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博 士 ( 農 学 ) 朴

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 朴    紅      学 位 論 文 題 名

中 国 東 北 に お け る 農 業 構 造変 動 と 農 村組 織 化 の 性格 学 位 論 文 内 容 の要 旨

  本論文の課題は、改革・開放路線下の中国の農業構造の変動とその下に存立する個人農 の組繊化の方向性を明らかにすることにある。人民公社の解体により、事実上の個人農経 営が形成されたが、市場経済化が急速に進展をみせる中で、孤立分散化した個人農を支援 する組織体制の構築が大きな政策課題となっている。そこで、中国のなかでも農業基盤が 強固で穀倉地帯を形成している東北地方を対象として、個人農の経営動向とそこから導き 出される組織化の方向とその内容を実態に即して明らかにしようとするものである。序章 では、以上の問題意識と既存研究の整理が行われている。

  論文は3部構成をとっているが、第1部では中国東北農村の基礎構造分析を行っている 第1章は本論の導入部であり、統計資料に基づき中国農業における東北地方の位置づけ、

改革以降の農業生産の展開とその重要な推進主体である技術普及組織とその効果を明らか にして いる。第2章と第3章 においては、東北部の1郷鎮(吉林省舒蘭市水曲柳鎮)を対 象として農村構造の分析を行っている。第2章は、5年間にわたり定点観測的に実施した 3つの集落と9戸の個人農の調査をもとに、土地保有調整の過程と経営展開のタイプ別の 分析を行っている。第3章は、1年間の記帳調査をもとに農家の生産・流通・金融対応と 経済収支に関する分析を行っている。これにより、現在の個人農の抱える問題と組織化の 課題を構造的に明らかにしている。続く補論においては、貧困地帯の1郷鎮の農村と農民 の実態を示し、一般農村の構造問題を補完的に明らかにしている。第4章においては、東 北地方の農業に独自の位置づけを与えられている国営農場の史的展開と農場改革のフレイ ムを整理し、大規模な農家請負の性格を明らかにしている。

  以上の考察から、東北地方の農業生産にっいては、土地改良投資や技術普及組織の強固 な存在によって、単収の向上や耕地の外延的な展開が認められ、農業生産量・額ともに急 速な成長を示していることが明らかとなった。しかしながら、国営農場の「職工家庭農 場」を例外として、一般農村においては個人農の経営は従来の自給的性格から3つのタイ ブへの方向を示してはいるものの、それを支える支援体制はほとんど空白となっている。

また、貧困地帯における個人農はインフラ投資の遅れからさらに厳しい状況におかれてい る。農産物価格の下落と生産資材の高騰、相対による融資のもとで、特に個人農に対する 流 通 ・ 金 融 的 な 支 援 、 組 織 化 が 必 要 と さ れ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。

(2)

  第2部は、個人農体制の下で政策的に進められている既存の社会主義セクター、具体的 には流通・金融組織の改革問題を取り上げている。第5章では、統計分析によって国営部 門を中心とする農産物流通の構造と主体の変化、供銷合作社の事業変化と社会的機能、農 業銀行ならびに信用合作社による農業金融の性格を明らかにしている。第6章では、現在 でも農産物流通において重要な位置を占めている国営糧食流通部門を取り上げ、その改革 方向と現実の糧食流通の実態を省ー県―郷鎮の各レベルにおいて明らかにしている。

  1980年代後半以降進められている既存社会主義セクター(国営部門・合作社)の改革は 進展しておらず、しかも独立採算性の採用が強制される中で、各企業・団体は業務の中心 を採算性の低い農業分野から採算性の高い非農業分野へと転換させている。その事業対象 も県レベルの大企業に傾斜させており、郷鎮レベルでの個人農に対する業務は空洞化しつ っある。このため、既存組織による個人農の支援体制の再構築の展望|ま極めて限定的であ ることを明らかにしている。

  第3部においては、農村組繊化の方向性に関する政策の吟味と2つの先進事例の検討を 行っている。第7章においては、農村組織化政策の2っの柱となっている「双層経営体 制」ならびに「農村社会化サ―ピスシステム」について整理した上で、「地区合作経済組 織」と「農村合作基金会」、「専業合作経済組織」の内容を検討している。第8章では、

綏化地区興福郷を対象として、主に食糧作物を中心とする土地利用型の組織化の事例とし て大豆を基幹とした輪作体系と機械サーピスシステムの形成とその性格を明らかにしてい る。第9章では、スイカ産地としての銘柄を確立している寧安市蘭崗鎮を対象として、商 品作物を対象とする市場対応型の組織化の性格づけを、技術習得組織と販売斡旋組織の検 討から行っている。

