博 士 ( 農 学 ) 南 部 哲 男
学 , 位 論 文 題 名
テ ン サ イ 移 植 機 の 自 動 化 に 関す る 開 発 研究
学 位 論 文内 容 の 要 旨
本 論 文 は ,
7
章21
節 で 構 成 さ れ , 図82
, 表33
, 写 真13
, 引 用 文 献8 4
を 含む196
頁の 和文論文で ある.日 本の テ ンサ イ 栽 培は 紙 簡に よる移植 方式が広 く定着し ている. この栽培方 式 の 採用 に よ って 収 量 の増 加 とともに ,より収 量の安定 した生産 が可能とな っ た . しか し , この 移 植 方式 は 紙筒への 土詰,播 種,育苗 及び移植 などの関連 し た 作 業が 必 要 とな り , 直播 方 式と比ベ 労働時間 は著しく 増加した .この労働 時 間 増 加の 対 応 策と し て ,省 力 化の努カ が続けら れ,今日 では直播 栽培とほば 同 等 な能率と なっている .移植機 械にっい ても,そ の改良に大きな進展がみられ,
作 業 時間 は 半 減し て い る. し かし,人 手により 苗の補助 供給を行 う現状の半 自 動 方式にお いては,そ の発展と 向上に限 界があり ,大幅な省力化は期待できナょ い .
そ こで , 本研 究 は 移植 の 自動 化と高速 化を目標 に,自動 化に必須 な苗供給部 の 無 人化 を 計 るた め , 紙簡 の 構造と移 植機械の 両面から 考察し, 新規発想の も と に連続し た紙筒(チ ェーンポ ット)と ,これを 個々の苗に高速分離する装置,
及 び ,上 記 分 離装 置 の 能カ に 対応する ,機構が 簡単で高 速植付け に適する苗 落 下 方 式に よ る 新た な 植 付け 装 置を開発 したもの である. 更に,こ れらの装置 を 搭 載 した 移 植 機を 試 作 し, 実 証実験を 行い,省 力性はも とより移 植機として の 基 本性能に おいても実 用に十分 供し得る 内容であ ることを確認したものである.
第
1
章は テ ン サイ 移 植 機の 変 遷と 既 往 の自 動 化研 究 の 問題 点を述 ベ,これに 対 応して本 研究の目的 と位置づ けを行っ た・第
2
章はテ ンサイ移植 機の自動 化にっい て考察し ,本研究 の糸口と ナょる提案 を 行 った .1
) 連 続苗 を 用い た 既 往の 自 動 化研 究 は苗 間 隔 の狂い 易い性質に 宿 命 的 に逆 ら っ て, 無 理 にピ ッ チを合せ て個々の 苗に分離 しようと するところ に 基 本 的な 誤 り が認 め ら れた . そこで, 苗間に分 離誘導部 と呼ぷ切 込みを人れ , そ の 上部 を 接 続し , 分 離誘 導 部を手掛 りに最初 の接続部 に応カを 集中させて , 順 次 接続 部 を 切断 す る こと に より,小 さなカで ,かっ, 苗間のピ ッチを合せ ず に 分離可能 と考察した .そして,この考えに基づく連続紙筒(チェーンポ.yト)と 高 速処 理 を 可能 と す るロ ー ラの組合 せによる 実用的な 分離装置 を考案した .
2
) 植 付 け部 は, 機構 が極 めて 簡単で ,土 中に おい て可 動部 分が なく ,分 離機 構に対応して自動化・高速化の可能な苗落下式植付け機構に着目した.しかし,従来の.機構は移植機の進行に伴う苗の慣性カにっいてほとんど考慮されてなく,
その ため 植付 けは 不安 定で あり ,か っ,作 業速 度を 増し,能率を向上させるに
1
は大きナょ制約を受けていた.そこで,本機構を高速化するには,@苗が所要角 度で 所定 位置 に落 下す るこ と, ◎溝 切り器 の後 方に 発生する植付け穴の位置が 作 業 条件 にか かわ らず 一定 であ るこ と, の2っ の条 件を 満た すこ とが 必須 と考 察し,上記の条件を満たす新たな植付け機構を考案した.
