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博 士 ( 農 学 ) 市 村 通 朗

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 市 村 通 朗

学 位 論 文 題 名

Studies on Novel Antitumor Antibiotics Duocarmycins

(新規 抗腫瘍性 抗生物質 デュオカ ルマイシ ンに関する研究)

学 位 論 文 内容 の 要 旨

  

癌化学療法において、複数の天然物あるいは合成化合物が実際に臨床で用いられ ている。一部の癌は、化学療法と他の外科的処置や放射綜治療との組み合わせによ る治療が確立し、治癒する事も可能と成ってきた。しかし、癌の大部分を占める固 形癌に対して有効な制癌剤:まな<、固形癌に対する制癌剤の開発は、待望されてい る。

  

このような背景の中で本モ再究では、微生物の生産する代謝物をスクリーニングし、

Streptomyces

属放線菌の生産する新規な抗腫瘍性抗生物質デュオカルマイシン類を 見いだし、その発酵生産、精製、物理化学的性質、in vitroの生物学的活性ならび に

in vivo

のマウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果にういて明らかにしたものであ る。

1. DNA

分子に作用する抗腫瘍性物質を求め、

Bacillus subtilis

の変異株(DNA組換 え能欠損)を用いて、土壌より分離した微生物の生産物をプレスクリーニングした。

その結果、新規な化合物群である

duocarmycins

6

つの類縁体A,

Bl

,B2,

Cl

,C2,

SA

)を見いだした。これらの生産菌である

DO

88

,DOー

89

DO

113

の3株すべては 放線菌

Sterptomyces

属 と同定され た。この うちDO―

88

DO

89

cellulose

を資 化できな いがDOー

113

は資 化でき、

DO

88

DO

89

D

ructose

sucrose

を資化 できるが

DO

―113はできなかった。これら資化性およびそれ以外の性質からもDO―

88

とDO―89は分類上近縁と思われる。

2. DO

88

および

DO

89

株による 培養で、培地に

KBr

を添加すると

duocarmycin Bl

お よ び

B2

が 、 ま た

KC1

を 添 加 す ると

duocarmycin Cl

お よ び

C2

が 生 成す る こと が明らか となった。

DuocarmycinA

は培養液中で不安定であることから、より安定 な

duocarmycin Bl

B2

Cl

C2

の培養条件を検討した。単胞子分離により生産性 のより高いDO−891¥1To.3−88株を選択し、種々の培養条件のうち炭素源、窒素源の最 適化をはかり、また培養の途中で疎水性吸着レジンであるAmberlite XADー

7

を添加す ることにより、フラスコおよびタンクによる発酵生産において、培養条件検討前の 約

20

倍から

30

倍の生産量に向上させた(2000−

liter

夕ンクによる生産量:Bl 17u

g/ml

,B2 138ug/ml)。

3. DO

113

株による培養で、

duocarmycln

により生産性のより高い

D0

−113No.Nー113

SA

の培養条 件を検討し た。単胞子分離 株を選択し、種々の培養条件のうち炭素

374

(2)

源 、 窒 素 源 の最 適 化 をは か り 、ま た 微 量元 素 の 添加 に よ っ て、 フ ラ スコ お よ びタ ン ク に よ る発 酵 生 産に お い て、 培 養 条 件検 討前 の約10倍の 生産量 に向上さ せた(2000 liter夕ンクによる生産量:SA l.1LL g/ml)。

4.3っ の 生 産 株DO88DO89DO113の す べ て がduocarmycinAお よ びSAの 両 方 を 生 産 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の こ と か ら 、duocarmycinAお よ びSA 共通の生合成経路により生成することが示唆された。

5. DO88の 培 養 液 よ りduocarmycin^ を 、DO89の 培 養 液 よ りduocarmycin Bl B2ClC2を 、DO113の 培 養 液 よ りduocarmycin SAを 、 それ ぞ れ 溶媒 抽 出 およ び JI頃 相 あ る い は 逆 相 シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー な ど に よ り 精 製 、 単 離し た 。 6. 単 離 し たduocarmycin類 の 機 器 分 析 か ら 、duocarmycinAお よ びduocarmycin SAの 分 子 式 は そ れ ぞれC26H25hT308C25H23I¥T307で あ り 、spirocyclopropylhexa‑

dienoneと い う 共 通 構 造 を 有 し て い た 。 ま たduocarmycin Blお よ びB2は 同 一 の 分 子 式C26H26N308Brで あ り、duocarmycin Clおよ びC2は 同 ー の 分子 式C2l,H26l¥T30sCl で あった。 (Duocarmycin BlCl)および (duocarmycin B2C2)は分子 中にハロゲン 原 子 の 結 合 し た そ れ ぞ れ5員 環 、6員 環 構 造 を 有 し て い る が 、 こ れ ら はduocarmy cinAの シ ク ロ プ ロ パ ン 環 上 の 異 な っ た 位 置 で ブ 口 ム イ オ ン あ る い は ク 口口 イ オ ン に よ り 攻撃 さ れ 、シ ク ロ プパ ン 環 が 開裂 して 生じたハ ロゲン 化セコ化 合物で あった。

