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博 士 ( 医 学 ) 足 立 祐 二 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 医 学 ) 足 立 祐 二

学 位 論 文 題 名

ラッ ト に お け る 正 常 お よ び 実 験的 停 留 精 巣 内 グル タチ オン S ― ト ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ の 免 疫 組 織 化 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    Iはじめに

  グルタチオンSー卜ランスフェラーゼ(glutathionsS一transferase: GST)は,精巣では Leydig細胞と精細管に局在しているといわれている。この研究では,未熟な精巣および停留精 巣内でのGSTの動きを理解 するため,ヒ卜腎から精製し たGSTに対するポリク口ナール抗体 を用いて,ラットの出生日から成熟期までの正常および実験的停留精巣を酵素抗体法で染色し観 察した。この染色で明瞭に染色されるLeydig細胞の量の変化も,計量形態学的に追求した。ま た,実験的停留精巣は,ヒトの先天的停留精巣とも比較するために,生後1週の早期に精巣導帯 の切断法により作成した。

    u材料と方法

  総計60匹のWistar系ラットを用いた。正常精 巣群は36匹で,出生日と生後1,2,3,4, 6,8,14,20週に4匹ずつ屠殺し,両側の精巣を摘出した。停留精巣群は24匹で,生後1週目 にネンブ夕一ル腹腔内注射による麻酔後と,下腹部正中切断にて開腹し,両側精巣を露出し,陰 嚢部に続く精巣導帯 を切断して腹腔内に戻した。動物は,生後3,4,6,8,14,20週に4匹 ずつ屠殺し,両側腹腔内精巣を摘出した。これらの精巣は重量測定後,Bouin液で固定,工タ ノール列にて脱水,パラフィンに包理,連続切片を作製した。酵素抗体法は,両群のパラフアン 包理切片を脱パラフ ィン後,ヒト腎GSTウサキ抗体を用いてSternbergerのperoxdase anti‑

peroxidase(PAP) 法によりGST活性を染色し, ヘマトキシリン対比染色も行い観察した。

対照実験は,Delellisらの方法に準じて行い,染色性も統一するため各スライドにヒト腎組織も 同時に包理し染色した。立体計量形態学的には,両群のPAP染色標本を顕微投影器で紙に00倍 拡大投影し,全精巣断面と染色されたLeydig細胞をトレースして,各面積を計測した。これら を,Weibelのstereologyの原理にもとづき,(1)精巣重量とともに,(2)精巣内でのLeydig細

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胞 の体積 比率 ,(3)Leydig細胞の重量を求め,両群を比較した。

m 結     果

  問 質Leydig細 胞 は , 正 常 ・停 留 精 巣 と も全 て の 週 でGST活 性 を 示し た 。分 布状態tま ,正常 精 巣で生 後4週まで 散在 性に分 布して いたが ,6週以降 に菱 形状の 集族を 形成し た。停留精巣は,

生 後6週まで 正常精 巣と 同じで ,14週以 降さ らに急 激に増 加し, 萎縮し た精 細管に より拡 大した 問 質 を 占 め 組織 学 的 にLeydig細胞 過形成 像を呈 してい た。 定量的 観察で は,精 巣重 量は正 常群 で 生 後4週 まで 徐 々 に 増 加し ,そ の後は 急激に 増加し ,8週以降 ほぼ一 定と なった 。停留 群は生 後4週ま で 正 常 群 と大 差 な く , それ 以 降 は 増 加せ ず , 正 常 群 の約1/3であ っ た 。Leydig細胞 の 体 積 比 率 は, 正 常 群 で 出生 日から1週 で減少 し,そ れ以降 上昇 し8週 で最 大とな り,そ の後再 び 減 少し た。 停留群 は生後4週 まで正 常群と 同様で ,そ の後急 激な増 加を示 して14週で最 大とな り ,20週 で 減 少 した 。 生 後6〜20週 で 停留 群 で は 正 常 群の2〜3倍で あ っ た 。Leydig細 胞 の 重 量 は , 正 常 群で 生 後4週 より 急 激 に 増 加し8週 で 最 大と な り , そ の 後滅 少 し20週で8週 の約1/ 2と な っ た 。停 留 群 は 正 常群 と ほ ぼ 同 様に 増 加 す る が ,8週 で 正 常 群の 約1/2で14週の最 大値 で 正 常群 と同 様とな った。 その後 減少す るが ,生後20週で停 留群 は正常 群の約2倍 と有意 に大き か った。

  正 常 精 巣の 精 細 管 は ,生 後2週 に 初め てGST活 性 を 示 す 細 胞と 球 状 体 (核を もた なぃ細 胞類 似 の 小 体 ) が出 現 し , こ れら は4週 で 数を 増 し た 。GST活 性 を 示す 細 胞 およ び球状 体は, 大き な も の は 細 糸期 , 接 合 期‑次 精 母 細 胞 と同 様 で あ り , 小さ な も の は 直径2〜3〃mの 球状を 呈し て お り , 上 皮内 で や や 管 腔側 に 散 在 し て いた 。GST活性 に細胞 質にみ られ ,核で 胞体内 で偏在 し て い た 。 これ ら の 形 態 からGST活 性は , 一 次 精 母細胞 が接合 期の段 階で 変性し ていく 細胞に 出 現 す る と 判定 し た 。 し かし ,生後6週 以降に なるとGSTに 対す る染色 性は見 られな くなっ た。

