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第 5 章 世界のゴム市場と商品先物取引所

第 2 節 海外市場

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計算式は、([タイの現物オファー×為替)+輸入諸経費]となる。一般に、オファーは当該月より 2~3 カ月先 であるため、先積みに相当する為替先物を乗じて、それに海上輸送費(フレート)や輸送保険料(インシュラ ンス)、輸入関税等の諸経費を加算する。

一方、2000 年 4 月に「農産品先物取引法」が施行されたことに伴い、2001 年 9 月、商品取引所「タイ農 業商品先物取引所(AFET:The Agricultural Futures Exchange of Thailand)」が設立されると、

2004 年 5 月に RSS3 号、2005 年 9 月に STR20、2006 年 3 月にラテックスの取引が開始された。取引 は、ザラバ仕法で行われており、バーツ建てである。

タイにおける商品先物取引所の設立の背景には、農業分野が同国にとって非常に重要な位置を占め、全人 口の 40%がこの分野に関わっていること、また農産品の輸出が外貨獲得の主要な収入源となっていること等が ある。同国の農産品の輸出規模は、2011 年時点では年間 1 兆 4,477 億バーツで、中でも天然ゴムは約 4,409 億バーツと 30%を占め、同国農産物のうち最大の輸出品目となっている。タイにおいては、従来は価格 変動によるリスクをヘッジできる場が国内になかったことから、農産品の市場流通システムに責任を持ち、またこの 効率化をはかるための商品取引所設立が不可欠となっていた。

しかしながら、長期に亘る取引低迷により 2016 年に AFET では全商品の取引停止を行うこととなり、現在 は「タイ先物取引所(Thailand Futures Exchange)」にて RSS3 号のみが取引されている。

(参考)タイ産 TSR(STR20)と SGX で上場しているインドネシア産 TSR(SIR20)の価格差について

SGX で上場されている TSR20 の標準品は、インドネシア産の SIR20 が標準品となっている。

一方、タイ産の TSR20 は STR20 であり、両者の価格を比較すると、一時的に同程度の価格水準となる場 合も見受けられるものの、通常はタイ産の STR20 が高い価格となっている。

これは、インドネシア産の SIR20 とタイ産の STR20 の原料と製品の品質水準の違いが主な理由となってい る。

タイ産 STR20 及びインドネシア産 SIR20 いずれも TSR20 の最低基準をクリアしているが、インドネシア産の SIR20 は、原料のほぼ全てがカップ・ランプであり、タイ産の STR20 はカップ・ランプの他に品質の良い材料であ る USS や古い RSS を使用している。そのため、タイ産の STR20 は原料のコストが高くなるものの、タイ産の STR20 の品質水準がインドネシアの SIR20 より高いことから、プレミアムが付いている。

タイオファー(STR20)と SGX・TSR の価格

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―タイ・オファー ―SGX・TSR20

65 第 3 項 マレーシア市場

マレーシアの天然ゴム先物市場は廃止されている。一方、現物については、マレーシア一次産業省に属するマ レーシア・ゴム局(MRB:Malaysian Rubber Board)の中にあるマレーシア・ゴム取引所(MRE:

Malaysian Rubber Exchange)が、天然ゴムの価格算出とその価格を公表する業務を所管しており、この 公表価格は、同省のホームページに日々掲載されている。

天然ゴム価格の算出は、MRB メンバーの中から任意に抽出された、SMR20 のプロデューサーとディーラーから のヒアリングによって集計される。ヒアリングした価格の平均値に調整を加えたものが、公表価格となる。公表価 格については、MRB のゴム特別委員会で定期的にチェックされている。問題が生じた場合は、マネージメント委 員会に報告され、審議を行うことになっている。

第 4 項 インドネシア市場

世界第 2 位の天然ゴム生産国であるインドネシアには、まだ公設の取引所が設立されていない。現物取引に 関しても、昔ながらの相対取引であり、産地の輸出業者がオファーを提示し、それに対し、輸入業者がビッド

(買い付け希望価格)を入れて値段を決めるというオーソドックスな取引形態となっている。

しかし、世界的に最も汎用されているスタンダード・グレードであるブロック状ゴム(TSR)はこのインドネシア産 が最も多く、米国の天然ゴム輸入のほとんどがこのインドネシア産 TSR で占められている。

第 5 項 中国市場

中国では、上海期貨交易所(SHFE : Shanghai Futures Exchange)に天然ゴムが上場(1993 年 11 月上場)されており、 同所では、ゴムの他に銅、金、亜鉛、アルミ、燃料油等の先物取引が行われている。

中国では、近年の急速な工業化に伴い、新ゴム消費量が伸びており、天然ゴム、合成ゴムともに世界最大の ゴム消費国となっている。中国の自動車産業は 2002 年の WTO 加盟以来、劇的な成長を遂げ、中国経済の 高度成長を後押しする牽引車となりつつある。中国の 2009 年の販売台数は 1,383 万台に達し、米国を超え て世界一となり、その後も増加を続けている。2010 年の SHFE におけるゴム先物の年間出来高は 1 億 6,741 万枚に達し、ゴム市場としても世界一の規模となった(2016 年は 9,373 万枚と世界最大を維持している)。

なお、上海先物市場は海外に解放されていないため、市場規模は大きいが国際的な影響力は現在のところ限 定的といわれているが、東京商品取引所(TOCOM)のゴム市場やシンガポール取引所(SGX)への裁定 取引も拡大し、価格への影響力も大きくなっており注目する必要がある。

第 6 項 ゴムの OTC 市場(ゴム・フォワード市場)

ゴムの OTC 取引は、シンガポールで活発に行われている。シンガポールの OTC 市場は、「インター・ディーラー 市場」と呼ばれ、ゴム・ディーラー、シッパー、日本商社、中国の当業者などがプレーヤーとなって TSR20 を中心 に取引を行っている。

また、SGX では TSR20 を対象とした OTC クリアリングを行っている。

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