第
3
章 は 第2
章 の 提案 に 基 づ き チ ェ ーン ポッ ト苗 を個 々の 苗に 分離 する につ いて 基礎 実験 を行 い, チェ ーン ポッ ト設計 のた めの 基礎資料を得た.次に,こ れ ら の結 果か ら実 用的 なチ ェー ンポ ット と分 離装 置に っい て検討 した .1)テ エーンポットの接続部の強度は苗の引出し距離に対応し,8〜 14Nを必要とする こと が判 った .2) 分離 カの 点か ら分 離誘 導部 の長 さは30 mm以上あることが望 まし く, この 時の 分離 カは分離誘導部のない場合と比ベ約1/5に減少することが 判った.また,接続部の長さは正常な分離が行われる3 mm以下が適当であった.3
) 以 上 の結 果を 基に 実用 的な チェー ンポ ット を試 作す ると とも に, 連続 的に 分離可能ナょ実験装置を試作し,分離条件にっいて検討したところ,分離角度は12
〜15.,速度比は6〜7が最も許容度も高く,安定した分離の得られることが判 明した.第
4
章 は 第2
章 の 提案 に 基 づ き 苗 落 下式 植付 け機 構の 理論 的検 討を 行う とと もに ,実 験に より 実用 機′への適用に必要な基礎資料を得た.1)溝切り器の後 方に 出現 する 植付 け穴 は溝 切り 器の 進行に 伴い 定常 的に発生し,この植付け穴 に落 下し た苗 は埋 め戻 され る土 壌に より徐 々に 拘束 され,苗の持つ慣性カと戻 り 土 の保 持カ が平 衡し たと きに 苗は 固定 され るも のと 考察 された .2)溝 切り 器背 面に 沿っ て苗 を落 下さ せる のに 必要な 苗と 苗落 下管の動摩擦係数を求める 関係式を導き,実験により本植付け機構に適用できる実用的な同係数0.8を求め た. また ,苗 の放 出角 度, 放出 速度 ,着地 角度 を算 出する関係式も導出した.3
) 溝 切 り器 とし て半 円柱 を用 いて, その 後方 に生 じる 開溝 部の 形状 が半 円柱 の大 きさ や作 業速 度, 土壌 の種 類に よっで どの よう に変化するかを実験により 調ベ ,以 下の 知見 を得 た. @開 溝部 の長さ は移 動速 度の増加に比例して長くな り, その 増加 割合 は土 質に より 異な ること ,◎ 同一 土壌での土壌水分による開 溝部 長さ への 影響 は極 めて 小さ いこ と,ま た, ◎開 溝部の輪郭曲線を求める関 係式が火山性壌土と沖積土のそれぞれにっいて得られた.4
) 側 壁 を 設け た溝 切り 器に より ,目 標と する 開溝部 形状 の定 常化 設定 が可 能 となった・第
5
章 は 第4
章 の 結 果 を 基 に 植 付 け 装 置 を試 作し, 苗が 植付 けら れる 条件 と そ の 精 度 に っ い て 実 験 に よ り 検 討 を 行 い , 実 用 機 設 計 の 資 料 を 得 た ・1
) 移 動 速 度が 増す に伴 い, 植付 け角 度は ほば 直線的 に減 少し た. そし て, そ の 減 少 割 合 は 移 動 速 度O
.Im/s
の 増 加 に 対 し て4
〜5
. で あ っ た .2
) 背 面 角 度が 小さ くな れば 植付 け角 度は 増大 し,溝 切り 器の 背面 角度 と植 付 け角度 は逆 比例 の関 係に ある こと が明 らか とな った .そ して,その減少割合は 背 面 角 度1
. の 増 加 に 対 し て , 植 付 け 角 度 は 約2
. で あ っ た .3
) 土 壌 水 分の 違い によ る植 付け 角度 に大 きな 差はみ られ ず, また ,火 山性 壌 土と沖積土との間にも差はみられなかった.4
)植付け角度の標準偏差は3〜7.の範囲で,在来移植機と同等であり,十分に.実用範囲内であると判定された.
