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目次 ゴム取引の基礎知識... I 第 1 章ゴム取引のポイント... 1 第 1 節天然ゴムの世界需給... 1 第 3 節季節的変動要因 第 5 節為替動向 第 6 節ゴムと石油の関係 第 7 節地政学的リスク 第 7 節地政学的リスク... 27

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ゴム取引の基礎知識

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目次 ゴム取引の基礎知識 ... I 第 1 章 ゴム取引のポイント ... 1 第 1 節 天然ゴムの世界需給 ... 1 第 3 節 季節的変動要因 ... 20 第 5 節 為替動向... 24 第 6 節 ゴムと石油の関係 ... 26 第 7 節 地政学的リスク ... 27 第 7 節 地政学的リスク ... 27 第 8 節 市場介入... 28 第 2 章 新ゴムの需給及び需給データ ... 29 第 1 節 世界の新ゴム需給 ... 29 第 2 節 日本の新ゴム需給 ... 34 第 3 章 ゴムの商品知識 ... 42 第 1 節 ゴムの商品特性 ... 42 第 2 節 天然ゴムの種類と生産方法 ... 44 第 3 節 合成ゴムの種類と製造工程 ... 48 第 4 章 ゴムの商流と物流 ... 53 第 1 節 天然ゴムの生産地域 ... 53 第 2 節 天然ゴム産地の物流経路 ... 55 第 3 節 天然ゴムの国内流通 ... 56 第 4 節 天然ゴムの商流 ... 57 第 5 章 世界のゴム市場と商品先物取引所 ... 58 第 1 節 国内市場... 59 第 2 節 海外市場... 62 第 6 章 取引戦略 ... 66 第 1 節 リスク・ヘッジ ... 66 第 2 節 買いヘッジと売りヘッジ ... 66 第 3 節 クロスヘッジ ... 69

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第 4 節 ロール・オーバー(ローリング・ヘッジ/スイッチ取引) ... 69 第 5 節 裁定取引... 72 第 6 節 リスク管理と周辺制度 ... 75 第 7 節 モダン・ポートフォリオ理論 ... 81 第 8 節 効率的市場仮説 ... 86 第 7 章 参考資料 ... 87 第 1 節 用語解説... 87 第 2 節 統計資料と情報入手先 ... 93

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変更履歴

No 版数 日付 備考(主な変更箇所) 1 1.0 2017/11/22 初版 2 1.1 2018/4/2 変更内容: 第 1 章第 3 節 第 1 項1.タイのウィンタリング等(P20) 記載内容を改定し、グラフを追加。 第 7 章第 1 節 用語解説 スモールホールディング(small holding) (P88)ゴム農園のうち面積が 40 ヘクタールエーカー未満 の中小規模農園をいう。タイでは、このスモールホールディン グの占める割合が全体の 90 約 95%と高く、そのほとんど (全体の 90%)は 8 ヘクタール未満(平均 4 ヘクター ル)の小規模農園といわれているい。インドネシアでは約 80%、マレーシアは 80 約 75%がスモールホールディングと いわれている台。なおタイの場合、平均的なスモールホール ディングの保有ゴム栽培面積は 2.4ha といわれている。・・・ 3 1.2 2018/4/5 変更内容: 第 5 章第 2 節 第 2 項タイ市場(P62)の記載内容の 内、前半部分を改定。 第 7 章第 2 節 統計資料と情報入手先(P99-100)

・タイゴム研究所The Rubber Authority of Thailand

(RAOT)

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第 1 章 ゴム取引のポイント

天然ゴムは、国際商品であり、中でも東京商品取引所のゴム市場の価格は、世界の指標価格として注目さ れており、世界の景気動向や需給動向等の様々な要因により変動している。 ゴム価格に影響を与える変動要因などゴム取引を行う上でのポイントについて本章で解説する。

第 1 節 天然ゴムの世界需給

基本的に商品の価格変動要因で重要な要因として挙げられるのは需給である。

東京商品取引所で上場されているゴムは、天然ゴムの中の「RSS(Ribbed Smoked Sheet)」であり、 天然ゴムの需給がどのような要因により変化するかを予測することが重要である。 世界の天然ゴムの需給規模は、1983 年までは 400 万トンにも満たない水準であったが、1988 年に 500 万トンを突破すると、その後も順調に拡大傾向をたどり、2000 年には 700 万トン台に、2003 年には約 2 倍の 800 万トンに達し、2016 年には 1,240 万トンと約 3 倍の規模に拡大している。 また、1954 年以降の 50 年間を見ると、天然ゴムの生産量は平均で年率 3.0%の割合で増加しており、消 費量の増加率 3.2%と比較すると、生産量と消費量の伸びの間には大きな乖離は見られない。 しかし在庫率は、この 20 年間では 1999 年の 38%が最高で、それをピークに 2000 年以降は下降に転じて いる。2000 年、2001 年は適正水準といわれる在庫率 30%の水準をほぼ維持したものの、2002 年以降は 30%を下回っており、この在庫の変化が天然ゴム相場を変動させる要因の一つにもなっている。2007 年後半 からの世界的な景気減速に伴い、消費量は 2008 年、2009 年は前年比減となったが、2010 年からは増加 に転じている。 一方、2010 年、2011 年は急激な需要の回復に生産が追いつかず、在庫率は 14%、16%と低い水準に とどまったが、2012 年以降在庫率は上昇に転じ、20%台で推移しており、2016 年は 26%となった。

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2 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 在庫 (1 ,0 0 0トン ) 生産 ・ 消費 (1 ,0 00 トン )

世界の天然ゴム需給

天然生産 天然消費 天然在庫 出所:IRSG(単位1,000トン) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 在庫率

在庫率の推移(天然ゴム)

出所:IRSG

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3 1.世界の天然ゴム需要 世界の天然ゴム消費量は 2001 年から拡大を続け、2007 年及び 2008 年は、1,000 万トンを超えたが、 2009 年は 928.9 万トンと大幅減となり、2010 年にはその反動で 1,075.9 万トンと大幅増となった。その後 は 2011 年の 1,103.4 万トンから 2016 年の 1,260.0 万トンと増加傾向となっている。2016 年の天然ゴム の消費量およびシェアの上位 5 ヵ国を見てみると、中国(486.3 万トン、38.6%)、インド(103.4 万トン、 8.2%)、米国(93.2 万トン、7.4%)、日本(67.7 万トン、5.4%)、タイ(65.0 万トン、5.2%)の順 となっており、近年の天然ゴム需要拡大の牽引役は、やはり中国である。 中国の天然ゴムの消費量と輸入量は、急速な経済成長を背景に右肩上がりで伸長し、その伸び率は群を 抜いている。この 20 年間における天然ゴム消費の増加分は 300 万トンを超え、その増加分は米国の年間消 費量の 3 倍に達する。世界最大の消費国は 2000 年までは米国であったが、2001 年に逆転して中国となっ た。その後、中国は毎年増加し、2010 年には米国の 5 倍以上に膨らんでいる。また、中国の天然ゴム輸入量 は、1999 年まで 40 万トン前後であったが、2016 年には 455.9 万トンにまで増大している。 (単位:万トン)

