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博士(医学)橋本裕之 , 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)橋本裕之

,    学位論文題名

非小 細胞肺癌 における IvILHl/MSH2 発現と      予後因子 としての 検討

学位論文内容の要旨

    背 景と 目的

  human Mut−L−Homologen‑l (hMLHl)とhuman Mut‑S‑Homologen‑2 (hMSH2)は,DNA mismatch repair (MMR)遺 伝子 群に属する遺伝子である.この遺伝子群は,主に正常のDNA 複 製 過程 で生 ずる 塩基 ―塩 基ミ スマ ッチ もし くは1から4塩基 ルー プの 挿入 ・欠 落ミ スを 修 復す る,MMR遺 伝子 群の 正常 な機 能が 失わ れる 事は; 遺伝 子変異による発癌遺伝子の活 性 化や 腫瘍 抑制 因子 の不活 化に より発癌の引き金に成り得ると考えられている.非小細胞 肺 癌 に お け る 免 疫 組 織 化 学 的 手 法を 用い たMMR遺伝 子発 現検 討の 報告 はほ とん どな い.

    対象と方法

  遠隔転移のなしゝ,術前未治療の非小細胞肺癌症例107例を対象とした,症例の内訳は,

男 性70例 , 女 性37例 で あり , 平 均 年 齢6313歳(39歳 から80歳 ま で ) で あ っ た . 平 均 観 察 期 間は ,49.3ケ 月(3.1ケ月 から89.9ケ月 まで )であ った .免 疫組 織化 学染 色に は,

streptavidin−biodin―peroxidase法を用いた.hMLHlはりン酸緩衝生理食塩水にて1:500に稀 釈 し た マ ウ ス 抗hMLHl抗 体 ,hMSH2に 関 し て は 抗hMSH2抗 体 を 同 様 に1:50に 稀 釈 し た も のを一次抗体として用いた.半定量的な免疫染色の評価は以下の如く,Friedrichらの報 告に従った.各標本は,染色強度に因って4段階に分類した.っまり,0点(染色されず),1 点 (弱 い染 色で ある が判 定可 能),2点(明瞭に染色されている),3点(強く染色されて い る )と スコ ア化 した ,各 標本 の染 色頻 度( 腫瘍 細胞に 占め る免 疫染 色反 応陽 性の 細胞 の 割合)を4段階に分類し,1点(0ー10 010の細胞が免疫染色反応陽性),2点(11―50%の 細 胞が 免疫 染色 反応 陽性 ),3点(51―80%の 細胞 が免 疫染 色反応陽性),4点(81・100%の 細 胞が 免疫 染色 反応 陽性 )と スコア化した.そして,各標本の染色強度スコアと染色頻度 ス コ ア の 積 をMMRス コ ア と し 各 標 本 の 染 色 状 態 を 評 価 し た .MMRス コ ア3点 を 閾 値 と し。3点以下を染色陰性(−),3点より上を染色陽性(十)として評価した.統計解析は,

chi―square testならびにFisher Sexact testを用いた.生存率はKaplan−Meier法を用いて算出 し,Log rank法にて比較検討した.

(2)

    結果

  方 法 で 述 べ た 判 定 基 準 に 従 っ て 検 討 し た 結 果,28例 (26.2% ) がhMLHl染 色 陽 性 (hMLHl( 十) ),79例(73.8%) がhMLHl染 色陰 性(hMLHl(‑))と分類された,一方,hMSH2 はhMSH2染色陽性(hMSH2(十))が36例(33.6ワ。),hMSH2染色陰性(hMSH2(‐))が71 例(66.4a/o)と なっ た.5年生 存率 はhMLHl/hMSH2(+/+)群 で50.0%,hMLHl/hMSH2(+/−)群 で35.7%,hMLHl/hMSH2(―/十)群で40.9%,hMLHl/hMSH2(・/l)群で64.9%であり,これらの 間 に 統 計学 的 有 意 差(P=0.0454)を 認 め た . そ こ で4つ の 群 を あ らゆ る組み 合わ せの2群 に分 けて 解析 した結 果,hMLHl/hMSH2(‑/‑)群が 他の3つの 群に比べ有意に予後良好であっ た(P=0.0097), 腺 癌 症 例 の み(57例 )も し く は , 扁 平 上 皮 癌 症 例の み(40例) に限 って 見 た 場 合, そ れ ぞ れ に お い て 同 様 の 傾 向 を 示 し た が , 統 計 学的 有意 差は 認め なか った (P=0.1153、0.0896).Cox比 例 ハ ザ ード モ デ ル を 用 い た 単 変 量 解析 では。hMLHl/hMSH2 (P=O.Ol 14)と 共 に , 年 齢(P=0.0172), 性 別(P=0.0020),T因 子 (Pく0.0001) ,N因 子(Pく0.0001)が 有意 な予 後因 子で あっ た, 単変 量解 析に おい て有 意差を 認め た5つの 因 子 を 多変 量 解 析 に て 評 価 し た 結果 ,T因子(Pく0.0001) とN因 子(P=0.0015)が独 立予 後 因 子 で あ っ た . 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 で は , 両 遺 伝 子 共 発 現 陰 性 群 (hMLHl/hMSH2(I/・))と他の3群との群分けにおいて,性別(P=0.0312),N因子(P=0.0375). 臨床病理学的病期(P=0.0316)との聞に有意な相関を認めた,

