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博 士 ( 医 学 ) 安 部 圭 祐 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 安 部 圭 祐

学 位 論 文 題 名

血 液 凝 固 反 応 に お け る 蛋 白 リ ン 酸 化 酵 素 の関 与

学 位 論 文 内 容 の 要旨

I緒  言

  血液 凝固反 応のカ スケ ードの 過程でCaz十,燐脂質を必要とするステップが存在するが,Caz+,

燐脂 質の作 用機作 は必ず しも明 らか ではな い。

  一 方 , プ 口 テイ ン キ ナ ー ゼC( 以 下PKC)は 細 胞 内の 基 質 蛋 白 質を 燐 酸 化 す るこ と に よ り 細 胞の 分化, 増殖及 び分泌 機能ナ ょど に関与 してい るが, その活性発現には補因子としてCa2゛及び 燐 脂質 , 特 にphosphatidylserine( 以 下PS)を 必 須 と し, 一 方 , 細 胞外 に お い て はフ ィ ブ リ ノ ーゲン (血液 凝固 第I因 子) などの 血漿蛋 白質を 燐酸化 する との報 告があ る。こ れら のこと は PKCが 血 液 凝 固因 子 を 燐 酸 化す る こ と に より 血 液 凝 固 反 応ヘ 関 与 し う る可 能 性 を 示 唆し て い る。

  本 研 究 に お いて は 血 液 の 凝固 反 応 に お け るPKCの 関与 を 検 討 す る目 的でCaz゛ 及び 燐脂質 を 必 要と す る 血 液 凝 固第 彊 , 第H(プ 口 ト ロ ン ビン ) 及 び 第I因 子 に 及 ば すPKCの 影 響を 検 索 し た。

II材料 お よ び 方 法

  1. PKC精 製 :PKCは 西 塚 ら の 方 法 に 準 じ , ブ タ 脾 臓 よ りDEAEセ ルロ ー ス , セ ファ ク リ     ルS−200及 び プ ロタ ミ ン ・ セ ファ 口 一 ス4Bア フ ィ ニ テ ィー クロマ トグラ フィー にて精 製     し た 。

  2. PKC活 性 測 定 :Kuoら の 方 法 に 準 じ て 施 行 し た 。 基 質 と し てLysine―Rich Histone     (LRH)あ る い は 試 料40ゼgを 用 い , 精 製PKC3〃g及 び50uM[7−3ZP]ATP(0.     37T Bq/mmol)を 加 え ,PS5 ug及 びO.5mM CaCl2の 存 在 下 , 或 は 非 存 在 下 で , 燐     酸 化 反 応 を30℃ に て5分 問 行 な い ,5%TCA添 加 を も っ て 反 応 終 了 と し た 。   3. オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ‑:0.333mM ATP添 加 で10分 間 反 応 後 ,30mMTris/HClー     buffer (pH7.5),9%SDS,15% グ リ セ 口 ― ル 及 び0.05%bromophenol blueよ り な る

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    溶液O.1施を加え反応を停 止せしめた。2−ME8〃1を添 加後,反応液50〃1を10%ゲル     にてSDS−PAGEを施行した。染色 ,脱色,乾燥を施した後,X線フィルムに−80℃で     7〜10日間,暴露した。

  4.燐酸化アミノ酸残基の解析:O℃冷却により燐酸化反応を停止させ,燐酸化第H因子(0.

    24mg)を用いて牧田らの方法に準じて燐酸化アミノ酸残基の解析を施行した。一次元とし     てセル口―ス薄層板上にて1,OOOVで1時間電気泳動を施行し,次に二次元としてアセン     ディング・クロマトグラフ ィーを施行した。乾燥の後,X線フィルムに‑80℃で7〜10日     間 暴 露 し た 。 標 準 燐 酸 化 ア ミ ノ 酸 はNinhydrinを 用 い て 染 色 し た 。   5.燐酸化第皿因子の凝固活性 測定:燐酸化第H因子の凝固活性はQuick一段変法によるプ     口卜 口ン ビン 時間(PT)に て凝 固時 間測 定 機KC―1Aを用 い て測 定し,triplicateで   .施行した。