7. Duocarmycin類 は グ ラム 陽 性 およ び 陰 性 細菌 に 対 し強 い 抗 菌活 性 を 有し て い た。

例えばその活J性はBacillus subtilisに対し、SA(0.00065),A(0.0064),Bl(O.013),

B20.0033),Cl(0.01),C2(0.0065)であった。()内の数字は最少阻止濃度(越g ml)を表す。

8. Duocarmycin類 は 強 カ な 抗 細 胞 活 性 を 有 し て お り 、 こ れ ら の マ ウ スBalb3T3

Hras細 胞に 対 す る活 性 の 強 さお よ び その順位 は以下 のようで あった。 すなわ ち、

SA(0.05)>A0.3)〉B21.5)〉Bl(3.0)〉C220)〉Cl(40)。()内の数字は抗細胞活性 IC5°値(nM)(50%の増殖阻害を示す濃度)を表す。

9  DuocarmycinAは水 溶 液 中あ る い はプ ロ テ イッ ク な 溶媒 中 で 、化 学的 に不安定 で あ る の に 対 し 、duocarmycin SAは 安 定 で あ っ た 。 ま た 、duocarmycinAの ハロ ゲ ン 化 セ コ 化 合 物 で あ るduocarmycin BlB2Clお よ びC2は 中 性 条 件 下 でduocarmy cinAヘ 変 換 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ ら ハ ロ ゲ ン 化 セ コ 化 合 物 の抗 細 胞 活 性 の 強 さ とduocarmycinAへ の 変 換 率 が 良 < 一 致 す る こ と か ら 、 セ コ 化 合物 の 活 性 本体はduocarmycinAであると思われる。

10 Duocarmycin類 は マ ウ スin vivoモ デ ル にお け る 抗腫 瘍 性 活性 を 有 して い た 。 す な わ ち 腹 腔 内 に 移 植 さ れ た マ ウ ス 自 血 病P388に 対 し 、duocarmycinABlCl よ びSAは 延 命 効 果 を 有 し て い た 。 ま た 、 皮 下 に 移 植 さ れ た マ ウ ス 固 形 癌sarcoma 180に 対 し 、 す べ て のduocarmycinmitomycinCと 同 等 か そ れ 以 上 の 強 い 増 殖 抑 制 効 果 を 示 し た 。 特 にduocrmycin SAは 最 も強 い 活 性を 示 し た(T/C% :210.1 mg/kg単 回 静 脈 内 投 与 。T/Cは 薬 剤 を 投 与 し た 場 合 の 癌 容 量 を 薬 剤 無 投 与 時 の癌 容 量で割った値であり、薬剤の抗腫瘍活性を表す)。

11 Duocarmycin B2の 抗 腫 瘍 活 性 の 増 強、 水 溶 性の 向 上 、な ら び に化 学 的 安定 性 の 向 上 を め ざ し て 誘 導 体 合 成 が な さ れ た 結 果 、duocarmycin B280carbamoyl 体 で あ るKW2189が 選 択さ れ た 。こ のKW2189は ヌ ー ドマ ウ ス に移 植 さ れた16種の ヒ ト 腫 瘍の う ち 、14種 に対 し て 有 効で あ り 、特 にtまと ん ど の制 癌 剤が 無効で ある固 形 癌stomach St4お よ びcolon Co3に 対 し 有 効 で あ っ た 。 現 在KW2189は 臨 床 試験中である。

    ―375―.

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨

学 位 論 文 題 名

Studies on Novel Antitumor Antibiotics Duocarmycins

( 新 規 抗 腫 瘍 性 抗 生 物 質 デ ュ オ カ ル マ イ シ ン に 関 す る 研 究 )

  本 論 文 は 、 英 文83頁 、 図 ニ9、 表19、 引 用 文 献65、6章 お よ び 補 遺 か ら な り 、 ほか に参 考論 文15編が 仁さ れて いる 。

  癌 化 学 療 法 に お い て 、複 数の 天然 物あ るい は合 成化 合物 が実 際に 臨床 で用 い られ て い る 。 一 部 の 癌 は 、 化学 療法 と他 の外 科的 処置 や放 射線 治療 との 組み 合わ せ によ る 治 療 が 確 立 し 、 治 癒 する 事も 可能 と成 って きた 。し かし 、癌 の大 部分 を占 め る固 形 癌 に 対 し て 有 効 な 制 癌剤 はな く、 固形 癌に 対す る制 癌剤 の開 発は 、待 望さ れ てい る 。

  本 研 究 で は 、 微 生 物 の生 産す る代 謝物 をス クリ ーニ ング し、Streptomyces属 放線 菌 の 生 産 す る 新 規 な 抗 腫瘍 性抗 生物 質デ ュオ カル マイ シン 類を 見い だし 、そ の 発酵 生 産 、 精 製 、 物 理 化 学 的 性 質 、in vitroの 生 物 学 的活 性な らび にin vivoの マ ウス 腫 瘍 モ デ ル に お け る 抗 腫 瘍 効 果 に っ い て 明 ら か に し た も の で あ る 。   第 一 章 は 、 癌 化 学 療 法に おけ る抗 腫瘍 性抗 生物 質の 位置 ずけ 、お よび 近年 の 新し い タ ー ゲ ッ ト に よ る 抗 癌剤 のス クリ ーニ ング にっ いて 述べ られ 、ま たデ ュオ カ ルマ イ シ ンの 作用 機構 と考 えら れる 、DNA分子 のア ルキ ル化 に関 する 知見 につ いて述べら れ て いる 。

