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博士(医学)丹羽祐勝 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)丹羽祐勝 学位論文題名

骨格筋に おける解 糖系の制御と PFK ― 2/PFKFB3 の関与 学位論文内容の要旨

    骨 格 筋 は中 枢 神 経 か ら の 指 令 に よ り 隋 意 的 に 収 縮 す る . その 原理 はア クチ ン, ミオ シ ン な ど の 収 縮蛋 白 が ア デ ノ シ ン3リ ン 酸(ATP)の 化 学 エ ネ ル ギ ーを 消費 して 収縮 する .筋 肉 中 に 貯 蔵 さ れて い るATPは き わ め て 少 な いた め , 運 動 を 長 時 間 継 続す るた めにはATPの再 合 成 が 必 要 に なる . こ の 再 合 成 は す べて 生体 内で 行わ れ, 骨格 筋に おけ るATP供給 過程 のひ と っ が 解 糖 系 で あ る . 解 糖 系 は 糖 質 代 謝 の 中 心 的 な 役 割 を 担 っ て お り , そ の 律 遠 酵 素 は 6―phosphofructo−1−kinase(PFK−1) で あ る . ま た ,PFK‑1の 活 性 化 因 子 と し て Fructose−2,6−bisphosphate (F2,6BP)カミ存在する.F2,6BPは6―phosphofructo−2ーkinase (PFK―2) によりFructose−6ーphosphate (F6P)から合成される.F2,6BPはATPのPFK−1活性の 阻害に拮抗し,PFK−1活性を亢進させ解糖系を活性化させる.

  PFK−2は 同一 分 子 内 に キ ナ ー ゼ ド メ イ ン と フ オ ス フ ァ タ ー ゼド メイ ンを 持つ 二機 能性 酵 素 で ,4種 類 の ア イ ソ フ オ ー ム が 報 告 さ れて い る(PFKFB1〜4).各 アイ ソフ オー ムは キナ ー ゼ ・フ オス ファ ター ゼの 活性 比が 異な り,PFKFB3蛋白 はキ ナー ゼ活 性が 最も 高く ,癌 細胞 や 胎 盤 な ど の 増殖 が さ か ん な 臓 器 に 高発 現し てい る. また 、腫 瘍細 胞のPFKFB3遺伝 子をsiRNA で ノ ッ ク ダ ウン す る こ と に よ り 細 胞 増 殖 を 抑 制 す る こ と が 報 告さ れて いる .PFKFB3遺伝 子 は19の エ ク ソン で 構 成 さ れ , エ ク ソ ン13か ら19は 選 択 的 ス プ ライ シン グに より 組織 特異 的 な 発現 様式 を示 す. しか し, 各ア イソ フオ ーム の働き の違 いや 特徴 は解 析さ れて いな い. 糖 代 謝 とPFKFB3に 関 し て ,AMP−activated protein kinase (AMPK)によ りPFKFB3蛋白 のセ リ ン461が り ン 酸 化 さ れ キ ナ ー ゼ 活 性が 亢進 する ことが 報告 され ,イ ンス リン のシ グナ ル伝 達 との 関連 は,PFKFB3蛋 白はPKB,PKCな どによルリン酸化されることが報告されている.また,

こ れ ま で の 報告 で は 糖 尿 病 と 解 糖 系 の 関 与 と し て , 肝 臓 に お ける グル コキ ナー ゼの 酵素 活 性 低 下 に よ って 惹 起 さ れ るmaturity onset diabetes of the young 2(MODY2) が知 られ て い る の み で ある . 解 糖 系 は 糖 尿 病 治 療 へ の 応 用 と い う 点 で は 未開 発の 分野 であ る. 今回 私 は , 骨 格 筋 の組 織 特 異 的 な 解 糖 系 調 節 機 構 に 注 目 し , エ ネ ル ギー 消費 の観 点か ら糖 代謝 異 常 の 治 療 の 標的 因 子 を 明 ら か に す る目 的で ,PFK−2/PFKFB3の 発現 と機 能の 解析 を行 った .   骨 格 筋 に お け る 低 酸 素 に よ る 解 糖 系 の 亢 進 とPFKFB3の 関 連 を 明 ら か に す る た め ,C2C12 筋 管 細 胞 を 低 酸 素 に 暴 露 し た .3時 間 と24時 間 後 の 総RNAを 抽 出 し ,RT−PCRでPFKFB3 mRNAの 発 現 量を 正 常 酸 素 濃 度 下 で 培 養 し た 細 胞 と 比 較 し た . 低酸 素に 暴露 され た細 胞に 船 いて3時間後と24時間後にPFKFB3 mRNAが高発現した.

