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博士(農学)村上 誠 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)村上   誠 学位論文題名

近赤外分光法による青果物の成分測定

学位論文内容の要旨

  本論文は8章で構成され、図147、表48、写真13、弓|用文献106を含む 165頁の和文論文である。

  生食用または加工用青果物の内部品質の測定を非破壊方法で行うことが 可能になれば生食・加工用青果物の選別に際して、内部品質の基準の導入 を可能にし、さらに栽培から収穫以降までの青果物の成分変化を同一試料 について追跡測定することが可能となり学術研究上有効な手段となる。本 論文は非破壊測定方法として近赤外分光法を採用 し、青果物の成分測定法 確 立 の た め に 行 っ た 研 究 の 成 果 を と り ま と め た も の で あ る 。   供試した測定装置ははNIRSystems社製分光光度計(NIRS6500)であり、

近赤外域でも可視光に近い800〜1,098nmの波長域でのスペクトルを測定し た。

  第1章では近赤外分光法の原理、国内外における研究の動向、本研究の 目的について述べられている。

  第2章では基礎実験として、スペクトルの変動要因、近赤外光の拡散反 射距離、近赤外分光法によって測定可能な試料表面近くの成分値と試料全 体の成分値との相関、青果物に含まれる成分を溶解した水溶液の選択的吸 収波長の決定について述べられている。結果を要約すると、(1)スベクト ルの変動は成分量の違いの他に、近赤外光照射部における表面形状の違い、

光フんイバと試料との距離および角度の違いによって起こる。(2)試料へ の近赤外光の拡散反射距離は、カボチャで10mm、テンサイで20mm、リンゴ、

    ‑ 764一

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ナシでは15mm程度であった。(3)試料果皮側拡散反射距離分に含まれる成 分 と試 料全体 に含 まれ る成分との間の相関は、カボチャ、リンゴ、ナシに おいて十分高かった。(4)各成分による吸収波長を特定するため、各成分 の 水溶 液(濃 度0〜40重量 %)を作成し、それそれの2次微分スペクトルと 濃 度と の相関 をと った 。そ の結果 、果 糖で は800〜824、884〜936、988〜 1,056nm、ぷどう糖では800〜824、886〜938、990〜1,056nm、ショ糖では 818、890〜930nm、994〜1,056nm、リ ンゴ 酸で は808〜850、886〜938、 1,030〜1,056nmが各 成 分 に 影 響 を 受 け た 波 長 であ る と 考 え ら れ た 。   第3章で はカ ボチ ャの成 分測 定に ついて 述べ られ てい る。供試したカボ チ ャの 品種は 「エ ビス 」で ある。1991年産 の試 料につ いては赤道面2ケ所 の スベ クトル を測 定し た。また、1992年産の試料については測定誤差を低 減 する ため測 定場 所を4ケ 所に 増や し、品 温を25℃ に調 整した。結果を要 約 する と、1991年 産試 料で は、SEP(測定 誤差 )は 水分 が3.4%、還元糖が 1.1%、全糖が0.9%であった。1992年産試料では、SEPは水分が1.7%、還元 糖が0.9%、全糖が0.9%と′顔った。誤差の原因としては果皮側と全体とに含 ま れる 成分量 の違 い、 果皮表面の凹凸による反射光の変化などがあること が 判っ た。ま た、 この 方法によって、水分値の多少によって選別を行うこ とが可能であることが明らかになった。

  第4章で はテ ンサ イの成 分測 定に ついて 述べ られ てい る。現行のテンサ イ 糖度 測定法 であ るSLD法 にお ける 諸問題 を解 決し 、簡 便、迅速にテンサ イ 中の 水分お よび 糖度 の測定法を確立するとを目的に近赤外分光法の測定 精 度に ついて 検討 した 。供試試料の品種は「モノホマレ」である。1992年 産 試 料 は 、 切 断面 中央 部1ケ所 のス ペク トルを 測定 した 。そ の結果 、SEP は水分が0.9%、糖度が0.8%であった。1993年産試料ではスベクトル測定場 所 を 切 断 面 中 央 部 と その 周 辺4カ 所 と し 、 ス ペ クト ル測定 後試 料を 厚さ 20mmの ディス ク状 に切 り取 り、こ れを スピ ニド カッタ で粉砕してSLD法に

‑ 765

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供し た。 その結 果、 糖度 のSEPを0.3%ま で減 少させることができた。SLD法 の 標 準 誤差は0.2%であ ること から 、高 精度 で測定 が可 能で ある ことが 判明 した。

  第5章で は り ン ゴ の 成 分 測 定 に つ いて 述 べられ てい る。 従来 、リン ゴの 選 別 は 重量、 形状 、色 調など 専ら 外部 品質 によっ て行 われ てお り、内 部成 分 に よ る選別 は行 われ ていな い。 そこ で本 法によ り非 破壊 状態 で成分 測定 を 行 い その精 度を 明ら かにす ると とも に、 成分に よる 選別 の可 能性の 有無 を究 明し た。供 試試料の品種は「っがる」、「レッドゴールド」、「ふじ」

