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博士(農学)安部 久 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)安部   久 学位論文題名

針葉 樹材仮道管壁に堆積するミクロフィブリルの      配向に関する研究

学位論文内容の要旨

  針 葉 樹 材 仮道 管壁 におけ るセ ルロ ース ミク ロフ ィブ リル (以 下MFと略 記) の 配 列状態 は針 葉樹 材の 物理 的な 諸性質を左右するため、木材を有効に利用する上 でMFの 配 列 状態 を正 確に把 握す るこ とは 必要 不可 欠で ある 。本 論文 は、 細胞 壁 形 成 中 の 仮 道管 に堆 積するMFの 配向 制御 機構 を解 明す るこ とを 最終 目的 とし 、 堆 積 す るMFの 配 向 変 化 お よ び 堆積 様 式 の 規 則 性 、 仮 道 管 径 の 拡 大 とMFの配 向 と の 関 係 、 表層 微小 管(以 下微 小管 と略 記) とMFとの 関係 につ いて 検討 した も のである。内容の要旨は以下のとおりである。

  第1章 は 研 究 史 で あ る が 、 現 在 ま で の 電 子 顕 微 鏡 に よ るMFの観 察 方 法 の 限 界 、MF配 向 の 支 配 要 因 、 仮 道 管 壁 に お け るMF配 向 の モ デ ル の不 一 致 性 、MF と 微 小 管 の 関係 につ いて論 じ、 それ に基 づい て本 研究 の目 的と 内容 を明 らか に し、さらに本論文の構成について記述している。

  第2章 で は 、 電 界 放 射 型 走 査 電 子 顕 微 鏡 ( 以 下FE―SEMと 略 記 ) を 用 い て 、 仮 道 管 壁に 堆積 するMFの配 向を 、仮 道管 の形 成過 程を 追っ て連 続的 に観 察 す るため の方 法を 述べ てお り、 そのための最適な試料作製条件および観察条件を 確 立した 。試 料作 製に つい ては 、3% グル ター ルア ルデ ヒド 固定後、凍結ミクロ ト ームで試料表面を仕上げ、次亜塩素酸ナトリウムで原形質を除去し、1%四酸化 オスミウムで後固定し、エタノールシリーズによって脱水し、f‐ブタノールにより 凍 結乾燥 し、 白金 また は白 金と 炭素を真空蒸着する方法で最も良い試料を得た。

ま た、軟 弱な 分化 中仮 道管 の観 察には、加速電圧を3〜 10kVに設定し、観察部位 に よ っ て 適 宜 変 え る こ と に よ り 高 倍 率 の 鮮 明 な 像 を 得 る こ と が で き た 。   第3章 で は 、 拡 大 中 の 仮 道 管 壁 に 堆 積 し て い るMFの 配 向 を 、FE―SEMを 用 い て 観 察 し、 仮道 管の拡 大と 一次 壁のMF配 向と の関 係を 明ら かに して いる 。

(2)

拡大中の仮道管に堆積するMFはランダムに配列しているが、拡大期の前半では 全体的に仮道管軸方向に平行、拡大期の後半では全体的に仮道管軸方向に垂直に 配向していた。一方、拡大停止後の仮道管の放射径は、木部と師部の境界部付近 の仮道管の放射径に比べて約3〜4倍に拡大していた。従って、仮道管の拡大方向 が、堆積するMFの配向変化によって制御されている可能性が示唆された。すな わち、拡大期前半の仮道管に堆積するMFは全体的に仮道管軸方向に平行に配向 しているため、仮道管は仮道管軸に対して垂直方向に拡大しやすくなる。また、

拡大期後半の仮道管では、堆積するMFは全体的に仮道管軸方向に垂直に配向し ているため、仮道管の拡大を抑制していると考えられた。また、拡大停止期の仮 道管において、初めて二次壁のMFの堆積が認められた。これらの結果から、形 成層から派生したばかりの仮道管の拡大しやすい構造と、その後の拡大しにくい 構 造 へ の 変 化は 堆 積 す るMFの 配 向 に 支 配 され る こと が明 らかに され た。