  骨 格 筋 に お け る 炎 症 刺 激 に よ る 解 糖 系 の 亢 進 とPFKFB3の 発 現 誘 導 の 関 連 を 明 らか に す る た め , 無 血 清 培 地 で 前 処 理 し たC2C12筋 管 細 胞 にLPSを 作 用 さ せ た . 刺 激 後3時 間 で PFKFB3 mRNAの 発 現 を 測 定 し た .LPSの 濃 度 依 存 性 にPFKFB3 mRNAの 発 現 が 亢 進 した . ま

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た,骨格筋に茄いて解糖系が亢進した際に高発現する IL ー 6mRNA もLPS の濃度依存性に高 発現した.

   骨格筋おけるPFKFB3 遺伝子の選択的スプライシングによる組織特異的な発現様式を検 討 す るた めエ クソ ン13 か ら19 を特 異的 に増幅 する プラ イマー を用 いて RT − PCR を施 行 し た . C2C12 筋 管細 胞 で は , 270bp と 90bp に PCR 産 物 が 認 め ら れ , エ クソ ン13 から 19 を それぞ れエ クソ ン A から G とすると,エクソンA , C , G とエクソンA ,G が含まれると推 測 された ,ま た, マウス 骨格筋では 280bp と 270bp ,90bp に PCR 産物が認められ,エクソ ン A ,C ,D , G とエクソンA ,C , G とエクソンA ,G が含まれると推測された.さらに,これら の PCR 産物をサブクローニングし,シークエンスを行い各スプライシングアイソフオーム を確認した.それぞれのアイソフオームをPFKFB3 ―ACDG ,PFKFB3 一ACG ,PFKFB3 ―AG と命名し た・

  8 週令 BALB/c マウスを24 時間絶食後,腹腔内にLPS1 .OLig/g (体重)を投与し, 3 時間 後 に骨格 筋を 摘出 し総RNA を抽出した.骨格筋おけるPFKFB3 遺伝子の選択的スプライシ ン グによ る発 現様 式を検 討す るた めエ クソン 13 か ら 19 を増幅するプライマーを用いて RT 一PCR を施行した, PBS 投与群の骨格筋ではヒラメ筋,大腿筋ともにPFKFB3 ―ACDG が発現し て韜り,LPS 投与群の骨格筋では,ヒラメ筋,大腿筋ともにPFKFB3 一 ACG の発現が有意に 増強していた.

  PFKFB3 の 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ に よ る ア イ ソ フ オ ー ム で あ る PFKFB3 ― ACDG と PFKFB3 ― ACG を HEK293 細 胞 に 遺 伝 子 導 入 後 , 安 定 株 を 樹 立 し 各 ク ロ ー ン の 2 − deoxy ―[3H] glucose の取り込みとF2 ,6BP 量を比較した.それぞれのアイソフオームを導 入した細胞群ではempty vector を導入した対照群と比較し,有意に2 −deoxy ―[3H] glucose の 細 胞 内 へ の 取 り 込 み が 増 加 し , ま た F2 , 6BP 量 が 増 加 し て い た .   F2 , 6BP 量と糖尿病の関連を調べるため、肥満 2 型糖尿病のモデルマウスである11 週令 めノ'db マウスと+m/ 協マウスの下肢骨格筋のF2 , 6BP 量を測定したところ,而群における F2 ,6BP 量に差は認めなかった.

   これらの結果から,骨格筋におけるPFKFB3 は解糖系の制御に大きく関与していることが 示唆された,骨格筋におけるインスリンシグナルとPFKFB3 の関連にっいて解明していくこ とは,インスリン感受性組織におけるPFKFB3 による解糖系調節機序を明らかにすることに 繋がると考えられる.また、PFKFB3 の活性化機序を解明し,骨格筋の解糖系を亢進させる ことができれば,エネルギー消費の観点から糖尿病の新しい治療法の開発に繋がる可能性 が考えられる.

47 ‑

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

骨格筋に おける解 糖系の制御と PFK ― 2/PFKFB3 の関与

    骨 格筋 はア デノシ ン3リン 酸(ATP)の化学エネルギーを消費して収縮する.

筋 肉内 のATP量は 極め て少 なく ,運 動を継続するためにはATPの再合成が必要に な る . こ の ATP供 給 過 程 に 解 糖 系 が 存 在 す る . 解 糖 系 の 律 遠 酵 素 は 6ーphosphofructo−1―kinase (PFK―1)である.また,PFK―1の活性化因子として Fructoseー2,6―bisphosphate  (F2,6BP)が 存 在 す る .  F2,6BPfま 6―phosphofructo―2−kinase (PFK−2)によりFructose−6―phosphate (F6P)から 合成される.F2,6BPはATPのPFKー1活性の阻害に拮抗し,PFK−1活性を亢進させ解 糖系を活性化させる,