で あ り 、いず れも 北海 道大学 農学 部附 属農 場の果 樹園 にお いて 栽培さ れた も の を 使用 し た 。 試 料 の 赤 道 面8カ 所の ス ペクト ルを 測定 し、 その成 分を 予 測 し た結果 、SEPは 「っ がる 」で は水分 が0.3%、還 元糖 が0.7%、全 糖が 1.2%、リ ンゴ酸 がO.03%、「レ ッド ゴー ルド 」ではそれそれ0.4%、0.5%、 0.6%、0.03%、「ふじ」ではそれそれ0.6%、O.4%、0.7%、0.04%であった。

次に 、異 品種リ ンゴを混合してキャリブレーショ ンを作成し、その精度を 調査 した 結果、SEPは水 分が0.4%、 還元 糖がO.7%、全糖が0.7%、リンゴ酸 がO.03%と各 品種 毎に 作成し たキ ャリ ブレ ーショ ンと ほぼ 同程 度の誤 差で あ っ た 。しか し、 キャ リブレ ーシ ョン 作成 に用い た試 料に 含ま れる成 分範 囲が狭い場合は誤差が大きくなることを確認した。

  第6章で は ナ シ の 成 分 測 定 に つ い て述 べ られて いる 。供 試し たナシ の品 種 は 「 身不 知 」 で あ る 。 品 温 を25℃に 調 整し た試 料の赤 道面8カ所の スベ クト ルを 測定し た。 その 結果、SEPは 水分が0.5%、還元糖がO.6%、全糖が 0.6%で あっ た。 水分お よぴ 全糖 の測 定値に よる 選別は可能であるが、還元 糖に つい ては誤 差が大きすぎ、この方法では選別は困難であると判断した。

  第7章で は り ン ゴ の 官 能 試 験 の 結 果が 述 べられ てい る。 既述 したよ うに 近 赤 外 分光法 によ って 成分値 の予 測が 可能 となっ たが 、最 終的 な品質 評価 は ヒ ト の感覚 に委 ねら れるた め、 成分 値と 感覚と の相 関を 官能 試験( 食味

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試 験 )を行 って明らか にした。そ こで、十数 名のバネラ によるりン ゴの官 能 試 験を行 い、官能試 験の各評価 項目と含ま れる成分値 との関係に ついて 調 査した。供 試試料の品種倣「レッドゴールド」である。官能試験は水分、

甘 味、酸味、 硬さ、歯ざわり、総合評価についてノヾネラ自身の主観によっ てー3〜+3の範囲で評価させて行った。その結果、総合評価値と水分、甘味、

酸 味 、硬 さ 、歯 ざ わ りと の 相関 係 数は そ れそ れ0.737* * 、0.815* *、

−0.553**、−0.578**、O.731゛゛であった。ここで、成分以外の評価となる 硬 さ や歯ざ わりと総合 評価の間に も有意な相 関があった ことから、 食昧に よ る 選別を 行う際には 硬度につい ても調査す る必要があ ると思われ た。ま た 、 化学分 析による各 成分値と各 評価値との 相関をみる と、水分値 と水分 評価値ではrニニー0.271と有意な相関が見られず、バネラが感じる水分(新鮮 さ を 感じる 水分)を化 学分析によ る水分値か ら推定する のは困難で あると 判 断した。リ ンゴ酸値と 酸味評価値 とではr=0.507**と高く、含まれるり ン ゴ 酸によ り酸味評価 を予測する ことは可能 であると思 われた。還 元糖お よび全糖と甘味評価値との相関はそれそれr=0.099と0.386**であった。従 っ て 、全糖 から甘味評 価を推定で きると判断 した。最後 に、官能試 験に用 い た サンプ ルのスペク トルを使っ て、二ユー ラルネット ワークによ り食昧 の 良否を学習 させ、選別 が可能かを 調査した。30,000回の学習の結果、正 答 率は学習用 データでは100%、.検証用 データでは約70%であった。本実験 で は 試料数 が30点と少な かったため に十分な学 習が行われ ず、誤差が 生じ たと判断した。

  第8章 総 括 で は 、 第2章 か ら 第7章 ま での 各 章毎 の 要 約が 述 べら れ てい る。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

近赤外分光法による青果物の成分測定

     本論文は8 章からなり、図 160 、表48 、引用文献106 を含む総頁数165 頁 の 和 文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文 4 編 が 添 え ら れ て い る 。    現在、青果物の選別は専ら重量、形状等の外部形質を基準として行われ ている。選別の精度向上のために含まれる成分の種類と量すなわち内部形 質の基準を選別工程に導入する必要がある。最近、測定精度が高く、測定 に要する時間が短い近赤外分光法が注目されている。本論文は近赤外分光 法を用いてカボチャ、テンサイ、リンゴ等の青果物の成分測定に関する研 究をとりまとめたものである。本方法は原理的に非破壊測定法であり、栽 培から流通までの各過程における青果物の成分変化を同一試料を連続して 追跡測定することも可能となる。

