博 士 ( 農 学 ) 朴 善
学位論文題名
CHEMICAL STUDIES ON DEFENCE OF
PLANTS AGA 工 NST SOIL‑BORNE DISEASES (土壌病害に対する植物の防御に関する化学的研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
植 物 は 一 般 的 な 成 長 生 育 期 間 及 び 病 原 菌 の 侵 入 や 外 部 の ス . ト レ ス に よ り 抗 菌 2次 代 謝 産 物 を 生 産 す る 事 が 知 ら れ て い る 。 抗 菌 物 質 に よ る 植 物の病害抵抗性は、植物が生存するのに必要な条件のーっである.
本 研 究 で は 、 土 壌 病 原 菌 に 対 す る 植 物 の 抵 抗 性 メ カ ニ ズ ム を 明 ら か にするため、植物の抗菌活性と抗菌物質について調べた。
1)台木植物の抗菌物質
Solanum sisymbrifoliumは 土 壌 病 原 菌 に 対 し 強 カ な 抵 抗 性 を 有 す る ナ ス 近 緑 野 生 種 で ナ ス 台 木 と し て も 利 用 さ れ る 。S. sisymbrifカ 釘mの 根 の 抽 出 物 の 抗 菌 活 性 を 調 べ た と こ ろ 、 酢 酸 エ チ ル 可 溶 画 分 が 強 い 活 性 を 示 し た こ と か ら 、 酢 酸 エ チ ル 可 溶 の 抗 菌 物 質 の 検 索 を 行 っ た 。 根 の 抽 出 物 か ら抗 菌物質 として4つのSteroid、StigmaSterol(1),SpinaSterol(2),SitOSterol
(3いcarpesterol(4)を単離、同定した。
トマトH1350(工.Pざcロ昆門m所Mz〃X工.カfrざ甜f甜朋Var.呂ぬろrロf釘册)は土壌病 原 菌 に 対 し 強 い 抵 抗 性 を 有 す る ト マ ト 台 木 で あ る 。 根 の 70% エ タ ノ ー ル 抽出物の酢酸エチルの画分中から抗菌物質として、3種の脂肪酸、
1inoleiCaCid(5),butyllaurate(6),methyldOCOSanoate(7)と、アノレカロイド tomatidine(8)を単離、同定した。
2)トウモロコシの抗菌活性
畑 作 の 土 壌 病 原 菌 量 抑 制 の 法 の ー っ と し て 、 他 の 植 物 を 栽 培 し 土 壌 病 害 の 発 生 と 被 害 を 軽 減 す る 輪 作 が あ る 。 ト ウ モ ロ コ シ(Zea mays)は 前 作 の 土 壌 病 原 菌 、 Fusarium oxysporum等 を 抑 制 す る 効 果 が あ る 。 土 壌 病 原 菌 に 対 す る ト ウ モ ロ コ シ の 抗 菌 性 試 験 を 行 っ た 。 ま ず 、 試 験 管 に バ ー ミ キ ュ ラ イ ト を 入 れ 滅 菌 後 、 そ の 中 に ト ウ モ ロ コ シ の 種 子 を 入 れ 、2週 間25゜Cで 栽 培 し た 。2週 間 後 、F. oxysporumの 胞 子 を 接 種 し た 。 ト ウ モ ロ コ シ が 生 育 し て い る 試 験 管 に 接 種 し た 病 原 菌 の 胞 子 の 増 加 は 見 ら れ な か っ た が 、 ト ウ モ ロ コ シ の 生 育 し て い な い コ ン ト ロ ー ル で は 、 時 間 と 共 に 胞 子 数 増 加 が み ら れ た 。 こ の こ と か ら 根 の 分 泌 物 あ る い は 根 に 含 ま れ て い る 抗 菌 物 質 に よ り 菌 の 生 育が 抑 制さ れ た と考 え ら れる 。 根の抽出物カゝら6‑methoxybenzoxazolinone (り);6,7‑dimethoxybenzoxa zolinone (10)と フ ェ ノ ー ル 化 合 物11〜14が 、 根 の 分 泌 物 か ら は 、(6R)‑
7,8‑dihydro‑3‑oxo‑a‑ionone (15)と(6R,9R)‑7,8‑dihydro‑3‑oxo‑a‑ionol (16)が、
単離され構造決定された。
6‑7‑dimethoxybenzoxazolinone (10) (6R,9R>7,8‑dihydro‑3‑oxo. a‑ionol (16) 3) Theobroxide処理による抗菌物質の生成
Theobroxideは り ポ キ シ ゲ ナ ― ゼ を 活 性 化 し ジャ ス モ ン酸 を 、生 成 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 こ の こ と か ら 、theobroxide投 与 に よル フ ァ イ ト ア レ キ シ ン を 生 成 し 病 害 抵 抗 性 を 誘 導 す る こ と が 考 え ら れ る 。 S,aみutiloides葉 にtheobroxideを 散布 し た とこ ろ 、2種の抗菌 物質の生 成 が 認 め ら れ 、 そ の 推 定 構 造17、18を 明 ら か に し た 。 外 部 要 因 に よ り 生 成 さ れ る 抗 菌 物 質 が 土 壌 病 原 菌 に 対 す る 抵 抗 性 を 増 加 す る 可 能 性 を 示 し た。