停 留 精 巣 の 精細 管 は , 生 後3週 にGST活 性 を 示 す 細胞 と球状 体が出 現し,4週 まで数 を増し た。

こ れらは 正常 と同様 に,大 多数は 細糸 期と接 合期以 前の一 次精母 細胞 の変性 する過程のものとみ な された が, 少数は 大型の 核と胞 体を もつ厚 糸期一 次精母 細胞の 形態 で破壊 途上にあることを示 し た 。 生 後6週 以 降 で は ,一 次 の 精 細 管にGST活 性を 示 す 変 性 破壊 途 上 の精 母細胞 が残っ てい た が , 大 部 分の 精 細 管 はGST活 性 を 示さ な い 精 祖 細胞 とSertoli細 胞の み で構成 されて いた。

    IV考  察

GSTは 多 くの 臓 器 に 分 布し , 広 い 基 質特 異性 を示す 多反応 性酵素 である 。今 回用い た抗ヒ ト

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腎GSTウサ ギ抗体は,等電点pHll.1,サブュニット分子量19,000のヒト腎由来のGSTを 抗 原として作成したもので,従来のラット肝GSTより小さな分子量を特徴としている。Leydig細 胞がGSTを含む理由は,GSTが ステロイドホルモン合成経路を触媒する△^―3ーケトステ口 イドイソメラーゼ作用に関与していると理解されている。今回の観察でも例外なく,全例Leydig 細胞はGSTに染まっていた。しかし,ラットは生後ステ口イドが大きく変化するといわれるか,

GST染色性に変化はあらわれ なかった。Leydig細胞内でのGST作用は,直接テストステ口ン 合成を反映していないようにみえた。また,正常精巣群と停留精巣群の比較では,Leydig細胞 は停留精巣で組織学的に過形成像を示したが,さらに計量形態学的方法を用いることで,比較的 正確な重量として停留群の過形成を証明することができた。少なくとも,この実験系では,停留 精巣のテストステ口ンが分泌障害のフィードバックを介するゴナドトロピン刺激により,Leydig 細胞の重量が上昇したといえる。

  精細管内のGSTの作用機序 は知られていない。今回の観察では,GST染色性は正常幼若ラッ ト精巣および停留精巣ともに未熟な精細管の変性していく精母細胞と核の消失していく球状体に あらわれていた。精細管で変性していく胚細胞がGSTを含むことを示したのは,この研究が最 初である。GSTは,有害物質の解毒の再のグルタチオン抱合の触媒酵素として働くといわれて おり,グルタチオンを高濃度に含む一次精母細胞がGST活性をもっことは,細胞が変性・破壊 されていく過程で発生した有害物質を解毒する作用(グルタチオン抱合)に関連し,最終的に利 用されなくなったGSTが球状体に濃縮されていく過程をみているとも推測される。また,変性 に陥る際にGSTの利用が停止して細胞内に蓄積していくことも考えられる。ラットで血液一精 巣関門は生後16〜 20日頃に完成するとされ,正常精巣で幼若期に一次精母細胞に変性があらわれ るのは,この未完成の関門を通過してくる物質により,影響を受けやすい滅数分裂途上の細胞が 変性したとも推測される。ラット精細管内のGSTの染色性により,精細管上皮の細胞変性・破 壊における代謝作用に関して貴重な情報が得られた。

  さらに実験手段に関して,今回の精巣導帯切断法は発育途中の出生早期でも可能であり,先天 性停留精巣と比較できる内分泌環境を作り得ると考えた。手術操作も簡便で,生後4週以降に停 留精巣特有の組織変化があらわれ,良い実験モデルと考える。

V 結     論

  抗ヒト腎GST抗体を用いて,出生から成熟までのラット精巣を免疫組織化学的に染色し,次 の結論を得た。1. Leydig細胞が明瞭に染め出され,その量の生後変化,実験による変化を明

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確に把握できた。2.幼若時に作製した停留精巣の重量は成熟ラットで正常の1/3になるにも かか わらず,Leydig細胞の量は正常の2倍となっていることを知った。3.精細管では,変性 してく胚細胞が染色された。このような細胞は正常では生後2週から4週にあらわれ,その後に 消失したが,停留精巣では生後早期から成熟期まで出現していた。このような変化fま,血液一精 巣関門の分化と関連すると考えた。4,生後早期に行う精巣導帯切断法は,先天的停留精巣の実 験モデルを作製するのに有用であった。

学位論文審査の要旨

  glutathioneS‑‑transferase (GST)は,精巣で はLeydig細胞と精細管に局在していると いわれる。本研究では,ヒト腎から精製したcsrrに対するポリクL1ナール抗体を用いて,ラ゛ソ トの出生日から成熟期までの正常および実験的停留精巣を酵素抗体法で染色し観察した。また,