  6. PKCの阻 害 剤による検討:PKCの阻害剤である,gossypol,palmitoylcarnitine,     trifluoperazine及びstaurosporlneを用いて,PKCによる第H因子の燐酸化に及ぼす     影響を検討した。

m結  果

  1.オ‑卜ラジオグラフィ―

    PKCによる凝固因子の燐酸化をオー卜ラジオグラフィ―にて検討した。血液凝固第I,第   II及び第彊因子がPKCによる燐酸化を受け,基質になりうることが示唆されたが,第H因子   の活性型であるト口ンビンでは燐酸化は認められなかった。

  2.燐酸化アミノ酸残基の検討

    PKCにより燐酸化されるアミノ酸残基の二次元展開による検討ではスレオニン残基,セリ   ン残基には燐酸化が認められたが,チ口ジン残基には認められず,燐酸化の程度はセリン残基   で最も著明であった。

  3.第II因子の基質としての検討

    PKCによる第n因子の燐酸化に関する酵素学的検討では,第II因子に対するミカエリス定   数 はO. 86ロMであり,化学量論的には第n因子1モルあたり最大で約O.2モルがPKCにより   燐酸化されることが示された。

  4.燐酸化第u因子の凝固活性の検討

    30℃,5分問で燐酸化された第II因子は,20. 60秒土O.17秒(土SE)で凝固し,PKCの補

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因 子で あるPS及 びCaCl: を添 加しな いコン 卜口― ルの21. 27秒土O.20秒より 短縮す る傾向 に あ り 凝 固 活 性亢 進 の 可 能 性が 示 唆 さ れ た。

5.PKCの 阻 害 剤 に よる 検 討

  Gossypol及 びpalmitoylcarnitineは100〃Mの 添 加 に てPKCの 燐 酸 化 を 著 し く 阻 害 し た 。Trifluoperazineに よ る 阻害 活 性 は100ロMに て認 め ら れ た が10ロMでは 認めら れな かっ た 。StaurosporineはlOnMで も 阻 害 活 性 を認 め ,lOOnMで は 燐酸 化 活 性 が 殆ど 検 出 さ れ な か っ た 。

IV考  察

  本 研 究で は 血 液 の 凝固 過 程 に お け るPKCの 関与 を 解 析 す る目 的 でCaz゛ 及 び燐脂 質を要 求す る 血 液 凝 固因 子 に 対 す るPKCの 影 響を 検 討 し た 。そ の 結 果 , 第I因 子 に 加 え ,第H因 子 及 び第 珊 因 子 がin vltroでPKCに よ り 燐 酸 化さ れ る 事 が 明ら かにな った 。燐酸 化され た第皿 因子 の凝 固 活 性 は ,PT測 定 で は, 亢 進 する傾 向が 示唆さ れた。 第1I因 子の燐 酸化部 位はト ロン ビンが 燐 酸 化され ない事 より ,ト口 ンビン の存在 するC末端 には なく,N末 端付近 であろ うと推測された。

こ のN末 端付 近 の 部 位 にはCa2゛ 及び 燐 脂 質 と の結 合 に 必 須 であ る ァ‑carboxyglutamic acid ド メ イ ン が 含ま れ て い る 。第1I因 子 の燐 酸 化 に 対 するPKCの 阻害剤 の検討 では, 競合 阻害剤 の な か で はgossypolが 最 も 強く 燐 酸 化 を 阻害 し ,trifluoperazineは100肛Mでは 阻害 効果は 殆ど 認 め ら れ な い等 , 競 合 阻 害剤 間に おける 差異 が認め られた がその 原因は 明ら かでは ない。 更に PKCの 基質 と し て の 第H因 子 を 酵 素学 的 に 検 討 し, ミ カ エ リ ス定 数(0. 86〃M)は 効 率 の 良 い 基 質 と し て 報告 の あ るLRH(0.6ロM) な ど に匹 敵 す る 事 が認 め ら れ た 。化 学量 論的検 討では 燐 酸 化 さ れ る第H因 子 量 は1モ ルあた り約O.2モル と少量 であ った。 しかし ,補体 成分C3の.様 にO.5−O,6モル 程度の 燐酸 化でも 生理活性に影響しているとの報告もあり興味ある知見と考えら れ る。