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4 2.天然ゴム主たる需要 天然ゴムは、様々な工業製品に使用されているが、その中で大きな比重を占めるのは、タイヤ用の需要であ る。 天然ゴムの需要の推移をみると、2008 年のリーマンショックに端を発した世界的金融危機の影響で、米国や 日本の先進国の需要低下に伴って減少したが、その後は、中国やインドをはじめとした新興国の需要増加を受 けて堅調な推移を見せている。 同様に世界の自動車販売台数の推移をみると、2008 年のリーマンショックに端を発した世界的金融危機の 影響で先進国の自動車販売台数が、2008 年 2009 年と連続して落ち込んだが、その後は、新興国の販売 台数の増加を受けて同様の推移となっている。 その中でも中国は、WTO に加盟した 2001 年頃から所得水準の向上、道路インフラの整備や自動車に関 する関税引き下げによりモータリゼーションが急速に進み、2004 年に 510 万台(中国自動車工業協会の発 表)だった自動車販売台数は、輸入数量の制限が撤廃された 2005 年以降は、急速な経済成長に支えられ て 2009 年には約 2.6 倍の 1,360 万台に達し、2016 年には 2,803 万台へとさらなる拡大を見せた。 その間、中国の天然ゴムの消費量は、1990 年代前半には年間 80 万トン前後であったものが、2000 年に 115 万トン、2004 年に 200 万トンを超え、2016 年には 486 万トンに達している。 中国の需要の増大が、 世界需要の拡大の要因となっており、その動向は無視できない。 さらに、新興国のうち 12 億人の人口を有するインドも自動車販売台数は世界第 5 位まで成長し、天然ゴム の消費量も世界第 2 位の 103 万トンに拡大してきており、今後の経済発展を含めて目が離せない存在となっ ている。 なお、ゴムの木の樹液である「ラテックス」からは、手袋、医療品などの生活用品が作られている。近年、鳥イン フルエンザや新型インフルエンザなどの健康問題によってラテックスの特需が発生し、高値を記録したが、このよう なラテックス価格の変動が天然ゴム価格全体に強い影響を与えるとともに、RSS 価格の変動要因になることもあ る。

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5 3.世界の天然ゴム供給 2016 年の世界の天然ゴム生産量は、1,240.1 万トンとなった。旺盛な需要とゴム価格の上昇に支えられ、 2000 年以降、生産各国では増産傾向が顕著となっており、生産が拡大している。 現在の天然ゴムの生産国を生産量の多い順に並べるとタイ、インドネシア、ベトナム、中国の順となっている。 1980 年代まではマレーシアが世界最大の生産国であったが、タイが国家主導で天然ゴムの生産に力を注いだ ことにより、1980 年代後半から劇的な増産が行われ、1991 年から 1992 年にかけての時期を境に、マレーシ アはタイとインドネシアに抜かれ一気に第 3 位にまで後退した。中でも大きくシェアを伸ばしたのがタイで、1970 年 代までは 10%以下だったシェアが、現在では 30%を超えるまで拡大している。2016 年の天然ゴムの生産シェ アは、タイ 36.0%、インドネシア 25.9%、ベトナム 8.3%、中国 6.2%となっており、これら上位 4 カ国合計で 76.4%を占めている。 タイでは、天然ゴム産業を国の基幹産業として位置づけ、天然ゴムは重要な輸出品目として政府が増産を 奨励している。特に 1990 年頃からマレーシアで開発された高収量クローンの導入・植え替えによって、単位面 積当たりの収量が飛躍的に増大し、それが増産の大きな要因となっている。また、ゴム樹栽培面積の拡張や内 需拡大にも積極的に取り組んでいる。 インドネシアは、ゴム樹栽培面積がタイの 1.2 倍と広大であるものの、単位面積当たりの生産性が低く、生産 量はタイの 72%程度に止まっている。近年は需要の伸びとゴム価格の上昇に支えられ、2002 年以降、順調に 生産を増加させてきた。リーマンショックによる世界的な金融不況の影響で 2008 年から 2009 年にかけて生産 量が減少したものの、近年は再び生産量は回復傾向にある。現在の生産性の低さを考慮すると、潜在的な生 産能力は最も高い国と考えることもできる。 マレーシアではマハティール政権が成立した 1981 年以降、工業化政策(ルック・イースト・ポリシー)がとられ、 これに伴い、脱一次産品化が進んだ。それでも 1980 年代は年間 150 万トン前後の天然ゴムを生産していた が、1990 年代以降はゴム離れが顕著となり、2001 年の生産量はピーク時 1988 年の約半分の 88.2 万ト ンまで減少した。しかし最近、政策転換がはかられ、ゴム樹栽培は国家目的に即した重要な役割を担うものとし て見直され始めてからは、天然ゴムの生産量も徐々に回復しつつあったが、2007 年以降は再び減少傾向に転 じた。2015 年は 72.2 万トン、2016 年は 67.4 万トンとなっている。 (単位:万トン)

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7 4.天然ゴムの供給国 天然ゴムは、ゴム樹から樹液を採取して生産されるため、ゴム樹の生育に適した赤道を中心とした南・北 15 度圏内の一年中高温多湿で強風の吹かない東南アジア、中南米、中部アフリカで生産が行われてきた。 近年では、ゴム樹の品種改良も進み中国やブラジルでも栽培されているが、天然ゴムの純輸出国である主要 生産国は、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの 4 カ国で世界の天然ゴム生産に占めるシェアは 75.6% (2016 年)と大部分を占め、一部の特定地域に生産が限られている特徴がある。 また、ゴム樹からの樹液の採取は、ゴム樹の植樹から数年後でなければ採取できず、急速な需要増加にも対 応し難いという側面を持っている。 したがって、東南アジアのそれも生産国での気象現象や景気動向等によって、この地域が生産減となると、大 幅な価格上昇を招くことがこれまでも度々あり、その生産に影響を与える要因について着目する必要がある。

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8 5.天然ゴムの主要生産国の RSS 及び TSR 輸出量 RSS 及び TSR の種類別の輸出統計については、天然ゴムの純輸出国である主要生産国のうちタイ、インド ネシア、マレーシアの3カ国について、IRSG から発表されており、天然ゴムの生産品種は、その国の生産構造に よって異なっている。 マレーシアは、ラテックス及び TSR の生産が多く、TSR の輸出量は約 61 万トン、インドネシアでは TSR が生 産の大半を占め、TSR の輸出量はこの主要生産国 3 国中、最も多い約 250 万トン、RSS の輸出量は、約 8 万トンと極めて少ない。 一方、タイはスモールホールディングの大半がアンスモークトシート(USS)を生産しているという事情もあり、 1990 年代は、RSS の輸出が多かったが、近年は、需要構造の変化に対応して、2016 年は TSR が 173 万 トン、RSS が 57 万トンとなり、TSR の輸出量は 2007 年と比較すると 2016 年には約 1.6 倍に拡大している。 (単位:千トン) (出所:IRSG)

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9 6. 日本及び中国の RSS 及び TSR 輸入量 (1)日本の RSS 輸入量 日本の需要家は、もともと RSS 指向が強く、1990 年代の日本は、天然ゴムの輸入の約 70%程度が RSS、 約 20%程度が TSR であり、RSS の輸入比率が高かった。 そのため、天然ゴムの輸入に関し、長年にわたってタイと日本は深い関係にある。 その後、2003 年には TSR の輸入量が RSS を逆転し、2010 年代に入ってからの RSS の輸入量は概ね 15 万トン前後で推移している。 2016 年の日本の RSS の輸入量は、12.7 万トンとなっており、国別の輸入量の内訳は、タイが 95%、イン ドネシアが 4.9%で、タイからの輸入が大半を占めている。 (2)日本の TSR 輸入量 1990 年代の日本では、RSS の輸入比率が高かったが、その後、産地からの供給体制の整備が進んだこと 及びタイヤメーカー等の技術的な改良が進んだことを受けて、日本の需要も RSS から TSR にシフトし、2003 年 には TSR が RSS の輸入量を逆転し、 2016 年の TSR の輸入量は、約 51 万トンとなっている。 日本の TSR の国別の輸入量は、インドネシアが最も多く約 41 万トン、タイが約 9 万トン、ベトナムが約 0.8 万トン、2013 年から輸入され始めたミャンマーが約 0.5 万トンとなっており、インドネシア産が TSR の輸入量の 約 80%を占めている。 天然ゴムの純輸出国で主要生産国でもあるマレーシアからの日本の TSR の輸入は、近年減少傾向にあり、 2016 年の輸入比率は、0.2%となっている。 (出所:財務省輸入通関統計) (単位:トン)

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(出所:財務省輸入通関統計) (単位:トン)

