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博 士 ( 農 学 ) 村 尾 和 則

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 村 尾 和 則

学 位 論 文 題 名

イ ネ 萎 縮 ウ イ ル ス ゲ ノ ム の 変 異 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  イ ネ 萎 縮 ウイ ルス(RDV)は12本 に分節 した2本 鎖RNA(dsRNA)をゲノ ムと して 持っ 植物 レオ ウイ ルス であ る。 近年 、そ のゲノム構造の解析を中心に研究が進められ、

全 ゲ ノ ム セ グメ ント の塩 基配 列が 解明 され た。 今後 は個 々の 発現タ ンパ ク質 の機 能 の 解 析 を 中心 とし て、 植物 と昆 虫の 両寄 主で の感 染・ 増殖 、病徴 の発 現、 およ び 昆 虫 伝 搬 性な どの 機構 の解 明が 中心 的研 究課 題と なる 。こ のよう な研 究に 当た り 、 変 異 株 との 比較 研究 が有 効な 研究 方法 のー つで ある が、 現在ま でに 報告 され た 変 異 株 は 、罹 病イ ネの 株分 け継 代に より 生じ た昆 虫媒 介性 喪失株 と、 イネ に激 しい 萎縮 症状 を引 き起 こすsevere strain(RDV−S)のみである。そこで、本研究で は ポ リ ア ク リル アミ ドゲ ル電 気泳 動(PAGE)によ るRDVのゲ ノムdsRNAの泳 動パ ター ン を 指 標 と して ゲノ ム変 異株 の探 索を 行っ た。 さら に、PAGEにおけ る移 動度 が最 も大きいゲノムセグメント12 (S12)について、その塩基配ヲ|Jを解析し、それにコー ドされるタンパク質(P12)の感染宿主内での発現を調べた。

1.RDV感 染 イ ネ 組 織 よ ル ウ イ ル ス ゲ 丿 ム dsRNAの 直 接 抽 出 法 の 確 立   RDVゲ 丿ム の抽出 を能 率化 する ため 、ウ イル ス純 化の 過程 を経ることなく、感染 イ ネ か ら フェ ノー ル抽 出、 塩化 リチ ウム 処理 、セ ルロ ース バウダ ーに よる 精製 で RDVゲノ ムを 直接抽 出す る方 法を 確立 した 。本 法に よれ ば、0.lg感染葉から数メg のゲ 丿ムdsRNAを調 製す るこ とが 可能 であ り、 また 、多 数の 試料や少量の材料から もゲ ノムdsRNAの調 製が 出来 る極 めて 有効 な方 法で ある 。

2.PAGEに よるRDVゲ ノム 変異 株の 検出

  上 述のRDVゲ ノム の直 接抽 出法に より 、日 本お よび 国外 の170所の 圃場 から 採取 し 、 分離 し た株 から ウイ ルス ゲノ ムを 抽出 し、PAGEによ る泳動 バタ ーン を比 較し た 結 果、 国 内か ら32、国 外か ら22の変 異株 を初 めて 分離 した。 変異 株は 異な る採 取地 のみ ならず 、同 一圃 場か らも 検出 され た。 また 、17採取 地の内、8ケ所からは ー っ のセ グ メン トに 対し て複 数の バン ドが 検出 され る株 が分離 され 、感 染植 物内 での ゲノ ムの変 異を 生じ たか 、ま たは2種以 上の 株が 感染 して いたことが示唆され た。

  フ ィリ ピンお よび ネパ ール 分離 株はS3、S8、S9、 およ びSl0の泳動パターンが日

(2)

本の分離株のそれとは顕著に異なっていた。さら.にフィリピン株以外の分麓株の S12はPAGEでの移動度が小さいグループと大きいグループの2っに分類することが できた。日本の分離株では、本州の株は全て前者に、九州株は全て後者に分類さ れたが、四国株は前者と後者に属するものが混在した.また、ネパール株は前者 に、韓国株は後者に分類され、分離株の採取地とゲノムの変異におよその相関が あることが示唆された。

3.RDV変異株のS12の塩基配列の解析

  S12にっいて、移動度の異なる代表的な4分離株の塩基配歹9を解析した結果、塩 基配列の類似性にっいても2っのグループに分類でき、それは移動度によるグルー プ分けと一致した。さ、らに、S12に2本のバンドが検出された株(高知県奈半利町)

にっいて解析した結果、一方は移動度の小さい、他方は大きいグループに類似性 が高かった。解析した全ての分離株のS12の変異は全て置換のみであり、全長は 1,066塩基対、各株間の相同性は96‑99%であった。

