㈱
金澤欝科大學細菌學教室
(主任谷教授)
腸「チフス菌ノ固有運動速度二就テ
運動速度ノ時間的鐘化,温度ニコル 影響及ビ各菌株ノ不均速度
扇 内 寛 市 螂 小 林 勇
(口召末口8句…5月30日;乏阿廿)
第一章 緒 言
第二章 實験材料及ビ賀験方法 第三章 貢験成績
第一節 運動速度ノ時間的鍵化
第一革緒
次
第二節 運動速度ノ温度ニコル影響 第三節 名菌松ノ平均逃度 第四章 緒 諭
女 厭
目
多数ノ細菌ハ鞭毛叉ハ膜テ以テ固有運動(Eig㎝b・weg・・g)ク螢ミ,ソノ運動ノ遅速ハ細 菌ノ種類ニョリテ異ナリ,細菌ノ生物學的憧秋ノ研究二,艀亦鑑別珍麟二際シテモ重要ナル 意義ラ有スルコトハ多言テ要セサル所ナリ.勿論固有運動二開スル言巳載ハ砂シトセザルモ,
夫等ノ多クハ箪二眼ニョル判断二通ギズシテ,速度ク数量的二測定セシハGabritschewsky エ1〕(1900)テ以テ礪矢トスルモノノ頼シ.共役僅二Camct et Morce1Gamior(呈](1902);
Lehmam u.Friedて3〕(1903);Ljacho,vet・ky(4〕(1906);Stige11L5}(1908);吉永{引(一910);
及ビDavid〔7)(1925)等ノ業績テ数フルノモ、且ツ是等研究者ノ報告タルヤ,各々測定方法,
測定條件テ異ニシ,從ツチ其ノ結果モ亦匿々ニシテ,何レニ1擦ルベ手カテ知ラズ.
裁二於テ,条等ハ先ヅ腸「チフス菌ノ固有運動速度テ,日常観察スル傑作印チ37℃24時間
「ブイヨン」嬬養ノ菌二就キ懸滴標本テ作リ室温ニテ測定セリ.此際從來併用セラレシ接眼ミ グμメー」タ」ノ代リニ測定ノヨリ正確ナルコドテ期スベク,z.之で二氏大型描議器ヲ用ヒ,
細菌ノ運動テ描窺シ,速度テ算出スル方法ラ新二試ミ,運動速度ノ時間的愛化,温度トノ開 係,及ピ平均速度テ研究セルラ以テ裁二報告シ,大方ノ御叱正ラ乞ハントスルモノテリー
第二車
賓験材料及ビ賓験方法
實験材料一篭教室保存ノ腸「チフス薗橡4種(伯林第1號蛛,越後椥小ホ株,富本橡)テ選ビ,毎糟37℃
24時間培養ノ寒天2回,更=「プイヨy」2回通過セシモノヂ使用セリ.
賢験方法 蒲浄ナル覆蓋硝子:1白金理ノ「ブイヨン」薗液ヂ深リ。速二懸滴標本ヂ作リ。懸滴ノ…塁縁チ
玉醐〕
3664
扇内・小林
避ケ中央部二・inst・ll・皿シ,アッベー氏大型描謝器チ少テ視野中ノ運動セル菌ノミテ無撰揮的二描窟シ,
ソノ長サラ 瑞西製曲線計ニテ測リ,更二賀際運動距離二換算シ,コレテ「ストッブウナツチ」ニテ計測セル 運動時間ニテ除シ,以テ運動遮及チ算出セリ.
貿際運動距離ノ換秦ハ次ノ姉ク計算セリ,期チ顕微鏡ハLdt・製ニテ,接眼鏡3及ビ油浸装置,筒畏 130。帆トシ,反射鏡角皮30旗,摘謝料1萎ノ傾斜角30度,投影面ト反射鏡支鮎トノ距離約38帆援大皮増 加ノ目的二杉■u氏加温箱㈹ノ下二15北m。ノ嚢チ置キ,此ノ装置二於テ,賜物ミクロメータ」ノ100μ
ガ描謹紙上ノ何レノ方向ニモ常二14.6㎝・一ノ長サニ投影サレタリ.敬二紙上1cm・ノ長サハ實際運動距離 二68493μ二相満ス 従ツチ描砥紙上二於ケル曲線ノ長サ(cm〕二68493チ乗ツレバ求ムル實際運100
14,6
動距離(μ)チ得ヘシ.
第三車賓験成績
第一節 運動速度ノ時間的蟹化
PH7.2/rブイヨン」二37℃24時間珊養セル菌テ室温(げC)二於テ,標本テe1nste11㎝
シテヨリ5分ヲ経テ概測チ開始シ,概察菌藪ヲ15個トシ,英ノ平均ヲ皿テ営該時間ノ速度ト シテ時間的ノ釣ヒテ楡セルニ,第1表千見ルカ如キ残績テ得タリ.