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11 (3)中国の RSS 及び TSR 輸入量 世界最大の天然ゴムの消費国たる中国の天然ゴムの種類別の輸入量は、2016 年では、RSS が約 20 万 トンである一方、TSR が約 162 万トンと RSS の約 8 倍となっている。 RSS の国別の輸入量は、タイが約 13 万トン、ミャンマーが約 3 万トン、ベトナムが約 2 万トンとタイが 65.7% を占めている。 また、TSR の国別の輸入量は、タイが約 95 万トン、マレーシアとインドネシアそれぞれが約 27 万トン、ベトナ ムが約 12 万トンとタイが 59%を占めている。 中国の国別の TSR と RSS の輸入量合計の比較でみるとタイが輸入量の約 60%、マレーシアとインドネシア それぞれが約 15%、ベトナムが約 8%となり、タイからの天然ゴム輸入の比率が極めて高い。 この輸入量をみると、2016 年タイの天然ゴム輸出量の約 47%を中国が輸入していることとなっているため、 中国の需給及び輸入動向がタイ産の天然ゴム価格に大きな影響を与えるものと考えられる。 (出所:海関信息網) (単位:トン)

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12 7.天然ゴムの需給に起因する過去の価格変動 (1)2001 年~2008 年 東京ゴム先限は 2001 年 11 月の安値 62.0 円を起点として上昇トレンドへ転換した。この上昇相場は、リ ーマンショックが起こった直前の 2008 年 6 月の 356.9 円に至るまで継続し、結果的に、約 4 年半で 5 倍を 超える大幅な上昇に及んだ。 この最大の原因は中国の台頭である。中国の急速な経済成長とともに、天然ゴム消費が顕著に拡大したこ とに伴い、世界の天然ゴム消費が急拡大するとともに天然ゴム需給も急激に引き締まったことが価格の上昇につ ながっている。IRSG(国際ゴム研究会)の統計によると、中国の天然ゴムの消費は、2000 年の 108 万トン から、2008 年には 294 万トンとなり約 3 倍の急拡大を記録している。 参考までに、中国の国内総生産(GDP)は、2000 年の 1198 兆ドルから 2008 年には 4522 兆ドルへと鋭 角に増大し、この 8 年間の増加率は約 3.8 倍である。このように中国の経済成長が伸びた分だけ、天然ゴムの 消費が伸び、構造的な供給不足を招き、急速な価格上昇をもたらした。 (2) 2008 年~2011 年 2008 年に米国でサブプライムローン問題が発生し、それが引き金となって未曾有の世界金融危機が起こった 結果、金融大手リーマンブラザーズが経営破綻し、「リーマンショック」が引き起こされた。これに伴い、多分野にわ たる金融資産価値の暴落が起こり、この危機を打開するため、米金融当局は 3 次に及ぶ量的緩和(QE)政 策を実施した。この金融危機が起こる直前まで、300 円を大きく上回り 356 円台まで上昇していた東京ゴム先 限は同年 12 月に一時 99.8 円まで下落した。わずか約半年で 3 分の 1 以下まで暴落するに至った。 ところが、この 100 円割れの値位置から、東京ゴム相場は再び上昇に転じ、2009 年、2010 年、2011 年 と 3 年連続で過去最大の上げ幅を記録する急騰となった。この結果、2011 年 2 月に過去最高値となる 535.7 円を示現している。 この背景には、リーマンショックで一時的に落ち込んだ中国の消費が再び増大したことが挙げられる。2008 年 から 2011 年に至るまでの中国の天然ゴム消費は 294 万トンから 362 万トン(123%増)となった。同時に、 2011 年時点の中国の消費規模は日本(2011 年の日本の天然ゴム消費 77 万トン)の 4.7 倍もの規模に 拡大した。 (3)2011 年~2016 年 2011 年に 535.7 円(先限)まで上昇した東京ゴム相場は、その後、約 5 年をかけて、2016 年 1 月に 高値から 4 分の 1 の水準となる 144.5 円まで下落した。 この原因の一つは、2011 年頃を境にして中国の経済成長の速度が鈍るとともに、少しずつ景気が減速した ことにより、中国の天然ゴムの消費の伸びも緩やかになったことである。 また、もう一つの大きな原因は、天然ゴム生産国の増産である。2001 年の安値から 8 倍以上にも高騰した ゴム価格を受けて、タイ、インドネシアの大手生産国は大増産に走り、供給の急増につながった。 特にタイでは、それまで生産地として適さないと考えられていたルーイ県を中心としたタイ北部にゴム園を開発し て増産体制を強化する動きを示した。 なお、IRSG(国際ゴム研究会)の統計では、2010 年に 39 万トンの供給不足となっていた状況から、 2011 年に 5 万トンの供給過剰に変化し、2012 年が 58.7 万トン、2013 年は 69.4 万トンと供給過剰が 拡大する状況となっている。

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13 (4)2016 年~2017 年 1 月 供給過剰の状態が続いたことに伴い、基本的な需給ファンダメンタルズが悪化した国際天然ゴム市況は軟調 な展開が続き、東京ゴム先限は 2016 年 1 月に 2009 年 3 月以来の安値となる 144.5 円まで下落した。 その後、200 円付近まで反発したものの、再び下げに転じて 7 月には 145 円台の安値をつけた。 2016 年秋から冬にかけて相場は大きく上昇する展開へと陽転した。 この動きの要因は、大手生産国であるタイ、インドネシア、マレーシア 3 カ国による輸出削減策が需給の不均 衡を是正する動きとなったことや、消費サイドの状況の変化だったと考えられる。 特に年初に景気減速懸念が広がっていた中国の景気が上向き、自動車の分野では前年を大きく上回って販 売、生産ともに過去最高に達した。 更に IMF レポートでも指摘されたが、米大統領選においてトランプ氏がヒラリー氏に勝利したことで、2017 年 以降の米国の景気が急回復するのではないかとの見方が広がったことも強材料となった。 結果的に、この動きは、2017 年 1 月のタイの南部を中心とした豪雨に伴う洪水により、ゴム農園が冠水して タッピング(採液作業)ができなくなり、幹線道路や鉄道の一部遮断により陸上輸送に影響を与え、輸出に支 障が生じた 1 月まで続き、東京ゴム市場の先限は、1 月 31 日に 2011 年 9 月以来の高値となる 366.7 円 まで上昇した。 (5)2017 年 2 月~2017 年 10 月 1 月末までの相場上昇後は、軟調な相場展開が 6 月上昇まで継続し、高値から最大 187.9 円下げ、下 落率は 51.2%に達した。 この下落の要因は、世界の天然ゴム消費の約 40%を占める中国の景気に対する減速懸念が広がったことが 大きい。中国製造業 PMI(購買担当者景気指数)などの景気指標が悪化するとともに、新車販売台数の 伸びが止まったことで新車装填用のタイヤ向け天然ゴム消費の落ち込みへの警戒があげられる。 また、産地の生産大手で構成された国際天然ゴム協議会(ITRC)が、前年に取り決めたような形で輸出 を削減する方向で話し合いの場を持ったものの、世界第 2 位の天然ゴム生産国であるインドネシアが反対にま わったことで物別れとなったこともあげられる。 なお、IRSG(国際ゴム研究会)は、2017 年上半期の世界の天然ゴム生産量を 605 万 3000 トンとし、前 年同期比 9.1%増となっていることを明らかにした。半期ベースで 3 年連続のプラスとなっただけでなく生産上位 10 カ国全てが前年同期を上回っている。 主要天然ゴム生産国別には、タイが 211 万 4300 トンで前年同期比 4.6%増、インドネシアが 167 万 8300 トンで同 6.1%増、ベトナムが同 17.6%増、マレーシアが同 21.5%増、インドが 29.2%増と各国とも 増産を進めている。 この IRSG の生産統計上からも、産地の増産が需給ファンダメンタルズを緩和させている原因になっているとい える。