  S12の塩基配ヲ|Jにコードされるタンパク質の読み枠(ORF)を調べた結果、いずれ の分離株においても、in vitroでの発現が確認されているP12、P120Pa、および P120Pbの開始コドンと終止コドンに変異はなく、ORFは維持されており、これらが in vivoで発現し機能していることが示唆された。

  フィリピン株のSllとS12の移動度が他の分離株と比ベSllよりS12の方が移動度 が小さい、即ち逆転しており、その塩基配列を解析して、84塩基の重複が生じて いることを明らかにした。その結果、P12に相当するORFに28個のアミノ酸の重複 が起きていた。重複領域の前後にはUUCCG同方向繰り返し配ヲIJが認められた。遺伝 子の再編は植物レオウイルスでは最初の報告である。他方、RDV‐Sの変異株RDV‑S ー6でも、S12に変異が生じ、塩基配列を解析した結果、フィリピン株同様、121塩 基が重複し、PAGEでの移動度がSllと逆転していることを明らかにした。この重複 の結果、ORFにずれが生じて重複領域内に終止コドンが出現し、P12に相当するOR Fはカルポキシル末端側、82アミノ酸(約1/3)が欠損していることが推測された。

RDV‑S‑6とRDV―Sの混合感染イネではRDV―Sが単独感染株に比べて萎縮症状が弱いこ とから、RDV‑S−6はP12の機能が損なわれた干渉性欠損ウイルスであると考えられ た。

4.RDVのS12のin vivoでの発現

  S12にコ―ドされるP12の感染寄主内での発現について調べた。RDV‑H株のP12を マルトース結合タンパク質(HBP)との融合タンバク質の形で大腸菌内で発現させ、

家兎に免疫し、P12に特異的に反応する抗血清を作製した。この抗P12血清を用い て、RDV‑H感染イネとRDV‐S感染媒介虫培養細胞から分子量約38KDaの感染細胞に特 異的なタンパク質を検出し、in vivoでP12の発現を初めて検出した。さらに重複 を生じたS12を持っフィリピン株が感染したイネおよび媒介虫培養細胞からも感染 細胞に特異的なタンパク質を検出した。そのタンパク質は分子量約40KDaで、塩基 配列から推測された通り、RDV‑HやRDV−Sが持っ正常のS12のコードするP12より大 きかった。

    −826ー

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

木 村 生 越 喜 久田 上 田

学 位 論 文 題 名

郁 夫      嘉 郎 一 郎

イ ネ萎縮ウ イルスゲノムの変異に関する研究

  本 論 文 は159頁 の 和 文 論 文 で 、 表9、 図34、 引 用 文 献102を 含 み 、 別 に 参 考 論 文2 編 が 添 え ら れ て い る 。

  本 研 究 は 、 各 地 で 採 取 し た イ ネ 萎 縮 ウ イ ル ス(RDV)分 離 株 の12本 に 分 節 し た ゲ ノ 2本 鎖RNAdsRNA)の 、 ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 パ タ ー ン を 比 較 し た 結 果 、 RDVの ゲ ノ ム 変 異 株 、 を 発 見 し た 。 さ ら に 、 変 異 が 識 別 し 易 い ゲ ノ ム セ グ メ ン ト12 (S12) に っ い て 、 そ の 塩 基 配 歹IJを 決 定 し その 変異 を解 析し て、 そこ にコ ー ドさ れて い る タ ン パ ク 質(P12) の 感 染 宿 主 内 で の 発 現 を 実 証 し た 。

1. 感 染 イ ネ 組 織 よ ル ウ イ ル ス ゲ ノ ム dsRIIAの 直 接 抽 出 法 の 1   RDVゲ ノ ム の 直 接 抽 出 法 が 、 ウ イ ル ス 純 化 の 過 程 を 経 る こ と な く 、 感 染 イ ネ か ら フ ェ ノ ー ル 抽 出 、 塩 化 リ チ ウ ム 処 理 、 セ ル ロ ー ス バ ウ ダ ー に よ る 精 製 な ど に よ り 確 立 さ れ た 。 本 法 に よ れ ば 、O.lg感 染 葉 か ら 数 メgの ゲ ノ ムdsRNAを 調 製 す る こ と が 可 能 で あ り 、 多 数 の 試 料 や 少 量 の 材 料 か ら も ゲ ノ ムdsRNAの 調 製 が 出 来 る 極 め て 有 効 な 方 法 で あ る 。

2. ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 一 (PAGE) に よ る RDIVゲ 丿 ム 変 異 株 の 梭 出   上 述 のRDVゲ 丿 ム の 直 接 抽 出 法 に よ り 、 国 内 お よ び 国 外 の170所 の 圃 場 か ら 採 取 し 、 分 離 し た 株 か ら 本 ウ イ ル ス ゲ ノ ム を 抽 出 し 、PAGEに よ る 泳 動 パ タ ー ン を 比 較 し た 結 果 、 国 内 か ら32、 国 外 か ら22の ゲ ノ ム 変 異 株 を 初 め て 分 離 し た 。 変 異 株 は 異 な る 採 取 地 の み な ら ず 、 同 一 圃 場 か ら も 検 出 さ れ た 。 さ ら に 、 一 っ の セ グ メ ン ト に 対 し て 複 数 の バ ン ド が 検 出 さ れ る 株 が 分 離 さ れ 、 こ れ は2穏 以 上 の 変 異 株 が 感 染 し て い た か 、 ま た は 感 染 植 物 内 で ゲ ノ ム の 変 異 を 生 じ た こ と が 示 唆 さ れ た 。   フ ィ リ ピ ン お よ び ネ パ ー ル 分 離 株 はS3S8S9、 お よ びSl0の 泳 動 パ タ ー ン が 日 本 の 分 離 株 の そ れ と は 顕 著 に 異 な っ て い た 。 さ ら に 、 フ ィ リ ピ ン 株 以 外 の 分 離 株 S12に っ い て 、PAGEで の 移 動 度 が 小 さ ぃ グ ル ー プ と 大 き い グ ル ー プ の2っ に 分 類

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することができた。日本の分離株では、本州の株は全て前者に、九州株は全て後 者に分類されたが、四国株は前者と後者に属するものが混在した。また、ネパー ル株は前者に、韓国株は後者に分類され、分離株の採取地とゲノムの変異におよ その相関があることが示唆された。

3.RDV変異株におけるS12の塩基配硼

  S12にっいて、移動度の異なる代表的な4分離株の塩基配列を解析した結果、塩 基配歹uの類似性にぃヽても2っのグループに分類でき、それは移動度によるグルー プ分けと一致した。さらに、解析した全ての分離株のS12の変異は全て置換であり、

全 長 は1,066塩 基 対 よ り な り 、 各 株 間 の 相 同 性 は96ー99%で あ っ た 。   S12にコードされるタンパク質の読み枠(ORF)を塩基配列より調べた結果、全分 離 株に お ぃて も 、invーitroでの発 現が確認さ れているP12、P120Pa、およ び P120PbのORF部分は維持されており、これらがin vivoでも発現し機能しているこ とが示唆された。

  フィリピン株のSllとS12の移動度が他の分離株と比ベSllよりS12の方が移動度 が小さく、即ち逆転しており、その塩基配列を解析した結果、84塩基の重複が生 じていることを明らかにした。これに対応して、P12のORFに28個のアミノ酸の重 複が生じていた。重複領域の前後にはUUCCG同方向繰り返し配歹|Jが認められた。遺 伝子の再編は植物レオウイルスでは初めて明らかにされた。同様に、RDV―Sの変異 株RDV−Sー6でも、S12に変異が生じ、塩基配列を解析した結果、121塩基が重複し、

PAGEでの移動度がSllとS12が逆転していることを明らかにした。この重複の結果、

ORFにずれが生じて重複領域内に終止コドンが出現し、P12に相当するORFはカルボ キ シ ル 末 端 側 、82ア ミ ノ 酸 ( 約1/3) が 欠 損 し て い る こ と が 分 か っ た 。

4.RDV S12のin vivoでの発現

  S12にコードされるP12の発現が感染宿主内で調べられた。RDVーH株のP12をマル 卜ース結合タンパク質(HBP)との融合タンパク質で大腸菌内で発現させ、これを家 兎に免疫し、P12に反応する抗血清を作製した。本抗血清を用いて、RDV‑H感染イ ネとRDV−S感 染媒介虫培 養細胞から 分子量約38KDaのタンパク質を検出し、in vivoでP12の発現を初めて検出した。さらに重複配列を有するS12を持っフィリピ ン株が感染したイネおよび媒介虫培養細胞からも分子量約40KDaの特異的なタンパ ク質を検出した。塩基配歹IJから推測された通り、正常のS12がコードするP12より 大きかった。

  以上のように、本研究は国の内外からRDV感染イネ株を採取し分離したRDVゲノ ムdsRNAの電気泳動パターンの違いから、これまで見いだされていなかったRDVの ゲノム変異株を発見した。さらに、S12の塩基配列の解析により、変異を生じた分 子的基盤が解明された。これらの研究は、今後植物レオウイルスのゲノム再編機 構や遺伝学的機能の解明を行う上で重要な基礎的知見を与えるもので、ウイルス 学上 寄 与す る とこ ろ 極め て 大 であ り 、そ の 成果 は 高く 評 価さ れ て` ヽる。

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  よって審査貝一同|ま、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者、村尾和則 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位を 受 ける の に十 分 な資 格 があ る も のと 認 定し た 。

参照

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