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博 士 ( 医 学 ) 内 藤 広 行 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 内 藤 広 行

学 位 論 文 題 名

Reverse Transcription ‑ Polymerase Chain Reaction &l:If;j た Tyroslne hydroxylase mRNA および神経芽腫細胞の高感度検出法

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

I緒    言

  神経芽細胞腫(Neuroblastoma;以下NB)は高率に骨髄 に転移するという特徴を持つ。NB のステ―ジ診断上,あるいは治療として自家骨髄移植を考慮する場合に,骨髄転移の有無を診断 することは重要である。しかし,現在用いられているNBの骨髄転移診断法では腫瘍細胞と正 常な骨髄細胞の一部との識別が困難な場合があり,またその検出感度も症例によって必ずしも充 分とはいえない。

  NBは発生学的に神経堤(neural crest)に由来し,約95%高頻度でカテコラミンを産生する。

またヒ卜のNB組織では,カテコラミン合成経路の第一段階の酵素であるTyrosine hydroxy・ lase (TH)の活性が高率に上昇していることが報告されている。一方,THは正常組織では交 感神経や副腎髄質などかなり限られた組織で特異的に産生されていると考えられており,した がっ てNB患者 の骨 髄 細胞 からTHのmRNAが 検出 され れば 骨 髄転 移を 疑う 根拠 に なりうる と考えられる。

  本研究では,reverse transcription and polymerase chain reactionくRT/PCR)法を用 いて 骨髄細胞におけるTH mRNA発現を検出すること により,NBの骨髄転移を高 感度に診断 することが可能かどうかを検討した。

II方   法

  陽性対照として神経 芽細胞腫および神経節芽細胞 腫の手術摘出材料6例とNB細胞株IMR32 を用いた。陰性対照として完全寛解中の小児血液悪性腫瘍患者8例,回復期の一過性好中球滅少 症患者1例の骨髄細胞を 用いた。他にNB患者の3例の 骨髄細胞を分析したが,これにはいず れにも光顕的に腫瘍細胞を認めなかった。材料の骨髄細胞及び腫瘍組織からtotal RNAを分離 した 。TH cDNAか ら適 当 な部 分を 選び ,PCRに 用い るprimerを合成した 。このprim erを

(2)

用 い ると 検体 にTH mRNAが 存在 す る場 合,299bpのcDNAフラ グ メン トが 増幅されること が期待された。

  cDNA合 成は 以下 の反 応により行った。す なわちtotal RNA lUg,3 側primer,dATP, dCTP,dTTP,dGTP,dc7GTP,AMV reverse transcriptase, 及びRNase inhibiterにおいて 反 応液を加え全量を20Lt1とし て43℃で1時間反応させた。この反応液にPCR buffer,5 側 primer,3 側primer,Taq DNA polymeraseをカ口え全量を100,u1として,30回PCRを行つ た後,Taq DNA polymeraseを追加し,さらに30回PCRを行った。

  PCR産物のうち5〃1をゲル中 に泳動し,変性・中和処理後,サザン法に従いナイロンメン ブ ラ ンに ブ口 ッ卜 した 。a3゜P―dCTPで放射 性標識したTH cDNAプローブ をハイブルダイ ズさせ,洗浄した後,X線フィル厶上に露光した。また上記サザン法により検出したバンドの濃 度 を 比 較 す る た め に コ ン ピ ュ ー 夕 一 に よ る 放 射 活 性 の 定 量 を 行 っ た 。

    m結  果

  は じ め にRT/PCRを 用 い る こ と に よ り ,NBに お い てTH mRNAを 検 出す る こと が可 能 か ど う か を 検 討 し た 。RT/PCR法 を 用 いた 結果 ,分 析し たNB株IMR32と 患者6人 のNB組 織 全 例 でTH mRNAに 特 異 的 な299bpのcDNA断片 の増 幅バ ン ドが 明瞭 に検 出 され た。NB 組 織6例 で 認 め ら れ た 増 幅 バ ン ド はIMR32の1〜3. 75倍 の 放 射 活 性 を 示 し た 。   次 にRT/PCR法 に よ るTH mRNA検 出 の 特 異 性 を み る た め に 陰 性 対 照の 骨 髄を 用い て RT/PCRを 行 っ た 。 そ の 結 果 ,9人 の 対 照骨 髄 全例 にお いて 明ら か なTH mRNA由 来の 増 幅バ ン ドを 認め なか っ た。 また ,検 索し たNB患 者3人の 骨髄 から もTH mRNAの増幅バン ドは認められなか った。

  RT/PCR法 の感 度を 決 定す るた めに 希釈 実 験を 行った。すなわち,完全 寛解中のALL患 者の骨髄細胞l07個にIMR32細胞を順次比率を変えて混合した試料各々からtotal RNAを抽出 し , そ の う ち の 各1U9のRNAか らRT/PCRを 行 っ た 。 こ の 結 果 ,IMR32 102個を 混合 し た試料においてもTH mRNA由来の増幅バンドを 検出できた。すなわちこの 実験から対照骨 髄細胞l05個中1個 のIMR32細胞でも検出可能と 考えられた。

    V考  察

  今 回 用 い たRT7PCR法 に よ り 分 析 し たNB組 織 全 例 に お い て ,TH mRNAの 検出 が可 能 であった。しかもそれらの何れにおいてもIMR32と同程度以上の濃度の増幅バントが得られた。

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(3)

今回分析した症例はその病像がまちまちであることから,他の多くのNB組織においても同様 にこ の方 法に よ ってIMR32以上の濃度の増幅バンドと してTH mRNAが検出されるこ とが予 想される。