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14 東京ゴム 月足

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15 第 2 節 最近のゴム相場の変動要因(トピック) 本節では、最近のゴム相場の変動要因として挙げられた主なトピックと価格の動きについて解説する。 1.世界最大の消費国・中国の景気動向とゴム価格 中国は世界最大の天然ゴム消費国であり、2016 年の消費実績は 468 万トンとなった。これは、世界全体 の消費量 1,260 万トンの 38.6%に相当する。 したがって、中国の天然ゴム消費が落ち込めば、世界の天然ゴムの需給バランスに大きな影響を与えることと なる。 2015 年 8 月に中国の景気を判断する上での指標の一つである製造業購買担当者景気指数(PMI)が、 2009 年 3 月以来約 6 年半ぶりの低水準になり、中国では内需や輸出需要が減退し大幅な景気減速の可 能性が懸念される内容となった。このため、中国国内生産は約4年ぶりの低水準となり、国内・輸出受注の縮 小も加速し、企業は人員整理を行った。 世界の天然ゴム市場もこの影響を強く受け、中でも特に強い圧迫を受けたのが上海ゴム市場であり、2011 年 2 月の高値 4 万 2,900 元から 2015 年 8 月には一時 1 万 1,060 元まで下落し、4 分 1 以下となった 流れを受けて、東京ゴム市場も売り圧力が強まり、同時期の価格でみると 528 円/kg から、168 円/kg と 360 円/kg(約 68%)の下落となった。 上海価格と TOCOM 価格

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16 2.中国の上海ゴム市場での投機的な動きと規制当局の規制 中国では、2016 年 4 月から5月にかけて株式市場などに投資されていた大量の資金が、天然ゴムをはじめ とした鉄鉱石、綿花、鶏卵等の商品先物市場に流入する投機的な動きが原因で、価格が急騰した。 そのため、中国証券監督管理委員会(CSRC)は、マーケットの更なる影響を懸念し、中国国内の主要先 物取引所に対し、投機的取引の制限を指示し、主要取引所では取引手数料など取引費用を引き上げること で投機的な資金の流れを抑制する取り組みを進めた結果、価格は急落した。 2017 年 9 月には、鉄鉱石、石炭や銅の産業用素材の中国コモディティ市場が軒並み急落したことを受けて 上海ゴムも値下がりしたが、これも中国共産党大会を控え、中国政府の金融リスク軽減のための政策的な引き 締めを警戒した投資資金の引き揚げが主な要因の一つとみられている。 中国は世界最大の天然ゴム消費国であり、中国の上海ゴム市場の価格変動の影響力は大きく、これを管 轄する中国規制当局の動向も注視する必要がある。

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17 3.中国を震源地とした世界同時株安 中国では、2014 年に表沙汰となったシャドーバンキング問題、理財商品への投資拡大に伴う金融不安問 題が表面化し、金融システム不安が広がるとともに、景気後退色が一段と濃くなり、世界的に投資の動きはリス クオフの傾向が強まった。 中国の景気動向を示す指標となる上海総合指数は 2015 年 6 月半ばの 5,200 から急落し、7 月中旬に は 3,400 付近まで大きく下落した。また、8 月下旬には記録的な 7%超の大幅下落となって一気に 3,500 を 割り込んだ。 この上海株の急落は、世界同時株安につながり、米国株式市場は、主要 3 指数が軒並み約 4%下げ、NY ダウは寄り付き直後に 1,000 ドルを超える暴落となった。 また、世界同時株安からコモディティも連動安となり、コモディティの主要な指標である CRB 商品指数も一時 185.13 まで下落した。この安値は 8 月上旬の高値 202 からは 8.4%安、2011 年の高値 370 からはちょう ど 50%安である。4 年で半値まで下げたことを意味する。東京ゴム市場では、同時期に 528 円/kg から 168 円/kg と約 68%値位置を下げている。 CRB Index と TOCOM 価格

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18 4.原油相場とゴム相場 ―TOCOM ―WTI 原油相場もゴム相場に影響を与えたと考えられる。 過去の原油相場とゴム相場との相関係数は高い正の相関となっており、原油が下落するとナフサ安、合成ゴ ム安の動きとなり、それに伴い天然ゴムも連動して下落する確率が極めて高くなる。 2015 年に入って原油相場は、米国やカナダの北米を中心としたシェール革命が起こったことに起因する原油 需給の緩和が価格の下落に拍車をかけた。 さらに、原油価格が下落を続けているにもかかわらず、OPEC が生産調整に踏み切らず、生産枠を維持する 政策をし続けていることが供給過剰に拍車をかける結果となり、WTI 原油は 2015 年の年初の 52 ドル/バレ ルから 8 月には約 6 年半ぶりの安値となる 36 ドル/バレルまで下落した。東京ゴム市場もこの流れに追随するよ うに 214 円/kg から 168 円/kg と約 21%値位置を下げた。 なお、その後は WTI 原油の上昇傾向を受けて、2016 年 2 月の安値を起点として天然ゴム相場は上昇に 転じている。 WTI 原油は、2016 年 6 月に一時 51.67 ドルまで上昇し約 11 カ月ぶりの約高値をつけ、その後一時修 正安となったものの 9 月に開催された石油輸出国機構(OPEC)総会で加盟 14 カ国の減産合意を受けて 9 月中旬から再び上昇した。11 月末に開催された石油輸出国機構(OPEC)総会において、加盟国の生産を 調整することで合意に至ったことや、12 月に OPEC とロシアなどの非 OPEC がウィーンで開催した会合において 15 年ぶりの協調減産に踏み切ったことを受け、WTI 原油は 2017 年 1 月末には、53.56 ドルまで更に上伸し た。この間、東京ゴム相場もタイの洪水の影響もあり、7 月の 145.9 円/kg から 1 月末には 366.7 円/kg と約 150%上昇した。 その後、WTI 原油は、米国でリグ稼働数の増加とともにシェールオイルは増産傾向となり、供給に対する圧迫 感が広がり、6 月下旬には、一時 42.05 ドルまで値を下げる展開となった。一方、同時期(1 月末から 6 月 末)のゴムの先限は 1 月末の水準から約 45%下落の 201 円/kg となった。 WTI と TOCOM 価格

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19 5.産地タイなどのアジア通貨安 ― TOCOM ―ドル・バーツ タイ、マレーシア、インドネシアの主要な天然ゴム産地国の通貨安も圧迫する要因の一つとなっている。現地 通貨が下落すると、同じ現物成約価格であれば通貨が下落する分だけ収益が増し、また現物成約価格が下 落しても通貨安で損失分が補填されるため、輸出業者や生産者は安売りしても耐えられる状況となる。 このため、タイなどが増産期を迎えて供給量が増え、対外的なオファー価格を安唱えすることができるのは、通 貨の下落に助けられているためである。 参考までに、2015 年のチャイナショックにより新興国通貨が全面安となった流れに沿って東京ゴム市場価格 も連動安となる情勢を呈した。 ドル・バーツと TOCOM 価格

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第 3 節 季節的変動要因

第 1 項 各地域における季節的変動要因 ゴムの樹液は、原則 1 年を通じて生産される。しかし、生産周期があり、ひとつは、一般的に落葉期(ウィンタ リング)から 1 ヶ月程度ずれた時期の「減産期」、もうひとつは、多雨季の「増産期」、これ以外の時期は通常の 生産期となる。 1.タイのウィンタリング等 ① 減産期 時期と期間は、地域やその年の気象状況により異なるが、タイでは 11 月から 12 月頃に雨季が終了する。そ の後、乾季が到来し、ウィンタリング(落葉期)が 2 月にはじまり、4 月にほぼ終了する。ウィンタリングの間は、ゴ ムの木の古い葉が落ち、新芽の準備のため樹液の出が悪くなることと、ゴム樹の保護という観点から、生産者は タッピング(樹液の採取)を一時的に休止する。このため、天然ゴムの生産はこの時期著しく低下することになり、 減産期となる。 ② 通常の生産期 タイでは、5 月頃から雨季に入り雨量が増えるとゴムの木の新芽が出てその成育が早まり、タッピングが開始さ れる。7 月から 10 月頃までの通常の生産期では、ひどく生産が落ち込むこともないが、増産にも至らない生産状 況が続くことが多い。 ③ 増産期 年末の 10 月~12 月にかけて多雨季に入り、11 月~1 月にかけて増産期になる。雨季明け直後は最も樹 100 150 200 250 300 350 400 450 500 550 600 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 生産量 (1,000トン) 月別天然ゴム生産量(タイ) 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2010-2017 平均

