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博 士 ( 農 学 ) 藤 田 浩 三

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 藤 田 浩 三

学 位 論 文 題 名

黒 毛 和 種 去 勢 牛 の 肥 育 に お け る 粗 飼 料 給 与 の 効 果

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

和牛は、かって、主 に役用として飼育されていた が、農業技術の進展や食生 活の変化にと もなぃ 、現在では、肉用としてわが国での牛肉生産の中核を担っている。なかでも黒毛和龝は、

脂肪交雑の高い、いわゆ る、高級霜降り肉を生産する ための素牛として全国で広 く飼育される ように なった。しかし、生産効率 を向上させるために、急速な 経営規模拡大や過度の濃厚飼料 依存型の飼 育が行われるようになった結 果、種々の栄養生理的障害 の発生や飼料費の増大によ る生産コス卜 の上昇などの問題が生じて いる。効率的な牛肉生産を行 うには、飼料資源を合理 的に利Jf亅することが肝要である。特に、反鄒家蜜である肉J・H´1:では、茄健飼料である粗飼料の 給与方法が栄養生 理上からも重要となる。そこ で、本研究は、黒毛和種去 勢牛の肥育時におけ る粗飼料給与 の効果を明らかにする目的 で、増体と肉買を評価の対象 として短期並びに長期の 両肥 育方式について実施したもの である。本論文の内容の要旨は、以下の通りである。

第1章では、緒論として 、本研究と関わりのある既往 の研究報告について紹介、 論述すると ともに 、本研究を行うに到った経緯 、ならびに、その意義、目的等を記述している。

第2章では 、まず、短期肥育(肥育期 間:9カ月齢から約9カ月)方式において、増体量を高く 維持 す るた めの 、粗 飼料 の 適正 給与 比率を検討した。日 本飼養標準(肉牛用)のTDN(可消化 養 分総 量)所要量を 基準に、粗飼料からの‑TDN給 与割合を変えて、飼料の採 食量と消化率なら びに増体へ の影響について試験した。供 試粗飼料はイネ科牧草で、 生草、乾草またはサイレー ジとして給与 した。その結果、全給与飼 料TDN量中、粗飼料:濃厚飼料の給与比率を、概ね、

前期4:6,中 期3:7、後期2:8、平均で約35%量を粗飼料で給与するのが適切であることが明らかと なった。つい で、粗飼料として稲わら給 与の効果について検討した。 その結果、稲わらは、エ

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ネ ルギ ー補給の効果は低いが 、短期肥育において混合飼料 を給与する際に、全飼料中 の粗飼料 合 量カ;TDN含 量比 で35%以 下の 場合には、稲わらを添加給 与することにより、濃厚飼 料多給時 に み ら れ る 肥 育 後 期 で の 増 体 の 低 下 や 消 化 障 害 の 発 生 が 防 止 で き た 。

第3章では、長期肥育(肥 育期間:9カ月齢から約15カ 月)方式において、肥育期間中のどの時 期に粗飼料を多給するのが適 切かを検討した。肥育期間 を、ほば均等に、前期、中期 、後期の 3期に分 け、粗飼料を多給して試験 した結果、牧草を供試した場 合は、前期に多給すことによ

り 、後期での増俸が促進される ことを認めた。また、給与 比率も短期肥育方式の場合と同率が 適切であった。粗飼料として トウモロコシまたは水稲の ホールクロップサイレージを 供試した 場合は、給与時期による効果 の違いは認められなかった 。しかし、ホールクロップサ イレージ 巾 に合まれる子実を濃厚飼料 に換算して補正することによ り、粗飼料部分の給与効県 は、牧草 給与と同様の結果を示 した。さらに、上記の成果 の実用性を検証するため、生 産現場の飼育実 態に則した群飼牛を供 試して、長期肥青方式にお ける効果を試験した結果、増 体成績で同様の 生産効果が得られ、濃 厚飼料主体肥育に較べ肥育 期間の2カ月短縮と濃厚飼料 の1割節約が可能 であることを確認した 。

第4章 では、粗飼料を多給するこ とによる肉質への影響を検討 した。すでに、一般的に広く 採用されてい る、濃厚飼料飽食型の若令肥 育期間延長方式による飼育 処理群を対照群とし、第 3章で肥育効果を確認 した、前期粗飼料多給方式 に肥育前期放牧方式を加味し た処理群を設け て比較した。 その結果、肥育方式の違いに よって、と体・肉質成績で 、皮下脂肪厚に、校肉割 合では、トモ バラ、モモに、部分肉割合で は、マエバラ、ウデ、トモパラ、サーロイン、ヒレ、

ランイチ、除 去脂肪等に統計的に有意差が 認められた。すなわち、皮 下脂肪は、仕上げ体重に かかわりなく、濃厚 飼料を多給した場合には厚く なり、その差は、供試牛の 父牛の素質の違い による 影讐よりも大きかった。また 、枝肉、部分肉割合に関し ては、脂肪の蓄積が多くなる傾 向があ る部位の割合が濃厚飼料多給 方式で高く、赤肉部分の多 い部位では、逆に、低くなる傾 向が認 められた。ロース芯面積では 、早い時期から濃厚飼料を 給与した濃厚飼料多給群と前期 粗飼料多給群で大きくなった 。脂肪交雑では、粗飼料多 給による悪影響は認められなかった。