  これに対し,解析した陰性対照の採取骨髄全例において,今回用いた方法によってTH mRNA 憾検 出さ れな か った 。ま た, 解析 し 得た3例 のNB患者 の骨 髄で は 今回 の方法でTH mRNA は検出されなかった。この理由として,これらの患者では実際に採取骨髄細胞中にNB細胞が 存在しないのか,あるいはこの方法では検出不可能な程度のNB細胞が存在するのか不明であ る。IMR32を用いた感受性試験では骨髄細胞l05個中の腫瘍細胞1個でも検出可能という高い感 度が得られた。

  以 上の 実験 結 果か ら,RT/PCR法を用いることにより ,多くのNB患者の骨髄にお いて,

1/l05レベルの腫瘍細胞の混入を検出できる可能性が示唆された。これによりNBの微細な骨 髄転移の診断あるいは経過観察への応用が期待される。また,治療として自家骨髄移植を施行す る上で,採取した自家骨髄に混入する腫瘍細胞のin vitro purgingによる除去効果の判定にも 応用が可能と考えられる。

V結    語

1. RT/PCR法 を 用 い てTH mRNAを 検 出 す る こ と に よ り ,NBの 骨髄 転 移を 診断 する   ことが可能かどうかを検討した。

2. 検 索 し たNB組 織 全 例 に お い て ,RT/PCR法 に よ りTH mRNAの 発 現 がIMR32以 上   に明瞭なバンドとして検出された。これに対し,検索した正常骨髄全例において同法により TH mRNAの発現は検出されなかった。

3. IMR32と正常骨髄細胞を混合して行った希釈実験により,骨髄細胞10゜個中の腫瘍細胞1 個の高感度でNB細胞の検出が可能であった。

4. 以上 から ,NBの 微細 な骨 髄転 移 の診 断および治 療後の経過観察においてRT/PCR法   の有用性が期待できると考えられた。

(4)

学位論文審査の要旨

  神経芽細 胞腫(NBと略す)は高頻度に カテコラミンを産生し,ヒトのNB組織では,カテコ ラミン合成 の第一段階の酵素であるTyrosine hydroxylase(THと略す)の活性が高率に上昇 している。 またTHは正常組織では限られた組織で特異的に産生されているにすぎないとされ ている。本 研究は,reverse transcription and polymerase chain reaction(RT/PCR法冫 を 用い て骨髄細胞におけるTH mRNAの発現を検出するこ とにより,NBの骨髄転移を 高感度 に診断することが可能かどうかを検討した成績である。

  TH発 現の 陽 性対 照と して はNBの 手術 摘出 材料6例 とNB細胞 株 であ るIMR32が用 いられ た。陰性対 照は正常と考えられる小児 科患者9名の骨髄細胞である 。他にNB患者3例の骨髄 細胞も分析 されたが,これらではいず れにも光顕的に腫瘍細胞を認めていない。TH cDNAか ら 適当 な部 分 が選 ばれ ,DNA合 成機を用いてPCRに使用 するprlmerが合成された。 骨髄穿 刺 によ り得た骨髄有核細胞 あるいは腫瘍組織から分離 したtotal RNAを材料としてcDNA合 成 を行 い, 合 成さ れたcDNAを材 料 とし てPCRを 行っ てい る。 こ の研 究で はPCR産 物のう ちの一部をゲル中に泳動し,変性・中和処理後,サザン法に従いメンブランにブ口ットし,さら に ¨Pで放 射性 標識 したTHcDNAプ口一プをハイブルダ イズさせ,洗浄後,X線フィ ルム上 に露光した。

  RT/PCR法 に 用 い た 結 果 , 分 析 し たNB細 胞 株IMR32と 患 者6人 のNB組 織 全 例 でTH mRNAに 特 異 的 なcDNA断 片の 増幅 バン ド が明 瞭に 検出 され た 。ま た,NB組 織6例で 認め ら れた 増幅バンドはいずれ もIMR32以上の放射活性を示 した。これによりRT/PCR法 を用い る こと により,多くのNBに おいてTH mRNAを検出するこ とが可能であることが示さ れた。

次 に陰 性対 照 の骨 髄を 用い てRT/PCRを 行っ た結 果,9人 の対照全例において明ら かなTH mRNA由 来 の 増 幅 ハ ン ド を認 めず ,RT/PCR法 によ るTH mRNA検 出の 特 異性 を示 され た。

分 析し たNB患 者3人 の骨 髄 から もTH mRNA由 来の 増幅 バ ンド は認 めら れ なか った が,こ れらの患者の骨髄中に実際の腫瘍細胞が存在しないのか,この方法では検出不可能な程度の腫瘍 細胞が存在 するのかは不明であった。 次にRT/PCR法の感度を決定す るために,正常骨髄細

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(5)

胞l07個にIMR32細 胞を順次比率を変えて混合した試料各々からtotal RNAを抽出し,これを 材料として同様にRT7PCRを行ったが,その結果 ,IMR32 102個を混合した試 料においても TH mRNA由来の増幅 バンドが検出された。すなわちこの実験から対照骨髄細胞l05個中のIMR 32細胞でも検出可 能と考えられた。以上の結果 から,RT/PCR法を用いることにより,多く のNB患者の骨髄に おいて,1/l05レペルの腫瘍細胞の混入を検出できる可能性が示唆され,

従ってNBの微細な 骨髄転移の精確な診断にこの手法を応用することが診断の効率をよくし,

ひいては治療の成績向上に大きく寄与するものと考えられた。副査の葛巻,柿沼両教授から転移 診断上の感度,或いは結果の解釈にっいて幾っかの質問があり,更に長島教授を交えて討議を重 ね ら れ た が , い ず れ の 質 問 に 関 し て も 妥 当 な 答 え が 得 ら れ た も の と 判 断 さ れ た 。

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