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博 士 ( 農 学 ) 中 村 卓 司

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 中 村 卓 司

学 位 論 文 題 名

イ ネ 科 作 物 と マ メ 科 作 物 に お け る 炭 素 ・ 窒 素 相 互 関 係 の      作 物 間 差 の 解 析 、

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  作 物 の 乾 物 生 産 能 を 決 定 する 要因 とレ て、 単 位窒 素集 積量 当た りの 乾物 生産 能( 窒素 利用 効率 ) は極 めて 重要 な要 因で あり 、個 々の作物の窒素利用効率は 炭 素 ・ 窒 素 の 相 互 関 係 に お い て決 定さ れる 。こ れ まで に、 収穫 期の 単位 窒素 集積 量 当 た り の 乾 物 生 産 能 は イ ネ科 作物 でマ メ科 作 物よ り高 く、 生育 期間 中の 全窒 素 集 積 量 と 全 乾 物 重 の 関 係 はイ ネ科 作物 では 指 数関 数的 に、 マメ 科作 物で は直 線 的 関 係 に な り 、 炭 素 ・ 窒 素の 相互 関係 はイ ネ 科作 物と マメ 科作 物で 異な るこ とが 明ら かに され て いる 。そ こで 、本 研究 はイ ネ科 作物とマメ科作物で炭素( 乾 物) .窒 素の 相互 関 係が 異なる原因を探るため、両 科作物について、1)養分ス ト レス およ び高COユ 濃 度な どの 特殊 環境 条件 が炭 素( 乾物)・窒素の相互関係に お よぼ す影 響、2)葉 にお ける ガス交換能および葉の構造が炭素(乾物).窒素の 相 互関 係に およ ぼす 影 響、 およ び3)葉 にお ける 炭 素・ 窒素 代謝 に差 異を もた らす 要 因 を 明 ら か に す る こ と を 目的 とし て実 施し た 。得 られ た結 果は 以下 の通 りで ある 。

1塒 殊 環 境 下 で の イ ネ 科 作 物 と マ メ 科 作 物 に お け る 炭素 ・窒 素の 相互 関係 の差

  異

(1)収 穫 期 に お け る 窒 素 利 用 効 率 は イ ネ 科C4作 物 で 高 く、 イネ 科C3作物 でそ れ に 次 ぎ 、 マ メ 科 作 物 で 低 か っ た 。

(2)収 穫 期 の イ ネ 科 作 物 と マ メ 科 作 物 に お け る 全 窒 素 集積 量と 全乾 物重 の関 係 は 、 イ ネ 科C3作 物 内 、 イ ネ科C4作 物内 およ びマ メ 科作 物内 では 養分 欠乏 処理 お

(2)

よび作物種によらず、それぞれほぼ直線的関係にあり、窒素利用効率は各科作 物内では養分欠乏による変動は見られたものの、イネ科作物とマメ科作物の窒 素利用効率の差異を逆転する程の影響を与えなかった。

  (3)ダイズの根粒着生型(A62‑1)と非根粒着生型(A62‑2)の同質遺伝子系統を比 較すると、A62‑2でA62‑Iより窒素利用効率が高かった。しかし、イネ科作物と A6 2‑2を比較すると、イネ科作物で窒素利用効率が高かった。さらに、葉にお ける暗呼吸は標準的養分条件においても養分欠乏条件においてもともにマメ科 作物でイネ科作物より高かった。したがって、イネ科作物とマメ科作物の窒素 利用効率の差異を支配する要因として根粒着生による光合成産物の消費も関与 するが、葉の生理機能がイネ科とマメ科作物間で異なることが差異をもたらす 主因であると考えられた。

  (4)コムギ(ハルュ夕力)、ダイズの根粒着生型であるキタムスメ、A62‑1、非根 粒着生型であるA62‑2を供試し、窒素処理、C02処理、温度処理を行い、コムギ とダイズにおける生育にともなう炭素・窒素の相互関係の評価を試みた。炭素・

窒素の 相互関係の指標である単位窒素当たりの乾物生産能はC02処理および温 度処理 にかかわ らず、コ ムギでは 指数関数的関係であり、その傾きはON区で 30N区より 高く、ダ イズの30N区 では直線的関係にであった。ダイズのON区は 生育初期の乾物量が小さいとき、窒素吸収量に対レて乾物量が相対的に高いが、

乾物重が増加すると炭素・窒素の関係は直線関係に近づいた。したがって、ダイ ズの炭素・窒素の相互関係はON区の場合、窒素固定が始まったあと、直線関係 にもどると考えられた。イネ科作物およびマメ科作物の炭素・窒素相互関係は 大気中のC02濃度および温度処理の影響を受けなかった。

  (5)これらの結果から、イネ科作物およびマメ科作物の炭素(乾物).窒素の相 互関係 の差異は養分欠乏および高C02条件などの特殊環境下でも強い影響を受 けず、生理的に極めて安定な異なる機構によって支配されていることが示唆さ     ノ