第1衰運動速度ノ時問的劉ヒ (伯林第1號松貿験例)
観察時間 m均雌(卯)最大連鮒)最悩舳観察菌籔 5分 11.06 20,15 7.47 ユ5
10〃 ユ0.75 14,05 8.04 15
20〃 11.O0 17,58 6.6ユ 15 30〃 1ユ.62 14,01 7.30 工54 5 〃 工1.ユ9 13,84 8.22 15
60〃 11.1O 14,05 7.05 15
2日岳 ユO・皇4 14,28 6.87 15
3 〃 1O.53 13,45 6.88 ユ5 5 〃 9.63 12,45 6.40 15 7 〃 8.88 10,99 4.62 15 1 0 〃 7.95 10,67 5.73 15
12〃 6,61 8,30 4.98 15
師チ5分後ヨリ約60分マデ八大鶴11秒μノ連サニシテ,殆ド著焚ナク,ソレヨリ徐々二速 度ノ減少ヲ來シ,運動状態モ悪クナリ,不動ノ菌モ増加シ,12時間後二於テハ6.61秒μノ速 度テ示シ町ナリ不活滋トナル.コレテ圏示・ヒバ第1圖ノ如シ.最大速度モ平均速度ト略平行
シテ直級的二減少スルチ見ル.
他ノ菌株二於テ毛略同様ナル経過テトレリ.
【60】
運 動 速 度 秒
μ
腸「チフス菌ノ固有運動速度二戯テ
第1圃 運動速度ノ時間的愛化
(拍林第1號橡賛験例)
麩rT
20 18 1S 14 i2 ic 8 6 4 212ヨ456ア89101112
観察時間(時)
□ 一「F,;
一
坦辻1一 、仁
一平均趣鹿
黶c一一一一 ナ犬速産
、 ,一 ・ 一
1 、
、
鮒
条等ノ場合ニハDavidノ言ア如キGeisselstarreノ現象ヂ認メザリキ.
銀ハ塙着方法,菌浮游液製作ノ差異,温度ノ急激ナル焚比等ニコルモノナラン.
リシテ,「ブイヨン」培養テ其薩實験二供スルコト優レリトイ7ベシ.
第二節 運動速度ノ温度ニョル影響
3π24時間「ブイヨン」培養セルモノテ,種々ナル温度二調節セル杉山式加温箱中ニテ,
各温度毎二新鮮標本ヲ作製シ,標本テ。insto11e・シテ後10分テ経テ,15個ノ菌ラ測定シ,同 様實験テ5同繰返シ共ノ平均テ皿テ常該湿度二於クル速度トナセリ.英ノ成績ラ表示セパ第
2表ノ如シ.
第2表連動速度ノ温度ニコル影響 (植林第1號株實験例)
運動速度ノ時間的愛化テ観察セシハ Da・idmノ蜜蜂ノ腸ヨリ得クルー種ノ桿 菌二就テナセルモノァルノモニシテ,腸
「チフス菌二就テノモノラ未ダ聞カス.
Davidハ真菌テ37℃20時間寒天培養シ,
生理的食麗水ノ浮游液トナセルモノニテ 観察シ,標本Ein・td1u㎎芭後ニハ連動
ナク(Geisse1starre),規則i1三シギ運動二
揃7マデニハ,18℃ニテハエO分間テ要 シ,ソレヨリ20分後二最大速度二達シ,
5分後ニハ緩慢トナルモ,3時間後二於 テ狗多藪ノ菌ハ運動テ保テリト.
惟フニ,コノ現 コノ見地ヨ
5.C
平均速度(秒μ)
微動シ測定不可能
最大連度(杉戸)1最小速度(秒μ) 観察菌籔
U ) ¶映瑚』! 別んLη、 」拍ヒ ■ . ,
γ 6.62 12,03 3.75 75
ユ0. 9.20 14.95 4.58 75
17■ 11.69 20.15 7.47 75
27。 15.42 25.54 10.50 75
37。 16.77 27.32 3.69 75
42。 ユ4.92 ユ9.58 10.56 75
45。 11.91 15.OO 7.50 75
50。 微動シ測定不可能 一 一 ■
55。 O O O
i
副チ九二於テハ殆ド分子運動二近キモノニシテ測定不可能テルモ,九二列ルヤ初メテ 6.62秒μノ速サラ星シ,温度ノ上昇ト共二漸次糟大シ,げC二一テハ11.69秒μ,.37℃ニテハ 【61】
搬 扇内・小林
16.η秒μノ最高調二達シ,其冒リ再ビ下降ヲ球シ,ψCニテハ比92秒μトナリ,50℃ニテ バ健二5−7秒μノ運動テナスモノアルモ,多クハブラフラセル不規則ナル微動二通キズ,
55℃ニテハ金ク停止セリ.コレテ国ニテ示セパ第2圖ノ如シ.37℃ヲ頂馳トシ,ソレヨリ 第2国運動速度ノ温度ニョル影響 低温ノ方ハ傾斜緩カニ減少シ,高温ノ方ハ (伯林第1號蛛貿験例) 険幌1テナシテ減弱スルヲ見ル.Lehmam u.