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21 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 生産量 (1,000トン) 月別天然ゴム生産量(マレーシア) 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2010-2017 平均 190 210 230 250 270 290 310 330 350 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 生産量 (1,000トン) 月別天然ゴム生産量(インドネシア) 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2010-2017 平均 液が採取でき、ゴムの生産量も増加することになる。従って、在庫の積み増し時期でもあり、在庫の激増により 需給バランスが崩れることもままある。但し、異常な雨量になると樹液の採取そのものが行えないこともあることに 注意する必要がある。 2.マレーシア・インドネシアのウィンタリング タイの落葉に続き、マレーシアやスマトラ北部でもやや遅れて落葉し、ウィンタリングに入る。その他のインドネシ アでのウィンタリングは、スマトラ北部ではマレーシアと同様で、3~5 月前後、南半球地域では 9 月~11 月前後 で、生産地帯が広大であるため、全体としての生産量の落ち込みは表れにくく、減産幅は 10%程度と言われて いる。 以上の主要生産国におけるウィンタリングの時期や生産量は、季節的変動や価格動向によって、年によって 異なっていることに留意する必要がある。また、特に乾季が長引き減産が予想される場合には、結果的に極端 な減産期となり、「ハード・ウィンタリング」、または「ダブル・ウィンタリング」と呼ばれ、需給タイト化の兆しで強材料と 見られている。また、逆に「ソフト・ウィンタリング(程度が軽く期間が短い落葉期)」となったことで減産の度合い が弱くなり、需給が緩む(弱材料)こともある。

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22 第 2 項 異常気象 近年の地球温暖化等により世界的規模で異常気象現象が発生し、地域的な大雨や干ばつが繰り返される ことによって、天然ゴムをはじめ多くの農産物の生育に悪影響が及ぼされている。 特に、ウィンタリングの時期に異常気象が重なると、超干ばつや大雨による洪水の被害が甚大になる。WMO (世界気象機関)によれば、竜巻、高潮、熱波などの災害によって、500 億から 1,000 億ドルの損害が出て おり、その被害の多くがアジア地域に集中しているとの統計がある。代表的な異常気象として「エルニーニョ現象」 「ラニーニャ現象」がある。 (参考) 近年、タイなどの東南アジア地域で異常気象が頻繁に起こっており、その際には生産活動であるタッピング (切り付け作業)や出荷に影響が及び供給障害となるケースがある。 タイでは、通常は 12 月に雨季が終了するが、2017 年の 1 月には、この雨が長引き、タイ南部 12 県では大 雨による大規模な洪水が発生し、市街地が浸水し、幹線道路、鉄道が一部通行止めになるなど、大きな被害 が出た。豪雨となった地域は、ナコンシータマラート、ナラティワート、ヤラー、ソンクラ、トランなど天然ゴムの有数の 生産地に集中し、スモールホルダーなど多くのゴム農園が冠水し、タッピングが出来ず、原料の手当てができない 状況となり、スポット契約への対応が出来ず、長期契約等の契約済み分のみの生産となった。 また、洪水により幹線道路や鉄道が一部通行止めになったことにより、バンコク港などの天然ゴムの主要積出 港までの陸送にも影響が出た結果、船積みにも遅延が発生した。 東京市場でも、この産地の状況を受けて 2017 年 1 月に先限が 2011 年 9 月以来の高値となる 366.7 円まで高騰した。 なお、世界気象機関(WMO)は、南米ペルー沖で海面水温が低くなる「ラニーニャ現象」が 2017 年 10 ~12 月に「50~55%の確率で発生する可能性がある。」と発表している。仮に発生した場合、大雨や高温な ど異常気象が世界各地で起きる恐れがあり警戒が必要と警告している。日本の気象庁によると、2010 年夏~ 11 年春に発生した際は、同年夏に日本が記録的猛暑に見舞われた。WMO によると、8月以降、ペルー沖の 太平洋赤道海域で海面水温が急速に低くなっており、ラニーニャ発生の基準値に近づきつつあるとしている。

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23 第 4 節 世界の景気と自動車タイヤの生産 ゴムの基本的な需要の要因は、世界の景気動向、とりわけ自動車の生産・販売台数に左右される。特に、 天然ゴムは 70%以上がタイヤの生産に使われており、自動車の生産台数等の動向に大きな影響を受けてい る。 その自動車の生産台数は経済成長や景気動向に伴うところが大きく、世界最大の自動車生産国・天然ゴ ム消費国となった中国、主要な自動車生産国である米国と日本や欧州における景気動向と自動車の生産・ 販売台数は最も注目すべきと言える。 世界最大の消費国である中国では、政府が、2015 年 10 月から 2016 年末まで、景気てこ入れのため、 排気量 1600cc 以下の小型乗用車を対象に自動車取得税の税率を半分にした。このため、中国自動車工 業協会がまとめた 2016 年の新車販売台数は、2802 万台、前年比 13.65%増と過去最高を記録した。 なお、一般的に日・米・欧のタイヤメーカーの工場稼動は、季節によって変化し、夏季休暇やクリスマス休暇の 時期は、ゴムの買い付けを控え、秋口と年初は稼働率が高まり、ゴムの買い付けが活発になる。

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第 5 節 為替動向

ゴムの貿易取引は、FOB シンガポールベースで値決めされ、その価格指標となっているのがタイ・オファー価格 と東京商品取引所のゴム市場の先物価格である。双方の価格が相互に影響し合って価格形成されていること は勿論のこと、その双方の価格を参考に貿易価格が決定しているが、タイ・オファー価格もシンガポール価格を参 考にしているので、これら三つの価格関係は三つ巴の影響関係になっていると言える。 生産者はタイ・バーツとインドネシア・ルピアで、輸入国はドル、ユーロ、円、元などの自国通貨で最終決済する。 その交換レートになる為替の動きは、ゴム市況に直接的な影響をもたらすため、その動向を注視することも重要 になる。例えば、東京商品取引所のゴム相場動向を見るとき、為替相場がドルに対し円安となれば相場の上 昇要因となり、逆に円高となれば、相場の下降要因となる。これと同様に産地の通貨の動きによって、産地から 提示される提示価格(オファー)にも変化が出てくる。過去の例では、1997 年 7 月に始まったタイ・バーツ危機 は、インドネシア・ルピア、マレーシア・ドルの暴落を呼び、さらに、一連の通貨安がアジアに金融危機をもたらした が、これを背景に東京商品取引所のゴム相場は、1996 年から 2000 年までの 4 年間、価格低迷が続いた。

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第 6 節 ゴムと石油の関係

第 1 項 石油・合成ゴム・天然ゴムの価格関係 石油価格が高騰すると、ゴム価格は上昇し、逆に石油安となるとゴム価格が下落するという連動性が見られ ることがある。その要因は、合成ゴムと天然ゴムの相互代替(100%ではない)の関係で、合成ゴムは石油製 品である石化原料のナフサから作られるため、一般的に原油や石油製品価格が上昇するとナフサの価格も上昇 し、合成ゴムの価格上昇に繋がる。しかしその後、逆に、合成ゴム価格が上昇しすぎると天然ゴムの割安感が強 まり、天然ゴムの需要が増加し、天然ゴム価格が上昇するという循環になる。一方、石油安であれば、合成ゴム の価格が下がってその需要が増加し、天然ゴムの価格を押し下げる要因にもなる。ただし、2008 年秋以降は、 各商品の価格が全般的に似た動きを示す傾向にあり、このような関係は明確には現れなくなっている。 第 2 項 原油高とインフレ懸念 原油高によるインフレも天然ゴムの価格に影響を与える。原油高によって、コスト・プッシュ型のインフレ経済が 呼び込まれ、この流れによって天然ゴムを含めた一次産品価格が上昇するという流れである。過去のケースでは、 1973 年と 1979 年の 2 度にわたり、石油危機が起こったが、当時の天然ゴム価格もそのトレンドに乗じ、第二 次オイル・ショックの 1980 年 2 月に上場来最高値(東京ゴム先限・388.9 円)をつけた経緯がある。 NY 市場の WTI 原油期近は、2008 年 7 月に 147 ドルを記録して、過去最高値を更新する状況となった が、それ以後、世界的な金融危機による市場における過剰流動性の解消と、金融危機に端を発する世界同 時不況による石油需要の減退などが相乗効果となって、2008 年 12 月には 30 ドル割れ目前まで水準を大幅 に引き下げた。しかし、同月 19 日に 32.40 ドルで底入れした後は、世界的な景気回復基調とドル安傾向によ り再び上昇基調に転じ、2011 年 5 月 2 日には 114.83 ドルまで上昇した後、2014 年前半まで 75~100 ドル前後のレンジで推移してきたが、増産による供給過剰から値を下げ、2016 年 1 月には一時 30 ドルを割り 込んだ。