  終章においては、農村組繊化が必然化する根拠を個人農経営の性格変化から説明すると ともに、その具体的な方向性と条件を示し、結諭としている。

  まず、個人農経営の性格に関しては、土地保有の性格、商品経済化、貨幣経済化の視点 から第1部・第2部の総括を行っている。中国のなかでも商業的農業が進展した東北にお いては、改革以降の個人農は請負制下で零細経営を維持しつつ、商品経済化・貨幣経済化 のもとにおかれており、既存の社会主義セクターによる保護体制は十分機能していない。

したがって、零細な個人農体制を前提とした上で、それを支援する組織体制の確立が急務 の課題となっていることを明らかにしている。

  農村組織化の方向性に関しては、第3部の事例分析に依拠しながら、土地利用型の組織 化と市場対応型の組織化に整理している。

  土地利用型の組織化は、農業技術普及の系統組織のもとでの郷鎮・集落段階における農 民の組織化であり、作物的には穀物を主対象としている。郷鎮政府が普及組織と連携しな がら、集落レベルでの普及に当たり、モデル農家の選定を行うなど、独立して経営意欲の 旺盛な個人農への技術浸透が図られている。その第2段階は、零細経営の存在という構造     ―812―

(3)

問題を克服する動きであり、集落単位で機械利用集団や農民技術研究会などの組織化の段 階である。ただし、その一般化のためには、郷鎮財政の改善や流通・金融機能の付加が条 件となっている。

  第二の市場対応型の組織化は、穀物生産からの転換としての商品作物を対象とした産地 形成を目的としており、技術習得組織をべースとしながら生産資材供給やそれと関連する 与 信 機 能 、 さ ら に は 販 売 斡 旋 機 能 な ど を も つ 組 織 へ と 発 展 を み せ て い る 。   以上の組織化を進展させるには、郷鎮や集落組織が地域農業の実情に合わせて積極的な りーダシッブをとり、地方自治的側面を強化することが必要であることを明らかにしてい る。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

太田原 土井 黒河 坂下

高昭 時久     功 明彦

     学位論 文題名

中国 東北に おける農業構造変動と農村組織化の性格

  本論 文の課 題は、改 革・開 放路線下の中国の農業構造の変動とその下に存立する個人農 の組 繊化の 方向性を 明らかに するこ と,にあ る。序 章、補論 、終章を含め3部12章からな る231ベ ー ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図10、 表123を 含 み 、 他 に 参 考 論 文10編 が 添 え られ ている 。

  序章 では、 問題意識 と既存 研究の整理を行っている。人民公社の解体により、事実上の 個人 農経営 が形成さ れたが、 市場経済化が急速に進展をみせる中で、孤立分散化した個人 農を 支援す る組織体 制の構築 が大きな政策課題となっている。中国の経済発展は地域格差 を拡 大して いるが、 論文では 主要食糧基地を形成している東北地方を対象として、純農村 地帯 におけ る個人農 の経営動 向及びそこから導き出される組織化の方向とその内容を実態 に即 して明 らかにす ることが 意図されている。日本における中国農村研究は沿海部中心に 行 わ れ て お り 、 東 北 地 方 に お け る 本 格 的 研 究 は 始 め て の 試 み で あ る 。   論文 は3部構 成 を とっ て おり 、第1部が中国 東北農 村の基礎 構造分 析、第2部が既 存の 農業 関連の 社会主義 セクター の改革 動向、第3部 が政策当 局による農村組織化政策の検討 とそ の典型 事例の分 析となっ ている 。

  第1部に おいては 、第1章で統 計分析に よる東 北農業の 位置づけ と改革 以降の生 産動向 と そ の規 定 要 因が 明 ら かに され た後、第2章と 第3章におい て、1町村を 事例とし た農村 の構 造分析 が行われ ている。 これは 、5年 間にわ たる定点 観測的な 集落調 査と1年間の 農 家記 帳調査 によるも のであり 、アンケート調査を主体とする従来の研究手法を越えるもの であ る。人 民公社解 体以降の 個人農化と集落レベルの土地保有調整の実施過程、経営の多 角化 や兼業 動向がタ イブ別に 考察され、また個人農の生産・流通・金融対応と経済収支構 造が 明らか にされて いる。補 諭では 、貧困県 の事例 がこれと 対比されている。第4章は、

中国 の辺境 地に分布 し、東北 の特徴的な農業主体のひとつである国営農場の改革を取り上 げ 、 農 業 機 械 化 水 準 の 高 さ を 前 提 と し た 大 規 模 農 家 の 形 成 を 示 し て い る 。     ―814―