れた。

    一

2.イネ科作物とマメ科作物における炭素・窒素の相互関係に差異をもたらす機   構

(3)

  (1)地上部最大期の光合成速度および生育にともなう光合成速度の変遷を調査 した結果、マメ科作物でイネ科作物より単位窒素当たりの光合成速度が低く、

地上部最大期における最大展開葉の光呼吸/総光合成速度比はマメ科作物でイネ 科作物より高かった。

  (2)マメ科作物ではイネ科作物と比較して葉の単位窒索当たりのク口口フアル 含有率は低く、気孔抵抗は高く、葉内C02濃度は低かった。また、マメ科作物 では葉のデンプン含有率と光呼吸/総光合成速度比の間に正の相関が存在した。

  (3)葉のデンプン含有率はマメ科作物でイネ科作物より高く、マメ科作物では 比葉面積CS LA)とデンプン含有率との間に負の相関が存在した。葉のデンプン 含有率が高い場合には葉内のC02tj:t散速度が低下するために、マメ科作物でイ ネ 科作 物よ り葉 内のC02拡散速度が低く、その結果、葉内C02濃度が低下し、

Rubisco活 性 サ イ ト で のC02濃 度 の 低 下 が 起 こ る と 考 え ら れ た 。   (4)マメ科作物の単位窒素当たりの光合成速度がイネ科作物より低く、光呼吸

/総光合成速度比が高い原因は、マメ科作物でイネ科作物より(A)気孔抵抗が高 く、(B)単位窒素当たりのク口口フィル含有率が低く、(C)葉におけるデンプン 含有率が高く、葉が厚くなり、デンプンの集積が葉内のCOz拡散速度の低下を もたらすことによると推定された。

  (5)栄養生長期と地上部最大期に21%02および2%02条件でイネとダイズの葉 に ̄。C02を同化レた結果、同化終了後30分間における葉からの同化14CO:放出割 合 は21%Oユ 区と 比較 して2%Oz区で 低下 し、21%Oz区に対する2%02区の放出割 合の比はダイズでイネより小さく、光呼吸による14 C02の放出量はダイズでイネ より高かった。

  (6)14 C02から葉で同化した14Cはイネでは炭素代謝系である糖・多糖類画分に 多く分配され、ダイズでは窒素代謝系である有機酸・アミノ酸画分に多く分配 された。両作物とも窒素施与区で無窒素区より有機酸・アミノ酸画分への14Cの 分配割合は高かった。同化した14Cの有機酸・アミノ酸画分への分配割合は、

21%0z区より2%02区で低く、この低下割合はダイズでイネより大きかったこと から、光呼吸は窒素代謝系に関与しており、ダイズでイネよりこの関与は強かっ た。

  (7)葉のSPS(スク口ースリン酸シンターゼ)とPEPC(ホスホエノールピルビン酸

(4)

カルボキシラーゼ)の活性を測定した結果、葉の窒素含有率の上昇にともない PEPCノSPS活性比は上昇した。また、PEP C/S PS活性比はイネよルダイズで高かっ た。したがって、イネにおいては獲得した炭素を優先的に炭素代謝系に分配し、

ダイズにおいては獲得した炭素を優先的に窒素代謝系に分配する機構が存在し、

この分配にSPSとPEPCが関与していることが示唆された。

  (8)以上の結果から、イネ科作物とマメ科作物で炭素(乾物)・窒素の相互関係 が異なる原因は、主にマメ科作物でイネ科作物より(A)単位窒素当たりの光合 成速度が低いこと、(B)光呼吸/総光合成速度比が高いこと、(C)獲得した炭素を 窒 素代 謝系 に優先 的に 振り 分け る機 構が 存在 する こと によ ると 結諭 した。

(5)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授    但 野 利 秋 副 査    教 授    本 間    守 副 査    教 授    波 多 野 隆 介      学 位 論 文 題 名

イネ科作物とマメ科作物における炭素・窒素相互関係の      作物間差の解析

  本論分は、図34、表14、引用文献230を含み、7章からなる総頁数133の和文 論文である。別に参考論文4編が添えられている。

  作物の乾物生産能を決定する要因として、単位窒素集積量当たりの乾物生産 能(窒素利用効率)は極めて重要な原因である。個々の作物の窒素利用効率は主 に炭素・窒素の相互関係によって決定されるが、炭素・窒素の棚互関係はイネ 科作物とマメ科作物で異なることが明らかにされている。本論文はイネ科作物 とマメ科作物で炭素(乾物).窒素の相互関係が異なる原因を探るため、両科作 物について、1)養分ストレスおよび高COユ濃度などの特殊環境条件が炭素(乾 物).窒素の相互関係におよぼす影響、2)葉におけるガス交換能および葉の構造 が炭素(乾物)・窒素の相互関係におよぼす影響、および3)葉における炭素・窒 素代謝に差異をもたらす要因を明らかにすることを目的として実施した研究の 結 果 を と り ま と め た も の で あり 、 そ の 内 容 は 下 記 の ご とく 要約さ れる 。 1.特殊環境下でのイネ科作物とマメ科作物における炭素・窒素の相互関係の 差異