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第 7 節 地政学的リスク

第 1 項 地政学的リスク要因 2001 年の米国同時多発テロ以降、世界的に地政学的リスク要因は高まっている。 最近では、過激派組織イスラム国(IS)をはじめとした、中東地域を中心に地政学的リスク要因が噴出し、 世界全体に先々の不透明感を与えているが、ゴムの主要生産国においても、様々な政治的・宗教的な不安 要素を抱えている。 タイでは、タクシン元首相が伝統エリート層や保守層の反発を招き,職権濫用や汚職の噂に端を発した政 治的な混乱の中、2006 年 9 月軍部によるクーデターが発生した。2007 年 12 月に下院議員選挙が行われ 民政復帰が実現したものの、タクシン元首相系の政府に対し,再び反対運動が高まり、2010 年 4 月デモ隊と 治安部隊との間で衝突が発生し、多数の死傷者を出す事態となった。この一連の混乱による死亡者数は,約 90 名にのぼった。 その後、2011 年 8 月タクシン元首相の実妹のインラック氏を首相とする政権が発足し、2012 年まで比較的 安定的に政権運営を行われたが、2013 年に大規模な反政府デモが繰り返され、バンコク都内各地で大規模 な路上デモが行われ、首相府他の政府庁舎が占拠される事態に発展し、タイ国内の商流・物流に大きな悪影 響があった。 その後もタイ国内では、都内のデモ拠点において死傷者が発生する等緊張が高まり、2014 年 5 月軍事クー デターが発生し、現在も軍事政権が続いているが、2016 年 8 月には、連続爆破テロが発生しており、未だに政 情不安は解消されてない。 また、タイは「国王を元首とする民主主義制度」を統治原則としているが、タイの国民からの絶大な信頼と敬 愛を受け、70 年間タイ政治の調整役であり、タイ社会の安定の要となっていたプミポン国王が、2016 年 10 月 に死去したこともあり、政治・経済情勢の動向には、注意を払う必要がある。 インドネシアは、人口は 2 億 3000 万人を超える世界第 4 位の国であり、多民族国家で大多数をマレー系 が占めているが、世界最大のイスラム教徒(ムスリム)人口を抱える国としても知られている。 インドネシアでは、過去、過激派組織が各地でテロを行うなど、治安の悪化が外国からの投資を妨げていたが、 近年の経済発展要因のひとつに、国内の過激派の押さえ込みに成功したことが挙げられている。 しかし、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアでは、ISIL による若者に対する勧誘活動が活発化した ことで、弱体化しつつあった国内のテロ組織が再び活発化する可能性が示唆されている。 マレーシアでは、近年、大規模テロは確認されておらず、治安情勢は比較的安定しているとされるが、過去に は、2001 年にイスラム過激組織が摘発されたほか、2002 年までに 80 人以上のイスラム過激派活動家が拘 束されたとされる。 近年、このマレーシアでも ISIL 関連の摘発が増加しており、シリアにおいては、マレーシア人やインドネシア人な ど、マレー語圏出身者が ISIL に参加していたことから、過激派のネットワークが再構築され、活動が活発化する ことが懸念される。

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第 8 節 市場介入

1.生産国政府の市場介入 生産国政府による市場介入の歴史は古く 1920 年代に大英帝国インド庁による市場介入が行われている。 1970 年代の第一次石油ショックの後には、当時の最大生産国であったマレーシアの政府により3度の市場介 入が行われた。 1990 年代後半にはタイ国政府により市場介入が行われた。同国政府は、その後も市場介入を行っており、 最近では 2012 年と 2014 年に市場介入を行っている。 最近の市場介入では、2016 年 2 月 4 日の天然ゴム主要生産・輸出国であるタイ、マレーシア、インドネシ アで構成された国際 3 カ国ゴム協議会(ITRC)における閣僚会議で、低迷する価格の引き上げを目的に、3 月から 8 月までの 6 カ月間にわたり輸出量を 61 万 5000 トン減らす(月平均では 10 万 2500 トンの輸出 削減)で合意した。 天然ゴム国際価格は、供給過剰を背景にして価格下落が顕著となりシンガポール TSR 期近は 2016 年 1 月時点で一時 102 セント台まで下落を強め、2008 年 12 月の金融危機以来の低水準まで落ち込んでおり、 生産大手が協調して輸出を制限することによる価格上昇を狙ったものである。 輸出削減量は、国ごとの輸出量に合わせて、タイが 32 万 4000 トン、インドネシアが 23 万 8740 トン、マレ ーシアが 5 万 2260 トンと割り振られた。また、3 カ国は、輸出量を削減することで余剰となった天然ゴムを国内 消費するよう努力することについても合意した。国内消費は主に、道路や鉄道建設用、港湾施設用などのイン フラ整備にあてる方針とされている。 なお、この合意は、2016 年 8 月一杯で ITRC 加盟の生産大手による輸出削減策が失効することとなってい たが、7 月に 9 月から 12 月までの 4 カ月間、削減策を延長することで合意がなされ、この間の合計削減量は 3 カ国合わせて 8 万 5000 トン(月平均では 2 万 1250 トン)に設定された。 この合意に基づく輸出削減策とタイの洪水による影響で 2017 年 1 月まで世界の天然ゴム価格が高騰したも のの、その後は、相場が下落傾向となったことから、産地国は前年と同じように輸出に制限を設けることで事態を 打開する動きが示された。 具体的には国際的な天然ゴム価格を安定させることを目的とした協調減産、あるいは協調輸出削減の話し 合いの場が 2017 年 6 月に設けられた。市場はこの動きを好感したものの、結果的にインドネシアが反対に回っ たことから話し合いは物別れに終わった。この時、インドネシアは「天然ゴム価格は満足できる水準であり必要以 上に価格を押し上げる必要はない。」との見解を示したと伝えられている。 その後も国際天然ゴム価格の下落が続いたことで、2017 年 9 月に 2 度目の話し合いの場がバンコクで持た れたが、事前に 10%~15%の範囲で輸出の削減をすることで話し合いが進められると伝えられ、合意の期待が かけられたものの、結果的に話し合いはまとまらず失敗に終わっている。

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第 2 章 新ゴムの需給及び需給データ

本章では、ゴム製品の原料としてのゴムのうち、再生ゴムや屑ゴムを除外した新しいゴム原料である「新ゴム」 の需給について説明する。新ゴムは、天然ゴムと合成ゴムに大別される。

第 1 節 世界の新ゴム需給

東京商品取引所で上場されているゴムは、天然ゴムである「RSS」なので、主に世界の「天然ゴム」の需給を 把握することが重要になる。しかし、天然ゴム同様、タイヤ等のゴム製品の原料になっている「合成ゴム」の消費 比率は天然ゴムを上回っており、合成ゴムの需給動向にも注目する必要がある。 合成ゴムは石化原料のナフサから作られるため、シンガポール・ナフサ(OTC 市場)や東京オープンスペック・ ナフサ相場の影響を受けやすい特徴がある。 第 1 項 新ゴム(天然ゴム+合成ゴム)の需給 1.需要 (1)天然ゴムと合成ゴムの消費比率 2016 年の世界の新ゴムの消費量は 2,753.6 万トン(内、天然ゴムは 1,260.0 万トン、合成ゴムは 1,493.6 万トン)で、新ゴム消費量のうち、天然ゴムと合成ゴムの消費比率は、ここ数年間は、ほぼ 45:55 で推移している。 (2)需要全体の傾向 1990 年以降、世界の新ゴムの消費量は平均 2%程度の伸び率を示しているが、年によって増減の起伏が 激しく、1995 年、2000 年、2003 年、2004 年は 5%以上の成長を記録したものの、1990 年、1991 年、 1993 年、1998 年、2001 年はマイナス成長となった。2002 年以降は、2009 年を除き概ね拡大傾向にあ る。 (3)需要拡大の牽引役としての中国 近年の新ゴム需要拡大の大きな要因は、中国の消費量の増大にある。中国は 1990 年代半ばから加速度 的に消費量を伸ばし、1997 年には日本を抜いて世界第 2 位の消費国となり、さらに 2001 年には米国をも追 い抜き、世界最大の消費国となった。2016 年の中国の新ゴム消費量は 925 万トンで、世界全体の 34%を 占めるまでに至っている。