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  第s章では、以上の結果に基ずき、黒毛和種去勢牛に対する短期と長期の両肥育時における、

粗飼料の効率的利用を計るための飼料の給与モデルを提示した。

    以上のように、本研究は黒毛和種去勢牛の肥育における粗飼料給与の効果を、長期および 短期の両肥育方式において明らかにしたものであり、肉牛の生産技術と関連して、粗飼料を有 効に活用することにより、飼育牛の健康管理や生産コストの改善にも資する基礎的知見を提示 した。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教 授 教 授 助 教 授

朝 日 田 上 山 大 久 保

学 位 論 文 題 名

康司 英一 正彦

黒 毛和種 去勢牛の 肥育における粗飼料給与の効果

本論文は、 結諭ならびに本論5章より構成されており、表60、図25、弓1用文献160を合む、

和文論文である 。他に、参考論文24編が添えられている。

和牛は、かって、 主に役用として飼育されていたが、.農業技術の進展や食生活の変化にと もない、現 在では、肉用としてわが国での牛肉生産の中核を担っている。なかでも黒毛和種は、

脂肪交雑の高い、いわ ゆる、高級霜降り肉を生産す るための素牛として全国で 広く飼育される ようになった。し かし、生産効率を向上させ るために、急速な経営規模拡 大や過度の濃厚飼料 依存型の飼育が 行われるようになった結果、 種々の栄養生理的障害の発 生や飼料費の増大によ る 生産コストの上昇などの問題 が生じている。効率的な牛 肉生産を行うには、飼料資源 を合理 的に利用するこ とが肝要である。特に、反芻 家畜である肉用牛では、基 礎飼料である粗飼料の 給 与方法が栄養生理上からも 重要となる。そこで、本研究 は、黒毛和種去勢牛の肥育 時におけ る粗飼料給与の効果を明 らかにする目的で、増体と 肉質を評価の対象として短期 並びに長期の 両肥育方式について実 施したものである。その研究 成果は、以下のように要約される。

1.短期 肥育(肥育期間:9カ月齢から約9カ月)方式において、増体量を高く維持するための、

粗飼 料の 適 正給 与比 率を 検討 し た。 その 結果 、全 給 与飼料TDN量(可消化養分総量)の 約35%

量を粗飼料で給与する のが適切であることが明らかとなった。

2.粗 飼料 とし て稲わら給与 の効果について検討した。そ の結果、稲わらは、エネル ギ一補 給の効果は低いが、短期肥 育方式において混合飼料を給 与する際に、全飼料中の粗 飼料合量が

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TDN含量比で35c70以下の場合に は、稲わらを添加給与する ことにより、濃厚飼料多給時 にみら れる肥育後期での増体 の低下や消化障害の発生が防止できた。

3.長 期肥育(肥育期間:9カ月齢 から約15カ月)方式における 肥育期間を前期、中期、後期 の3期に分け、粗飼料を多給す る適切な時期について試験した結果、牧草を供試した場合は、

前期に多給する ことにより、後期での増体が 促進されることを認めた。 また、給与比率も短期 肥育の場合と同率が適 切であった。粗飼料としてト ウモロコシまたは水稲のホ ールクロップサ イ レージを供試した場合は、給 与時期による効果の違いは 認められなかった。しかし、ホール クロップサイレー ジ巾に合まれる子実を濃厚 飼料に補正して検討すること により、粗飼料部分 の 給与効果は、牧草給与と同様の結果を示した。

4. 上記 の成 果の実用性を検証するた め、生産現場の実態に則し た群飼牛を供試して、長期 肥育における効 果を試験した結果、増体成 績で同様の効果が得られることを確認した。

5. 粗飼 料を多給する ことによる肉質への影響を検 討するため、濃厚飼料飽食 群と粗飼料を TDN給与 比で35%給与 した 群と を 比較 した 結果 、 脂肪 交雑では両 群間に差がなく、皮下脂肪厚 やトモパラ、モモ等の 脂肪付着の多い部位の割合 は粗飼料多給群で低くなった 。また赤肉の多 い部位割合は粗飼料多 給群で高くなった。

  6. 以上 の結果に基ずき、黒毛和種 去勢牛に対する短期と長期の 両肥育方式における、粗飼 料の 効率 的利 用を 計 るた めの 飼料 の給 与 モデ ルを 提示 し た。

以上の成 果は黒毛和種去勢牛の肥育 時における粗飼料給与の意義 を明らかにしたもので、

学術的に高く 評価されるとともに、肉牛 の生産技術と関連して実用面 でも貢献するところが大 きい。

よって、審査員 一同は、別に実施した学力確 認試験の結果とあわせて、 本論文の提出者 藤田浩三は、博士( 農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

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