博 士 ( 農 学 ) 小 野 寺 秀 一
学 位 論 文 題 名
Pe7z あ illi2t17l 属糸状菌の生産する exo‑inulinase お よび endo‑inulinase
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
inulinaseはフ ル ク トー ス の重 合体 で ある イヌ リ ンに 作用 し てフ ルク ト ース また は イヌ ロオ1Jゴ糖 を 生 成 す る 加 水 分 解 酵 素 で あ る 。 微 生 物 お よ び 植 物 起 源 の多 くの 酵 素カi報告 され て きた が、 詳 細な 基 質 特 異 陸 や 生 成 し た 糖 の 還 元 基 の ア ノ マ ー 型 に つ い て 十 分 に 解 明 さ れ て い な か っ た 。 ま た 、enb 缸dぬ 蛤 を コ ー ド す る 遺 伝 子 を 取 得 し た 例 は 報 告 さ れ て い な か っ た 。 本 研 究 は 、bdi11賦 の反 応 機構 の 解 析 と 機 お 巨 性 オ リ ゴ 糖 の 生 産 を 目 的 に 、2種 の 琵r庇 蠍 聞 属 糸 状 菌 の 生 産 す る 餓mbdぬ 覽 お よ び 弧b洫IIi― を 精 製 し 、 こ れ ま で 未 解 明 で あ っ た 酵 素 化 学 的 特 徴 を 詳 細 に 検 討 し た 。 さ ら に 、 イ ヌ ロ オ リ ゴ 糖 製 造 に 有 用 と 考 え ら れ る 弧b柵Ilina艶 を コ ー ド す る のNAお よ び 遺 伝子 を クロ ーン 化 し、
塩 基 配 列 お よ び 遺 伝 子 の 構 造 を 解 析 し た 。
1.P. trze:binslai由来exo‑inulinaseの 精 製と 酵素 化 〓謝 勺解 析
P tzebinskri由来exo‑inulinaseの 精 製法 を確 立 して その 譖 |生質 を明らかにした。 分子量はSDS‑PAGE お よ び ゲ ル ろ 過 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で87,000と 推 定 さ れ、 至 適pHは52、Ag十 イオ ン 、Hg2+イ オ ンお よ びPCMBに よ っ て 強 く 阻 害 さ れ た 。 本 酵 素 は イ ヌ リ ン をexo型 に 加 水 分 解 し て フ ル ク ト ー ス を 生 成 し 単 糖 類 に ま で100% 加 水 分 解 す る こ と を 還 元 睹 量 お よ びTLCで 確 認 し た 。 ま た 、 イ ヌ リ ン か ら 生 成 し た フ ル ク ト ー ス の ア ノ マ ー 型 を13CNMR法 を 用 い て 解 析 し 、 生 成 し た フ ル ク ト ー ス の ア ノ マ ー 型 はp型 を 保 持 し て お り 、p−フ ルク ト ピラ ノー ス およ びゼ ‐ フル クト フ ラノ ース は ロ― フル ク トフ ラノ ース の 変旋 光の 結 果生 じる こ とが 初め て 明ら かに な った 。
さ ら に 、 イ ヌ ル ン 、 シ ョ 糖 、 イ ヌ ロ オ リ ゴ 糖 、 フ ル ク ト オ リ ゴ 糖 お よ び ネ オ ケ ス ト ー ス に 関 す る 水 解 の 速 度 パ ラ メ ー タ を 算 出 し 、 詳 細 に 基 質 特 異 性 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、イ ヌ リン とシ ョ 糖の 分 解 速 度 比 カ 湛 質 濃 度 に よ っ て 大 き く 変 化 し 、 高 基 質 濃 度下 では シ ョ糖 はイ ヌ リン とほ ぼ1司 じ 逓唆 (106% ) で 加 水 分 解 さ れ る も の の 、 低 基 質 濃 度 下 で は イ ヌ リ ン の 約0.% の 速 度 で 加 水 分 解 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 三 糖 〜 五 糖 の イ ヌ ロ オ リ ゴ 糖 に 比 ベ 二 糖 ( イ ヌ ロ ビ オー ス )は 加水 分 解さ れ に く い こ と お よ び シ ョ 糖 の 水 解 は 特 殊 で あ り 他 の オ リ ゴ 糖 と は 異 な る こ と が明 ら かと なっ た 。そ し て 、 本 酵 素 の サ ブ サ イ ト 親 和 カ お よ び 真 の 加 水 分 解 速 度 定 数 を 求 め た と こ ろ、 サ ブサ イト 理 論が ーbnめ 撹 に も 適 用 で き る こ と が 初 め て 明 ら か と な り 、 そ れ に よ り 基 質 特 異 性 を 矛 盾 な く 説 明 で き た 。 一 方 、 こ れ ま で 報 告 の な か っ た 触 媒 反 応 の 中 心 残 基 と な る 必 須 活 性 解 離 基 に つ い て 、pK値 、