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  2部 に お い て は 、 既 存 の 流 通 ・ 金 融 構 造 の 変 化 と そ の 主 体 の 動 向 が 分 析 さ れ て い る 。 5章 で は 、 統 計 分 析 に よ っ て 農 産 物 流 通 の 構 造 と 主 体 の 変 化 、 供 銷 合 作 社 の 事 業 変 化 と 社 会 的 機 能 、 農 業 銀 行 な ら び に 信 用 合 作 社 に よ る 農 業 金 融 の 性 格 が 、 第6章 で は 国 営 の 食 糧 買 付 ・ 供 給 部 門 の 実 態 が 掘 り 下 げ ら れ て い る 。 全 休 と し て 改 革 は 進 展 し て お ら ず 、 し か も 独 立 採 算 性 が 追 求 さ れ る 中 で 、 各 企 業 ・ 団 体 の 農 業 離 れ が 進 行 し て お り 、 個 人 農 に 対 す る 業 務 は 空 洞 化 し つ っ あ る 。 こ の た め 、 既 存 組 織 に よ る 個 人 農 の 支 援 体 制 の 再 構 築 の 展 望 は 極 め て 限 定 的 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。

  3部 に お い て は 、 第7章 に お い て 農 村 組 織 化 政 策 の2つ の 柱 と な っ て い る 「 双 層 経 営 体 制 」 な ら び に 「 農 村 社 会 化 サ ― ビ ス 」 体 系 の 内 容 が 検 討 さ れ 、 具 体 的 な 組 織 形 態 の 性 格 を 明 ら か に し て い る 。 第8章 と 第9章 で は 、 終 章 で 総 括 す る 組 織 化 の ふ た っ の 形 態 の 典 型 事 例 分 析 が な さ れ て い る 。

  終 章 に お い て は 、 農 村 組 織 化 が 必 要 と な る 根 拠 を 個 人 農 経 営 の 性 格 変 化 か ら 説 明 す る と と も に 、 そ の 具 体 的 な 方 向 性 と 条 件 を 示 し 、 結 諭 と し て い る 。

  中 国 の な か で も 商 業 的 農 業 が 進 展 し た 東 北 に お い て は 、 改 革 以 降 の 個 人 農 は 請 負 制 下 で 零 細 経 営 を 維 持 し つ つ 、 商 品 経 済 化 ・ 貨 幣 経 済 化 の も と に お か れ て お り 、 既 存 の 社 会 主 義 セ ク 夕 一 に よ る 保 護 体 制 は 十 分 機 能 し て い な い 。

  そ う し た な か で 、 今 後 の 農 村 組 繊 化 の 方 向 と し て 以 下 の2つ の 形 態 を 示 し て い る 。 第 一 が 土 地 利 用 型 の 組 織 化 で あ り 、 穀 作 を 対 象 と し た 新 技 術 普 及 の た め の 町 村 ・ 集 落 レ ベ ル で の 農 民 組 織 化 を 第1段 階 と し 、 さ ら に 集 落 単 位 で の 機 械 利 用 集 団 や 農 民 技 術 研 究 会 な ど の 動 き が 確 認 さ れ て い る 。 た だ し 、 そ の 一 般 化 の た め に は 、 町 村 財 政 の 改 善 や 流 通 ・ 金 融 機 能 の 付 加 を 条 件 と し て い る 。 第 二 の 市 場 対 応 型 の 組 織 化 は 、 穀 物 生 産 か ら の 転 換 と し て の 商 品 作 物 を 対 象 と し た 産 地 形 成 を 目 的 と し て お り 、 技 術 習 得 組 織 を べ ー ス と し な が ら 生 産 資 材 供 給 や そ れ と 関 連 す る 与 信 機 能 、 さ ら に は 販 売 斡 旋 機 能 な ど を も つ 組 織 へ と 発 展 を み せ て い る 。 以 上 の 組 織 化 を 進 展 さ せ る に は 、 町 村 や 集 落 組 織 が 地 域 農 業 の 実 情 に 合 わ せ て 積 極 的 な り ー ダ シ ッ プ を と り 、 地 方 自 治 的 側 面 を 強 化 す る 必 要 が あ る こ と を 主張 して いる 。   こ の よ う に 本 論 文 は 、 中 国 の 現 段 階 に お け る 農 業 構 造 の 変 化 と そ の 下 で の 農 村 組 織 化 の 方 向 性 を 、 詳 細 な 統 計 分 析 と 実 態 調 査 に よ っ て 示 し て お り 、 多 く の 新 知 見 を 得 て い る 。   よ っ て 審 査 員 一 同 は 、 朴 紅 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と

認めた。

参照

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