  PFK―2は 同一 分子内 にキ ナー ゼド メインとフオスファターゼドメインを持つ 二 機能 性酵素で,4種類のアイソフオームが報告されている.各アイソフオーム はキナーゼ・フオスファターゼ活性比が異なり,PFKFB3蛋白はキナーゼ活性が最 も 高い .PFKFB3遺伝子 は19のエ クソ ンで構成され,エクソン13から19は選択的 スプライシングにより組織特異的な発現様式を示す.しかし,各アイソフオーム の働きの違いや特徴は解析されていない,

  今回 私は ,骨 格筋の 組織 特異 的な 解糖系調節機構に注目し,エネルギー消費 の 観点 から糖代謝異常の治療の標的因子を明らかにする目的で:PFK―2/PFKFB3 の発現と機能の解析を行った・

  骨 格 筋 に お け る 低酸 素に よる 解糖 系の 亢進 とPFKFB3の関連 を明 らか にす る た め,C2C12筋管 細胞 を低 酸素 に暴 露した.PFKFB3 mRNAの発現は時間依存性に 増加した・

  骨 格 筋 に 韜 け る 炎症 刺激 によ る解 糖系 亢進 とPFKFB3の発現 誘導 の関 連を 明 ら か に す る た め ,C2C12筋 管細胞 にLPSを 作用 させ た. 刺激後3時 間で はLPSの 濃 度依 存性 にPFKFB3 mRNAの発 現が 亢進 した .また ,骨 格筋 の解 糖系が亢進し た 際 に 高 発 現 す る IL− 6mRNAも LPSの 濃 度 依 存 性 に 高 発 現 し た .   骨 格 筋 お け るPFKFB3遺伝 子の 選択 的ス プラ イシ ング による 組織 特異 的な 発 現 様 式 を 検 討 す る た め RT−PCRを 施 行 し た . C2C12筋 管 細 胞 で は PFKFB3−ACDG,PFKFB3一AGが発現し,マウス骨格筋ではPFKFB3ーACDG,PFKFB3―ACG, PFKFB3―AGが発現してしヽた.

  BALB/cマ ウ ス にLPSを 投 与 し ,3時 間後 に 骨 格 筋 を摘 出しRTーPCRを 施行 し

夫 次

隆 鎮

池 山

小 畠

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

た,対照 群ではPFKFB3一ACDGが発現して おり,LPS投 与群ではPFKFB3一ACGの発 現が有意に増強していた.

  PFKFB3の 選 択 的 ス プ ラ イ シ ン グ ア イ ソ フ オ ー ム で あ るPFKFB3ーACDGと PFKFB3―ACGをHEK293細 胞 に 遺 伝 子 導 入 後 , 安 定 株 を 樹 立 し 各ク ロ ーン の 2−deoxy―[3H] glucoseの取り込みとF2,6BP量を比較した.それぞれのアイソフ オームを導入した細胞群では対照群と比較し,有意に2−deoxy−[3H] glucoseの 細 胞 内 へ の 取 り 込 み が 増 加 し , ま た F2, 6BP量 が 増 加 し た .   F2,6BP量 と糖 尿病 の関連を 調べるた め,db7dbマウ スと+m/砺マウ スの下肢 骨 格 筋 のF2,6BP量 を 測 定 し た が ,両 群 のF2,6BP量 に 差 は認 め な かっ た .   これらの 結果から ,骨格筋に おけるPFKFB3は 解糖系の 制御に大 きく関与して いることが示唆された・

  質 疑 応答 に おい て は 畠山 教 授か ら ,C2C12筋 管細 胞 にお け る 解糖 系 亢進 と T0111ikereceptorの 関 連 ,骨 格 筋とC2C12細 胞 の アイ ソ フオ ー ム の違 い につ いて,C2C12細 胞の分化 前後のアイ ソフオームに関して,PFKFB3スプライシング アイ ソ フオ ー ム の発現 調節機構 ,PFKFB3mRNAとRNAbindingproteinに関 して、

安定発現 株のグルコースの取り込みの機序について,質問があった.次に吉岡教 授から,PFK―2のノックアウトマウスに関して,PFK―1とPFK―2活性の違いについ て,C2C12筋管 細胞とグ ルコースト ランスポーターに関して,骨格筋のグルコー ス取り込 みの機序 について質 問があっ た.次に小池教授から,LPSの解糖系亢進 に お け るinvivoとinvitroの 違 い に つ い て ,IL一6を 阻 害 す る 実 験 に つ い て,PFKFB3遺伝 子とスプ ライシング 発現部位 について ,PFKFB3を糖尿病治療に 用いる場 合の展望に関して質問があった.いずれの質問に対しても,申請者は概 ね適切に回答した.

本論 文 にお け る 検討 か ら ,PFKFB3の活 性 化 機序 の解明は糖 尿病の新 しい治療 法の開発に繋がる可能性が考えられた.

  審査委員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得 単位など も併せ申 請者が博士 (医学) の学位を 受けるの に充分な 資格を有する ものと判定した.

参照

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