18 F・i・d側ハ柄1草菌二就テ湿度トノ開係テ研 16 先シ,収C二最大速度二達シ,O℃及ビ 14
12 55℃二於テ運動停止シ。亦腸「チフス菌二
議・ 就デモ略同様ノ燃テ得川・コレデ余
速 8
慶 6 等ノ成績二比スル二大鎧一致ゼルテ知ル・
秒 4 新ノ如ク,速度ハ温度ニョリテ著明ナ μ 2
ノレ影響ヲ蒙ルモノナリ.今實験成綾二就
0510.152025;0;540455055 テ,舞氏10度ノ差二軸スル温度係藪Qloヲ 温度(α〕 Kanitz氏蜆リ=與ペタル次式ξヨリテ求ム 10(!。9K2_1。竃Kτ〕 ノレニ・第3表ノ如クナレリ・
Qm=10 t2■t一 但シK1及ピK2ハ湿度t1及ビt2二於クル速度ヲ表ハス.
第 3 表
題動速度二対スル澄度係数 (植林第1號株〕
温風℃) 遮 度 温度係数
(砂μ〕 ((⊇Io)
@ 一 一 一 」 一 一 ⊥「一 一 一
5
1
一7 6.62
10 9.20
〜
s
1.717 11.69
27
} 1.3
I5.目2
37
} 1.1
16.77
42 14,92
二…
O.7
帖 I1,91
50 ,
55 0
即チ温度係数Q1oハ1.アーO.クテ示シ澄度ノ上昇ト共二 共値テ減ジ,英ノ間二於ケル該数値ノ差異八大ナハ言
フベカラズ,金鎚トシテ12ノ温度俸数ヲ示シ,Van t Hoff民ノ化學反騰速度二開スル法則ノ要求スル藪僚ヨ
リ稽々小ナリト難モ7。土17自Cノ間二於テハ略一致スル モノノ如シ.
第三節 各菌株ノ平均速度
PH7.2/rブイヨン」二3ブC24時間培養セル菌二就キ 室温(げC)二於テ,標本Einste11u㎎後5分テ待チテ15 個ノ菌ヲ測定シ,同様ノ實験ヂ3回繰返シソノ平均テト
リテ以テ各菌株ノ平均速度トナセリー期カル観察菌金魑 ノ平均速度,共擦準偏差,同偏差係数及ビ最大最小速度 デ撃ク レハ第4表ノ如シ.
副チ同一株二於デモ最大及ピ最小速度ヨリ見ル地ク,種々ナル褒育時期ノモノアルタメニ 共ノ速度二著シギ相違アルモ,平均速度トシテバユ0−1秒μチ示シ大差ナシ.今最大平均速 度テ示セル宮本株ト最小平均速度ノ小木株ノ両者間二,果シテ確然タル差異アリヤヲ英ノ確 率誤差ヨリ判定センニ,
両者ノ差=1工.何一iα02=1.45
義ノ確率誤塞;±1/u%茗十α28に±O・46
【故コ
腸「テフ只菌 固有連動遮慶;前テ
蜘
第4表 各菌株ノ平均速度
僧称
越後橡 小ホ橡 富本檬
総平均遼塵第1號捺 (秒μ)
平均速度(秒μ) 11.31±O.30 10・47±0−33 10.02±0.28 11.47±α36 10.82 同標準偏差(紗μ) 3刀O土α21 3.28土0.24 Z79土O.20 乱57±O−26
同偏差係籔(%) 2a53±2刀O 28石9±2,18 2487±1.87 3u2土Z41
最大連崖(秒μ〕 20.15 22,42 16.23 21.52 量小速度(秒μ〕 498 3.21 638 5.10 観 察 菌 戯 45 45 45 45 (表中±チ附シタルハ確率誤差)
翻チ両者ノ差ハ差ノ確率誤差ノ3−15偶ニシテ確實ナル差異アハハ断言シ難シー弐二富本 株ト越後株二歳キ判定センニ,
両者ノ差竺1i.伸一0.47=1.oO
蓬ノ確率課塞ご土1/0,362+0332:±049
コノ両者間ノ差ハ塞ノ確率誤差ノ2.04倍ナル敬二資在的ノ差異ナシ.奈菌株ニョリテ菌力,
増殖能力等二幾分ノ差異アル如ク,運動遮度二於デモ葉ノ偏差係数ノ示セル如ク多少ノ菱異 アリテ然ルベキモ,本質的ノ差異ハ認メラレズ.今各菌株ノ平均速度ヨリ腸rチフス菌ノ平均 速度ラ求ムレバエO.82秒μテ観 今先人ノ記載テ参照スルニ,4肌/st(Gabritschgwskジ1〕);
6山/、、、、或ハ31〕6 /。、(Camot et Mor㏄l Gamierω);O刀18 肌/s冊(Lεhma㎜u.Fried㈹);
I.15μ/s肥(Sdgo11(5,);O.023帆/s冊(吉永工帥)等ノ数値ヲ撃ゲ締ベキ毛,各々測定方法及ピ條
件ヲ異ニシ,条等ノ成績ト比較シ待ザルモ,最モ近似ノ條件タル37℃8時間塙養テ選ベル Lebmam u.Fried㈹ノ成績二比スルニ稲々小ナル値テ得タリ.コレハ恐ラク培養時間ノ相 違二基クルモノナラ川考ヘラル.
