博士(医学)今 裕史 学位論文題名
Influence of warm ischemia on isolation and primary culture of hepatocytes from rat liver for a hybrid artificial liver
(ハイブリッド型人工肝に用いる肝細胞の分散・
初 代 培 養 に 与 え る 肝 温 阻 血 の 影 響 )
学位論文内容の要旨
培 養 肝 細 胞 を 用 い た ハ イ ブ リ ッ ド 型 人 工 肝 は 肝 不 全 の 治 療 と し て 期 待 さ れ て い る 。 教 室 で は 単 層 培 養 し た 肝 細 胞 を 積 層 し た ハ イ プ リ ッ ド 型 人 工 肝 を 開 発 し 、 無 肝 犬 や 無 肝 家 兎 の 生 存 延 長 に 成 功 し 、 有 用 な シ ス テ ム で あ る こ と を 報 告 し て き た 。 一 方 、 欧 米 で は バ イ オ リ ア ク タ ー と し て 大 量 に 得 ら れ る ブ タ 肝 細 胞 や 増 殖 可 能 な ヒ 卜 肝 芽 腫 由 来 の 細 胞 株 を 用 い た 人 工 肝 の 臨 床 使 用 が 報 告 さ れ て い る 。 し か し 、 異 種 肝 細 胞 や 腫 瘍 細 胞 の 使 用 に は 免 疫 学 的 問 題 、 未 知 の 感 染 症 、 倫 理 上 の 問 題 な ど が あ る 。 ま た 、 こ れ ま で の わ れ わ れ の 免 疫 学 的 検 討 で は 約7% の ヒ 卜 血 清 中 に 培 養 プ タ 肝 細 胞 を 死 滅 さ せ る 自 然 抗 体 が 存 在 す る こ と が 明 ら か で あ る 。 こ れ ら の 諸 問 題 を 解 決 す る に は ヒ 卜 肝 細 胞 を 使 用 す る の が 最 善 の 策 で あ る が 、 現 在 の と こ ろ ヒ 卜 肝 細 胞 を 得 る た め に は 、 手 術 時 切 除 標 本 や 屍 体 肝 な ど 温 阻 血 状 態 に 曝 さ れ た も の し か な い 。 そ こ で 阻 血 肝 よ り 機 能 的 肝 細 胞 を 取 得 す る こ と を 目 的 と し て 肝 温 阻 血 が 肝 細 胞 の 分 散 、 初 代 培 養 に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 し た 。
材 料 と 方 法
動 物 :6〜7週 齢 の 雄 性Sprague−Dawleyラ ッ ト を 用 い た 。
肝 温 阻 血 : エ ー テ ル 麻 酔 下 に ヘ パ リ ン500U/kgを 静 注 し 、 肋 弓 下 切 開 で 開 腹 後 、 門 脈 、 肝 動 脈 、 胆 管 を 一 括 ク ラ ン プ し 、 肝 温 阻 血 と し た 。 温 阻 血 時 間 に よ り 次 の3群 に 分 け た 。A群: 温阻 血 時間0分(n 5) 、B群: 温阻 血10分(n 5) 、C群: 温阻 血20分(nー −5) 肝 細 胞 分 散 : コ ラ ゲ ナ ー ゼ 潅 流 法 に よ り 肝 細 胞 分 散 を 行 っ た 。 は じ め に 、EGTAを 含 む 37℃ のCaz+−free Hanks液 ( 前 潅 流 緩 衝 液 ) を 門 脈 に 挿 入 し た カ テ ー テ ル より 潅流 して 脱 血 を し た 。 次 に0.05% コ ラ ゲ ナ ー ゼ 溶 液 で 潅 流 し て 肝 組 織 を 消 化 し た 。 軟 化 し た 肝 を 細 切 後 に 瀘 過 し 、 分 散 し た 肝 細 胞 を50Xgの 遠 心 操 作 で 分 離 し 、 肝Lg当 た り の 収 量 お よ ぴ ト リ パ ン ブ ル ー を 用 い てviabilityを 測 定 し た 。
