博士(医学)藤川恵子 学位論文題名
IL −6 遺伝子の発現における転写因子 NF ― 116 と NF ― 厄 B の 相 乗 作 用
学位論文内容の要旨 I . 研 究 目 的
Inte 「|eukin‑6(IL‑6) は、B 細胞分化因子として免疫系に作用する だけでなく、肝細胞による急性期蛋白合成の制御、増血幹細胞の増殖 分化、神経細胞の分化などにも関与する重要な生理活性因子である。
またIL‑6 の発現異常を伴う各種疾患一ヒト骨髄腫、関節リウマチ、メ ザンギウム増殖性腎炎などが報告され、IL −6 遺伝子の発現の調節を明 らかにすることが、こうした疾患の分子レベルでの病因解明のため必 要となった。
|L −6 遺伝子のプロモーター領域には、IL‑6 遺伝子の発現を調節する 転写活性化因子NF ―IL6 の結合部位と共に、重要な転写因子として研究 が進んでいるDNA 結合蛋白NF‑KB の結合モチーフが存在する。またNF ― IL6 、NF‑KB 共 に、 急性 期反 応・ 炎症 ・増 血の際 に働 く他 のサイトカ インの転写制御部位にも結合し、感染や組織障害に対する生体制御機 構において、主要な役割を担う因子である
こうしナこことより、NF‑KB はIL‑6 遺伝子の発現を調節する重要なヌ ディエイターではないかと考え、|L‑6 遺伝子の発現調節においてはNF‑
|L6 とNF‑KB が相乗効果をもっと推測し′こ。今回、NF‑IL6NF‑ 比B 両方 の結合部位をもつ|L‑6 プ口モーター領域をレポーター遺伝子として、
NF ー |L6 とNF‑ 比B(p50/p65 :NF‑KB は p50 、p65 の2 つ のサ ブユニット
から なる )の 発現 ベク ター をJurkat 細胞に一過性に発現ざせて、CAT
くchloramphenicol acetyltransferase) assay を行ない、2 つの転写
因子の相乗作用を検討し′こ。
11640にて培養した。
NF‑だBサブユニ ットp105 (p50) cDNAのクローニング:p50の前駆体p 105cDNAは 、5´ 側 の1.5kbp部 分 と3′ 側 の1.5kbpの 部 分 を 、 ヒ トp105の塩基配列をもとにPCR法にて、マウス骨髄腫DNAを鋳型にし て作成した。この1.5kbpの5′側、3´側のフラグメントをプローブと し て、human placenta cDNA libraryをス クリーニ ングし、3′プロ ー ブ、5′プ ローブ共 に強陽性 の4個のクローンをえて、Puc18プラス ミ ドにサブ クローニ ングした 。このうち開始コドンの上流‑98から下 流+2700までの2.8kbpのフラグメントと、十1030から+3700までをコー ドする2.7kbpのフラグメントを構築してp105cDNAをえ′こ。p50は、p10 5の+53 (Smal site)から+1679 (Xba site)まで の1.6kbpに、polya denylation signal sequenceをっけて構築した。
発 現ベクタ ーとりポ ータープ ラスミド の構築:p50cDNAはcytomegalo V|rus promoterをもつ発 現ベクターBCMG/Neoに組込んだ。p65はCDM8 に 発現させ たものを 用いた。 NF‑|L6はcytomegalovirus promoterの 下 流に組込 み発現さ せた。レ ポーター遺伝子としては、ヒトIL‑6遺伝 子 の上流‑180か ら+22までのIL‑6プロモー ター領域K18をCAT遺伝子の 前 にっないで、K18‑CATとして用いた。これは‑158から‑145にNF‐|L6 の 結 合 部位 を1コ ピー も ち 、‑73か ら‑64にNF‑KBの 結合モチ ーフを1 コ ピーもつ 。レポー ター遺伝 子の5´欠落ミュータントとして、ヒトI Lー6プロモーター領域K9をCAT遺伝子の前にっけ′こ。K9ーCATは5´側の NF‑IL6の結合部位は欠落していて、NF‑だBの結合モチーフのみをもつ。
DNAト ランスフ ェクショ ンとCATアッセイ:Jurkat細胞は、トランスフ ェクション当日、対数増殖期に入るように調整し′こ。ひとつのアッセ イ あたり5Xl06個 の細胞を 用い、DEAE‑デ キストラン法にて、レポー ター遺伝子とNFーIL6、p50、p65の発現ベクターを各々トランスフェク ションし′こ。48時間培養して回収し、細胞抽出液のCAT活性を解析し
′こ。
m. 結果 と 考 察
1.NF‑IL6とNF‑だ8(p50/p65)のトランス フウクシ ョンによ るCATア ッセ イ:IL‑6プロ モーターK18−CAT遺伝子1卩gとNF‑IL6. p50. p65 の発 現ベクタ ーを各々0.5U8ずっトランスフェクションし、CATアツ