(1)収穫期における窒素利用効率はイネ科C4作物で高く、イネ科C3作物でそ

(6)

れに次ぎ、マメ科作物で低かった。養分欠乏処理実験での収穫期のイネ科作物 とマメ科作物における全窒素集積量と全乾物重の関係は、イネ科C3作物内、イ ネ科C。作物内およびマメ科作物内で、それぞれほぼ直線的関係にあり、窒素利 用効率は各科作物内では養分欠乏による変動は見られたものの、イネ科作物と マ メ 科 作 物 の 窒素 利 用 効率 の 差異 を 逆 転す る 程 の影 響 を与 え な かっ た 。

(2)ダイズの根粒着生型(A62‑1)と非根粒着生型(A62‑2)の同質遺伝子系統を 比較すると、A62‑2でA62ー1より窒素利用効率が高かったが、イネ科作物とA62‑

2を比較 すると、イネ科作物で窒素利用効率が高かった。さらに、葉における 暗呼吸は標準条件でも養分欠乏条件でもともにマメ科作物でイネ科作物より高 かった。したがって、イネ科作物とマメ科作物の窒素利用効率の差異を支配す る要因として根粒着生による光合成産物の消費も関与するが、葉の生理機能が イネ科作物とマメ科作物間で異なることが差異をもたらす主因であると考えら れた。

(3)イ ネ科作物 およびマ メ科作物 の炭素・窒素相互関係は大気中のC02濃度 および温度処理の影響を受けなかった。

(ロ)これらの結果から、イネ科作物およびマメ科作物の炭素(乾物).窒素の 相互関 係の差異 は養分欠乏および高C02条件などの特殊環境下でも強い影響を 受けず、生理的に極めて安定な異なる機構によりて支配されていることが示唆 された。

2.イネ科作物とマメ科作物における炭素・窒素の相互関係に差異をもたらす機 構

(1)単位窒 素当たりの光合成速度はマメ科作物でイネ科作物より低く、地     一

上部最大期における最大展開葉の光呼吸/総光合成速度比はマメ科作物でイネ 科作物より高かった。

(7)

  (2)マメ科作物の単位窒素当たりの光合成速度がイネ科作物より低く、光 呼吸/総光合成速度比が高い原因は、マメ科作物でイネ科作物より(A)気孔抵 抗が高く、(B)単位窒素当たりのク口ロフアル含有率が低く、(C)葉における デンプン含有率が高く、葉が厚くなり、デンプンの集積が葉内のCO:拡散の 低下をもたらすことによると推定された。

  (3)‥CO:を葉で同化後30分間における葉からの同化1→CO:放出割合は 21%Oユ区と比較して2a/oOユ区で低下し、21%02区に対する2%Oユ区の放出割合 の比はダイズでイネより小さく`光呼吸による¨C07の放出量はダイズでイネ より多かった。

(4)葉で同化レた14Cはイネでは炭素代謝系である糖・多糖類画分に多く分 配され、ダイズでは窒素代謝系である有機酸・アミノ酸画分に多く分配され た。同化 した14Cの有 機酸・ア ミノ酸画分 への分配 割合は、21%O:区より 2%02区で低く、この低下割合はダイズでイネより大きかった。したがって、

光呼吸が窒素代謝系に関与しており、ダイズでイネよりこの関与は高かった。

さらに、PEPC/SPS活性比は イネよル ダイズで高 いことか ら、獲得された炭 素はダイズでイネより窒素代謝系ヘ優先的に振り分けられ、この振り分けに PEPCが関与していることが示唆された。

(5)以上の結果から、イネ科作物とマメ科作物で炭素(乾物).窒素の相互 関係が異 なる原因 は、主に マメ科作物でイネ科作物より(A)単位窒素当たり の光合成速度が低いこと、(B)光呼吸/総光合成速度比が高いこと、および(C) 獲得した炭素を窒素代謝系に優先的に振り分ける機構が存在することによる と結諭した。

以上のように、本研究は、作物の生産性を支配する基本的な要因である炭

(8)

素・窒素の相互関係に注目して、生産性が高いイネ科作物と低いマメ科作物 の炭素・窒素相互関係に差異が存在する原因について重要な新知見を提供し たものであり、得られた結果は学術的に高く評価できるばかりでなく、実際 の農業の場においても貢献するところが極めて大きい。よって、審査員一同 は、別に実施した最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者中村卓司は博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 か あ る も の と認 定 し た 。

参照

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