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肝 細 胞 培 養 : 分 散 さ れ た 肝 細 胞 は 、 コ ラ ー ゲ ン コ ー ト し た プ ラ ス テ イ ッ ク デ ィ シ ュ 上 に2X 10゜cells/0.2ml/cm'の 細 胞 密 度 で 播 穐 し た 。 培 地 はWilliams E(WE)を使 用し 、 インスリン(10‑。M)、 デキサメサゾシ(10‑8rri)、 胎児牛血清(10%)を加え た。4時間の培 養で 肝細 胞が 接 着し た後 、培 地を イ ンス リン (10‐8M) 、デ キサ メサ ゾ ン(10‑8M) 、グル カ ゴ ン ( 10‑'M冫 、 EGF( 7ng/ml) を 含 む WEに 交 換 し 、5日 間 培 養 し た 。 検 討 項目 :
1.単 藤肝 細 胞の 評価
1) 肝 細 胞 収 量 お よ ぴviability:lgあ た り の 肝 よ り 分 散 さ れ た 肝 細 胞 の 収 量 と 分 散 直 後 の 肝 細胞 のviabilityを3群間 で比 較検 討 した 。
2)Malondialdehyde (HDA)量 : 単 籬 肝 細 胞 の 膜 脂 質 の 過 酸 化 を 評 価 す る た め にTBA法 に よ るMDA量の 測 定を 行っ た。
3) 肝 細 胞 接 着 率 : 肝 細 胞 の 培 養 基 質 へ の 接 着 率 を 接 着 し た 肝 細 胞のDNA量/細胞 浮遊 液 のDNA量 よ り 算 出 し た 。 ま た 、 接 着 率 と 収 量 の 積 か ら 肝lgよ り 得 られ る 利用 可能 な肝 細 胞 数 を算 出し3群 問で 比較 検討 し た。
2.培 養肝 細 胞機 能: 播種1、2、3、5日後 に測 定し た 。
1)DNA量 :肝 細胞 の量 的 な維 持の 指標 と してDNA量 を 測定 した 。
Z) 糖 新 生 能 :Hanks液 中 に2mhtア ラ ニ ン と2mM乳 酸 を 添 加 し た 溶 液 中で90分間 肝細 胞を 培 養 し 肝細 胞に て合 成さ れ た糖 の濃 度を 測 定し た。
3) 尿 素 合 成 能 :5mht塩 化 ア ン モ ニ ウ ム を 添 加 し たHanks液 中 で90分 間 肝 細 胞 を 培 養 し 、 肝 細 胞で 合成 され た尿 素 濃度 を測 定し た 。
1―2),2‐Z),2−3) の測 定値 は単 位DNAあ たり の 量で 示した。有意差 検定は一元配置分散 分 析 とScheffe sFを 用いp<0.05をも っ て有 意差 あり とし た 。
結 果 1. 単藤 肝細 胞の 評価
1) 肝 細 胞 収 量 お よ ぴviability:肝 細胞 収量 はA群41.96土10.63、B群39.35土12.15、C 群21.37土9.47X100 cells/g肝 で あ り 、C群 はA群 の 約1/2で 他 の2群 に 比 して 有意 に低 値 で あ っ た(p<0.05)。viabilityもC群 が 他 の2群 に比 し て有 意に 低か った (vsA;p<0.01, vsB;pく0.05)。
2)l*tDA量 :MDA量 はA,B,C群でそれぞれ70.23土23.17、83.28土17.81、132.31土29.75 pnolノ ロgDNAで あ り 、C群 がA群 に 比 し て 有 意 に 高 値 を 示 し た ( p<0. 05)。 3) 接着 宰: 接着 率はA群79.24土2.28、B群61.04土8.45、C群43.88土11.31%であり、温 阻 血 時 間 の 延 長 に 従 っ て 有 意 に 低 下 し た 。 利 用 可 能 な 肝 細 胞 数 はC群 がA、B群 に 比 し て 有意 に低 値 であ った (p<0.01) 。
2. 培養 肝細 胞
1)DNA量 :DNA量 は培 養1日後 でA群O.95士O.31、B群O.72土0.32、C群O.49土O.15pg/cmz であ り、DNA量は5日 問維 持さ れ た。
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2) 糖新生 能:1日 後、A群19.59土9.30、B群18.92土8.12、C群12.47土5.16 ng/rtLgDNA/