   本研究の結果は次のように要約される。

1 .本研究で用いた 800 〜 1 ,098nm の範囲の近赤外線のスペクトルは試料に 含まれる成分の種類と量および試料の表面形状、照射角度によって変化す る。試料内部における近赤外線の拡散反射距離はカボチャで10mnt 、テンサ イで20mm 、リンゴとナシでは15mm 程度であった。これらの拡散反射距離に 相当する部分に含まれる成分量と試料全体に含まれる成分量との相関はカ ボチャ、リンゴ、ナシにおいて十分高かった。各成分によって選択的に吸 収される波長を特定するために各成分を含む水溶液を作成して2 次微分ス ペクトルを求めて成分濃度との相関を求めた結果、水分、果糖、ブドウ糖、

ショ糖およびりンゴ酸による複数の吸収波長が判明した。複数の吸収波長 における吸光度と基準となる化学分析値との間で重相関式を求めキャリブ レー ションを作成した。 キャリブレーションの標準誤差(SEC )、キャ リブ レーションによる予 測値の標準誤差( SEP )、化学分析値と予測値 との重相関係数から波長数を3 〜5 に決定した。.

2. カボチ ャ(品種:エビス) の成分測定を行っ た結果、試料の温度を 25 ℃に調 整して赤道面 4 ケ所のスペクト ルを測定した結果、 SEP は水分

彦 男夫       出 和日 郁 藤尾 口 伊寺 堀 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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で1.7%(試料の水分範囲:66.0〜84.3%)、還元糖量で0.9%(範囲:0.7〜 5.3%)、全糖量で0.9%(範囲:6.9〜10.7%)であった。この結果から、近 赤外分光法に よって、試料の 水分値による 選別が可能であるとしている。

3.テ ン サイ ( 品種 : モノ ホマ レ )の 成 分測 定 で測定部を 水平断面上1ケ 所 と し た 場 合 、シ ョ 糖量 のSEPは0.8%(範 囲 :12.5〜22.3%) であ り 、 現 在 、 製 糖 工 場 が 採 用 し て い る 冷 水 浸 出 法 (SLD法 ) のSEPが0.2%以 下であること を考慮すると精 度が低いと判 断した。一方、測定部を断面上 5ケ 所 に 増 す と SEPが 0.3%ま で 減 少 す る こ と を 明 ら か に し た 。 4.「 っ がる 」 「レ ッ ドゴ ール ド 」「 ふ じ」 の3品種のりン ゴを用いて試 料赤 道面8ケ 所 においてスペ クトルを求め 、水分、還元糖 、全糖、リン ゴ 酸の測定を行った。SEPは水分で0.3〜0.6名(範囲:83.4〜86.7%)、還 元糖で0.4〜O.7%(範囲:5.2〜8.1%)、全糖でO.6〜1.2%(範囲:6.9〜 13.4%) 、 リ ン ゴ 酸 は0.03〜0.04%( 範 囲 :0.25〜0.46%) を 示 し た 。   各 成分 量 を予 測するキャリ ブレーションを3品種の試料に 共用できるこ と の 可 能 性 を 検討 し た結 果 、還 元 糖以 外の 成 分に つ いてSEPは品 種別 の キャリブレー ションを用いて 時とほぼ同一 な値を示し、共用が可能である ことを確認した。

5.リ ン ゴの 各 種成分量と食 昧試験(官能 試験)の各評価 値との関係に つ いて検討した 。食味試験のバ ネラは15名であ り、評価項目は水分、甘み、

酸味、硬さ、テクスチャおよび総合評価とした。総合評価値とこれ以外の評価 値との間には すべて危険率1%で 有意毅相関関 係を認めた。成分量と食昧試 験の各評価値 との間には全糖 、リンゴ酸に ついて高い相関関係を認めてい る。食味試験 を行うことによ って消費者の 品質に対する評価を知ることが できるが、多 くの人手と時間 を要する。そ こで、近赤外分光法によって得 られた各成分 の吸光度と食味 試験の総合評 価値を用いてニューロネットワ ークによって 各成分の吸光度 から総合評価 値を予測した結果、高い精度で 予測することが可能であることを明確にしている。

  以上の研究成 果は近赤外分光 法による青果物の成分測定および品質測定 に新たな多く の知見を示し ており、学術的およぴ実用的に貢献するところ 多大である。

  よ っ て 審 査 員 一 同 は 、 最 終 試 験の 結 果と 合 わせ て 、本 論 文の 提出 者 村上 誠 は博 士( 農 学) の 学位 を 受けるのに 十分な資格が あるものと認 定 した。

参照

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