    考察

  累 積生 存率 の検 討で は,hMLHl/hMSH2(l/一 )群 がそ の他 の群に 比べて有意に予後良好   (P=0.0097)であった.大腸癌に関する報告では,microsatellite−instability(MSI)と免疫 組 織 化 学 的 染 色 によ っ て 評 価 さ れ たhMLHl,hMSH2蛋 白 の 発 現 低 下 との 高い 相関 が指摘 されていると共にhigh―fIIequencymicrosate11iteinstability(MSI―H)と累積生存率の改善と の相 関も 報告されている.一方で,非小細胞肺癌ではelevatedmicroSatemtealterationSat SelectedtetranuCleotiderepeat(EMAST)が観察されると報告されている.MSI評価の国際 基準 では1〜3塩基 繰り 返し 配列 の評価 とな るた めEMAST陽性 の腫瘍 では。microsate11ite stable(MSS) と判 定さ れる 可能 性が 高い .っ まりMSI−Hの 大腸癌 とは異なった遺伝子異 常が非小細胞肺癌では予後改善に寄与してしゝる可能性が示唆される,非小細胞肺癌に於い ては ,腫 瘍形 成に 於け る非 常に 早期の 段階 でのpromotermethylationによるhMLHl/hMSH2 発 現 低 下 が 報 告 さ れ て い る , 一 つ の 可 能 性 と し て は 、 早 期 の 段 階 で の 異 常 な hypermethylationに よるhMLH1/hMSH2発 現低 下が 何ら かの 機序 で腫 瘍進 展, リン パ節転 移を 阻害 して いた もの がhypermethylationが解除された結果,腫瘍進展,リンバ節転移が 進行 し予 後の 悪化 を招 く事 が考 え得る .また,hMLH1/hMSH2(4)群はステージIの症例が 多くをしめた(P=O.0114).そのことより,非小細胞肺癌の発癌、進展過程に於ける遺伝子 異 常 の 副 次 的 結 果と し てhMLH1/hMSH2遺 伝 子 に 異 常 が 生 じ , 進 行 癌で はhMLH1/hMSH2 遺伝子が過剰発現している可能性も考えられる.  ´

    ま と め

  非 小 細 胞 肺 癌 に 於 い てhMLHlとhMSH2の 果 た す 役 割 は 不 明 な点 が 多 い が 、 予 後 予 測 因 子 と な り う る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .

    −36―

(3)

学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名

非 小 細 胞 肺 癌 に お け る MLH17MSH2 発現 と 予後因子としての検討

  human Mut‑L‑Homologen‑l (MLHl)  と human Mut・S−Homologen−2(MSH2)は ,DNA mismatch repair (MMR)遺 伝 子 群 に 属 す る 遺 伝 子 で あ る 。 こ の 遺 伝 子 群 は , 主 に正 常 のDNA 複 製 過 程 で 生 ず る 塩 基 ― 塩 基 ミ ス マ ッ チ も し く は1か ら4塩 基 ル ー プ の 挿 入 ・ 欠 落 ミ ス を 修 復 す る 。MMR遺 伝 子 群 の 正 常 な 機 能 が 失 わ れ る 事 は , 遺 伝 子 変 異 に よ る 発 癌 遺 伝 子 の 活 性 化 や 腫 瘍 抑 制 因 子 の 不 活 化 に よ り 発 癌 の 引 き 金 に 成 り 得 る と 考 え ら れ て い る 。今 回 、 非 小 細 胞 肺 癌 に 於 け るMLH1とMSH2の 発 現 と 長 期 予 後 及 び 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 相 関 に関し免疫組織学的手法を用いて検討した。