セ イ を 行 な っ た。 リポ ータ ー遺 伝 子の みを トラ ンス フェ クシ ョン し′ こ と き ア セ チ ル 化 さ れ た ス ポ ッ ト は み ら れ ず 、Jurkat細 胞 で はNF‑IL6、 NF‑KB結 合 部 位 に 結 合 す る 内 在 性 の 因 子 が 極 め て 少 な い こ と が わ か っ た 。リ ポ丶 一I夕ー 遺 伝子 と共 にNF‑ IL6だけをトランスフェクションした 場 合 、NF‑比B(p50/p65)の サ ブ ュ ニ ッ ト を 等 量 ず っ ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン し ′ こ 場合 も、CAT活 性は かな り低 かっ た。NF‑|L6とNF‑ KBを 同 時 に ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン す る と 、 非 常 に 強 い ア セ チ ル 化 さ れ た ス ポ ッ ト が み ら れCAT活 性は40:Xにも 上昇 した 。こ れは 、NFー|L6とp50/p65 が 、 リ ポ ー タ ー 遺 伝 子K18‑CATに 相 乗 し て 作 用 し 、CAT遺 伝 子 の 強 い 発 現 が起 き′ ここ とを 示し てい る。NF‑Iし6の みの トラ ンス フェクションで はCAT活 性 が 低 い こ と に よ り 、IL‑6遺 伝 子 の 転 写 が 必 要 と な っ た 場 合N F‑IL6以 外 の 因 子 の 関 与 が 予 想 さ れ 、 本 実 験 に よ っ て |L‑6遺 伝 子 の 発 現調節機構では、 NF'‑IL6とNF‑だBが相乗作用していることが示されナこ。
NF‑だBは 核 内 で は 、 ふ た つ の サ ブ ユ ニ ッ トp50とp65の へ テ ロ ダ イ マ ー と し て 存 在 し 、p50はDNA binding.dimerization domainを も ち 、DN A結 合 能 は 高 い 。 一 方p65は 、transactivator domainと 阻 害 物 質1だB と の 結 合 部 位 を も っ が 、DNA結 合 能 は か な り 低 い 。NF‑IL6とNF‑ KBの 相 乗 作 用 に お けるNF‑だBの サブ ユ ニッ トの 関与 をみ る′ こめ 、NF‑IL6と p50を ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン し て 、CATア ッセ イを 行な っ′ こ 。CAT活 性 は 軽 度 上 昇 し 、p50が ホ モ ダ イ マ ー と し てNF‑KBモ チ ー フ に 結 合 し 、N F−|L6と共働したか、内在性のp65ま′こはc‑ relなどRel‑Ankyrin famil yに 属 す る 他 の 因 子 が 、p50と 解 合 し てp50/p65、p50/c ‑ relコ ン プ レ ッ ク ス を っ く り 、 共 働 作 用 を 示 し た と も 推 測 ぎ れ る 。 次 に 、transact ivator domainは も っ が 、DNA結 合 能 は 弱 い サ ブ ユ ニ ッ トp65の み を 、 NF‑|L6と トラ ンス フ ェク ショ ンし ′こ 結果 であ るが 、ア セチル化された 強 い ス ポ ッ ト が み ら れ 、NFー だBの サ ブ ユ ニッ トp65単 独で あ って もNF‑
IL6と の 相 乗 効 果 を 認 め た 。 こ れ はp50の 場 合 の よ う に 、 内 在 性 の 因 子 の 開 与 だ け を 考 え て も 説 明 は っ か ず 、p65のDNA結 合 親 和 性 が 低 い こ と よりも、p65がどのようにしてNF‐1|.6と共働作用をとっ′こかは′こいへ ん興味深い。
ま′ こ、NF‑|L6と 共に トラ ンス フェ クシ ョン するp50とp65の量と比を 変 化ぎ せてCAT活性 の 増減 をみ ると 、最 もCAT活 性 が高 かっ′このはp50、 p65を 等 量 用 い た 場 合 で あ り 、p50/p65の へ テ ロ ダ イ マ ー に よ る 作 用 の 関 与 が 大 き い こ と を 示 す 。p50の ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン は 少 量 で あ っ
