多様性を決定づける要因につ い て解 析し た。その結果、沈水植物の種数に対しては、生物的要因であるクサヨシ 被 度そ のも のが負に影響しており、沈水植物は、クサヨシによる競争排除により減 少 した こと を示した。一方、浮葉植物の種数に対しては、水位変動幅や流速といっ た 物理 環境 が正に影響しており、浮葉植物の一部の種は、葉が可塑性をもっことで 物 理環 境の 変動に適応した結果、種数が増加したことを示した。以上から、富栄養 化、すなわち過剰な窒素やりンが沈水、浮葉植物の種数に直接影響したのではなく、

富 栄養 化に よって栄養塩利用特性に優れるクサヨシが繁茂したことによって、間接 的に沈水、浮葉植物の種数が減少したと結論づけている。

  

以上 のように本論文では、小河川における富栄養化が、栄養塩利用特性を通じて

特 定の 種を繁茂させることで、水生植物群落の分布や種多様性に影響を及ばすこと

を 示し た。小河川の水生植物群落を保全していく上で、これまでの物理環境だけで

な く水 質環境に注目することの重要性を示したことは、河川生態系を対象とする保

全 生態 学の分野に大きく寄与するものである。よって審査員一同は、片桐浩司が博

士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 め た 。

参照

関連したドキュメント

  (8)

ゼインミセル、両方とも加熱温度の増加とともにゲル化開始時間は増加し、ゲル

   第 2 章で は、米穀政策の変遷過

    

と考えられてきたコムギの生育は、乾物分配則からみると生長点の分化

20 ℃と40 ℃で坐らせ,さらに90 ℃で加熱して,坐ルゲルと坐りー加熱ゲルを調製し,ゲル物性と ミ オシン重鎖の変化を調べた。その結果,20 ℃の坐ルゲルでは S 濃度が高い程BS

そのようなHCv 遺伝子の多様性をquasispecies と呼んでいる.本研究では各血清よりlO

   見られないが,液流速が大きくなると粒子群が縦縞状の凝集体を形成して上昇する不