第四章詰 論
条等ハ腸「チフス菌4株二就テ,吾人ガ普通細菌ノ運動ラ観察スル條件勘チ炉C24時間
「ブイヨン」塙養ヨリ懸滴標本テ作リ,室温二於テ,アッベー氏大型摘議器テ用ヒ菌ノ運動ヲ 描霧シ,英ノ速度ヲ測定セルニ,次ノ緒論チ得タリ.
(1)運動速度ハ標本テ架シタル後5分ヨリ凡ソ60分間八大髄u秒μノ速度ラ保持シ著墜 ナキモ,夫・ノヨリ漸次速度ノ減少ヂ來スト共二運動微態不良トナルヲ認ムー
(2)運動速度ハ湿度ニョリテ著シク影響セラレ,37℃二於テ最大速度16〃秒μ(伯林第 1號株)ヲ示シ,夫レヨリ低温及ピ高温ニナルニ從ツチ減弱シ,5℃二於テハ殆ド運動ナク,
55℃ニテハ金ク停止スルチ認ム.
温度係数Q1oヲ観ルニ,7℃ヨリ岬C二温度ノ上昇スルト共一・7ヨリ漸次典ノ値ヲ減ジ 0.ハナリ,一般二Van tHo舟氏ノ化學反騰速度二關スル法則ノ要求スル数値ヨリ稿々小 量⑧=
3668 扇 内・小林
ナリト離モ月一17Cノ間二万舎テハ略一致スルモノノ地シ.
(5)運動速度ハ各菌株間ニハ本質的塞異殆ド認メラレズ.総牛均速度トシテ10−82秒μ
(最大速度22.42秒μ最小速度3.21秒μ)ノ値テ得タリ.
欄筆二臨ミ。籍始御懇篤ナル御指導テ辱フシ,加ブルニ碗校閲ノ砦チ賜リシ恩師谷教授二満腔ノ感謝チ 棒ゲ,且種々ノ御指導ト餓奥麓ヂ飛フセル病理學教室杉山教授及ビ塚本博士二深甚ノ謝意テ表ス.
文 麟
1) Gabritsdlewsky; Zeitsdlr・ £ IIyg.Bd・35,S・ユ04・(ユ900)・ 2) C別r皿。t et ㎜or盤。l
Gami趾;COmpt.肥nd,soc.Eio1−Paris,S,74&(1902)、 3)Lehmamm皿.趾i6d;Archiv.f.
Hy読Bd・46,S・31I・(1903〕・ 4)Ljao止。w6tzky;r吐Cen一冊L r B日1(t・I・Abt・0ri9・Ed・38,
S・387・(1906)・Ce趾記1・仁Bakt・I・Abt・Or毎Bd・57,S・18α(1911)・ 5)Sti蟹e11;Ce口t記1.
工脱kt・I・AbしOrig・B乱45,S・289,(1908)・ 6)吉永;衛生學及細菌學時報,第4衛(1910)・
7)D研id;C㎝tm1.[腕kしI.Abt.Orig、睨一96,S.81.(1925〕. 8)杉山;十全會雑誌,第 33巻,m1頁,(1928)。 9)Ka皿i屹;Te!・・p胴tu・md Leb㎝sv〇二g肋go19ユ5.B町1i口・Tempemt岨 阯皿d Leb釦svorg肋ge i口A11gemei鵬口しTabuIユe bio1ogicao.IL1925−B町1丘肌S.9)。