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博士(医学)藤倉大輔 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)藤倉大輔 学位論文題名

新規アポトーシス誘導受容体、 Death receptor6(DR6) を介した細胞内情報伝達機構の解析

学位論文内容の要旨

  アポトーシスは個体の発生,細胞の癌化,免疫応答など様々な生命現象の制御に重要な役割 を 担う. 特に 免疫 反応 にお ける アポ トー シス の誘導制御にはアポトーシス誘導受容体ファ ミリー(Death―receptor−family,DR family)分子が重要な役割を持つ事が知られている.

DR family分 子の 中で最も新しく同定された分子であるDR6遺伝子の欠損マウスでは,末梢T 細 胞やB細胞 の活 性化 期に おけ るアポ トー シス の減 少及 ぴ過 増殖 を来 す事 が報告された.

こ れらの 報告 は,DR6がアポトーシスの制御を介して,末梢B或いはT細胞の活性化の制御に 重 要な役 割を 担う 事を示すが,DR6を介した細胞内情報伝達機構の詳細は明らかにされてい な い . 我 々 はDR6を 介 し た ア ポ ト ーシ ス 制 御 機 構 の 詳 細 を 明 ら か に す る 事 を 目 的 と し て ,DR6細胞 内領 域に会合するタンパク質を酵母two hybrid法により探索し,これまでにア ポ トーシ スと の関 与が 報告 され てい ない タン パク 質,cytoplasmic linker protein―170 (CLIP‑170) related protein 59kDa (CLIPR‑59)とDR6細胞内領域との会合を見出した.哺 乳 類細胞 を用 いた 免疫 共沈 降法 によ る解 析か ら,CLIPR一59は哺乳類細胞においてもDR6と 会 合し, その 会合 にはDR6においては,第373アミノ酸から428アミノ酸領域が,CLIPR‑59に お い て は 第364ア ミ ノ酸 から 第547アミ ノ酸 領域 が必 要で ある 事が 明ら かとな った ,こ れ ま での報 告か ら,DR6の過剰発現はアポトーシス,及ぴ転写因子・nuclear factor kappa旦 (NF−kB)の活 性化 を誘導する事が報告されている.そこで,CLIPR‑59のDR6を介したアポト ー シス, 及びNF―kB活性化への関与を検討した.その結果,CLIPR‑59発現はDR6を介したア ポトーシスに対しては促進し,NF‑kBの活性化に対しては抑制する事が判明した.更に,NF‑

kBの活性化抑制を指標にCLIPR−59の他のシグナルへの関与を検討した所,CLIPR一59発現は DR6と 同 じDRフ ァ ミ リー に属 するTNF一Rを 介したNF‑kBの 活性 化に 対し て同様 の効 果を 示 したが,他のレセプターファミリーであるIL−1Rを介したNF→kB活性化に対しては影響を与 え なかっ た. これ まで のTNF―Rを介 した 解析 から ,DRはり ガンド 刺激 時にCaspaseを介し たアポトーシス促進経路,及びNFーkBを介したアポトーシス抑制経路のニっの経路を同時に 活性化させ,そのシグナルバランスによルアポトーシスの誘導を制御すると考えられている.

これらの知見及び我々の結果を考慮すると,DR6シグナルにおいて,CLIPR一59はNF一kB経路の 活性化を抑制することにより,シグナルバランスをアポトーシスヘと傾かせると考えられる.

一 方,CLIPR‑59発 現がDR6及ぴTNF‑Rを介 したNF一kB活性化に対して選択的に作用した事か ら,CLIPR一59はDR6及ぴTNF−Rが共有するNF−kB活性化経路に対して作用する事が考えられ た .これ まで の報 告か ら,TNF−Rを 介し たNF‑kBの活性化にはTRAF2/5及ぴその下流に位置