minで あ っ た が 、 経 時 的 に 低 下 し た 。 し か し 、5日 問3群 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 3) 尿素 合 成 能 :各 群 と も2日 後に 最 高 値を示 し、それ ぞれ、8.56土1.90、7.93土O.76、 7.39土3.79 ng/弘gDNA/minで あ り 、5日 間 を 通 じ て3群 間 に 有 意 差 を 認 めな か っ た 。
考 察
肝 温 阻 血 に 関 す る 研 究 は こ れ ま で 種 々 の 動 物 で 行 わ れ て お り 、 温 阻 血 に 対 する 許 容 時 間 は 種 に よ っ て 異 な る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ラ ッ ト30分 、 ブ タ90分 の温 阻 血 で は iooxの 生 存 率 で あ る が 、 イ ヌ では90分 で30% の 生存 率 が 報 告さ れ て い る。 し か し 、機 能 的 な 肝 細 胞 の 分 散 、 培 養 に 対 す る 肝 温 阻 血 の 影 響 に つ い て の 研 究 は ほ と ん ど な い。 そ こ で わ れ わ れ は ラ ッ 卜 肝 細 胞 の 分 散 ・ 培 養 に 与 え る 温 阻 血 の 影 響 に つ い て 検 討 した 。 ラ ッ ト 肝 で は15分 の 阻 血 状 態 で 肝 細 胞 表 面 に ブ レ プ が 生 じ る と い う 報 告が あ る 。 わ れ わ れ の 実 験 で は 、 阻 血20分 よ り 、 収 量 、viabilityが 有 意 に 低 下 し 、 ま たMDA量 が有 意 に 上 昇 し た 。 こ の こ と は 阻 血 に 伴 う 肝 細 胞 表 面 の 変 化 が 酵 素 潅 流 や 分 散 操 作 によ り 促 進 さ れ 、 ま た 、 膜 脂 質 の過 酸 化 に より さ ら に 厳し い 障 害 を受 け た た めと 考 え ら れた 。 ー 方 、 培 養 基 質 に 対 す る 接 着 率 は 温 阻 血 時 間 の 経 過 と と も に 低 下 し 、 最 も 鋭敏 に 阻 血 の 影 響 を 受 け た 。 し か し 、 温 阻 血10分 ま で は 接 着 し 、 利 用 可 能 な 肝 細 胞 数 は影 響 を 与 え な い と 考 え ら れ た 。 培 養 肝 細 胞 の 機 能 の 指 標 と し て 糖 新 生 能 、 尿 素 合 成 能 を検 討 し た が 、 培 養5日 間 を 通 じ て3群 間 に 有 意 差 は な く 、DNA量 も こ の 期 間 維 持 さ れ た 。 こ れ ら こ と か ら 、 一 旦 培 養 基 質 に 接 着 し 得 た 肝 細 胞 の 機 能 は20分 ま で の肝 温 阻 血 で は 影 響 を 受 け ず 、 バ イ オ リ ア ク タ ー と し て 利 用 可 能 と 考 え ら れ た 。
結 語
1. 肝 温 阻 血20分 で 単 薩 且 干 細 胞 の 収 量 、viabilityは 低 下 し 、MDA量 は 高 値 を示 し た 。 2. 肝 細 胞 接 着 率 は 温 阻 血 時 間 の 延 長 と と も に 有 意 に 低 下 し た が 、 接 着 可 能 な 肝 細 胞 致 は10分 ま で の 肝 温 阻 血 で は 影 響 を 受 け な か っ た 。
3. 一 旦 接 着 し 培 養 可 能 で あ っ た 肝 細 胞 は 肝 温 阻 血 時 間 に 拘 わ ら ず 機 能 の発 現 を 認 め、
パ イ オ リ ア ク タ ー と し て 利 用 可 能 と 考 え ら れ た 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Influence of warm ischemia on isolation and primary culture of hepatocytes from rat liver for a hybrid artificial liver
(ハ イブリッ ド型人工 肝に用い る肝細胞 の分散・
初 代 培 養 に 与 え る 肝 温 阻 血 の 影 響 )