  第4章では、一次壁から二次壁形成への移行段階の仮道管に堆積するMFを、

FE−SEMを用 いて 観察 し、二次壁の堆積開始と仮道管の拡大停止との関係を 明ら かに して いる。 二次 壁のMFは 、一次 壁のMFと 比べ 個々のMFは直線的に 存在し、またMF同士の平行性が良く、整然と密に堆積し、二次壁形成開始段階 において堆積するMFの配向はSらせんであった。また、光学顕微鏡、偏光顕微 鏡と画像解析を併用して調べた結果、二次壁形成開始が認められた仮道管では拡 大が停止していることを見出している。さらに、偏光顕微鏡によって二次壁の堆 積開始段階と判断されるより前段階で、二次壁を形成するMFが堆積することが FE−SEM観察 によ って 明らかになった。このことから、仮道管が拡大を停止 する以前に二次壁のMFは堆積を開始すると判断され、仮道管の拡大は、二次壁 が 堆 積 し 、 細 胞 壁 が 強 固 に な る こ と で 、 停 止 す る こ とが 示 唆 さ れ た 。   第5章では、二次壁形成中の仮道管に堆積するMFの配向を、形成段階の順を 追って観察し、仮道管二次壁におけるMF配向の詳細を明らかにしている。二次 壁におけるMFの配向変化は、仮道管壁の外層(以下Slと略記)の最外部から中 層(以下S2と略記)の最外部にかけては、内こう側から観察して時計方向、S2 の最内部から内層(以下S3と略記)の最内部に至る部分では反時計方向に変化 していた。それぞれのMF配向の変化は連続的に起こるため、従来移行層と呼ば れていたS12およびS23を、それぞれSlおよびS3から区別することは困難であ り、それらはS1およびS3に帰属すると結論づけた。一方、S2内ではMF配向に 明確な変化が見られなかった。また、SlおよびS3ではMFが配向を変えて堆積 する場合、バンド状に束になって堆積しているMFが多く観察された。Slでは、

(3)

バンド状のほか壁全面に堆積している同配向のMFが観察され、バンドの幅は、

S3と比較すると広かった。また、SlではS3と比ぺて配向変化の速度が遅いこと が、1仮道管列における各々の仮道管数の違いから推測された。以上のことか ら、仮道管壁におけるMFの堆積状態は、MFの堆積速度と配向変化の速度とに よって決定されることが示唆された。

  第6章 では 、FE−SEM、 免疫螢 光抗 体法 を用い て、 細胞 壁形 成中の仮道管 における微小管の配向を形成段階を追って連続的に観察し、堆積するMFの配向 制御への微小管の関与について明らかにしている。免疫螢光抗体法による観察で は、従来用いられている螢光顕微鏡に加え、共焦点レーザー走査顕微鏡を用い た。細胞壁形成中の仮道管における微小管の配向変化のパターンは、堆積する MFの配向変化のパ ターンと一致していた。また、共焦点レーザー走査顕微鏡に よる 方法は 微小 管の 配向 変化の 連続観察には極めて有効であった。FE―SEM による観察では、微小管と堆積中のMFの配向との一致性が示され、また、微小 管は堆積中のMFの状態と同様な配列を示レた。これらの結果から、微小管の配 向;ま堆積するMFの配向と常に一致しており、微小管はMFの配向および堆積場 所を制御していることが示唆された。

  第7章では、第2章から第6章までの結果を総合的に考察し、針葉樹材仮道管 壁におけるMF配向のモデルを構築した。また、堆積するMFと微小管との関係 から、微小管は配向変化する際消失することなく、微小管群全体で配向変化する と結論した。さらに堆積するMFの配向と仮道管の拡大方向および拡大停止との 関係について、樹木細胞の形態形成の面から考察し、仮道管の形態は分化中仮道 管の二次壁形成開始時期に決定されると推察している。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

深澤 佐野 平井 大谷

学 位 論 文 題 名

和三 嘉拓 卓郎     

針葉樹材仮道管 壁に堆積するミク口フィブリルの      配向に関する研究

  本 論 文 は7章 に 区 分 され て 記 載さ れ 、 図14、 写 真55を 含む155頁 の 和 文論 文 で ある 。 引 用 文 献 は118で あ り 、参 考 論 文6編 が 添 えら れ て いる 。 本 論文 は 針 葉樹 材 仮 道管 壁 に 堆 積 す る セ ル 口 ー ス ミ ク 口フ ア ブ リル ( 以 下MFと 略 記) の 配 向変 化 、 堆積 様 式 の規 則 性 、 仮 道 管 径 の 拡 大 とMF配 向 変 化 と の 関 係 、 表 層 微 小 管 ( 以 下 微 小 管 と 略 記 )とMF との 関 係 に つい て 検 討レ た も ので あ る 。

  1章 で は 、 針 葉 樹 材 仮 道 管 のMF配 向 に 関 す る これ ま で の研 究 か ら、 手 法 によ る 限 界 、 さ ら にMF配 向 モ デ ルの 不 一 致性 な ど の 問題 点 を 指摘 し 、 本研 究 の 目的 と 内 容を 明 らか に し て いる 。