5
) 本 章 と 第4
章 か ら , 植 付 け 装 置 の 設 計 が 可 能 と ナ よ っ た ,第
6
章 は 第3
章 〜 第5
章 の 結 果を 基 に チ ェ ー ン ポ ッ ト 及 び2
条 用 と6
条 用の 移 植機を試作して性能を調査し,実用性を検討した・1
)ト ラク タ直 装型 の2条 用移 植機 を試 作し ,植 付け 精度 を調査したところ,第5
章の 室内 実験 の結 果と ほぼ 同じ標 準偏 差6.9° であ った .株間の変動係数は14‑19.5
°の 範囲 にあ り, 在来 機種 のゴ ム円 板式 とほ ば同 等であり,このことは 栽培上 ,十 分に 許容 範囲 内で あった.2)5年間にわたり合計42. lhaの実証実験 を24農 家圃 場で 試み たと ころ ,在来機種と比ベ1/2に省力化され,また,まざま な移植 条件 に対 する 許容 度も 高く,十分ナょ実用性を確認したゝ3)欧米などの 大規模 圃場 に対 応す るた め, トラクタけん引型の6条用移植機を試作した.移植 作業能率は1時間当りO. 54haであり,植付け精度はZ条用移植機と同じであった.また, 本機 用の 作業 能率 の算 出式 を導 き, 効率 的な 利用 法にっいての提案を試 みた.
以上 のよ うに ,本 論文 はテ ンサ イ移 植機 を自 動化 する ための開発的な研究で あり, ここ に得 られ た成 果は テン サイ のみ なら ず他 作物 にも適用可能で,省力 化 と 合 わ せ て 移 植 技 術 の 発 展 に 大 き く 寄 与 す る も の で あ る .
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
寺尾 伊藤 宮本 高井
日 出男 和 彦
啓 二(帯広 畜産大 学)
宗 宏
学 位 論 文 題 名
テンサイ移植機の自動化に関する開発研究
本 論文は7章21節 から構成 され, 図82,表33, 写真13,引用文献84を含む196頁の 和文論文で,他に参考論文14編が添えられている.
日 本のテン サイ栽 培は紙筒 による 移植方式 により,収量の増加とともにより安定 し た生産が 可能と なったも のの, この方式 は直播方式と比べ基本的に多くの労カを 必 要とする ので, 昨今の農 業事情 からこの 点の一層の解決が迫られている.現状の 半 自動移植 方式で は,その 発展と 改良には 限界があり,大幅な省力化は期待できな い.
そ こで,本 研究は 移植の全 自動化 と高速化 を目標に,基礎研究から着手し,自動 化 に適応す る連続 した紙簡 (チェ ーンポッ ト)と,これを個々の苗に高速分離する 装 置,及び ,上記 分離装置 の能カ に対応す る新たな植付け装置の開発を行ったもの である.
第1章は テンサ イ移植機 の変遷 と既往の 自動化研 究の問 題点を述 べ,本 研究の目 的と位置づけを行っている.
第2章は テンサ イ移植機の自動化にっいて考察し,本研究の糸口とナょる提案を行 った.
1)連続 苗を用 いた既往 の自動化 研究は ,苗間隔 の狂い 易い宿命 的な性 質に逆らっ て ,無理に ピッチ を合せて 個々の 苗に分離 しようとするところに基本的な誤りが認 め られた. そこで ,この点 を解決 したチェ ーンポットと高速処理を可能とする実用 的な分離装置を考案した.
2)従来 の苗落 下式植付 け機構は ,移植 機の進行 に伴う 苗の慣性 カにっ いてほとん ど配慮がなされておらず,そのため植付けは不安定であり,かっ,作業速度を増し,
能 率を向上 させる には大き な制約 を受けて いた.そこで,これらの点を解決した新 たナょ苗落下式植付け機構を考案した.
