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博 士 ( 農 学 ) 朴

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 農 学 ) 朴    宣 映

凝 乳 酵 素 レ ン ネ ッ ト に よ る 牛 乳 の ゲ ル 化 に 関 す る      粘 弾 性 的 研 究 .

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    チ ー ズ は 世 界 的 に 最 も 広 く 利 用 さ れ て い る 食 品 のー つで あり 、非 常に 長い 間、

多 く の 民 族 が 育 ん で き た 伝 統 的 な 製 造 方 法 を 基 に 造 ら れ て き た 。 し か し 、 近 年 、 チ ー ズ 製 造 方 法 も 科 学 的 に 検 討 さ れ は じ め 、 次 第 に 一 般 化 さ れ た 製 造 方 法 が 導 入 さ れ る に 至 っ て お り 、 あ る 種 の チ ー ズ は す で に 完 全 に 自 動 化 さ れ た 工 程 で 製 品 化 さ れ て い る 。 こ の よ う な 動 向 の 中 で 、 よ り 普 遍 的 な チ ー ズ 製 造 方 法 の 構 築 が 望 ま れ て い る 。 そ の た め に は 、 牛 乳 の 凝 乳 酵 素 に よ る カ ー ド 形 成 ( ゲ ル 化 ) の メ カ ニ ズ ム や 熟 成 過 程 に お け る 乳 成 分 の 変 化 な ど 基 本 的 な 問 題 点 を さ ら に 詳 細 に 解 明 す る 必 要 が あ る 。 こ の よ う な 観 点 に 立 っ て 、 具 体 的 に は 原 料 乳 の 予 備 加 熱 、 殺 菌 な ど の 加 熱 処 理 の カ ー ド 形 成 へ の 影 響 を 解 明 し 、 チ ー ズ 製 造 の 普 遍 化 の た め の 基 礎 的 な デ ー タ の 蓄 積 を 目 的 と し た 。 本 研 究 は カ ゼ イ ン ミ セ ル の 凝 乳 酵 素 レ ン ネ ッ ト に よ る ゲ ル 化 過 程 を 主 に 粘 弾 性 的 手 法 に よ り 追 究 し 、 さ ら に ゲ ル の 微 細 構 造 の 観 察 を 電 子 顕 微 鏡 を 用 い て 行 な い 、 粘 弾 性 的 な 測 定 結 果 を 形 態 的 な 観 察 と の 関 連 で 検 討 し た 。

1. 還 元 脱 脂 乳 及 び カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 の レ ン ネ ッ ト ゲ ル 化 特 性 の 比 較     還 元 脱 脂 乳 及 び カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 の レ ン ネ ッ ト に よ る ゲ ル 化 特 性 を 比 較 検 討 し た 。 ゲ ル 化 曲 線 か ら カ ー プ ヒ テ ィ ン グ 法 に よ ル ゲ ル 化 開 始 時 間 、 ゲ ル 化 速 度 、 最 大 ゲ ル 弾 性 率 を 求 め 、 両 試 料 の ゲ ル 化 特 性 を 比 較 検 討 し た 。 両 試 料 と も ゲ ル 化 温 度 の 低 下 と 共 に ゲ ル 化 開 始 時 間 は 遅 れ 、 ゲ ル 化 速 度 は 減 少 レ た 。 最 大 ゲ ル 弾 性 率 は カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 の 場 合 、 ゲ ル 化 温 度 が40℃ か ら30℃ に 低 下 す る と 増 加 す る が 、25〜30℃ で は ほ ぼ 一 定 の 値 を 示 し 、20℃ に な る と 再 び 減 少 し 、 約28

℃ に 最 大 ゲ ル 弾 性 率 の ピ ー ク が 存 在 す る こ と が 示 さ れ た 。 還 元 脱 脂 乳 の 場 合 、 カ ゼ イ ン ミ セ ル と 比 較 し て 、 最 大 ゲ ル 弾 性 率 は1/2か ら1/3の 低 い 値 を 示 レ た 。 し か し 、 最 大 ゲ ル 弾 性 率 は 温 度 の 低 下 と と も に20℃ ま で は 増 加 し 、18℃ で 減 少 レ 、 約20℃ に 最 大 ゲ ル 弾 性 率 の ピ ー ク が 著 し く 低 温 側 に 移 動 し た こ と が 明 ら か に な っ た 。 両 試 料 の 最 大 ゲ ル 弾 性 率 の 温 度 依 存 性 の 相 違 の 原 因 は 両 者 の 熱 履 歴 の 差 に あ る も の と 推 測 さ れ た 。 そ こ で 還 元 脱 脂 乳 か ら カ ゼ イ ン ミ セ ル お よ び 限 界 濾 過 液 を