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31 2.世界の新ゴム供給 (1)天然ゴムと合成ゴムの生産比率 2016 年における世界の新ゴムの生産量は 2,722.3 万トン(内、天然ゴムは 1,240.1 万トン、合成ゴム は 1,482.2 万トン)で、前年の 2,677.2 万トンから 1.7%上昇した。近年の新ゴムの生産量における天然ゴ ムと合成ゴムの比率は、消費量におけるそれと同様、概ね天然ゴムが約 45%、合成ゴムが約 55%という割合 になっている。 (2)供給全体の傾向 1990 年以降、世界の新ゴムの生産量は平均 2.5%程度の伸び率を示しているが、1995 年を境に横ばい から上昇のトレンドに入ったという傾向が見てとれる。すなわち 1990 年代半ばまでは、世界の新ゴムの生産量は 1,500 万トン前後で推移していたが、1990 年代後半から増加のトレンドに入り、特に今世紀に入ってからは、 世界的に旺盛な需要拡大に応えるかたちで、生産量の伸び率も高まっている。こうした近年の新ゴム生産量の 増加は、天然ゴムと合成ゴム双方の増産によって支えられている。合成ゴムは原料である原油が 2008 年に 100 ドル/バレルを突破してから一時減少に転じたが、同年の世界同時不況からの若干の持ち直しにより、 2009 年後半から回復傾向を示しており 2012 年から 2016 年にかけての生産量も増加となった。 (3)在庫数量 新ゴムの生産量については、天然ゴム・合成ゴムともに増加傾向にあるのに対して、在庫率に関しては、天然 ゴムが 1999 年をピークに減少し、2009 年以降は転じて上昇傾向となっている一方、合成ゴムは 1990 年以 降 20%台を推移しているといった異なる傾向が見られる。

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32 第 3 項 合成ゴムの需給 世界の合成ゴムの消費量は 2016 年の数値で 1,493.6 万トンと、天然ゴムより多い。1980 年代までは合 成ゴムの割合は天然ゴムの 2 倍前後の消費量で推移していたが、天然ゴムの価格が 1980 年代以降 2000 年代前半まで 20 年以上にわたって安値低迷を続けてきたこと、また新ゴム全体の需給規模が拡大してきたこと から、天然ゴムの比率が高まり合成ゴム比率は相対的に減少しつつある。 合成ゴムの需給推移のグラフを見ると、全体に天然ゴムよりも起伏が大きく、特に 1980 年から 1982 年、 1990 年から 1991 年、1992 年から 1993 年の各時期には大きな落ち込みが見られた。これは一般に、天然 ゴムよりも合成ゴムのほうが景気に左右されやすいことを示していると考えられる。また在庫量は、この 20 年間、 ほぼ右上がりの傾向をたどっており、2007 年に 300 万トン台に乗せ、2016 年末には 321.4 万トンとなってい る。在庫率は近年、減少傾向にある。 出所:IRSG

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33 1.需要 1990 年代以降の世界の合成ゴム消費量は、1993 年の 862 万トンを底にほぼ拡大を続け、2016 年に は 1,493.6 万トンとなった。2016 年の合成ゴムの消費量およびシェアの多い上位を順に並べると、第1位に中 国(438.8 万トン、29.4%)、第 2 位に米国(191.2 万トン、12.8%)、第 3 位に日本(86.6 万トン、 5.8%)、第 4 位にロシア(60.7 万トン、4.1%)、第 5 位にインド(59.1 万トン、4.0%)、第 6 位にドイ ツ(58.7 万トン、3.9%)となっている。 2.供給 世界の合成ゴムの生産量は、今世紀に入ってから増加の一途をたどり、2007 年には 1,282.9 万トンを記 録した。近年は原油、ナフサの価格高騰を背景とする原料コストの高まりに伴い、合成ゴム価格も上昇し、合成 ゴム・メーカーの増産意欲を促していたが、原料モノマーの逼迫により生産が伸び悩み、その後エネルギー価格が 落ち着いてきたことや世界的な景気悪化による需要減などにより、2008 年秋以降は生産量が減少傾向にあり、 2009 年は 1,148.8 万トンと 2003 年の水準近くまで低下したが、その反動で 2010 年に増加に転じると、 2016 年は 1,482.2 万トンと過去最高を記録した。

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第 2 節 日本の新ゴム需給

第 1 項 新ゴム(天然ゴム+合成ゴム)の国内需給 1.需給規模 2016 年の国内における天然ゴムと合成ゴムを合計した新ゴム消費量は 154.1 万トン(前年比 2.7% 減)で、これに輸出(同 1.2%増)を含めた日本の新ゴム総需要量は 239.6 万トン(同 1.4%減)であっ た。これに対して天然ゴムの輸入量と、合成ゴムの生産量および輸入量を合計した「総供給量」は 238.1 万ト ン(同 5.4 減)となっている(日本ゴム工業会等統計)。 2.天然ゴムと合成ゴムの比率 2016 年の日本国内における天然ゴムの消費量は 67.5 万トン、合成ゴムの消費量は 86.6 万トンとなって おり、新ゴムの消費量全体に占める天然ゴムと合成ゴムの比率は、この 10 年間、ほぼ 4:6 の割合で推移して いる。 かつて天然ゴムの比率は 30%そこそこ(1976 年に 31.5%)まで低下した時期もあったが、トラック・バス用 タイヤなど大型タイヤの生産量の増大と、タイヤのラジアル化の進展により、2001 年以降 40%台を維持してい る。 3.用途 日本の新ゴムの約 80%はゴム工業関連向けの消費であって、そのまた約 80%がタイヤ部門で消費されてい る。 ゴム工業関連でタイヤ部門以外の用途としては、自動車部品や産業用のゴムホース、ゴムベルトなどが、また ゴム工業関連以外の消費とは、紙加工、合成樹脂製造ブレンド、繊維処理、電線、接着剤、塗料・顔料など が、それぞれ挙げられる。

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35 <2016 年の部門別新ゴム消費量>

(単位:千トン)

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36 第 2 項 天然ゴムの国内需給 1.需要 日本における天然ゴムの国内消費量は、ゴム需給調査会の統計によると 1980 年が 42.7 万トン、1990 年が 67.7 万トン、2000 年が 75.2 万トン、2008 年には 85.8 万トンまで拡大したが、2009 年に大幅に減 少。2010 年は約 75 万トンまで回復したが、2012 年以降減少傾向となっている。 その天然ゴムの消費の約 90%はタイヤ部門が占めている。 2.供給 日本では天然ゴムの供給は 100%輸入に依存している。そのため、日本における天然ゴムの供給量は輸入 量そのものであり、2016 年におけるその数量は 65.9 万トンである。 次に国別に輸入比率を見ると(バラタ(※)等の天然ゴムを除く。)、2016 年の数字では、インドネシアが 全体の 64.4%を占め最も多く、2 番目はタイで 32.2%となっている。マレーシアは 1991 年までタイに次ぐ輸入 先であったが、1992 年以降はインドネシアに抜かれ、現在は 1993 年以降、増加傾向にあるベトナムとともに 0.6%程度にとどまっている。 タイは、もともと RSS の生産比率が高く、RSS 指向が強かった日本の需要家とちょうどマッチしていたため、天 然ゴムの輸入に関しては長年にわたって日本とは深い関係にある。現在、タイからの輸入の 56.9%が RSS で、 41.1%が TSR(Technically Specified Rubber:技術的格付けゴム) 、ラテックスが 0.8%、その他が 1.2 となっている。