△ 堪 値 お よ び20% メ タ ノ ー ル 添 加 反 応 系 に お け るpK値 の 変 動 か ら 、2つ の カ ル ボ キ シ ル 基 と 推 定 され 、従 来 、報 告さ れ てい たSH酵 素で ある と の説 が修 正 され た。
2. P.pnpurogaunn由来endo‑inulinaseの精製と酵素fビ詞的解析 ―164 ‑
P
・ pLnpumgenum 由来en &汕11111in 織の精製法を確立してその諸性質を明らかにした。分子量はS 匸S
P((迅およびゲルろ過ク口マトグラフィーのいずれの方法でも54 ∞、中性糖含量(l11 %)、およ びアミノ糖含量(0 .7 %)、さらにめ′(斑da 艶処理による糖鎖除去試験から、単糖類換算で約6 残基 のア スパラ ギン結 合型糖 鎖(分 子量約
1,000 )を 持つ糖 夕ンパ ク質で あるこ とを明らかにした。
至 適 叫 は
511で あ り 、
Cや イ オ ン 、 ト ザ イ オ ン お よ び
PCMBに よ っ て 強 く 阻 害 さ れ た 。
本 酵素のイ ヌリン に対す る分解 限度は 、フル クトー ス換算 で分解率 約加% であった。一方、シ ヨ糖 を用い た場合 では、 反応粥 時間後 での分 解率は0 .81 %であった。また、レバンおよびラフィ ノー スには 全く作 用しな かった。イヌリンおよびフルクトオリゴ糖に対する作用を経時的に調ベ、
イヌ リンか らは三 糖〜五 糖のイヌロオリゴ糖が蓄積し、四糖以下のオリゴ糖にはほとんど作用しな いことがわかった。また、1 ℃・NM 眼法を用いてイヌリンおよび(iF 。から生成したオリゴ糖の還元末 端フ ルクト ースの アノマ ー型に ついて 解析し たところ 、ー疏d め職の場合と同様に、いずれの基質 を用 いても 生成オ リゴ糖 の還元末端フルクトースのアノマー型はロ型を保持していることがわかっ た。
イ ヌリンお よびフ ルクト オリゴ糖について詳細に基質特異性を検討したところ、各速度パラメー タは 基質重 合度に 依存し て大き く変化 するこ と、島値 はフルクトース残基の重合度7 以上でほば一 定と なるこ となど から、 飢凵nllina 鷺が少な くとも
7個のサブサイトを持っていると推定された。
讎Hnllin 撹につ いても 必須活 性解離基を調ベ、ex ひbll 襾撹と同様に2 つのカルボキシル基であるこ とが推定された。
3
.
P.plnpurogenwn由 来
endo‑inulinaseの を コ ー ― ド す る
cDNAお よ び 甑 子 の 単 離 と 解 析
P pnpnog帥珊由来endo‑inulinase の部分分解ペプチドのアミノ酸配列解析を行い、N 末端アミノ酸 配列を含む、全アミノ酸残基の約35 %を決定した。
enHnllim
鷺 をコー ドする
4個のめ
NAクロー ンの単 離に初 めて成 功した 。その 塩基配列 を解析 し たと ころ、
25アミノ 酸残基 のシグ ナルペ プチド と、490 アミノ酸残基の成熟夕ンパク質をコードし ていることが明らかにされた。前駆体夕ンノくク質および成熟夕ンノヾク質の分子量はそれぞれ55520 およ び52906 と 計算され 、成熟 夕ンパ クの分 子量から算出された糖鎖除去後の分子量53 .∞とよく 一致した。
推定 アミァ ′酸配 列の相厨闇災索の結果、B .虹艦由来帥an 纖と汐%の相阿陸を示した。また、S 田 噺 蛾℃ 由 来
mm撹 お よ び
K脚
x鯒
6由 来 ー硫
llぬ 鷺に 対して それぞ れ29 %お よび勿 %の相 同性を 示した。また、め竹tase 遺伝子において触媒残基を含むとされているロ面政面(ぬモチーフ領域は完 全 に 保存 さ れ て いた 。 さ ら に、 も う ー つの 触 媒 残基 と考え られる
BCP配列は 本酵素 におぃ ても
B巾 と し て ほば 完 全 に 保存 さ れ て おり
au43と
aぬ
3が 触鸚晰 凋に直 接関与 するア ミノ酸 残基であ ると 考えら れた。 この結 果は、
2つのカ ルボキシ ル基カ泌須活性解離基であるとする反応速度論実 験 の 結果 に 一 致 した 。 さ ら に、 高 重 合 度フ ル ク タ ンに 作 用 す る酵 素 に の み存在 すると される
& 弧 ポ配 列 も
100%保 存 され ていた 。総合 的に判 断して 、ファ ミリー32 の蜘lhy 血
Dl雛では 、触 媒 作 用を 持 つ
N末 端 側 部分 のDNA セグ メント が共通 の祖先 から進 化した とする説 を支持 する結 果 を得られた。
また 、
m崩
nllぬ 鷺 をコ ード するゲノ ミック 聊岨ク ローン の単離 に初め て成功 した。 このendm 硫
dぬ
se遺 伝 子 ( 刪UA 冫 の 塩基 配 列 を 解析 し た と ころ 、
WUA遺 伝子 は
P.