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分離し、 新たなカ ゼインミ セル実験 系を作り、 各種ゲル 化特性を測定比較した。

更に、両 試料の走 査型電子 顕微鏡に よる観察結 果、還元 脱脂乳のカゼインミセル 表面に微 粒子の存 在が観察 された。 これが両試 料のゲル 化特性に差をもたらす原 因のーつ である。 結局、脱 脂粉乳の 製造の際に 受ける加 熱処理にその原因がある と考えら れる。

2. カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 へ の WPCと WPIの 添 加 、 加 熱 の 影 響     カゼイン ミセル懸 濁液を様 々の温度 で加熱処 理した後、ゲル化特性を比較検 討レた。加熱温度の上昇とともにゲル化開始時間は増カll、ゲル化速度は減少、最 大ゲル粘 弾性も減 少した。 加熱処理 により牛 乳叫|のイオン性Ca濃度が変化する 可能性が あり、カ ゼインミ セル懸濁 液を異な る温度で加熱処理した結果、加熱温 度の 上 昇 と共 に イオ ン 性Ca濃 度 は減少 の傾向を示 した。カ ゼインミ セル懸濁 液 に ホ エ ー 蛋 白 質 濃 縮 物(WPC)と ホ エ ー 蛋 白 質 分 離 物(WPI)を 添 加 し レ ン ネ ッ ト ゲ ル の 特 性 を 比 較検 討 した 。WPC、WPI両 方 加熱 温 度の 増 加 と共 に ゲル 化 開 始 時 間 は 増 加 し 、 ゲル 化 速度 及 び 最大 ゲ ル 粘弾 性 は減 少 し た。WPCよりWPIの 存在 下 で のカu熱 の 場合 、 ゲ ル化 特性 は著しく変 化した。 このこと はWPIの主成 分 で あ るa ‑Laと ロ ‑ Lgに そ の 主 な 原 因 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。

3. カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 へ の a ‑Laと B‑ Lgの 添 加 、 加 熱 の 影 響     ロ‑JAお よ び ロ‑Lgを カゼ イ ンミ セル懸濁 液に添加、 加熱後そ のレンネ ット ゲ ル化 性を検討 した。ロ ‐hの場合 、ロ・Lgと比 較してゲ ル化性の 低下の度 合い は小さ かった。 さらにロ ‐Lgについ ては、加 熱の際にその‐SH基がカゼインミセ ル の厄 ー カ ゼイ ン の‐SH基を 通 じて 結合する可 能性を検 証するた めに、ま ず、

‐SH基の 加熱によ る変化を 調べた。 加熱によ る.SH基含量は約80%滅少した。こ のことから‐S‐S‐結合を通して複合体を形成する可能性が示された。さらに、‐SH 基を化 学的な方 法によル ブロック したロ‐Lgを調製し、ゲル化の性質を比較した 結 果、 .SH基ブ口 ックp‐Lgが 存在する 試料のゲル 化性質が ‐SH基プロ ックしな いロ‐Lgが存在レない試料よルコントロールによ.り近い傾向を示した。一方、走 査型電 子顕微鏡 と透過型 電子顕微 鏡の観察 結果から、 カゼインミセル表面に微粒 子の存 在(突出 物)が確 認され、 これがロ ‐Lg本体であろうと推測される。この ように 、ローLgの カゼイン ミセルの 表而への 結合がゲル化性の低下をもたらす原 因であることが明確になった。

4.カ ゼインミ セルのサ イズのゲ ル化性に 及ぼす影響

    カゼ インミセ ルに含ま れるんー カゼイン の量は、カゼインミセルのサイズに より 異なるこ とが知ら れている 。超遠心 分離によって、二種類の異なるサイズの カゼ インミセ ルを調製 して、そ れらのゲ ル化特性と比較レた、さらに、ロ‑ Lgを 添 加 、加 熱 し て、 そ のゲ ル 化特 性につい ても検討し た。大お よび小サ イズのカ