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するinhibitor of NF‑kB kinase (IKK)が 重要 な機 能を 有する 事が 報告 され てい る. そこ で次 に内 因性TRAF2,TRAF5及びIKK2のDR6を介 したNF‑kB活性化経路への関与を,それぞれ のドミナントネガティブ(DN)変異体発現を用いたレポータージーンアッセイにより検討を行 なっ た所 ,TRAF5及 びIKK2のDN発 現はDR6に よるNF−kB活 性化 を抑 制し たの に対 し,TRAF2 のDN発現 は影 響を 与え なか った. この 結果 からDR6を介 したNFーkBの活 性化 にはTNFーRと 同様TRAF5及びIKK2が関 与す る事 が示 され ,CLIPR‑59が これら いず れか の因 子に 作用 する こ と が 示 唆 さ れ た , ま た ,CLIPR‑59は そ の ア ミ ノ 酸 配 列 上 ,Ankyrinーlike repeatや cytoskeleton−associated protein glycine‑rich (CAP‑Gly)ドメインなど様々な予測タンパ ク質会合領域を持つ一方で,酵素活性を予測さ世る領域を持たないことから,CLIPR‑59が他 の酵素活性を有するタンパク質を介してDR6−TRAF5ーIKK2‑NF‑kBシグナルに働きかける事が 考 え ら れ た . 近年 , 皮 膚 の 腫 瘍 の ー つ で あ るcylindromatosisの原 因遺 伝子 であ るCYLD は,TRAFタンパク質に対する脱ユビキチン修飾抑制能により,TNF一Rを介したNF−kB活性化経 路を 抑制 し, アポ トー シス を促進することが報告された.そこで,内因性CYLDがDR6を介し たNF−kB活性化に関与するか否かを,CYLD特異的ノックダウンを用いたレポータージーンア ッセイにより検討したところ,コントロール群と比較して,CYLD特異的ノックダウン処理群 ではDR6を 介し たNF―kB活性 化が 顕著 に促 進さ れた .こ のこと は内 因性CYLDが,CLIPR‑59 と同 様,DR6を 介し たNF―kB活性化に対して抑制的に働く事を示し,CYLDがCLIPR‑59の機能 に関 与す る可 能性 を示 唆す る.そこで,CYLDがCLIPR→59の機能に関与する可能性を検討し た所 ,免 疫沈 降法 によ りCLIPR一59とCYLDの会合が見出された.また,CLIPR‑59発現による DR6依 存性NF―kB活 性化 に対 する抑制効果が,CYLD特異的ノックダウンにより回避されたこ とか ら,CYLDがCLIPR‑59のNF‑kB活性 化抑 制能 に重 要な 役割を 担う 事が 示唆 され た. 加え て,CLIPR‑59によるNF一kB活性化抑制機構の詳細を明らかにする為に,TRAF5のユビキチン修 飾に 対す るCYLD及 びCLIPR‑59発現 の影 響を 検討 した 所,CYLDと同 様CLIPR−59発 現も また TRAF5のユ ビキ チン 修飾 を顕 著に 抑制 した こと から ,DR6シグナルにおいて,CLIPR‑59及び CYLDはTRAF5レ ベ ル でNF‑kB活性 化 経 路 に 作 用 す る 事 が 示 唆 さ れ た . こ れ ま で の 検 討 か ら,CLIPR―59はDR6刺激により誘導されるアポトーシスに対して促進的に働く事が示唆され た. そこ で, 内因 性CYLDの ,CLIPR‑59を介 した アポ トー シス促進効果への関与を検討した とこ ろ,CLIPR‑59発現 群で 認めら れたDR6依存 性ア ポト ーシス に対 する 促進 効果 はCYLD特 異的ノックダウンにより回避された.このことからCYLDはDR6シグナルにおいて,CLIPR一59 の ア ポ ト ー シ ス 促 進 効 果 に 重 要 な 役 割 を 担 う 事 が 明 ら か と た っ た .   本 研究 の成 果か ら,DR6細 胞内 領域 会合 因子 であ るCLIPR‑59は,TRAF5のユビキチン修飾 を,CYLDを介して抑制する事によりNFーkB活性化経路を抑制し,シグナルバランスをアポト ーシスに傾けると考えられ,CLIPR一59はDR6を介した細胞内情報伝達饑構を理解する上で,

重要なターゲット分子であると結論付けた.