  第 二 章 で は 、 ス ク リ ーニ ング 、デ ュオ カル マイ シン 類の 発見 、デ ュオ カル マ イシ ン 類 の 発 酵 生 産 に つ い て 述 べ ら れ 、 下 記 の 内 容 が 含 ま れ て い る 。 1. 微 生 物 代 謝 物 に 、DNAに 作 用 す る 抗 腫 瘍 性 物 質 を求 め、Bacillus subtilisの変 異 株 (DNA組 換え 能欠 損)を用いてプレス クリーニングを行った。その結果、新規抗生 物 質duocarmycins(A,Bl,B2,Cl,C2,SA) を 見い だし た。 また それ らの 生 産菌 DO―88, DOー 89, DO― 113の 3株 は Streptomyces属 と 同 定 さ れ た 。 2.種 々 の 培 養 条件 検討 よ り以 下の 生産 量が 達成 され た。 すな わち2000ーliter夕 ン ク にお いてDO―89株 によ りBl   17皿g/ml,B2 138ルg/ml broth、DO―113株により SA l.1 ILg/ml brothであ った 。

  第三 章で は、 それ それ のデ ュカ オル マ イシ ンの 発酵 ブロ スか らの 精製およびそれ     ー376ー

男 哉

房 誠

田 葉

冨 千

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

ら の 物 理 化 学 的 デ ー タ に つ い て 述 べ ら れ 、 下 記 の 内 容 が 合 ま れ て い る 。

1

.すべてのduocarmycinは発酵ブロスより溶媒抽出、順相および逆相シリカゲル クロマトグラフイーにより精製、単離された。

2.

機 器 分 析よ り 、

duocarmycinA

お よ び

SA

の 分 子 式 は そ れ ぞ れC26H25Nヨ

08

C2 6H2 sN s07

であり、共通のspirocyclopropylhexadienone構造を有していた。

3.

機 器 分 析よ り 、

duocarmycin Bl

お よび

B2

は 同一 の分 子式

C26H26N308Br

であ り 、

duocarmycin Cl

お よ び

C2

は 同 一 の 分 子 式

C26H26Na0

Cl

で あ っ た 。

4

  Duocarmycin Bl

Cl

6

員 環、

duocarmycin B2

、C2は5員環 構造 を有 して いるが、これらはduocarmucinAのシクロプロパン環上の異なる位置でブロムイオ ンあるいはク口ロイオンにより攻撃され、シクロプロパン環が開裂して生じたハロ ゲン化セコ化合物であった。

  

第四章では、デュオカルマイシン類のin vitroにおける生物学的活性およびそ れ ら の 相 互 変 換 と の 関 係 に つ い て 述 べ ら れ 、 下 記 の 内 容 が 含 ま れ る 。

1. Duocarmycin

類 はグラ ム陽 性、 陰性 細菌 に対 し強い抗菌活性を有していた。

2. Duocarmyin

類は強カな抗細胞活性を有し、マウスBalb 3T3/H−ras細胞に対す る活性の強さとその順位は以下のようであった。すなわち、

SA

(0.05)>A(0.3)〉

B2

(1.5)〉

Bl

(3.0)〉C2(20)〉Cl(40)。()内の数字は増殖阻害活性のICso値

(nM)を示す。

3.

ハ ロゲ ン化 セコ 化合物

duocarmycin Bl

B2

Cl

およびC2は中性の水溶性溶媒 中で

duocarmycinA

ヘ変換することがわかった。

4.

こ れら ハロ ゲン 化セコ 化合 物の 抗細 胞活 性の 強さとduocarmycinAへの変換率 が良く一致することから、活性本体は、閉環により生じるduocarmycinAと思われ る。

  

第五章では、デュオカルマイシン類のマウスin vivoモデルにおける抗腫瘍活性 について述べられ、下記の内容が含まれている。

1. DuocarmycinA

Bl

Cl

お よ び

SA

は 移植 性 自 血 病

P388

に 対 し 、延 命効 果を 有していた。

2.

す べて のduocarmycin(A,Bl,Bl,Cl,C2,SA)は、移植性固形癌のsarcoma

180

に対し有効な制癌作用を有していた。

  

以上のように、新規物質デュオカルマイシンを見いだし、その精製、単離を行う とともに、マウスin vivoモデルにおける制癌活性を明らかにし、今後の癌化学療 法剤あるいはりード化合物としての可能性を示した。

  

以上は基礎的にも応用的にも寄与するところが大きな成果であり、よって審査員 一同 は、 別に 行っ た学力 確認 試験 の結 果と 合わ せて、本論文の提出者市村通朗 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

377 ‑

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