p甲
m卿m のゲ ノム上 に シ ン グル コ ピ ー で存 在 す ること 、WUA 遺伝 子中に 介在配 列は認 められな ぃこと 、およ びTATAbox やターミネーターと推定される配歹lJ カ瀧認された。
―165 ‑
学位論文審査の要旨
学位論文題名
PenicilliZt71/l 属糸状菌の生産する exo ―inulinase およびendo‑inulinase
本 論文 は、 .図
4銀表
15、引用文献203 を含み、6 章からなる総頁177 の和文論文であ る 。別 に参 考論 文29 編が 添え られて いる 。
inulinase
はフルクトースの重合体であるイヌリンに作用してフルクトースまたはイヌ 口オリゴ糖を生成する加水分解酵素である。微生物および植物起源の多くの酵素が報告さ れてきたが、詳細な基質特異性や生成した糖の還元基のアノマー型について十分に解明さ れていなかった。また、endo‑inulinase をコードする遺伝子を取得した例は報告されて いなかった。本研究は、inulinase の反応機構の解析と機能性オリゴ糖の生産を目的に、2 種の
Penf( 拙
L伽属糸状菌の生産する瞬dn .uHnaSe およびend01n 出naSe を精製し、こ れまで未解明であった酵素化学的特徴を詳細に検討した。さらに、イヌ口オリゴ糖製造に 有用と考えられるend くHnu ]inase をコードするcDNA および遺伝子をクローン化し、塩 基配列および遺伝子の構造を解析した。
1
.P . ttzebinsku 由来exo‑inuhnase の精製と酵素化学的解析
P
. ttzebins 艫由来髑Hn1 】]inaSe の精製法を確立してその諸性質を明らかにした。分子 量 はSDS 一騨
GEお よび ゲル ろ過 ク口 マト グラ フイーで
87,OOO と推定され、至適pH は
5.2 、金属イオン等より強く阻害された。イヌリンをexo 型に加水分解してフルクトース を生成し単糖類にまで100 %加水分解することを確認した。生成するフルクトースのアノ マ一型を1 ℃小M ミ法を用いて解析し、アノマー保持型酵素であることを初めて明らかに した。
さらに、イヌリン、ショ糖、イヌ口オリゴ糖、フルクトオリゴ糖およびネオケストース に関する水解の速度バラヌータを算出し、詳細に基質特異性を検討した。そして、本酵素 のサブサイト親和カおよび真の加水分解速度定数を求めたところ、サブサイト理論が 髑コlinu ]inaSe にも適用できることが初めて明らかとなり、それにより基質特異性を矛盾 なく説明できた。一方、これまで報告のなかった触媒反応の中心残基となる必須活性解離 基について、p 延値、△He 値および20 %メタノール添加反応系におけるp 疋値の変動か
―166−
和 夫
篤
博 淳
井 村
田
松 木
横
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
ら 、
2つ の カ ル ポ キ シ ル 基 と 推 定 され 、従 来、 報告 され てい たSH 酵素 であ ると の説 が修 正 さ れ た 。
2
.
P.
purpurogenum由 来
en]
O−
in1] ]
inaseの 精 製 と 酵 素 化 学 的 解 析
P.
p啣
L此魯 印L 伽由 来餌 ふ
Hn1血旧
seの 精製 法を 確立 し てそ の諸 性質 を明 らか にした。
分 子 量 は
SDSl伜
GEお よ び ゲ ル ろ 過 ク 口 マ ト グ ラ フイ ーの いず れの 方法 でも
54,
000、 中 性糖 含量 (111 %) 、お よび アミ ノ糖 含量 (0 .