第3章はチェ ーンポット苗を個々の苗に分離するにっいて基礎実験を行い,次に、
こ れ ら の 結 果 か ら 実 用 的 な チ ェ ー ン ポ ッ ト と 分 離 装 置 に っ い て 検 討 し た ・ 1)分 離カ の点 から 分離 誘導 部の 長さは30mm以上あることが望ましく,こ の時の分 離 カ は 分 離 誘 導 部 の な い 場 合 と 比 ベ 約1/5に 減 少 す る こ と が 判 っ た ・ 2)実 用的 なチ ェー ンポ ット と連 続的に分離可能な実験装置を試作し,分 離条件に っいて検討したところ,分離角度12〜15',速度比ら〜7付近は最も許容度も高く,安 定した分離の得られることが判明した.
第4章は 苗落 下式 植付 け機 構の 理論的検討を行うとともに,実験により 実用機へ の適用に必要ナょ基礎資料を得た.
1)溝切り器背 面に沿って苗を落下させるに必要ナょ苗と,苗落下管の動摩擦係数を 求める関係式を導き,本植付け機構に適用できる実用的な同係数O.8が実験により得 られた.
2)溝 切り 器と して 半円 柱を 用い て,その後方に生じる開溝部の形状の変 化を実験 によ り調べたとこ ろ,開溝部の長さは移動速度に比例して長くなり,その 増加割合 は土質により異ナょること,同一土壌での土壌水分による開溝部長さへの影響は極め て小さいことナょどが判明し,これらを基に開溝部の輪郭曲線を求める関係式が火山 性壌土と沖積土にっいて得られた.
3)側 壁を 設け るこ とに より ,定 常化した目標とする開溝部形状の設定が 可能とな った.
第5章は 植付 け装 置を 試作 し, 苗が植付けられる条件とその精度にっい て室内実 験により検討を行い,実用機設計め基礎資 料を得た.
1)移 動速 度がO. Im/s増す に伴 い,植付け角度はほば直線的に4〜5°減 少した.
2)溝 切り 器の 背面 角度1° の 増加に対してと ,植付け角度は約2°減少す る逆比例 の関係にあることが明らかとナよった.
3)植 付け 精度 の標 準偏 差値 は3〜7°の範囲で在来移植機と同等であり, 十分に実 用範囲内であると判定された.
4)本 章 と 第 4章 の 結 果 か ら 植 付 け 装 置 の 設 計 が 可 能 と な っ た . 第6章は チェ ーン ポッ ト及 び2条用と6条用の移植機を試作して,性能を 調査し,
実用性を検討した・
1)実圃場にお ける植付け精度は標準偏差で6.9°で,室内実験の結果とほぼ等しい こと を確認した. また,株間の変動係数は14 ‑19.5%の範囲にあって在来 機種のゴ ム 円 板 式 と ほ ぼ 同 値 で あ り , 栽 培 上 , 十 分 に 許 容 範 囲 内 で あ っ た ・ 2)5年間 にわ たり 合計42. lhaの 実証実験を24農家圃場で試みたところ, 在来機種 と比 べ2条用で1/2に省力化されること,また,さまざまな移植条件に対す る適応度 も高く,十分な実用性のあることを確認し た.
3)欧米 など の大 規模 圃場に対応するため, 移植作業能率が毎時0.54haのトラクタ けん引型6条用移植機を試作した.また,本機 用の作業能率の算出式を導き,効率的 ナよ利用法にっい ても提案を試みた・
以上のように,本論文はテンサイ移植機を完全自動化するための開発研究であり,
ここに得られた結果は,テンサイのみならず他作 物にも適用可能で,省力化と合わ せて,移植技術の発展に大きく寄与するものであ る・
よって審査員一同は,別に行った学力確認試験 の結果と合わせて,本論文の提出 者である南部哲男は,博士(農学)の学位を受け るのに十分な資格があるものと認 定した.