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ゼインミセル、両方とも加熱温度の増加とともにゲル化開始時間は増加し、ゲル 速度は減少レた。次にSH 基ブ口,ックロ‑ Lg を両試料をそれぞれ添加し、同じ様 に三っのパラメータを検討レた結果、コント口ールにより近い値になったが、一 致はしなかった。このことは、加熱処理によルロ‑ Lg のSH 基とだーカゼインの SH 基が‐S ‐S‑ 結合を形成してゲル化の性質に影響を及ぼすが、‑S‑S‑ 結合以外の 結合も複合体形成に関与していることを示唆している。`加熱処理後螢光試薬ANS を用いてカゼインミセル懸濁液の疎水性を測定した。その結果、加熱処理温度の 増加とともに疎水性度が増加する傾向が観察された。

     レンネットによる牛乳のゲル化特性は、加熱により著しく影響を受けるが、

本論文の結果は、そのことはホエー蛋白質がカゼインミセル表面に結合すること に起因することを明らかにした。その結合様式はロ‑ L,g およびだ‐カゼインの

‑SH 基を通して形成される‑S‑S‑ 結合が主要なものと考えられるが、‐S‑S‑ 結合の

みではなく他の結合様式、特に、疎水結合の関与も考えられる。さらに他の要因

としては、カゼインミセル懸濁液中のイオン性Ca の加熱による減少が考えられ

る。本論文では、牛乳の加熱によるゲル化性の低下の要因の幾っかを明らかにす

ることが出来た。このことは単に牛乳のレンネットによるゲル化のメカニズムを

知る手掛かりを与えるばかりでなく、チーズ製造の際のレンネットによるカード

形成工程の制御への応用の可能性を示すものである。

(4)

学 位 論 文 審 査の 要 旨

学 位 論 文 題 名

凝 乳 酵 素 レ ン ネ ッ ト に よ る 牛 乳 の ゲ ル 化 に 関 する      粘 弾 性 的 研 究

本 論文は5章から構成され、図50、表15、引用文 献111を含むtワ。iからなる 論文で、

他 に参 考 論文4編 が添 えら れて ぃる 。

チ ーズは世界的に最 も広く利用されてぃる食品の―つであり、伝統的な製造 方法を基 に 造られてきたふ近 年、チ―ズ製造方法が科学的に検討されはじめ、次第に ―般化さ れ た製造方法が導入 されており、ある種のチーズはすでに完全に自動化され た工程で 製 品化されている。 現在、より普遍的なチ―ズ製造方法の構築が望まれぃる 。そのた め には、牛乳の凝乳 酵素によるカード形成(ゲル化)のメカニズムや熟成過 程におけ る 乳成分の変化など 基本的な問題点をさらに詳細に解明する必要がある。こ のような 観 点に立って、本論 文は原料乳の予備加熱、殺菌などの加熱処理のカード形 成への影 響 を解明し、チーニ ・ズ製造の普遍化のための基礎的なデ―タの蓄積を目的 とした。

第ー 章では還元脱脂乳及びカゼインミセル懸濁液の レンネットによるゲル化特性を比 較検討した。ゲル化曲線からカーブヒティング法によルゲル化開始時間、ゲル化速度、

最大 ゲル弾性率を求め、両試料のゲル化特性を比較 検討した。両試料ともゲル化温度 の低 下と共にゲル化開始時間は遅れ、ゲル化速度は 減少した。還元脱脂乳の場合、カ ゼイ ンミセルと比較して、最大ゲル弾性率は1/2から173の低い値を示した。しかし、

最大 ゲル 弾性 率は 温度 の低 下と とも に20℃ まで は増 加し 、18℃で減少し、約20℃に 最大 ゲル弾性率のピークが著しく低温側に移動した ことが明らかになった。両試料の 走査 型電子顕微鏡による観察結果、還元脱脂乳のカ ゼインミセル表面に微粒子の存在 が観 察された。これが両試料のゲル化特性に差をも たらす原因のーつであり、脱脂粉 乳 の 製 造 の 際 に 受 け る 加 熱 処 理 に そ の 原 因 が あ る と 考 え ら れ る 。