染色されるLeydig細胞の量の変化も,計量幵彡態学的に追求した。

  材料と方法:総計60匹のWister系ラットを用いた。正常精巣辞は36匹で,出生日と生後1, 2,3,4,6,8,]4,20iに4匹ずつ屠殺し,両側の精巣を摘出Lた。停留精巣群は24匹で,

生後1週にネンブタール腹腔内注射で麻酔後,F腹部正中切開で両側精巣を露出し,精細導帯を 切断して月夐畦内に戻した。動物は,生後3,4,6,8,14,20週に4匹ずつ屠殺し,両側腹腔 内精巣を摘出した。これらの精巣fま,Bouin液で固定,工夕/一ル列にて脱水,パラフアン連 続切片を作製した。 酵素抗体法は,両群のパラフィン切片をヒト腎GSTウサギ抗体を用いて Sternberger PAP法に より染色し,ヘマトキシル ン核染色も行い観察した。対照実験は,De lellisらの方法に準じた。立体計量形態学的には,両群のPAP染色標本を顕微投影器で紙に100 倍拡大投影し,全精巣断面とLeydig細胞をトレースして,各面積を計測した。これらをWeibel のstereologyの原理で(1)精巣重量,(2)Leydig細胞の体積比率,(3)Leydig細胞の重量を求め,

両群を比較した。

  結  果 : 問質Leydig細 胞 は正 常・ 停留 精巣 と も全 週でGSTに染色さ れた。定量的観察

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三 雄

信 輝

柳  

  橋

小 西

授 授

教 教

査 査

ま 副

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では,精巣重量は正常群で生後4週まで徐々に増加し,その後急増し,8週以降で一定した。停 留群は生後4週まで正常群と 大差なく,それ以降も正常群の約1/3であった。Leydig細胞の 体積比率は,正常群で出生目から1週で減少し,その後上昇し8週で最大となり,その後再び減 少した。停留群は生後4週まで正常群と同様で,その後急増し14週で最大となり,20週で減少し た。Leydig細胞の重量は,正常群で生後4週より急増し8週で最大となり,その後減少し20週 で8週の約1/2となった。停 留群は8週で正常群の約1/2で14週の最大値で正常群と同様,

その後滅少し生後20週で正常群の2倍と有意に大きかった。正常精巣の精細管は,生後2〜4週 にGSTに染まる細胞と球状体が出現した。これらは,細糸期,接合期一次精母細胞で小さなも のは直径2〜3〃mの球状を呈 していた。形態上,GSTは一 次精母細胞が変性していく時に出 現すると判断した。生後6週以降では,GSTの染色性はなかった。停留精巣の精細管は,生後 3週に正常と同様にGST染色が出現し,大多数は細糸期と接合期以前の一次精母細胞の変性過 程とみなされたが,少数は大型の核と胞体で厚糸期で破壊途上で染色された。生後6週以降は,

一部にGST染色をもつ変性破 壊途中の精母細胞が残ってい たが,大部分の精細管はGSTに染 まらない精祖細胞とSertoli細胞のみで構成されていた。

  考  察: Leydig細胞 がGSTを含む理由は,GSTが ステ口イドホルモン合成経路 を触媒す る△゜ー3−ケトステ口イドイソメラーゼ作用に関与していると理解されている。今回の観察でも 例外 なく ,全 例Leydig細 胞はGSTに染 まっ てい た 。抗GST抗体を用いたPAP法は ,Leydig 細胞の局在・分布およびステ口イド産生を検討するうえでも有用であった。また,正常・停留精 巣群の比較では,Leydig細胞は停留精巣で組織学的に過形成像を示したが,さらに計量形態学 的にも比較的正確な重量として停留群の過形成を証明できた。この実験系では停留精巣のテスト ステ口ン分泌障害のフィールドバックを介するゴナドトロピン刺激により,Leydig細胞の重量 が上昇したといえる。精細管内のGSTの作用機序は知られていない。今回の観察では,変性し ていく精母細胞と核の消失していく球状体にあらわれた。精細管で変性していく胚細胞がGST を含むことを示したのは,この研究が最初である。GSTは,有害物質の解毒の際のグルタチオ ン抱合の触媒酵素として働くとされ,グルタチオンを高濃度に含む一次精母細胞がGST活性を もっことは,細胞が変性・破壊されていく過程で発生した有害物質が解毒する作用(グルタチオ ン抱合)に関連し,最終的に利用されなくなったGSTが球状体に濃縮されていくものと推測し た。精細管上皮の細胞変性・破壊における代謝作用に関して興味深い知見が得られた。さらに,

実験手段に関して,今回の精巣導帯切断法は発育途中の出生早期でも可能であり,先天性停留精 巣と比較できる内分泌環境を作り得ると考えた。

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  以上本研究は,実験的停 留精巣の組織をGST抗血清を 用いて,PAP法にてGSTの局 在と分 布を観察しLeydig細胞の量と経時的変化を立体計量形態学的に計損lJし比較検討した唯一の研究 であり学位授与に値する。

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参照

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