また、インドネシアから輸入される天然ゴムの 96.3%は TSR である。

マレーシアはラテックスが 67.1%、RSS が 11.9%、TSR が 20.8%となっている。

2016 年の天然ゴム輸入の品種別構成比をみると、RSS が総輸入量の 19.4%、TSR が 77.6%、その他

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が 2.3%、ラテックスは 0.7%となっている。RSS は 2000 年までは天然ゴムの輸入量の 50%以上を占めてい たが、2002 年以降は TSR が RSS を凌ぎ、それ以降は TSR の比率が最も高くなっている。

※注:南米産アカテツ科のゴムの一種。主にゴルフボールのカバーに合成ゴムと混ぜて使われることが多 い

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39 3.在庫 日本国内の天然ゴムの需給を判断する上で重要な役割を果たすのが、日本ゴム輸入協会が発表する「天 然ゴム営業倉庫在庫推移」である。毎月 10 日、20 日、月末の 3 回、港別の在庫量がまとめられている。 しかし、近年、大口需要家であるタイヤメーカーが、産地から直接ゴムを買い付け、港湾に陸揚げされたゴム はコンテナ積みのまま陸送され、営業倉庫を経ずに直接タイヤ工場に搬入されるケースが増えてきている。そのた め商社経由で輸入されるゴムの数量は、かつてに比べると大幅に減少している。 第 3 項 合成ゴムの国内需給 1.需要 2016 年の日本における合成ゴムの国内消費量は 86.6 万トンであり、2008 年までの 10 年間はほぼ 110 万トン前後で推移していたが、2009 年に大幅に減少した後、2010 年には若干回復し、その後は再び減少傾 向にある。 国内のゴム工業用途のうち、天然ゴムの 88%はタイヤ部門で消費されており、合成ゴムの消費におけるタイ ヤ及びタイヤ・チューブの割合は 81%となっている。 2.供給 2016 年の日本における合成ゴムの供給量は 172.1 万トンであった。このうち、国内生産は 156.5 万トンで、 輸入は 15.6 万トンとなっている。 日本では天然ゴムが 100%輸入に依存しているのに対して、合成ゴムの供給量の約 90%は国産で賄われ ている。 出所:日本ゴム輸入協会

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40 第4項 天然ゴムの主な需給統計データ

1.世界の需給統計データ

世界のゴムの需給統計としては、国際ゴム研究会(International Rubber Study Group=IRSG)*

が発表する「ゴム統計(Rubber Statistical Bulletin)」がある。この統計は、世界の天然ゴムの国別の供 給と消費、同じく合成ゴムの供給と消費、更に在庫や輸入、輸出別などを分類してデータが整理されている。

*【国際ゴム研究会の概要】

1.設立年月日:1944 年 8 月

1934 年より活動していた国際ゴム規制機構(IRRS)の発展的解消を受けて、1944 年 8 月に設立。 国際天然ゴム機関(International Natural Rubber Organization=INRO、1999 年 10 月 協定終了)は天然ゴムのみを対象としていたのに対し、IRSG は天然ゴムと合成ゴムを対象としている。 2.本部所在地: シンガポール 3.加盟国(2017 年 10 月現在):日本、EU、シンガポール、インド、ロシアなど 4.目的 (1)天然ゴムおよび合成ゴムの生産、消費、取引に影響を及ぼす問題を議論するフォーラムの開催、 ゴム市場およびマーケット・トレンドの透明性向上に資する世界のゴム産業の包括的な統計情 報の収集と普及 (2)目的達成に関連した他の国際団体との協働 5.最近の動き・今後の課題 (1)1999 年 10 月に国際天然ゴム協定が終了したため、INRO の活動の一部(一次産品共通 基金プロジェクト等)を引き継ぐことになり、活動規模が拡大した。 (2)事務局のホスト国である英国が 2008 年 6 月末をもって脱退したため、2008 年 6 月に事務 局をシンガポールへ移転した。 (出所:外務省 HP、IRSG 資料を元に東京商品取引所作成) 2.日本国内のゴム需給統計データ 国内の需給統計には、日本ゴム輸入協会が発表する「天然ゴム営業倉庫在庫推移」があり、10 日毎に公 表されている。近年、大手ユーザーは直接産地から天然ゴムを買い付けるケースが多く、営業倉庫に在庫され ないゴムが増加する傾向にあることから、営業倉庫の在庫水準は過去の統計と比較すると極めて低くなっている。 したがって営業倉庫の在庫水準だけで国内の需給動向を判断することについては注意が必要になる。 一方、営業倉庫の在庫の中には、東京商品取引所のゴム指定倉庫在庫も含まれているが、指定倉庫の 在庫については、東京商品取引所が 10 日毎に発表している。これは、東京都、神奈川県所在の営業倉庫の 入庫、出庫及び在庫の統計データとなっている。また、この統計データには、RSS1 号、RSS2 号、RSS3 号、 RSS4 号、RSS5 号及びその他の等級別にした在庫明細も示されているので、先物市場における現物受渡し による価格動向を占う上での参考資料にもなっている。 この他に、国内の需給関連統計としては、財務省が毎月月末近くに公表する「貿易統計」における天然ゴム

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輸入通関実績、経済産業省が毎月発表する「ゴム製品統計」、一般社団法人日本自動車タイヤ協会が毎 月発表する「自動車タイヤ・チューブ生産、出荷、在庫実績」及び日本ゴム輸入協会が毎月発表している「月 別天然ゴム輸入統計」がある。

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第 3 章 ゴムの商品知識

本章では、天然ゴム・合成ゴムの商品特性、歴史、生産・製造工程等について説明する。

第 1 節 ゴムの商品特性

第 1 項 天然ゴムと合成ゴム 自動車や航空機のタイヤ、各種産業用ゴム製品、競技用ボール、医療用手袋などゴム製品を作る原料には、 天然ゴム(Natural Rubber)と合成ゴム(Synthetic Rubber)が使用される。合成ゴムが主として石油 化学工業で生産される化学製品であるのに対して、天然ゴムはゴム樹(学名ヘベアブラジリエンシス=Hevea Brasiliensis)から採取される一次産品である。いずれも強くて弾力性があり、金属や繊維、プラスチックなど他 の材料とは一線を画す材料であるといえる。 天然ゴムと合成ゴムの使用割合は、国際ゴム研究会(IRSG)の統計によると、2016 年の全世界のゴム消 費量(2,753.6 万トン)のうち天然ゴムは 1,260.0 万トンで 45.7%、合成ゴムは 1,493.6 万トンで 54.2%を占めている。天然ゴムの比率は 1960 年代半ばから 1990 年代まで 30%台(ただし 1978~ 1980 年は 29%台)であったが、2000 年以降、40%台で推移している。 日本における天然ゴムの需要構造は、消費量全体の約 90%をタイヤ用途が占める。これに比べ合成ゴムで は約 50%と小さく、天然ゴムのタイヤ依存度がきわめて高いことがわかる。天然ゴムの特性は一般的には弾力・ 伸長・粘着・耐久性に優れていることだが、タイヤ用材料としては内部発熱が低く、破壊強度が大きく、また金属 との接着性がよいなどの特性をもっている。このため乗用車用の小型タイヤよりもトラック・バス用の大型タイヤに、 より多くの天然ゴムが使用される。 ゴムという言葉はチューインガム、アラビアゴムなどの植物性樹脂のガム(gum)からきている。ラバー (Rubber)は英語で「こすって消す」(rub out)という意味で、字消しに由来する。またドイツ語でゴムを意 味するカオチューク(kautchuk)やフランス語のカオチュー(caoutchouc)はインディオの言葉で「涙を流す 木」を意味しており、ゴム樹が白い樹液を出すことに由来するといわれている。

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