第 二 章 で は カ ゼ イ ン ミ セ ル 懸 濁 液 へ の ホ エ ー 蛋 白 質濃 縮物(WPC)とホ 工― 蛋白 質 分離 物(WP| )の 添 加、 加熱の影響を検討した。カ ゼインミセル懸濁液を様々の温度 で加熱処理した後、ゲル化特性を求め、カゼインミ セル懸濁液のレンネットゲルを比 較 検 討 し た 。WPCとWPIを添 加し レン ネッ ト ゲル の特 性を 比較 検討 した 。両 試料 と も加熱温度の増加と共にゲル化開始時間は増加し、 ゲル化速度及び最大ゲル粘弾性は

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哉 男

良 房

木 田

仁 冨

授 授

教 教

査 査

主 副

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減 少 し た 。WPCよ りWPIの 存 在 下 で 、 ゲ ル 化 特 性 は 著 し く 低 下 し た 。 こ の こ とは WP| の主 成分 であ るロ‑Laとグ‑ Lgに その主原因があると考える根拠を与えるもので ある 。

第 三章 では カゼ イ ンミ セル 懸濁 液へ のロ‑Laとp‐Lgの 添加 、加 熱の 影fに ついて検 討した。 両試料とも、加熱処理温度の増加とともにゲル開始時間とゲル速度は増加し、

最 大ゲ ル粘 弾性 は 減少 した。ば‑Laの場合、タ‑ Lgと比較してそれらの変化の度合い は 小さ かっ た。p ‑ Lgについては、加熱により‑SH基含量は約80%減少した。走査型 電子顕微 鏡と透過型電子顕微鏡の観察結果から、カゼインミセル 表面に微粒子の存在

( 突出 物) が確 認 され 、これがグ‑ Lg本体であると推測される 。p‐Lgのカゼインミ セ ル の 表 面 へ の 結 合 が ゲ ル化 性の 低下 をも たら す原 因で ある こと が 示唆 され た。

第四章ではカゼインミセルのサイズのゲ ル化性に及ばす影1lFについて検討した。カゼ インミセルに含まれるゼー カゼインの量は、カゼインミセルのサイズにより異なる こ とが知られてぃる。超遠心 分離によって、ニ種類の異なるサイズのカゼインミセル を 調製して、それらのゲル化 特性と比較した。さらに、グ‑ Lgを添加、加熱して、特 性 を比較した。両試料とも、 加熱温度の増加とともにゲル性の低下が観察された。次 に SH基 ブロ ックp‑ Lgを両 試料 に添 加、 加熱 した 結果 、 コン 卜ロ ール によ り近 い値 に なったが、一致はしなかっ た。このことは加熱処理によルグ‑ LgのSH基とだーカゼ イ ンのSH基 が.S‑S‑結合 を 形成してゲル化の性質に影響 を及ばすが、‑S‑S‑結合以外 の 結合も複合体形成に関与していることを 示唆している。

レン ネッ トに よる 牛乳のゲル化特性は、加熱により著しく影 響を受けるが、本論文の 結果 はそ の影 響の 主要な原因は、ホ工―蛋白質がカゼインミ セル表面に結合すること に起 因す るこ とを 明ら かに した 。そ の結 合様 式はグ‑ Lgおよびだ‐カゼインの‑SH基 を通 して 形成 され る‑S‑S‑結 合が 主要 なも ので ある こと を確 かめ た。 ー方、‑S‑S‑結 合の みで はな く他 の結合様式、特に、疎水結合の関与も示し た。以上のように、本論 文で は、 牛乳 の加 熱によるゲル化性の低下の要因の幾つかを 明らかにすることが出来 た。 この 研究 成果 は牛乳のレンネットによるゲル化のメカニ ズムを知る手掛かりを与 える ばか りで なく 、チーズ製造の際のレンネッ卜によるカー ド形成工程の制御への応 用の 可能 性を も示 唆した。よって、審査員一同は、別に行っ た最終試験の結果と合わ せて 本論 文の 提出 者朴宣映は博士(農学)の学位を受けるの に十分は資格があるもの と認 定し た。

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参照

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