17. RH 18. R=H
学位論文審査の要旨 主査 教授 吉原照彦 副査 教授 田原哲士 副査 助教授 松浦英幸
学位論 文題名
CHEINtIICAL STUDIES ON DEFENCE OF PLANTS AGAINST SOIL‑BORNE DISEASES
(土壌 病害に対する 植物の防御に関する化学的研究)
本論文は142 頁からなる英文論文であり、図22 、表6 、スキーム 28 、チャー ト 25 を 含む 。 別に 、` 参 考論 文 1 編 (印 刷中 )が添えられ ている。
植 物 は 一 般 的 な 生 長 生 育 期 間 及 び 病 原 菌 の 侵 入 や 外 部 の ス ト レ ス に よ り 抗 菌 2次 代 謝 産 物 を 生 産 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 抗 菌 物 質 に よ る 植 物 の 病 害 抵 抗 性 は 、 植 物 が 生 存 す る の に 必 要 な 条 件 の ー っ で あ る 。 本 研 究 で は 、 土 壌 病 原 菌 に 対 す る 植 物 の 抵 抗 性 メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す る た め 、 植 物 の 抗 菌 活 性 と 抗 菌 物質に っいて調べた。
1)台木植物の抗菌物質
Solanum sisymbrifoliumは 土 壌 病 原 菌 に 対 し 強 カ な 抵 抗 性 を 有 す る ナ ス 近 緑 野 生 種 で ナ ス 台 木 と し て も 利 用 さ れ る 。 根 の 抽 出 物 か ら 抗 菌 物 質 と し て4種 の ス テ ロイ ドstigmasterol,spinasterol,sitosterol,carpesterolを単離、同定した。
トマ トH1350 (1. esculentum朋研 ×工 .hirsutum var. glabratum)は土壌病原菌に 対 し 強 い 抵 抗 性 を 有 す る ト マ ト 台 木 で あ る 。 根 の70% エ タ ノ ー ル 抽 出 物 か ら 抗 菌物質 として、3種の脂肪酸linoleic acid,butyl・laurate,methyl docosanoateと、ア ルカロ イドtomatidineを単離、同定した。
2)トウモロコシの抗菌活性
畑 作 の 土 壌 病 原 菌 量 抑 制 法 の ー っ と し て 、 他 の 植 物 を 栽 培 し 土 壌 病 害 の 発 生 と 被 害 を 軽 減 す る 輪 作 が あ る 。 ト ウ モ ロ コ シ(Zea mays)は 前 作 の 土 壌 病 原 菌 で あるFusarium oxysporum等を抑制する効果がある。
土 壌 病 原 菌 に 対 す る ト ウ モ ロ コ シ の 抗 菌 性 試 験 を 行 っ た 。 ま ず 、 試 験 管 に バ ー ミ キ ュ ラ イ ト を 入 れ 滅 菌 後 、 そ の 中 に ト ウ モ ロ コ シ の 種 子 を 入 れ 、2週 間25℃ で 栽 培 し た 。2週 間 後 、F oxysporumの 胞 子 を 接 種 し た 。 ト ウ モ ロ コ シ が 生 育 し
て いる 試験管 に接 種し た病 原菌 の胞 子の 増加 は見 られ なか ったが、トウモロコ シ の生 育して いな いコ ント ロー ルで は、 時間 と共 に胞 子数 増加がみられた。こ の こと から根 の分 泌物 ある いは 根に 含ま れて いる 抗菌 物質 により菌の生育が抑 制されたと考えられる。
根の抽出物から6‑methoxybenzoxazolinone,6,7‑dimethoxybenzoxazolinoneと4 種フェノール化合物が、根の分泌物からは、(6R)‑7,8‑dihydro‑3 ‑oxo‑a‑10noneと (6R,9R)‑7,8‑dihydro‑3‑oxo‑a‑ionolが 単 離 、 構 造 決 定 さ れ た 。 3)theobroxide処理による抗菌物質の生成
theobroxideは りポ キシ ゲナ ーゼを活性化しジャスモン酸を生成することが明 ら かに なって いる 。こ のこ とか ら、theobroxide投与によルファイトアレキシン を生成し病害抵抗性を誘導することが考えられる。
S abritiloides葉にtheobroxideを散布したところ、2種の抗菌物質の生成が認 め られ 、それ らは ソラ ベチ ボン 類似 化合 物で ある こと を明 らかにした。外部要 因 によ り生成 され る抗 菌物 質が 土壌 病原 菌に 対す る抵 抗性 を増加する可能性を 示した。
本 研究 は台 木植 物お よび 輪作 体系に おけ るト ウモ ロコシの土壌病害抵抗性を 化学 的に 論じ 、セ オブ ロキ シド による 抗菌 物質 の生 成について研究したもので ある 。こ れら の成 果は 土壌 病害 抑制法 に応 用さ れる と思われる。よって審査員 一同 は朴 善が 博士 (農 学) の学 位を受 ける のに 十分 な資格を有するものと認め た。