V結  語

  1) 凝 固 活性 時 にCaz゛ 及 び 燐 脂 質を 必 要 と す る血 液 凝 固 第I, 第II及 び第 彊 因 子 がPKCに     よ り燐 酸 化 さ れ た。

  2)PKCに よ り 燐 酸化 さ れ た 第II因 子 の ア ミノ 酸 二 次 元展 開解析 によ り,燐 酸化を 受ける ア     ミ ノ 酸 残 基 tま 主 と し て セ リ ン 残 基 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。   3) 酵 素 学的 検 討 で は 第1因 子 のPKCに よ る 燐 酸化 反 応 に お ける ミ カ エ リ ス 定数 は0.86nM

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    であり,第H因 子1モルあたり約O.2モルが 燐酸化された。

4) 第H因子 のPKCに よる 燐酸 化はPKCの競 合的 阻 害剤 のう ちではgossypolにより強く     阻 害 さ れ ,staurosporineで はnMオ ー ダ ー に て 阻 害 活 性 が 認 め ら れ た 。 5)プ口ト口ンビン時 間の測定ではPKCにより燐酸化された第II因子の凝固活性は亢進する   傾向を示した。

  以上 より血液凝固のカスケード においてPKCが血液凝固第u,第矼及び第I因子を燐酸化し て血液 凝固の過程に関与している ことが示唆された。

学位論文審査の要旨

I研究目的

  血 液凝固反応にはプ口テイン キナーゼC(以下PKC)の補因子でもあるCa2゛及び燐脂質を 必要とするステップが存在するが,これら両者の作用機作は必ずしも明らかではない。一方,

PKCは細胞内情報伝達系において主要なる燐酸化酵素であるが,フィブリノーゲン(血液凝固 第I因子)などの血漿蛋白質を細胞外にて燐酸化するとの報告がある。このことはPKCが血液 凝固因子を燐酸化することにより血液凝固反応ヘ関与しうる可能性を示唆している。そこで血液 の凝 固反応におけるPKCの関与を 検討する目的でCaz゛及び燐 脂質を必要とする血液凝固第 彊 , 第 皿 ( プ ロ ト 口 ン ビ ン ) 及 び 第I因 子 に 及 ぼ すPKCの 影 響 を 検 討 し た 。

II材料およぴ方法

  1. PKC精 製:PKCは西塚ら の方法に準じ,ブタ脾臓よりDEAEセル口―ス,セファク リ     ルS―200及びプロタミン・セファ口ース4Bアフィニティークロマトグラフィーにて精製     した。

  2. PKC活 性測定:Kuoらの 方法に準じて施行した。基質 としてLysine―Rich Histone

保 章

   

   

崎 田

宮 牧

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

    (LRH) ある いは 凝 固因 子40〃gを用 いた 。精 製PKC3〃g及び50ばM[ ア− ¨P]     ATPを加え ,phosphatidylserine5〃g及びO.5mM CaCl:の存在下,燐酸化反応を30     ℃にて5分間行ない,5%TCA添加をもって反応の終了とした。

3.オートラジ オグラフィー:O. 333mM[7‑32P] ATP添加で10分聞反 応後,30mMTris/

    HC1(pH7.5),9%SDS,15%グリセロール及びO.05%bromophenol blueよりなる溶   液0.1施を 加え反応を停止せしめた。2,ME8〃1を添加後,反応液50 Lt1を10%ゲルに     てSDS―PAGEを施行した。

4.燐酸化アミノ酸残基の解析:O℃冷却により燐酸化反応を停止させ,燐酸化第H因子(0.     24mg)を用いて牧田らの方法に準じて燐酸化アミノ酸残基の解析を施行した。セルロース     薄層板上にて1,OOOVで1時間電気泳動(一次元)を施行後,アセンディング・クロマト     グラフィー(二次元)を施行した。標準燐酸化アミノ酸はNinhydrinを用いて染色した。