  遠 隔 転 移 の な い , 術 前 未 治 療 の 非 小 細 胞 肺 癌 切 除 症 例107例 を 対 象 と し た 。 症 例 の 内 訳 は , 男 性70例 , 女 性 37例 で あ り , 平 均 年 齢6313歳(39歳 か ら80歳 ま で ) で あ っ た 。 術 後 平 均 観 察 期 間 は ,4913ケ 月(3.1ケ 月 か ら89.9ケ 月 ま で ) で あ っ た 。 免 疫 組 織 化 学 染 色 は , モノ ク 口 ーナ ル 抗 体を 用 い たstreptavidin―biodin‑peroxidase法によ った。半 定量的 な免 疫 反 応 の 評 価 はFri・edrichら の 報 告 に 従 っ た 。 各 標 本 を 染 色 強 度 に よ っ てO−3点 の4段 階 に 分 類 し , 各 標 本 の 染 色 頻 度 ( 腫 瘍 細 胞 に 占 め る 免 疫 染 色 反 応 陽 性 の 細 胞 の 割 合 )も1‐4 点 の4段 階 に 分 類 し , ス コ ア 化 し た 。 そ し て 各 標 本 の 染 色 強 度 ス コ ア と 染 色 頻 度 ス コ ア の 積 をMMRス コ ア と し 各 標 本 の 染 色 状 態 を 評 価 し た 。MMRス コ ア3点 以 下 を 染 色 陰 性 , 3点より上 を染色陽 性とし て評価し た。統 計解析は ,chi‐squaretestならびにFisher sexacttest を 用 い た 。 生 存 率 はKaplan‐Meier法 を 用 い て 算 出 し ,Logrank法 に て 比 較 検 討 し た 。   術後5年 生存 率 はMLH1/MSH2( 十 / 十) 群 で50.0% ,MLH1/MSH2( リ ―) 群 で35.7ワ。,

MLH1/MSH2(−/十)群で40.9ワ。,MLHl/MSH2(一/一)群で64.9ワ。であり,これらの問に有意差

(Pニ0.0454) を認 め た 。そ こ で4つ の 群 をあ ら ゆ る 組み 合 わせの2群に 分けて 解析した 結果,

MLH1/MSH2(l/一)群 がその他 の群に 比ベ有意 に予後 良好であ った(P=O.0097)。Cox比例ハザ ー ド モデ ルを用い た単変 量解析で は,MLH1/MSH2(−/‐ )の因 子(P=O.0114)と共 に,年 齢

(P=0.0172),性別(P〓Ol0020),T因子(Pく0.o001),N因子(Pく0.(Kめ1)が有意な予後因子

哲 俊 寛       弘 雅 藤田 村 近秋 今 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

であ った。単 変量解析 に於いて有 意差を認めた5つの因子を多変量解析にて評価した結果,

T因子(Pく0.0001)とN因子(P=0.0015)が独立予後因子であった。MLHl/MSH2(ー/‐)群とその 他 の 群に お いて 臨 床 病理 学 的因 子 と の相 関 を 検討 し たと こ ろ 、性 別(P=0.0312)、N因子 (P=0.0375), 病 理 学 的 病 期 (P=0.0316)と の 間 に 有 意 な 相 関 を 認 め た 。   非 小 細 胞 肺 癌 に 於 い てMLH1とMSH2の 果 た す 役 割 は 不 明 な 点 が 多 い が ,MLH1,MSH2 とも に発現し ていない 症例ではり ンパ節転 移が少な く病期も より早期で,術後生存期間が 延 長 す る こと が 明 らか と なっ た 。 この 点 で予 後 予 測因 子 と なる 可 能性 が 示 唆さ れ た。

  口 頭 発 表 に 引 き続 き ,副 査 今 村雅 寛 教 授よ り MLHl/MSH2共 に 染色 陰 性の 群 が 他の 群 に比 ベ有意に 予後が良 好な理由, ◎染色強 度単独, 染色頻度 単独での分類による予後の検 討 に 関 し て の 質 問 が あ っ た 。 続 い て 副 査秋 田 弘俊 教 授 より @ 肺癌 でMLHl/MSH2の 発現 にっ き検討し ようと考 えた動機に ついて, ◎非小細 胞肺癌に 関して同様の検討をした他の 研 究 の結 果 につ い て ,◎ 非 小細 胞 肺 癌に お け るMSI発 現に 関 し ての 質問があっ た。最後 に 主 査 近 藤 哲 教 授 よ り , 今 回 の 検 討 で 染 色 さ れ たMLHl/MSH2蛋 白 に 関 し て の 質 問 が あっ たが,い ずれの質 問に対して も,申請 者は主旨 をよく理 解し自らの研究データと文献 的考察を混じえ誠意ある回答をした。

  非 小 細 胞 肺 癌 に於 け るMLH1/MSH2発 現 に関 す る本 研 究 の意 義 は大 き く ,審 査 員 一同 協 議 の 結 果 , 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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