  2章 で は 、 電 界 放 射 型 走 査 電 子 顕 微 鏡 ( 以 下FESEMと 略 記 ) を 用 い て 、 仮 道 管 壁 に 堆 積 す るMFの 配 向を 、 仮 道管 の 形 成 過程 を 追 って 連 続 的に 観 察 する た め の試 料 作製 ・ 観 察 条件 に つ いて 検 討 し、 そ の 手法 を 確 立し て い る。

  3章 で は 、 拡 大 中 の 仮 道 管 壁 に 堆 積 す るMFの 配 向 を 、FESEMを 用 い て 観 察 し 、 仮 道 管 の 拡 大 と 一 次 壁のMF配向 と の 関 係を 明 ら かに し て いる 。 拡 大中 の 仮 道管 に 堆 積 す るMFは ラ ン ダ ム に配 列 し てい る が 、 拡大 期 の 前半 で は 全体 的 に 仮道 管 軸 方向 に 平行 に 、 拡 大期 の 後 半で は 仮 道管 軸 方 向に 垂 直 に配向 レ、拡 大停止期 の仮道 管におい て 初 め て 二 次 壁 のMFが 堆 積す る こ とを 見 出 レ てい る 。 この こ と から 、 拡 大期 前 半 の仮 道 管は 仮 道 管 軸に 対 し て垂 直 方 向に 拡 大 しや す い 構造で あり、 拡大期後 半の仮 道管では 、 拡大 を 抑 制 する 構 造 であ る こ とを 明 ら かに し て いる 。

  4章 で は 、 一 次 壁 か ら 二 次 壁 形 成 へ の 移 行 段 階 の 仮 道 管 に 堆 積 す るMFFE

(5)

SEMを 用 い て 観 察 し 、 二 次 壁 のMFは 、 一 次 壁 のMFと 比 べ 個 々 のMFは 直 線 的 で 平 行 性が良く、整然と密に堆積していること、また二次壁形成開始段階ではMFはSらせ ん方向に堆積していることを認めている。また、光学顕微鏡、偏光顕微鏡、画像解析、

FE―SEMを併 用し て、 二次 壁堆 積開始 と仮 道管 の拡 大停 止と の関係について調ベ、

仮道管の拡大が停止する以前に二次壁堆積が開始していることを認め、二次壁が堆積し て 細 胞 壁 が よ り 強 固 に な る こ とで 、 仮 道 管 の 拡 大 が 停 止 す る と 結 諭 して いる 。   第5章 で は 、 二 次 壁 形 成 中 の 仮 道 管 に 堆 積 す るMFの 配 向 をFE−SEMを用 いて 観 察 し 、 二 次壁 にお けるMFの 配向 変化 の連 続性 を示 してい る。MFの 配向 変化 の方 向 は、仮道管壁の外層(以下Siと略記)の最外部から中層(以下S2と略記)の最外部に 至 る部分 では 内こ う側 から 観察 して時計方向に、S2の最内部から内層(以下S3と略 記)の最内部に至る部分では反時計方向であり、それぞれのMF配向の変化は連続的に 起 こるため、従来移行層と呼ばれていたS 12およびS23はそれぞれSi、S3に帰属する と 結論し てい る。 一方 、S2内で はMF配向に明確な変化はないことを確認している。

ま た、Si、S3ではMFが 配向 を変 えて堆積する場合、バンド状に束になって堆積して い るMFが 多く 観察 され 、MFの集 合レ たバ ンド の幅 の違 いや 、1仮道管列における細 胞 壁の各 層を 形成 して いる 仮道 管数の違いから、SiではS3と比べてMFの配向変化の 速 度が遅 く、MFの 堆積 状態 は、MFの堆積速度と配向変化の速度とによって決定され ると結諭している。

  第6章 でfま 、゛FE−SEM、免 疫螢光 抗体 法を 用い て、MF堆 積開始から終了までの 分化中仮道管における微小管の配向を形成の段階を追って連続的に観察し、微小管と堆 積するMFの配向変化のパターンとが同じであることを示した。さらに配向・配列状態 が一致することを見出している。これらの結果から、微小管の配向は堆積するMFの配 向と常に一致しており、微小管はMFの配向および堆積場所を制御していると結諭して いる。

  第7章 では 、第2章か ら第6章 までの 結果 から 、針 葉樹 材仮 道管壁におけるMF配向 の モデル を構 築し 、堆 積す るMFの配向と仮道管の拡大方向および拡大停止との関係 や、MF配向の制御機構について総合的に考察している。

  本論文はMFの配向に関して新レいモデルと考え方を提案しており、その成果は国際 学会でも高く評価されている。よって審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論 文の提出者安部久は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定レ た。

参照

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