5.燐酸化第H因子の凝固活性測定:燐酸化第II因子の凝固活性はQuick一段変法によるプ     ロト口ン ビン時間(PT)にて凝固時間 測定機KC一1Aを用いて測定し,triplicateで   施行した。

6.PKCの阻 害剤 に よる 検討 :PKCの 阻害 剤であ る,gossypol,palmitoylcarnitine,     trifluoperazine及びstaurosporineを用いて,PKCによる第皿因子の燐酸化に及ばす     影響を検討した。

m結  果

  1.オ―トラジオグラフィ―

    PKCによる凝固因子の燐酸化をオートラジオグラフィーにて検討した。血液凝固第I,^第   II及び第彊因子がPKCによる燐酸化を受け,基質になりうることが示唆されたが,第H因子   の活性型であるト口ンビンでは燐酸化は認められなかった。

  2.燐酸化アミノ酸残基の検討

    PKCにより燐酸化されるアミノ酸残基の二次元展開による検討ではスレオニン残基,セリ   ン 残 基 の 燐 酸 化 が 認 め ら れ , 燐 酸 化 の 程 度 は 後 者 で よ り 著 明 で あ っ た 。   3.燐酸化第矼因子の凝固活性の検討  .

    30℃,5分間で燐酸化された第II因子は,20. 60秒土O.17秒(土SE)で凝固し,コント口一   ルの21. 27秒土0.20秒より短縮する傾向に あり凝固活性亢進の可能性 が示唆された。

  4.第H因子の基質としての検討

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  PKCに よ る第H因 子 の 燐酸 化 に 関 す る酵 素 学 的 検 討で は , 第 矼 因子 に 対 す るKm値 はO.86 uMで あ り , 第u因 子1モ ル あ た り 最 大 で 約O.2モ ル が 燐 酸 化 さ れ る こ と が 示 さ れ た 。 5. PKCの 阻害 剤 に よ る 検討

  第II因 子 の り ン酸 化 はLRHを 基 質 と し た場 合 と 同 様 に阻 害 さ れ た 。特 にStaurosporine はlOnMで 阻 害活 性 を 示 し ,競 合 阻 害 剤 の中 で はgossypolがPKCの燐 酸 化 を 強 く 阻害 した 。

IV考 案 お よ び 結 語

1. 凝 固 活 性 時 にCa2゛ 及 び 燐 脂 質 を 必 要 とす る 血 液 凝 固第I, 第u及び 第vm因 子がPKCに     よ り 燐 酸化 さ れ た 。

2. PKCによ り 燐 酸 化 さ れた 第II因子 のア ミノ 酸二次 元展開 解析に より, 燐酸 化アミ ノ酸残

゛ 基は 主 と し て セ リン 残 基 で あ るこ と が 強 く 示唆 さ れ た 。

3.PT測 定 で はPKCに よ り 燐 酸 化 さ れ た 第H因 子 の 凝 固 活 性 は 亢 進 す る 傾 向 が 示 唆 さ れ     た 。

4.酵 素 学 的 検 討で は 第 矼 因 子 のPKCに よる 燐 酸 化 反 応に お けるKmf直 は0. 86〃Mであり ,     第H因子1モ ル あ たり 約O.2モル が 燐 酸 化 され た 。

5. 第H因 子 のPKCに よ る 燐 酸 化 はPKCの 競 合 的 阻 害 剤 の う ち で はgossypolに よ り 強 く     阻 害 さ れ,staurosporineはさ ら に 強 い 阻害 活 性 を 示 し た。

  こ れ ら の 検 討の 結 果 , 血 液凝 固 反 応 に おい てPKCが血 液 凝 固 第 珊, 第u及 び 第I因 子 を燐 酸 化 して 血 液 凝 固 の過 程 に 関 与 して い る こ と が 示唆 さ れ た 。

以上よ り, 本研究 は博士 (医学 )の学位論文として妥当なものと判断される。

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