7% )、 さらにgb ′ぬidaSe 処理による糖鎖 除 去 試 験 か ら 、 単 糖 類 換 算 で 約
6残 基 の ア ス バ ラギ ン結 合型 糖鎖 (分 子量 約
1,
000) を 持 つ 糖 夕 ン パ ク 質 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 至 適
pHは
5.
1で っ た 。
本 酵 素 の イ ヌ リ ン に対 する 分解 限度 は約
40% であ った 。一 方、 レバ ンお よ びラ フィ ノ ース には 全く 作用 しな かっ た 。イ ヌリ ンお よび フル クトオリゴ糖に対 する作用を経時的に 調ベ 、イ ヌリ ンか らは 三糖 〜 五糖 のイ ヌロ オリ ゴ糖 が蓄積し、四糖以 下のオリゴ糖にはほ と ん ど 作 用 し な い こ とが わか った 。ま た、
1℃ 小
Mミ 法を 用い て遊 離す る還 元 末端 フル ク ト ー ス の ア ノ マ ー 型 に つ い て 解 析 し た と こ ろ 、 母 型 を 保 持 し て い る こ と が わか った 。
イ ヌリ ンお よび フル クト オ ルゴ 糖に つい て詳 細に 基質特異性を検討 したところ、各速度 パ ラ メ ー タ は 基 質 重 合度 に依 存し て大 きく 変化 する こと 、島 値は フル クト ー ス残 基の 重 合 度
7以 上 で ほ ぼ 一 定 と な る こ と な ど か ら 、
endoイ
nu]
inaseが少 なく とも
7個の サブ サ イト を持 って いる と推 定さ れ た。
en〔
icrim] ]inaSe についても必須 活性解離基を調べ、
eXD
―
in1]
HnaSeと 同 様 に
2つ の カ ル ボ キ シ ル 基 で あ る こ と が 推 定 さ れ た 。
3
.
P.
pLupurQgenum由 来
eni一
n山
naSeの を コ ー ド す る
cDNAお よ び 遺 伝 子 の 単 離 と 解析
P
・p 乙口p ぼ匸櫓琶num 由来en (io イnuHnaSe の部分分解ベプチドのアミノ酸配列解析を行い、
N
末端アミノ 酸配列を含む、全アミノ酸残基の約35 %を決定した。
end
く
Hm血
1aSeを コ ー ド す る
4個 の
cDNAク 口 ー ン の 単 離 に 初 め て 成 功 し た 。 そ の 塩 基 配 列 を 解 析 し た と こ ろ 、
25ア ミ ノ 酸 残 基 の シ グナ ルベ プチ ドと 、490 アミ ノ酸 残基 の 成熟 夕ン パク 質を コー ド して いる こと が明 らか にさ れた。前駆体夕 ンバク質および成熟夕 ンバク質の分 子量はそれぞれ55 ,520 およ び52 ,906 と計算され、成熟 夕ンノヾクの分子量か ら算出された糖鎖除去後の分子量53 ,000 とよく一致した。
推 定ア ミノ 酸配 列の 相 同´陸検索の結 果、in ヽ讎ase 遺伝子におい て触媒残基を含むとさ れて いる
B―向 ]c にsidase モ チー フ領 域は 完全 に保 存されていた。 総合的に判断して、フ ァ ミ リ ー
32の 曲 】 ば
W] 恥 ′
dr01aSeで は 、 触 媒 作 用 を 持 つ
N末 端 側 部 分 の
DNAセ グメ ン 卜が共通の祖先から進化したとする説を 支持する結果を得られた。
また、en (io −in1 ]]inase をコードするゲノミックDNA ク口ーンの単離に初めて成功した。
こ の
endo―
in.
u]
inase遺 伝 子 ( 刷
U鋤 の 塩 基 配列 を解 析し たと ころ 、
WUA遺伝 子は
P・
puや
u瑠
em伽 の ゲ ノ ム 上 に シ ン グ ル コ ピ ー で 存 在 す る こ と 、 刷
UA遺 伝 子 中 に 介 在 配 列 は 認 め ら れ な い こ と、 およ びm 虹、
Ak)
xやタ ーミ ネー ター と推 定さ れ る配 列が 確認 さ れた。
以 上 の よ う に 本 研 究 は 、
exo型 お よ び
endo型
inulinaseの 各 種 酵 素学 的特 性を 明ら か
にし 、ま た、 後者 に関 して は初 めて 遺伝 子配 列を明 らかにした。これらの成果はフラクト
ース から なる 多糖 やオ リゴ 糖の 加水 分解 反応 のモデ ルを提示するのみならず、分解物の工
―167 ―
業的利用への道を拓くものであり、学術的にもかつ産業的にも大いに価値あるものと判断 される。