らも 、NF‑IL6とNF'‑比BのIL−6遺伝 子の 発現 機構 における共働作用 では p65の働 きが 主要 であ るこ と がわ かっ ′こ 。
2.5′ 欠 落 ミ ュ ー タ ン トK9‑CAT遺 伝 子 を 用 い ′ こCATア ッ セ イ : ミ ユ ― 夕 ン ト リポ ータ ー遺 伝子K9‑CATは 、NF‑|L6の結 合部 位は 欠落 して い て 、NFーKBの 結 合 モ チ ー フ1コ ピ ー だ け を も つ 。 こ のK9‑CATとNF‑I L6、NF‑比B(p50/p65)を ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン し た 結 果 で は 、 野 性 型 のK18‑CATで み ら れ た よ う な 、CAT活 性の 上昇 はみ られ ず、 その 値は 低かっ′こ。 この実験より、NF‐|L6がその結合部位に存在していな けれ ぱNF‑IL6とNF‑だBの 共 働 作 用 は お こ ら な い こ と が わ か っ ′ こ 。
IV. 結語
|L‑6遺 伝子 の発 現調 節に おけ る 転写 因子NF‑IL6とNF‑だBの 相乗 作用 を CATア ッ セ イ に て 検 討 し ′ こ 。
1.NF‑IL6、NF‑KBは |L‑6遺 伝 子 の 転 写 活 性 化 に お い て 相 乗 的 に作 用 し た 。
2. そ の 作 用 に は 主 にNF. だBの サ ブ ユ ニ ッ トp65の 関 与 が 重 要 であ っ
′ こ 。
3.NF‑IL6がNF‑IL6結 合 部 位 に ぬ け れぱ 、NF'‑比Bとの 相乗 作用 は起 ら な か っ た 。
学位論文審査の要旨
転 写 活 性 化 因 子 で あ るNF―116とNF‑だBは , 種 々 の 感 染 や 組 織 障害 に 対 す る 生 体の 防 御 機 構 の な か で , 急性 期 蛋 白 の 合成 や 炎 症 反 応の 調 節 上 , 重 要な 役 割 を も つDNA結 合蛋 白 で あ る 。 ま た ,116遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に は ,NF−116結合 部 位 と と もにNF ‑厄B結 合 モ チ ー フ が 存 在 す る 。 こ の こ と か ら ,116遺 伝 子 の 発 現 調 節 に お い て , 転 写 因 子NF一116と NF‑だBが相 乗効果 をもっ との仮 説を 検証し ようと した。
116プ ロ モ 一 夕 一 領 域 にCAT遺 伝 子 を っ け て り ポ ー タ ー 遺 伝 子 と し ,NF―116と NF‑だB(p507p 65)の 発 現 ベ ク タ ー をJurkat細 胞 に 一 過 性 に ト ラ ン スフ ェ ク シ ョ ンし て , CATアッ セイを 行った 。
そ の 結 果 ,NF−116とNF‑だBの ト ラ ン スフ ウ ク シ ョ ンに よ っ て , 著明 な ク 口 ー ル アン フ ェ ニ コ ー ル の ア セ チ ル 化 が み ら れ ,CAT活 性 は40% ま で 上 昇 し た 。 次 にNF―116とNF‑だB の サ ブ ュ ニ ッ トp65の み の ト ラ ン ス フ ウ ク シ ョ ン に よ るCATアッ セ イ に て も 高いCAT活性 が み ら れ た 。ま た ,NF一116結 合部 位 が 欠 落 し てい る ミ ュー タント をりポ ーター 遺伝 子とし た場 合 に は ,NF―IL6とNF‑だBの ト ラ ン ス フェ ク シ ョ ン によ るCAT活 性 の 上 昇 は みられ なかっ た。
こ れ ら の 実 験 か ら ,116遺 伝 子 の 発 現 調 節 に お い て ,DNA結 合 蛋 白NF―116とNF‑だB が 相 乗 作 用 を 持 っ こ と が 示 さ れ た 。 ま た , こ の 相 乗 作 用 はNF―116とNF‑だBの サ ブ ュニ ッ トp 65の 関 与 に よ る と こ ろ が 大 き いこ と を 示 唆 して い る 。NF一116結 合部 位 にNF―116が 存 在 してい ナょけ れば, こう した相 乗作用 は生じ ない ことも 示され た。
以 上の口 答発 表に際 し,葛 巻教授 から生理的条件下でもニっの転写因子は必要か,組織,細胞特 異 性 は あ る か ,CAT活 性 低 下 機 序 に お け るNE ‑だBの 意 義 に っ き , 牧 田 教 授 か ら はNF‑厄B