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

新規アポトーシス誘導受容体、Death receptor6(DR6)

.    を介した細胞内情報伝達機構の解析

  アポトーシスは個体発生、癌の形成、免疫応答等様々な生体制御に重要な役 割を担う。特に、免疫応答におけるアポトーシスの制御にはアポトーシス誘導 受容体群(Death Receptor family、DR‑family)が重要な役割を担う。DRIfamiIy のーつであ るDR6は、 末梢免疫細胞の活性化制御に重要な役割を担う事が明 らかにされたが、DR6を介した細胞内情報伝達系路の詳細は明らかにされてい ない。本研究は、DR6を介した細胞内情報伝達系路の詳細を明らかにすること を目的として、DR6の細胞内領域に会合するタンパク質を酵母twohybrid法に より検索した。その結果、これまでにアポトーシスやDRシグナルとの関与が 報告されていないタンパク質であるCLIPR・59とDR6の会合を見出した。哺乳 類細胞を用いた共免疫沈降の結果から、哺乳類細胞においてもDR6はCLlPR‐ 59に対して、会合性を有する事が明らかとなった。更に、CLlPR‐59遺伝子発 現はDR6を 介したアポ トーシスを促進し、NF.絽活性化を抑制する事が明ら かとなった。DRシグナルにおいて、NF‐胞の活性化はアポトーシスに対して 抑制的に働く事が知られており、CLIPR‐59は少なくともNF‐焔の活性化を抑 える事により、アポトーシスを促進する事が考えられる。更に、CLIPR‐59の 機能の詳細を明らかにするために、C凵PR−59会合因子の探索を行ったところ、

新 た にDRシ グナ ル 関与 因 子で あ るCYLD及 びASK1とCLIPR_59の 会合 が 見 出された。CYLDは 自身のTRAF夕ン バク質に対 する脱ユピ キチン修飾活性に より、NFI艪活性化を 抑制することが報告されている。CYLD遺伝子特異的ノ ック ダ ウン はDR6を介 し たNF‐ 艪活 性 化を 促 進しCYLDもまた、CLIPR.59 と同様、DR6を介したNF‐艪活性化を負に制御することが示唆された。また、

   

   

光 美

利 博

上 藤

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

CYLD遺 伝 子特 異的ノ ックダウン は、DR6シ グナルにお いて、CLIPR‑59発現 に よ るNF‑kB活性 化抑制及び 細胞死促進 効果を抑制 したことか ら、CYLDは CLIPR‑59の機 能に重要な 役割を担う と考えられ る。一方、ASK1の種々の変 異体のCLIPR‑59への会合性を共免疫沈降法により検討したところ、CLIPR‑59 はASK1のC末 端領 域に会合し 、興味深い 事にこの会 合はASK1の活性 化によ り 制 御を 受 ける 事が見出さ れた。また 、内因性ASK1がDR6刺激に より活性 化 さ れる こ と、 更 に野 生 型ASK1の 発 現はCLIPR‑59とCYLDの会合を 促進す る が 、不 活 性型ASK1の発現は効 果を示さな い事から、ASK1はDR6シグナ ル において、CLIPR‑59とCYLDとの会合の調節因子である可能性が示唆された。

本 研 究の 成 果か ら、DR6シ グナルにお いて、ASKl‑CLIPR‑59‑CYLD複合体が NF‑kB活性化を抑制し、アポトーシスを促進する可能性が示唆され、CLIPR‑59 はDR6シグナ ルの詳細を 解明する上で、重要なターゲット分子であると結論 づ け た。 発 表に あ たり 、 副査 の 藤 田教 授 よりCLIPR‑59のDR6とTNF‑Rシグ ナルにおける機能の違いの可能性や疾患治療を目指した将来的な発展性につい て等の質問があった。次いで、副査の畠山鎮次教授より細胞膜蛋白可溶化の手 技 、CLIPR‑59の 他 のユ ピ キ チン 修 飾制 御 への 関与、ASK1活性 化制御への CLIPR‑59の関与、CLIPR‑59の疾患に対する遺伝学的な考察等についての質問 が あった。最 後に主査の 上出教授よ り、正常細 胞におけるDR6とDR6会合因 子 の結合証明 、DR6を介 するNF‑kB経 路とカスペ ース経路のパランス制御に おける会合分子の役割についての質問があった。いずれの質問に対しても、申 請 者は自己の データや、 これまでのDR6やCLIPR‑59に関する論文報告を引用 し 、適切な回 答を行った 。この論文は、TNF‑Rファミリーの最も新しい構成 分子であるDR6を介する細胞死の分子機序を明らかにした点で高く評価され、

今後免疫疾患や癌の新規治療法の開発への応用が期待される。審査員一同は、

これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ申 請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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